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戦う為に 4
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電話を入れた次の日、内田さん親子と一緒に例の家を見に来ていた。
とりあえず昨日のうちに簡単にだが草刈りをして通路は確保しておいた。いや、刈りっぱなしで刈った草は放置していると言う惨状なので、熊手を持って簡単にかき集めて敷地の隅っこに山積みをして置いた。
家の前の通路はこの古い街独特の細い道路なのでせめて車が止めれる位にと草を刈っておいただけなのだ。なんせ内田さん達は一度この家を見て軽く打ち合わせをしてから今取りかかっている仕事へと向かう事になっている。半日とか休みとかはないんだと聞けばやはり今取りかかってる家も雪が降る前にと言う事で大忙しだと言う。
「圭斗の家の離れぶりですかね」
「あの時はちょうど向こうの天気が悪かったからな。
吉野のみたいに人数が集めれればすぐに終わるんだが」
「家は麓と違って降り出す時期も降る量も全く違いますから。
多少降った位問題ないでしょう」
「本格的に振り出す前には終わる予定だ。後は庭師の仕事。わしらの仕事じゃない」
言いながら刈ったばかりの雑草を踏みしめながら玄関の前に立つ。
「白井の家だったな」
「はい。バアちゃんの友達が住んでいたと聞いてます」
「ああ、親父と造りに来たから覚えてる。
吉野の所の職人で、大矢の所の旅館で働いてたな」
「猟友会の大矢さん?」
「ああ、結構な人数を引き受けてくれた。と言っても今の旦那のジジイの時代だ。
あいつも吉野には随分と助けてもらっていたらしいから恩返しだって、張り切ってたな。ああ、あの旅館は泊まった事があるか?近場とは言え一度泊まってみると良い。見事な檜や欅をふんだんに使ってるから。物凄く大盤振る舞いしてるぞ」
「で、内田一族が作ったと」
「今も手入れをさせてもらってる。浩太が引き継いで定期的に手を入れているから。ああ、長沢もいろいろ面倒を見てるから圭斗と宮下と一度見学させてもらうと良い」
「泊まった事はあるけど、そこまで見てなかったな」
「泊まった事あるのか?」
「高校時代バスに乗り遅れた時とか。バアちゃんが大矢の所に電話入れておくから泊めさせてもらえって」
「学生時代何をしてたんだか……」
呆れはするものの詳しくは聞かないありがたさに綾人は苦笑しながら家の中を案内する。
だって学校でいろいろしでかして長い時間説教されてバスを乗り過ごしたなんては言えないから。
とりあえず広い土間のある玄関を入って田の字型の部屋を見せれば
「床が駄目ですね」
「とりあえず畳を上げてみろ」
と言われて浩太さんは簡単にさくっと再利用出来ないほど湿気を含んでたわんだ畳をバールで引っ掛けて持ち上げる。荒床は何度か踏むうちにみしりと嫌な音をさせた。今ほどきっちりとはまってない荒床を外せば地面が見えて、その中にスポッと入れば
「コンクリ流してあるから束石には問題ありませんね。
大引も根太もシロアリにはやられてないし、束も大丈夫そうですね」
「ふむ、亡くなって五年、家を放棄した割には案外綺麗だな」
「小さな獣さん達が出入りしてたから空気の流れはあったのでしょう」
「それはそれで問題だ」
言いながらもシミの広がる天井を見上げて鉄治さんはバールを突き上げて一角を壊して行く。
天井もたわむ様に剥がれ落ちればゴミと強烈な臭いが降って来た。
「うわっ!」
思わず逃げてしまう俺を二人は笑う物の
「天井と床と壁は張り替えだな。ついでに断熱材を入れてやろう」
「ええと今回のテーマは限りなく格安を希望します」
二人は内田の家のリフォームなのにと言いたそうだったが
「岡野夫妻の支払い能力では今の所かなり厳しいので。
見通しが着いた時またリフォームが必要になると思うのでその時にガツンとやりましょう」
なんて言うも浩太さんも鉄治さんも顔を歪め
「何を言ってる。その時は自力でやらせろ」
「蒼も大工なんだからこれぐらい自分でやるだろう」
と言われてポンと手を打つ。言われてみればそこまで俺がやる必要はないのだと気が付いた。
「ひょっとして全部蒼さん達にお任せできるとか?」
「ああ、できるに決まってる。まあ、まだ不安な所はあるがな」
思わず眼をしばかせて
「これはこれで動画になるな」
いろいろ計算を始めてしまえば浩太さんは鉄治さんを連れて二階へと向かっていく。その間俺はうろうろと台所や古い造りの風呂とトイレを見て回ったりしながら上下水道の配管を考え、柱や抜けない壁を構造から導き出す。
家の中を物色して鉛筆と未使用のノートを見つけ出して台所のテーブルでざっくりとした設計図を描く。相変わらずひどい線の図形だがそこは定規を使ってないのだから許してもらう事にする。
そして同じアウトラインの枠を書いて設計上の縛りから外せない線を書き込み一つ一つの間取りを大きく変える。
例えば台所と隣の六畳の部屋を一つのリビングダイニングに変えて洋風にする。
壁に向かってのキッチン仕様はカウンターキッチンにして、でもコンロは壁に向かって設置する。ダイニング側に油が飛び散ったら掃除も大変だしね。一応気遣いはしておく。
田の字型の四部屋は一室を潰して風呂場とトイレの場所を広げる。
部屋は基本フローリングに変えて、でも一つぐらい客間として和室も欲しい。
そこは蒼さんと言うか実桜さんにお任せしよう。
そして階段も広く、緩やかにしたい。二階の三室も直して夫婦の部屋と凛ちゃん、そしてまだ生まれぬ兄弟の部屋としておくのもよい。
夢があるなぁと間取りの難しさをパズルのように考えていれば
「吉野の、お前さんが世話好きなのは知っているが、そう言うのは嫁さんにやらせてやれ。
わしらの経験から言えば家を預かる嫁の機嫌を損ねるとそののちの夫婦関係もこじれる」
貴重な言葉に俺もせっかく作って気に入らないからと言って別の家を借りられたらそれこそ目が当てられないからとその意見には頷いて
「とりあえず納屋の方を見よう」
「コンクリ流して壁と屋根があるだけですよ」
「ああ、それはわしが作ったから覚えて居る。車を入れておきたいと言っていたからな」
自信満々に語る鉄治さんだけど浩太さんは知らないからと一緒になって見い行けば車がないのは当然だが……
「一応息子さん達が片づけようとした努力の名残が残ってまして」
すっかり何かの巣となっていた場所に鉄治さんも浩太さんもうわぁと何となく泣き出しそうな顔をしていた。
「現在空家な事に感謝をしましょう」
言いつつも鼠一家がちょろろろろ……と逃げて行くのを見送る。
「希望として作業場にする予定なのでベンチや机が欲しいですね。後近くに水道引いて大量に洗えるような水槽が欲しいのですが……」
「だったらあの山水が流れてくるところを上手く使って水槽を作ろう」
排水溝を作って敷地内がじめじめとならないようにした努力を利用しつつ水道代削減のためのアイディアを出し合っていくけどその前にだ。
「凛ちゃんが落ちないように蓋もお願いします!」
安全第一是絶対。
なんとなく漢詩っぽくなった標語だけど悲しい事件なんて絶対起こしたくないのでその点はちゃんとチェックを入れてくれる約束を貰うのだった。
とりあえず昨日のうちに簡単にだが草刈りをして通路は確保しておいた。いや、刈りっぱなしで刈った草は放置していると言う惨状なので、熊手を持って簡単にかき集めて敷地の隅っこに山積みをして置いた。
家の前の通路はこの古い街独特の細い道路なのでせめて車が止めれる位にと草を刈っておいただけなのだ。なんせ内田さん達は一度この家を見て軽く打ち合わせをしてから今取りかかっている仕事へと向かう事になっている。半日とか休みとかはないんだと聞けばやはり今取りかかってる家も雪が降る前にと言う事で大忙しだと言う。
「圭斗の家の離れぶりですかね」
「あの時はちょうど向こうの天気が悪かったからな。
吉野のみたいに人数が集めれればすぐに終わるんだが」
「家は麓と違って降り出す時期も降る量も全く違いますから。
多少降った位問題ないでしょう」
「本格的に振り出す前には終わる予定だ。後は庭師の仕事。わしらの仕事じゃない」
言いながら刈ったばかりの雑草を踏みしめながら玄関の前に立つ。
「白井の家だったな」
「はい。バアちゃんの友達が住んでいたと聞いてます」
「ああ、親父と造りに来たから覚えてる。
吉野の所の職人で、大矢の所の旅館で働いてたな」
「猟友会の大矢さん?」
「ああ、結構な人数を引き受けてくれた。と言っても今の旦那のジジイの時代だ。
あいつも吉野には随分と助けてもらっていたらしいから恩返しだって、張り切ってたな。ああ、あの旅館は泊まった事があるか?近場とは言え一度泊まってみると良い。見事な檜や欅をふんだんに使ってるから。物凄く大盤振る舞いしてるぞ」
「で、内田一族が作ったと」
「今も手入れをさせてもらってる。浩太が引き継いで定期的に手を入れているから。ああ、長沢もいろいろ面倒を見てるから圭斗と宮下と一度見学させてもらうと良い」
「泊まった事はあるけど、そこまで見てなかったな」
「泊まった事あるのか?」
「高校時代バスに乗り遅れた時とか。バアちゃんが大矢の所に電話入れておくから泊めさせてもらえって」
「学生時代何をしてたんだか……」
呆れはするものの詳しくは聞かないありがたさに綾人は苦笑しながら家の中を案内する。
だって学校でいろいろしでかして長い時間説教されてバスを乗り過ごしたなんては言えないから。
とりあえず広い土間のある玄関を入って田の字型の部屋を見せれば
「床が駄目ですね」
「とりあえず畳を上げてみろ」
と言われて浩太さんは簡単にさくっと再利用出来ないほど湿気を含んでたわんだ畳をバールで引っ掛けて持ち上げる。荒床は何度か踏むうちにみしりと嫌な音をさせた。今ほどきっちりとはまってない荒床を外せば地面が見えて、その中にスポッと入れば
「コンクリ流してあるから束石には問題ありませんね。
大引も根太もシロアリにはやられてないし、束も大丈夫そうですね」
「ふむ、亡くなって五年、家を放棄した割には案外綺麗だな」
「小さな獣さん達が出入りしてたから空気の流れはあったのでしょう」
「それはそれで問題だ」
言いながらもシミの広がる天井を見上げて鉄治さんはバールを突き上げて一角を壊して行く。
天井もたわむ様に剥がれ落ちればゴミと強烈な臭いが降って来た。
「うわっ!」
思わず逃げてしまう俺を二人は笑う物の
「天井と床と壁は張り替えだな。ついでに断熱材を入れてやろう」
「ええと今回のテーマは限りなく格安を希望します」
二人は内田の家のリフォームなのにと言いたそうだったが
「岡野夫妻の支払い能力では今の所かなり厳しいので。
見通しが着いた時またリフォームが必要になると思うのでその時にガツンとやりましょう」
なんて言うも浩太さんも鉄治さんも顔を歪め
「何を言ってる。その時は自力でやらせろ」
「蒼も大工なんだからこれぐらい自分でやるだろう」
と言われてポンと手を打つ。言われてみればそこまで俺がやる必要はないのだと気が付いた。
「ひょっとして全部蒼さん達にお任せできるとか?」
「ああ、できるに決まってる。まあ、まだ不安な所はあるがな」
思わず眼をしばかせて
「これはこれで動画になるな」
いろいろ計算を始めてしまえば浩太さんは鉄治さんを連れて二階へと向かっていく。その間俺はうろうろと台所や古い造りの風呂とトイレを見て回ったりしながら上下水道の配管を考え、柱や抜けない壁を構造から導き出す。
家の中を物色して鉛筆と未使用のノートを見つけ出して台所のテーブルでざっくりとした設計図を描く。相変わらずひどい線の図形だがそこは定規を使ってないのだから許してもらう事にする。
そして同じアウトラインの枠を書いて設計上の縛りから外せない線を書き込み一つ一つの間取りを大きく変える。
例えば台所と隣の六畳の部屋を一つのリビングダイニングに変えて洋風にする。
壁に向かってのキッチン仕様はカウンターキッチンにして、でもコンロは壁に向かって設置する。ダイニング側に油が飛び散ったら掃除も大変だしね。一応気遣いはしておく。
田の字型の四部屋は一室を潰して風呂場とトイレの場所を広げる。
部屋は基本フローリングに変えて、でも一つぐらい客間として和室も欲しい。
そこは蒼さんと言うか実桜さんにお任せしよう。
そして階段も広く、緩やかにしたい。二階の三室も直して夫婦の部屋と凛ちゃん、そしてまだ生まれぬ兄弟の部屋としておくのもよい。
夢があるなぁと間取りの難しさをパズルのように考えていれば
「吉野の、お前さんが世話好きなのは知っているが、そう言うのは嫁さんにやらせてやれ。
わしらの経験から言えば家を預かる嫁の機嫌を損ねるとそののちの夫婦関係もこじれる」
貴重な言葉に俺もせっかく作って気に入らないからと言って別の家を借りられたらそれこそ目が当てられないからとその意見には頷いて
「とりあえず納屋の方を見よう」
「コンクリ流して壁と屋根があるだけですよ」
「ああ、それはわしが作ったから覚えて居る。車を入れておきたいと言っていたからな」
自信満々に語る鉄治さんだけど浩太さんは知らないからと一緒になって見い行けば車がないのは当然だが……
「一応息子さん達が片づけようとした努力の名残が残ってまして」
すっかり何かの巣となっていた場所に鉄治さんも浩太さんもうわぁと何となく泣き出しそうな顔をしていた。
「現在空家な事に感謝をしましょう」
言いつつも鼠一家がちょろろろろ……と逃げて行くのを見送る。
「希望として作業場にする予定なのでベンチや机が欲しいですね。後近くに水道引いて大量に洗えるような水槽が欲しいのですが……」
「だったらあの山水が流れてくるところを上手く使って水槽を作ろう」
排水溝を作って敷地内がじめじめとならないようにした努力を利用しつつ水道代削減のためのアイディアを出し合っていくけどその前にだ。
「凛ちゃんが落ちないように蓋もお願いします!」
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