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そして夕闇の中街灯もないのに皆さんわらわらとやって来た中には圭斗と蒼さんもいた。なんか面白そうだから家の方は陸斗と実桜さんに任せてきたと言う。陸斗と高校生達だけじゃないのが安心できると言ってちょっとと言う様に森下さんに工具ももって行くようにと言われてぞろぞろと集合していた。
そして封印された隠し部屋と言うか辛うじて封印されてないんだけどなと言う大和さんのボヤキが零れる部屋を前に
「明日はこれだけ集まれないから今のうちに壁抜いちゃいましょう」
森下さんの英断。
「だったら棚の中の食器も隣の部屋に運べ!」
台所からものの数分で食器が片づけられた。マンパワー改めてすごい!そして俺の苦労っ!ちょっぴり涙が出たけど気にしない。
「綾人君、食器棚はどうする?」
「あー、その部屋の中で使い回しできますか?」
「全然問題ないぞ。食器棚の方もまだまだ使える」
床もしっかりと土間になってるから後で倒れないように止めてもらうと良いよとの井上さんの声。さすが古民家に詳しいと言うも
「その前にこの部屋の漆喰塗り直しだな」
「その前にゆがみを直さないといけないだろう」
そりゃそうだ。
笑いながら壁を壊して行く若い衆。
皆さん本当に楽しそうだ。
そりゃこれだけ手伝って小遣い貰うつもりなのだろうからしっかりと働いてもらう。漆喰の分だけという山川さんは口を出して手を出さないつもりだ。ありがたい事に半日分とは言え一人分の人件費が浮いて感謝だ。
「とりあえずまた材木を貰ってくから何人かついて来い」
長沢さんが材木を持って行くぞと言えばすぐにフットワーク軽く圭斗を始めとした何人かが追いかけて行った。ちなみに浩太さん達は壁を抜いた土の処理班。台所は土まるけだ。
初見さん達は皆さんのこのノリについていけないと言うか置いてきぼりにされたというか、でもこの家の作りに好奇心満載で見学をしていた。勿論ナビゲーターは鉄治さん。まるで自分が作ったかのような自慢だけど初見さん達もしっかりと内田さんのお爺さんの建物に魅了された人たち。物凄くテンション高くなってる様子に知識は将来の糧になるぞと俺は微笑ましい目を向けながら
「じゃあ、明日来れそうなやつは?」
圭斗と蒼さん含めて七人程の手が上がった。
「お前ら自分の住処は良いのかよ」
と思うも
「自分の家はこれから好きな時に好きなだけ手直しできるけど、内田の建物の手を入れる機会はそうそうないから触れる時に触っていたいです」
蒼さんのキラキラとした瞳に圭斗も然りと頷く。
ああ、もう……
俺も自分の仕事だと言う様に離れに急ぎ足で向かい
「飯田さん、明日の職人さんは七名だそうです!」
「その中に宮下君と綾人さんの数は?」
「宮下込みで俺は入ってないです」
そんな分かりずらい依頼に
「でしたら八人分ですね。皆さんきっと食べそうなので十人前ぐらいは作っちゃいましょう。お昼は温めるだけにしておきますね」
にっこりと笑う飯田に綾人もよろしくお願いしますと頭を下げれば
「綾人ー、悪いんだけどさあ」
鉄治さんと圭斗が申し訳なさそうな顔でやって来たと思ったら
「悪いんだけど明日からの仕事の奴泊めさせてもらっても構わないか?」
「んあ?別にいいけど……」
飯田さんをちらりと見れば嬉しそうな顔でご飯は任せてくださいと言う。
飯田さんの可愛い台所の見せ所だろう。
うきうきとする顔でなら今晩のご飯も追加しないと、明日の朝ごはんは帰る前に用意しますねと歌う様に料理を始める様子はもう放っておいた方が良いだろうとそっと離れから逃げ出すのだった。
俺の居場所がねぇと言う様に烏骨鶏小屋に逃げ出してしまうも
「綾人、こんな所に隠れてないで。
寒いなら囲炉裏にでもあたっていればいいのに」
宮下がやって来た。
烏骨鶏を抱いて鳥臭を嗅ぐ様に羽毛100%の体に顔を押し付ける俺を困ったように眉尻を下げながら烏骨鶏を取り上げて小屋の中にリリース。
「あー……」
途端に寂しくなった腕の中に宮下を恨んでしまうも
「ったく、人間嫌いなのは判ってるけどさ。
吉野の大将がこんな所で怖がって逃げてるなんて様にならないだろう。
ほら、囲炉裏で熱燗よういしてあげるから行くよ」
代わりに宮下の手が俺の手を引っ張って引き上げてくれる。
「毎度毎度烏骨鶏ハウスに逃げ込んでくれるから探すのが楽でいいけどね。
みんな鳥臭好きじゃないから近寄らないから静かでいいけどね。
急に居なくなると心配なんだよ」
せめてちゃんと行き先と帰宅時間は行ってよねとどんなオカンだと思うもよくよく考えればそれが普通のオカンと言う生き物だ。
そんな物に縁がなかったからこの年でもそう言った対応がなんだかむずがゆく
「ほら、ウコ達にうんち付けられる前に脱出するよ」
差し出される事のなかった手を眩しく見つめる。
オカンにはない親切な理由を与えてくれる宮下の優しさを、この年になって子供時代体験できなかった事を一つ一つ俺に与えてくれて本当にありがたく思う。
ったくずるいよな。
何て恥ずかしいとじゃないけど口に出して言えない。
だけどいつ何があるか判らない。今回の宮下のように。
だけど、だけどだ。まだ口にできる程勇気が無く情けない俺は片手で顔を覆いながらもう片方の手を伸ばして差し出された手を掴む。
「宮下もうんち踏まないように気を付けろよ」
「えー?それ今更気にする所?」
「さっきまだ生っぽいのがあったから」
「さすがに生はやだなぁ」
笑いながら手を引いて鳥小屋から出してくれた。
連行するように、また逃げ出さないように、そして一人じゃないと言うように繋がれた手の暖かさに繋がれた所をずっと眺めていれば
「あ、綾人、金星見つけた」
振り返った宮下が上を向けと言う様に指を差した先には新月に近いせいか瞬くばかりの星空が広がっていた。
これは覚えれたと言う宮下の胸を張る姿に俺も口の端を吊り上げて
「今なら西の方に水星が見れるぞ」
難易度を一気に上げる。辛うじて見えるかだけどわかるか?
「どれ?あ、アプリで合わせればいいかって……
アプリの星よりも星の数が多いんだけどwww」
前に教えた事を思い出して答えを探す様子にヒントを贈呈。
「有名な星だからすぐにわかるぞ」
「えー、あ、これかな?」
「ほら見つけれた」
正解と言えば満面の笑顔が返ってきた。
「そう言えば夏の恒例ペルセウス座流星群今年出来なかったからオリオン座流星群でやる?」
「正直寒いぞ。しかも満月の後だし空が明るいから上手く見れるかな」
あと天気はどうだと思うも
「じゃあおうし座南流星群にする?」
「こっちは星が少ない。それに寒い」
「寒いのはどうしようもないじゃん。焚き火をしながらさ」
「熊も出るからカメラ放置でやろう」
「その前に天気次第だよね」
「それー」
いつも天気が良いと言うわけじゃないと言うけどだ。
「折角なら両方準備しようか」
「どのみち飯田氏は日にち的に不参加。あ、呼べばせんせーが来るかも」
「せんせーも飯田さんにはり合って仕事が終わってから律儀に来てくれるから」
「まあ、たまには理科の先生として解説してもらおう」
二人して出来るだろうかと思うもそこは口にはしないでいれば
「おら、綾人!何所か行くなら先にちゃんと何所に行くか言いやがれ!
探しに行かせたら一緒に遊ぶ宮下って言う不安要素しかない奴に探させるしか今は人手がないんだから世話を焼かすな!」
これはこれでまた違った心配のされ方。
周囲も何だか微笑ましそうに俺達を見守っているけど圭斗は俺の首に腕をからめて
「ほら、帰宅組は皆さんお帰りだ。山川さんが代表で残ってくれる事になったから」
飯田さんもいるしそんなにも知らない奴を怖がるなとでも言いたいのだろうか。普通は知らない人がいきなり家に泊まるのは怖いに決まってると言いたかったが、ちゃんとおもり役を置いて行ってくれた。大丈夫だと言いたげな山川も居るし、何より狂犬飯田もいる。フランス旅行は少なくとも俺に信頼と言う事を教えてくれたようで、少しだけ心が軽くなった。
「すみません、ちょっと席を外してまして、帰宅組の方達は少しですが森下さんからバイト代貰ってからお帰り下さい。
あと明日の予定は?」
「八時現地ここに集合って事になってるが、圭斗に資材を取りに行かせるから本格的な作業は九時以降になる予定だよ」
浩太さんが手配してくれたらしく、明日朝一番で圭斗が蒼さんを連れて資材を取りに行くと言う。蒼さんも麓の町に染まればいいと願いながら
「それではまた明日よろしくお願いします!」
「っす!!!」
簡単な体育会系的な挨拶、悪くないなと言葉は短いけど思いを気合に入れたと言うように暗闇に響くやまびこに初見さんは驚きながらも帰宅組を一緒に見送ってくれた。
そして封印された隠し部屋と言うか辛うじて封印されてないんだけどなと言う大和さんのボヤキが零れる部屋を前に
「明日はこれだけ集まれないから今のうちに壁抜いちゃいましょう」
森下さんの英断。
「だったら棚の中の食器も隣の部屋に運べ!」
台所からものの数分で食器が片づけられた。マンパワー改めてすごい!そして俺の苦労っ!ちょっぴり涙が出たけど気にしない。
「綾人君、食器棚はどうする?」
「あー、その部屋の中で使い回しできますか?」
「全然問題ないぞ。食器棚の方もまだまだ使える」
床もしっかりと土間になってるから後で倒れないように止めてもらうと良いよとの井上さんの声。さすが古民家に詳しいと言うも
「その前にこの部屋の漆喰塗り直しだな」
「その前にゆがみを直さないといけないだろう」
そりゃそうだ。
笑いながら壁を壊して行く若い衆。
皆さん本当に楽しそうだ。
そりゃこれだけ手伝って小遣い貰うつもりなのだろうからしっかりと働いてもらう。漆喰の分だけという山川さんは口を出して手を出さないつもりだ。ありがたい事に半日分とは言え一人分の人件費が浮いて感謝だ。
「とりあえずまた材木を貰ってくから何人かついて来い」
長沢さんが材木を持って行くぞと言えばすぐにフットワーク軽く圭斗を始めとした何人かが追いかけて行った。ちなみに浩太さん達は壁を抜いた土の処理班。台所は土まるけだ。
初見さん達は皆さんのこのノリについていけないと言うか置いてきぼりにされたというか、でもこの家の作りに好奇心満載で見学をしていた。勿論ナビゲーターは鉄治さん。まるで自分が作ったかのような自慢だけど初見さん達もしっかりと内田さんのお爺さんの建物に魅了された人たち。物凄くテンション高くなってる様子に知識は将来の糧になるぞと俺は微笑ましい目を向けながら
「じゃあ、明日来れそうなやつは?」
圭斗と蒼さん含めて七人程の手が上がった。
「お前ら自分の住処は良いのかよ」
と思うも
「自分の家はこれから好きな時に好きなだけ手直しできるけど、内田の建物の手を入れる機会はそうそうないから触れる時に触っていたいです」
蒼さんのキラキラとした瞳に圭斗も然りと頷く。
ああ、もう……
俺も自分の仕事だと言う様に離れに急ぎ足で向かい
「飯田さん、明日の職人さんは七名だそうです!」
「その中に宮下君と綾人さんの数は?」
「宮下込みで俺は入ってないです」
そんな分かりずらい依頼に
「でしたら八人分ですね。皆さんきっと食べそうなので十人前ぐらいは作っちゃいましょう。お昼は温めるだけにしておきますね」
にっこりと笑う飯田に綾人もよろしくお願いしますと頭を下げれば
「綾人ー、悪いんだけどさあ」
鉄治さんと圭斗が申し訳なさそうな顔でやって来たと思ったら
「悪いんだけど明日からの仕事の奴泊めさせてもらっても構わないか?」
「んあ?別にいいけど……」
飯田さんをちらりと見れば嬉しそうな顔でご飯は任せてくださいと言う。
飯田さんの可愛い台所の見せ所だろう。
うきうきとする顔でなら今晩のご飯も追加しないと、明日の朝ごはんは帰る前に用意しますねと歌う様に料理を始める様子はもう放っておいた方が良いだろうとそっと離れから逃げ出すのだった。
俺の居場所がねぇと言う様に烏骨鶏小屋に逃げ出してしまうも
「綾人、こんな所に隠れてないで。
寒いなら囲炉裏にでもあたっていればいいのに」
宮下がやって来た。
烏骨鶏を抱いて鳥臭を嗅ぐ様に羽毛100%の体に顔を押し付ける俺を困ったように眉尻を下げながら烏骨鶏を取り上げて小屋の中にリリース。
「あー……」
途端に寂しくなった腕の中に宮下を恨んでしまうも
「ったく、人間嫌いなのは判ってるけどさ。
吉野の大将がこんな所で怖がって逃げてるなんて様にならないだろう。
ほら、囲炉裏で熱燗よういしてあげるから行くよ」
代わりに宮下の手が俺の手を引っ張って引き上げてくれる。
「毎度毎度烏骨鶏ハウスに逃げ込んでくれるから探すのが楽でいいけどね。
みんな鳥臭好きじゃないから近寄らないから静かでいいけどね。
急に居なくなると心配なんだよ」
せめてちゃんと行き先と帰宅時間は行ってよねとどんなオカンだと思うもよくよく考えればそれが普通のオカンと言う生き物だ。
そんな物に縁がなかったからこの年でもそう言った対応がなんだかむずがゆく
「ほら、ウコ達にうんち付けられる前に脱出するよ」
差し出される事のなかった手を眩しく見つめる。
オカンにはない親切な理由を与えてくれる宮下の優しさを、この年になって子供時代体験できなかった事を一つ一つ俺に与えてくれて本当にありがたく思う。
ったくずるいよな。
何て恥ずかしいとじゃないけど口に出して言えない。
だけどいつ何があるか判らない。今回の宮下のように。
だけど、だけどだ。まだ口にできる程勇気が無く情けない俺は片手で顔を覆いながらもう片方の手を伸ばして差し出された手を掴む。
「宮下もうんち踏まないように気を付けろよ」
「えー?それ今更気にする所?」
「さっきまだ生っぽいのがあったから」
「さすがに生はやだなぁ」
笑いながら手を引いて鳥小屋から出してくれた。
連行するように、また逃げ出さないように、そして一人じゃないと言うように繋がれた手の暖かさに繋がれた所をずっと眺めていれば
「あ、綾人、金星見つけた」
振り返った宮下が上を向けと言う様に指を差した先には新月に近いせいか瞬くばかりの星空が広がっていた。
これは覚えれたと言う宮下の胸を張る姿に俺も口の端を吊り上げて
「今なら西の方に水星が見れるぞ」
難易度を一気に上げる。辛うじて見えるかだけどわかるか?
「どれ?あ、アプリで合わせればいいかって……
アプリの星よりも星の数が多いんだけどwww」
前に教えた事を思い出して答えを探す様子にヒントを贈呈。
「有名な星だからすぐにわかるぞ」
「えー、あ、これかな?」
「ほら見つけれた」
正解と言えば満面の笑顔が返ってきた。
「そう言えば夏の恒例ペルセウス座流星群今年出来なかったからオリオン座流星群でやる?」
「正直寒いぞ。しかも満月の後だし空が明るいから上手く見れるかな」
あと天気はどうだと思うも
「じゃあおうし座南流星群にする?」
「こっちは星が少ない。それに寒い」
「寒いのはどうしようもないじゃん。焚き火をしながらさ」
「熊も出るからカメラ放置でやろう」
「その前に天気次第だよね」
「それー」
いつも天気が良いと言うわけじゃないと言うけどだ。
「折角なら両方準備しようか」
「どのみち飯田氏は日にち的に不参加。あ、呼べばせんせーが来るかも」
「せんせーも飯田さんにはり合って仕事が終わってから律儀に来てくれるから」
「まあ、たまには理科の先生として解説してもらおう」
二人して出来るだろうかと思うもそこは口にはしないでいれば
「おら、綾人!何所か行くなら先にちゃんと何所に行くか言いやがれ!
探しに行かせたら一緒に遊ぶ宮下って言う不安要素しかない奴に探させるしか今は人手がないんだから世話を焼かすな!」
これはこれでまた違った心配のされ方。
周囲も何だか微笑ましそうに俺達を見守っているけど圭斗は俺の首に腕をからめて
「ほら、帰宅組は皆さんお帰りだ。山川さんが代表で残ってくれる事になったから」
飯田さんもいるしそんなにも知らない奴を怖がるなとでも言いたいのだろうか。普通は知らない人がいきなり家に泊まるのは怖いに決まってると言いたかったが、ちゃんとおもり役を置いて行ってくれた。大丈夫だと言いたげな山川も居るし、何より狂犬飯田もいる。フランス旅行は少なくとも俺に信頼と言う事を教えてくれたようで、少しだけ心が軽くなった。
「すみません、ちょっと席を外してまして、帰宅組の方達は少しですが森下さんからバイト代貰ってからお帰り下さい。
あと明日の予定は?」
「八時現地ここに集合って事になってるが、圭斗に資材を取りに行かせるから本格的な作業は九時以降になる予定だよ」
浩太さんが手配してくれたらしく、明日朝一番で圭斗が蒼さんを連れて資材を取りに行くと言う。蒼さんも麓の町に染まればいいと願いながら
「それではまた明日よろしくお願いします!」
「っす!!!」
簡単な体育会系的な挨拶、悪くないなと言葉は短いけど思いを気合に入れたと言うように暗闇に響くやまびこに初見さんは驚きながらも帰宅組を一緒に見送ってくれた。
応援ありがとうございます!
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