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身体が動く季節なので皆さん働こうではないか 2

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「で、これが倉庫だ」
 昨日の夕方に荷物が揃ったからと圭斗から電話が入って朝から一緒に組み立てをしてやっとできた所。しっかり昼時となり、俺はキャンプセットで温かうどんと〆の雑炊用ではないがおにぎりもいくつか使って昼食として圭斗と食べていた。直ぐに食べ終わったけど腹は満腹なので問題ない。究極の炭水化物ランチはすぐにエネルギーに変換されて体力回復につながる様に食べ終わったらすぐに作業に戻る俺と圭斗は仕上がった倉庫の中に入って
「大は小を兼ねる作戦だが結構でかいな」
「まあ、休憩セットまで十分収納できるぞ」
「そこは竹でイスとテーブルを作るとか?」
「椅子はともかく机は平らな物が良い」
「だったら何か適当に買うか」
 やすくてコンパクトなキャンプ用テーブル何て今時下手に家の廃材で作るより安く上がる。むしろ宮下の元バイト先のキャンプコーナーで格安の処分品位で十分じゃね?なんて圭斗に言えば
「よし」
 何て気合を入れればスマホを取り出して
「陸斗、園田そこに居るだろう?」
『圭ちゃん?今日は綾人さんとお仕事だったんじゃないの?」
「まあその一環で、とりあえず居たら変ってくれ」
『うん、先輩替わってって』
 ……
『ちーっす、園田です』
『元理科部揃ってまーす!』
 昼時だけあって全員がいるとは仲が良い事だと感心するも煩さが勝って早く用件を聞きやがれと綾人が腕を組めば綾人が一番時間の有用さを重きに置くだけに圭斗も暢気に返事をしてる場合じゃないと少し焦る声で
「悪いけどさ、学校帰りスーパーの表で売ってたキャンプ用のテーブル買って来てもらえるか?」
『良いっすよ。何かまたやるんですか?』
「俺じゃなく綾人がな。悪いが立て替えてもらえるか?請求は綾人がしっかり払ってくれるからレシートはしっかりと貰って来い」
『りょーかい。買ったらそのまま家に持ってきます』
「悪いな。じゃあまたあとで」
 プッ、と切れたスマホ。
 綾人はそれをぼんやりと眺めながら
「人使い荒いな?」
「ああ?毎日学校帰りに家に寄りつく奴らを有効活用して何が悪い」
 開き直った圭斗かっこいいと茶化しながらも谷間を覗く。
 緑の川が流れる様に切られた竹が転がされていた。
「これだけあると壮観だな」
「猪の隠れ場所になる前に処分したい」
「燃やせばいいのに?」 
「最近の下界は雨が降ってないからしないよ」
 火事の発生原因となる為にこの季節に着火剤だらけのこの場所でやるバカにはなりたくない。
「それにこのウッドチッパーを試したいしね!」
「山の上にもあったんじゃないのか?」
「古いのが。それにこれと違って細い奴しかチップに出来ないからね」
「チップ何て作って何の役に立つ」
 薪の代わりに使うんじゃないんだろ?なんて聞く圭斗に
「冬場のハウスの中で藁代わりに使うんだよ。家では竹じゃないけど春になって畑を耕す時にすきこめば肥料にもなるありがたいブツなんだ」
 因みに機械だけ借りに来る猟友会の人もいる。
「烏骨鶏の床材にもなるし、掘ったりうずもれたりしていいおもちゃになるんだ」
 掃除する時は大変だけどと言う不満は口に出さない。誰か真似してあの服の中にまで潜り込んでチクチクする苦しみを共有してほしいなんて事は察せないように楽しそうに言えば逆に圭斗にはうさん臭そうな視線を向けられてしまった。
「まぁ、烏骨鶏の土産が出来る様にさっさとく刈ってみよう。それで使い方は?」
 よいしょ、よいしょと谷間の一番したにきて、人為的に抉り取られた一角に向けてウッドチッパーを設置する。と言うか置いただけ。
 既に燃料は入れてあるからスイッチを押して……
 賑やかなモーター音が響けばしばらく放置されて少しだけ軽くなった竹を根元から入口にぶっ刺す。途端に負担がかかってモーター音と言うか、中の刃がめきめきと竹を砕く音を響かせるのを俺は綾人にゴーグルを装備させられた姿で気持ちいい位のスピードで飲み込んでいく様子を眺めていた。 
 どんどん飲みこんでチップを放出する。
 その気持ちいい様子に楽しそうだと驚きながらもすげーとはしゃいでいれば
「圭斗もどんどん入れて行って。一本ずつしか処理能力ないけど。
 シュレッダーと同じでもし巻き込まれたら人の力じゃ何ともできないからすぐにこのボタンを押せば止まるから。作業中は冷静でいてくれよ」
「おう、危険に対しては注意に注意を重ねる所だから大丈夫」
 それは職業的にもどれだけ危険なのかは知っているので
「とりあえず陸斗達がいる時は触らないようにする」
「大人達のみの時なら使ってもらっても構わないけど、燃料は持参する様にって言っておかないとね」
 言いながら鍵のスペアを俺に渡してくれた。
「まぁ、雪に埋もれるまで一日なんほんか切り倒してチップにしてもらえればいいから」
「何気に人使い荒いな」
「竹を切るぐらいなら園田は可哀想だから川上達でも出来るだろ」
 さりげなく園田と山田を除いたような言い方だがそれはそれで納得はできる。一応大学の一般受験をしようとする二人に下手な手伝いはさせられない。勉強に集中する環境を整えているだけだが
「そういや葉山と下田の進路って何か聞いてるか?」
「あー、今はまだ何も言ってないな。ただだな……」
「ただ?」
 何だと不安になっていれば
「陸斗と一緒の学校に行きたいとかほざいてた」
「ああ、あの二人じゃ無理だ」
 ばっさりと切り捨てた綾人は勉強を見てるだけだと思ったけどちゃんと二人のレベルを知ってたんだと感心するも
「無理なのか?」
「陸斗が妥協すれば一緒に行けるけど、陸斗にはもう妥協する事を覚えてほしくないから。悪いけどあの二人はおなじみちなら別の学校を案内する」
 圭斗は目を瞠り、そっと視線をそらせて
「悪い、俺が陸斗に夢を諦めろって言う所だった……」
 夢もなくただひたすら妹弟の面倒を見てきた圭斗に酷な事かと思う綾人だったが
「だけど香奈も陸斗もちゃんと圭斗を支えたいって思いで頑張っている。
 良いお父さんだよなお前。
 俺もお前の息子になりたい」
 茶化すように、でもどこか父親を今も心のどこかで求める綾人の言葉に圭斗は綾人の頬を摘まみ上げ
「お前のような独立心いっぱいの奴が何息子になりたいって言うんだ。
 寧ろ俺がお前の息子になってやる。ほら、しっかり息子を養え」
「えー?」
 なんて言うどうでもいい言葉の投げ合い。
 俺達は笑いながら
「とりあえず陸斗が帰って来る時間までチップにするぞー!」
 圭斗の気合に綾人も竹を圭斗に渡しながら
「チップは任せる。俺は竹を切ってくる!」
「おう行って来い!」
 そうやって圭斗は綾人を送り出すもそれは数分で綾人の謎の気合の意味を理解した。
 そう、竹をチッパーの中に入れるだけの作業。
 飽きるのだ。
 たとえ竹の合間から虫や蛇が飛び出してくるハプニングに見舞われてもだ。
 ああ、きっとそれを知ってるから俺に任せたのかとイラッとしながらも圭斗は懸命に飽きと戦いながら竹を運ぶのだった。


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