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手を伸ばしても掴みとれないのなら足を運んで奪いに行けば良い 7

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 これなら俺でもやれそうだからと興味本位で手伝いに来たと思われてたらしいが、やってみたらこの場で誰よりも見事に割って見せて注目を浴びた所で散々バカにしてくれた仕返しだと次々に薪を割って、その勢いで技と薪を飛ばすジイちゃんが口伝で教えてくれた何の役に立つのかと思ってたおふざけ技術が火を噴く事になったのだ。
 案外口頭で教えられた事も出来るもんだなと気持ちよく割った薪を飛ばしていたが、それでも山の上に移り住んで時間があれば薪を割り続けた継続から身に付いた技術だろうと思う事にして、この華麗なる技がお披露目できるとはジイちゃんが笑ってくれるかなと後は手斧でどうにでもなるサイズの薪なのでそちらはお任せして俺は先にシャワーを浴びさせてもらう事にした。
 ざっとシャワーを浴びてキッチンへと向かえば
「ああ、綾人さん。探してました」
 何だか困惑を受けているような飯田さんにどうしたのと時間的に白いシャツと夏用のスラックスを履いていた。さすがにジーンズじゃ申し訳ないと言う様にノーネクタイだけど襟元に金の小さなブローチを付けていれば
「実桜さんがおっしゃってたお客様がお見えになりました。
 今リヴェットが対応してますので挨拶をお願いします」
 何だか飯田さんがこの場に当の人物がいないにもかかわらず、丁寧な言葉を使う相手にロータリーが見える窓からひょいと見れば、俺はすぐに引っ込んだ。
「なんでこの国の大物政治家が居るんだよ。しかもお隣の国の政治家まで居るってなんで?!」
「俺も聞きたいぐらいです。今実桜さんを呼びましたので……」
「おじ様!よくいらっしゃいました!」
 ここまで届く再会の喜びの悲鳴に実桜さんあの人をおじ様って呼べるなんてすげーと心の中で拍手するのだった。
「ミオ!美味しいランチが食べれると聞いて早速甘えさせてもらったよ!
 それにしてももうパーティの参加資格の庭仕事は始まってたのかい?」
「みんなオリオールのご飯が待ちきれなくって、おなかすかせて美味しく食べる為に早く来ちゃったみたいです!」
「ああ、それじゃあ城主に挨拶したら我々も手伝わなくてはな。
 何をすればいい?」
「ちゃんとお手伝いしてもらう場所決めてあります。
 何かベリーが生ってる樹があるのでそちら収穫をお願いします!」
「それは楽しそうだ!」
「オリオールがそれでお菓子を作ってくれるって言うのでいっぱい集めましょう!
 あ、あと小路も作ったので散策して感想を教えていただけるとありがたいです」
「ならそちらは子供達に任せよう」
「はい、この城は柵で囲まれてますが外に出ないようにご注意ください」
 謎に防衛機能は高いのでそこは安心できると自負している。
 結局三十人近く増えた試食係の人達は見事年齢層がばらばらだった。
 十歳前後の子供達からその兄弟と親、そしてさらに親世代と多岐にわたる。
 男性ばかりではなく女性も半数近くいて、更に何でこんな所に来たのかつ作りかけの庭を目の前に困惑する人達もいるくらい先入観のなさは理想的なメンバーだと思った。

「綾人さん、そろそろ出番ですよ」
「だね。実桜さんの凄さに驚いたけど、逆に冷静になれた。
 行ってきます」
 
 パーティの開催まであと三十分ほど。
 キッチンは始まってからもまだまだ仕上がる料理に戦場なのは変わらない。
 飯田さんも新しい店のシェフの制服に身を包んでいるのでここから先には出て来れないから、名ばかりだろうがこの城の主としてお客様をお迎えに上がるのだった。

「いらっしゃいませ。今日は大試食会にようこそおいでくださいました」
「ああ、君がアヤトか!ミオから話を聞いてるよ!
 若いのにこの城を買い取って再生していると聞いている。
 フランスの国民として歴史ある城の維持に尽力を尽くしてくれた事を感謝する」
 差し出された手に俺も手を重ねて
「ありがとうございます。ですが今日はこの新しいレストランのシェフの料理の試食がメインとなりますのでごゆるりとお楽しみください」
「ああ、オリオールの料理だと聞いて楽しみで仕方がなかった。
 午後からの会談もここでランチを食べてから挑む事に変更してね。階段の相手にも我が儘を言って急きょ変更させていただいた」
 紹介される女性の多さにひょっとしてクラブハウス改めオリオールズキッチンでは狭さを心配してしまえば
「なら城の方のホールを急きょ設置しましょう。
 ありがたい事に昨日には補修は済んでいるので、テーブルも椅子も並べてはあるからそちらに料理を運びましょう」
 言いながら姿を現したのは新しい料理長の制服を纏うオリオールだった。
 胸にシルバーの刺繍でオリオールズキッチンとさらりと書いてあるごく普通の料理人が着る服だが、長年着続けた色はとてもよく似合うと言うよりしっくりときている。
「おお!オリオールだ!
 また君の料理を食べれる日が来るとは、子供の頃から祖父に連れられて来た特別な店だったのに閉めたと聞いた時は妻と一緒に絶望をしたよ」
「また大げさな」
 笑いながら感涙する男性にオリオールは肩を叩けばそのままハグと言うそんな近い距離に俺ははらはらとしながら見守るしか出来ないチキンだった。ああ、山の烏骨鶏達は元気だろうか。今無性に抱きしめたい俺の嫁たちの様子を知りたい、ここにきてホームシックに陥るのだった。
 だけどこの忙しさにホームシックになる暇なんてない。
「じゃあ、俺は設置の手伝いに行きますのでまたあとに……」
「でしたら私達も手伝わせていただきましょう。
 何でも参加条件はチップではなく労働と聞いたので。
 ベリーを摘むのも楽しそうですが、あちらのお城の方も見学を兼ねて手伝わせていただければと思います」
「あー、Wi-Hiが複数飛んでます。二階はプライベートルームなのでご遠慮して頂ければ一階の使用人の部屋を覗けばご自由にどうぞ。
 お勧めは三階から上がれる屋根裏部屋になります。パリの景色が見れるので埃っぽくても大丈夫ならどうぞ」
 このレベルの人達になると情報漏えいとか安全面でとかいろいろな問題があるだろうかと思って先に注意をさせてもらえば黒いスーツを着た人たちが数人先に城へと入っていく様子にセキュリティの人達なら当然かと思う事にして置いた。

「では、十一時に開催の挨拶は城の方でさせてもらいます。
 もしよろしければあちらのレストランの方も見学をして行ってください」

 軽く手を広げてごゆっくりどうぞと本当に簡単な挨拶しか出来なかった俺は早々にこの場を逃げ出すように手伝いと言う名目でオリオールと共に城へと逃げ込むのだった。
 

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