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心は広く持ちたいと言う事を願っております 3

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 そんな中飯田さんが一日のスケジュールを説明する。
 八時から五時の工事時間と十二時から一時の昼休憩は城のテラスでお昼を用意すると言う。勿論弁当の持ち込みも問題なし、飲み物も用意してますとこれからの店をオープンに当り試食を兼ねての綾人からの差し入れなので気兼ねなく受け取ってくださいと案内。ただし食材の破棄はしたくないので希望の方は前日に申請してください。後は今回のリフォームを請け負ってくれたバーナードさんの息子さんクレイグ・バーナードさんにお任せしますと紹介をすればクレイグさんは飯田さんの隣に立って
「各自担当に分かれて作業開始だ!ゲストの皆さんもぜひこの機会にフランス建築の技術を学び取ってもらいたい!そして先日見た動画からも我々も学ぶ事があると思うはずだ!
 怪我がないように始めよう!」
 そんな挨拶を日本語に訳す飯田さんってすごいなと宮下が尊敬のまなざしを向ければ
「クレイグさんの話し英語だったよ?」
 綾人の鬼のようなつめこみ勉強法に必死になってついていってここまでは見事物にした陸斗はフランス語は判らなくても英語は完ぺきとは言わなくても何を言ってるのか大体わかるようで圭斗は関心、それ以上に感動してしまった。
「俺、綾人の世話を陸に全部かましてて色々心配だったけど、こんなに立派な子に育ててもらって」
 思わず感動で男泣き。涙は出てないけど涙を拭く真似をすればポンと肩に手を置く宮下。
「陸斗はお世話するのが上手だからね。綾人は先生より手間はかからないし、烏骨鶏より従順だから簡単だしね」
「お前そんなこと思ってたのか……」 
 しょーちゃん恐ろしいと心の中で口から溢れた本音にビビっていれば
「宮下君」
 飯田さんが背後から宮下の両肩に手を置いて
「宮下君は少し休みましょう。
 飛行機ではあまり寝れなかったのではないですか?くまが酷い。
 キッチンで良く寝れるように温かいホットミルクはいかがです?ハチミツをたっぷりと入れて」
 言いながらそのまま背中を押して城の中へと案内する。なんとなく陸斗が付いて行けばオリヴィエも付いて行き……
 しばらくして戻ってきたオリヴィエを連れてきた飯田さんはにっこりと俺に報告。
「どうやら相当眠たかったようでご機嫌が悪かったようです。今はキッチンに近い部屋のベットでお休みになられてます。オリオールにお願いして来たので大丈夫ですよ」
 珍しく機嫌が悪いと思えばそう言う事かと知らない土地なので心配しつつもほっとすれば
「圭斗君も無茶はしないように。それこそ怪我の原因にもなる」
 飯田さんの心配だろう。だけど俺は問題ないと言う様に
「俺は飛行機の中ほとんど寝てきたからな」
「なるほど。ウキウキワクワク遠足が楽しみで仕方がないお二方が楽しみ過ぎて寝れなかったと言うわけですか。熱が出なくてよかったですね?」
 何か含む物言いに
「俺だって、楽しみにしてきた。初めての海外だし、綾人が誘ってくれなきゃまず旅行なんて国内でも考えないから。
 だけど、俺は正しく綾人の目的に付き合うつもりで来てるから休める時には休む。綾人の口癖を実行したまでだ」
 そんな主張に飯田さんはにっこりとほほ笑み
「でしたら皆さんの所に合流しましょう」
「宮下と陸斗をお願いします」
 スマホを片手にかけて行き、内田さんの隣でクレイグの説明を聞く姿は立派に駆け出し職人の枠を出ていると、知り合って一年近くたつ圭斗の成長ぶりに目を細めるのだった。
 

 案内されたのは綺麗に切りそろえられた大平原の片隅に立つクラブハウスだった。
 一部屋根裏があり、そこは荷物置き場と使われていたと言う。おおまかにいうと2LDK+ロフトそんな間取りだろうか。さすが城の持ち主の持ち物だけあって作りと大きさは立派だった。
 今回はここを改造すると言う。
 かつて着替える為のロッカールーム。なんとなく今も匂ってる気がするがそこはあえて無視をする。
 スマホの翻訳機能が言うにはこのロッカールームをキッチンに改造すると言う。綾人の家の離れのキッチンよりも広いので一度作ったから感覚が判る。
 そして広げられたキッチンの図案。
「なんかデジャブー」
 周囲の人が分らないからと声に出してしまえば隣に居た内田さんが失笑を零していた。
「なんかさすが師弟って感じだね」
 言いながら資料からキッチンメーカーを見れば同じメーカーだった事に更に笑いが止まらなくなる。
 と言うかだ。
「飯田さんガチで店を開くつもりだったんじゃないか」
「だから俺もそう思って何度も聞き直したんだけど違うの一点ばりでさ。
 だから予算加算だけど消防法をクリアできるくらいに壁とかを森下がしっかりと変更してね。
 綾人君にも変更は伝えたんだが、飯田君の希望ならそれに最適にでお願いしますって、さすが吉野だって親父も言うし。だからその辺は圭斗君にかかってるから頼むよ」
 頼むって言われても
「どう考えてもあいつに手綱を付けるのって無理じゃありません?」
 素で問いただすも内田さんは違うと首を振って
「そんな事じゃない。圭斗君には次に綾人君が何をやっても冷静に対ソで切る様に経験を積んでもらいたい、そう言う事だよ」
 つまり、綾人の暴走は止められないからそれをうまく活用しろと言う事だろうか。
「親父が言うには吉野の代々当主はそんな男前な人間ばかりらしくってどんどん好き勝手な事をする。悔しい事に何一つ悪い事じゃないから止めようがなくって大変だって、でもそれは俺達にもちゃんと返って来る実のある出来事に繋がるから多少腹が立っても付き合う方が旨みがあるって親父の爺さんもそうやって笑って言ってたらしい。
 だからだ。
 圭斗君には綾人君を自重させるよりもうまく付き合ってくれって言う話しさ」
 それは宮下の方が上手く綾人を使っているのを彷彿として……
「綾人から受けた恩は半端じゃないから。とっくに覚悟なんて決めてるよ」
 出なきゃこんなフランスまで素直に来るわけがない。ぼそりと言えばどうやらちゃんと聞こえたようで苦笑する内田さんが何やらスマホを操作してクレイグさんに声をかける。設置の経験がある事を伝えれたようで、ホッとするようなクレイグさんはどうやら俺達が素人の集団ではない事を理解してくれたらしい。
 機械を通しての片言の会話はまずは色々な物を今日中に撤去すると言う過密なスケジュールに俺達は豪快に剥がされていく土壁を一緒に壊すのを手伝うのだった。








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