人生負け組のスローライフ

雪那 由多

文字の大きさ
363 / 976

雲の中でかくれんぼ 1

しおりを挟む
 やっと雪の降らない春が来たのは五月中旬過ぎでまだまだストーブが恋しいと思うのは断熱材何て素敵な発想がなかった時代の建築物だから。だから代わりに竹を格子状に組んだものに土と藁を混ぜた物を塗り、その上に砂を混ぜた土を塗って更に漆喰などで化粧するように仕上げると言う物理的な壁が寒さを断ち切るすべだった時代、ただの板の壁よりは温かい事は理解が出来た。
 今の時代の断熱材って本当にありがたいなと後付けで作られた俺の部屋がオイルヒーターだけで十分温かいのは嬉しい位に便利だ。ただエアコンほどの電力を使うのですぐにブレーカーが飛ぶのが欠点だったが、先生のおかげで第二種電気工事士の免許を取れたので分電盤を弄って電気の配分を見直して問題はクリアーしている。
 俺の部屋だけでブレーカーのスイッチ二つってどうよwww
 な作りだけど暖房付けてパソコン六台稼働、更に電気ポッドやタブレットなどの電源もじゃかじゃか使うからそうなるのは仕方がない。灯油買うより電気代の方が安く済むのだから上手く付き合うのは当然だ。
 そんな暖房もそろそろ要らないかなとパソコンの放射熱で温まる部屋から脱出してそろそろやってくるだろうお客様を迎える為に部屋を乾燥させるために焚いていた薪を五右衛門風呂の竈へと移し替えるのだった。
 だけど家の外に出てふとおもう。
 温度計を見ればまだまだ寒い気温。
 俺にとっては慣れた気温とは言え遠くに見えるまだ雪をすっぽりとかぶる山々を眺めて竈に置いてきた薪を回収して再度離れの竈へ入れて薪も投入。
 飯田さんの料理用竈オーブンなのに居ない間はすっかりストーブと化する。
 イイじゃん。
 せっかく作ったんだし活用して何が悪い。しっかり乾かした薪を使って煤もあまりつかないように注意してるしと言い訳しながら今時の断熱効果の高い家の暖かさにホッとしつつ、ストーブの暖かさに眠気までf誘われてしまう。
 ちなみに本日の工事はお休み。お食事会はご破算となってしまった。
 昨日から夜更けまで降り続いた雨に工事現場当たりの地面はぬかるんで危険の為に飛び地の草刈りに励むと言ってくれた。
 山の事ならきっと俺より詳しいだろう与市さんに俺は余計な事は言わない。たかだかここに住み込んで七年。山の歩き方を覚えた程度では山の怖さを総ては理解しきれてない。知識では知っているとは言え天候一つとっても体験以上の経験はないと言ったのはジイちゃんで。
 猟友会の人も今日はやめておいた方が良いと一致した意見には従うしかない。
 とは言え途端に静かになった家でいきなりチョリチョリさんから電話がかかって来た。
「綾人君、悪いけど暫く君の家に厄介になってもいいかな?」
 酷く慎重な声に何があったのかと思い
「全然問題ないですけど、いろいろ不便な所なので良ければ……」
 ふと思い出したのは年末いきなり連れてこられた蓮司の時のような緊張感。
「むしろそれぐらいがちょうどいいよ。
 悪いけど俺と知り合いの子を一人連れてきたいんだけどいいかな?」
「じゃあ、離れの方に住めるように準備しておくけど、いつごろ来る予定?」
「今空港で、車をレンタルしたらこのまま直で向うから」
「ええ……遠いですよ」
「うん。関東じゃなくて中部から乗り込むからまだ近いかな?」
 カーナビ任せになるけどと不安な事を言うチョリチョリさんに
「電車で来て下さい。名古屋で乗り換えてください。
 詳しくは今メールの方に送ったから。乗り換えたら連絡ください。駅まで迎えに行きます」
「いや、そこまではさすがに悪いから……」
「じゃあ、友人が麓に住んでいるので迎えに行かせます。
 疲れている所で山道の運転舐めないでください」
 少し強く言えばチョリチョリさんは苦笑して
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
 言う声の向こう側では駅のアナウンスが響いていて、無駄がないなとさすが世界をまたにかける人だと関心をするのだった。
 それから二時間前ほど。
 電車に無事乗ったと連絡が入り、俺も時刻表から到着時間を思い出して先に圭斗に連絡しておいたから改めて時間を約束して……
 耳慣れた圭斗の車の音が聞こえてきた。




しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

処理中です...