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歴史と共になんてただの腐れ縁だろうがそれでも切っても切り離されない縁は確かにある 7

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 二日目は早々に帰る人ともう一日がんばるぞと言うグループに分かれていた。
 帰る人達には圭斗の家でありがとうございましたと森下さんと共に日当とガソリン代を包んで渡して回り、近くの温泉で汗を流した後圭斗の家で楽しんだ後早々に後にするのだった。デートとか次の仕事とか彼女さんの家にご挨拶とか、皆さんバラバラだけどそれなりに用事はちゃんとあって頑張ってくださいと応援するしかない充実した予定に俺達が驚くのは当然だろう。 
 家で宿泊組の皆さんは離れに女性と子供達、そして母屋には男共が集まって囲炉裏を囲み先生も混ざって飲み会が繰り広げられた。ご飯は奥様方が用意してくれたので子供向けメニューに高校生達も大いに沸いた。
 カラアゲがあれば野菜なくても問題ないじゃん。
 カラアゲは正義だ。
 カラアゲとマヨネーズのコンビ最高ですね!
 それはどうか判らないが高校生にはカラアゲがあれば十分だ。山のようなカラアゲが飲み物の如く消えて行くのを奥様達は二度見していたが、こいつらの場合食べにくいように骨付きにするのが正解だと言うべきか悩むも俺も食べやすいし美味しいから今回は黙っておく事にした。
 今回も毎度同様夜食を作ってこの様子じゃ階段を上るのは無理だと判断した植田と水野はいつもの通り二階へと荷物を運びこみ、そして夜食も運び込む。
 今回は台所の二階ではなく仏壇側の二階を使う。一応台所側は既に酔いつぶれた森川さんが転がされているので動かさないようにそっとして置く。今日はいろいろあったから企画した森川さんの心労はそれなりに在ったのだろうと休ませてやってくれと珍しくやって来た浩太さんは鉄治さんにもっと皆さんと飲めと言われてきたと言う。まぁ、昼間の出来事に夫婦で話し合いをしたいと言うのは理解できる。長沢さんのご夫婦も一緒に居てくれると言うので心配はないだろうと信じて置く事にする。
 高校生達は漫画部屋に居座って大人しくなったのを機にそのまま放っておく事にして、おっさん達ももう大人だから放っておく。さすがに俺も面倒見切れないし、する気もない。
 離れからも子供の楽しげな悲鳴がこちらまで聞こえてくる。
 楽しい思い出が出来たようで何よりと、俺も囲炉裏の周りでいつの間にか眠りについていて、誰かがベットに放り込んでくれたのだろう。
 見慣れた天井、見慣れた壁に何でここに居るんだかと思いながらも明るくなりだした空に慌てて目を覚ませて着の身着のまま寝てしまった格好で部屋から出れば、そこには見るも無残なおっさん達の屍累々。さすがの先生も珍しい事に酔い潰されたようで普段の眠りの浅さが嘘のようにピクリともせずに眠る横をそうっと通り過ぎて玄関を開けて庭へと出る。
 あとはいつもの通り、水門を開けて烏骨鶏ハウスの扉を開ける。雄鶏が居ないので朝のご挨拶はない物の飛び出した烏骨鶏は早速と言う様に水辺に茂るクレソンをついばみだしていた。 
 さすがにまだ雨戸をあけるのは可哀想だと思いながら鍬を持って烏骨鶏達の砂場を掘り起こせばすぐに烏骨鶏達は集まってきて、何があるのか地面をついばみ始める頃陸斗が目を覚まして手伝いに来てくれた。
「おはようございます」
「おはよう。まだ寝ててよかったのに」
 昨日は遅くまで騒いでただろうと言うも
「いつもの通り目が覚めました」
 俺と同じで習慣はどこに行っても変わらないようで早速手伝いを名乗り出てくれるのだった。
 いつもの通り烏骨鶏ハウスの掃除に出掛けて汚れた敷き草を馬小屋までネコで運ぶ。小屋に残る烏骨鶏にも餌を配り、烏骨鶏の卵を回収してマジックで日付を書いてくれた。ほの暖かさの残る卵を洗剤で綺麗に洗ってかごに置いて乾燥させる。大腸菌とかサルモネラ菌怖いからね。慣れていたバアちゃんはそのまま水洗いして卵に付いたウンチを洗った程度だったけど、俺にはいつも丁寧に洗ってくれていたのでそれは今も継続しているし飯田さんを始め慣れていなさそうな人には徹底させていた。これが正しいかはよくわからないけどバアちゃんがしていた事なので間違いなしだし先生も腹を痛くした覚えもないので間違いない。
 せっせと烏骨鶏の世話をしている陸斗を見守りながら
「昨日は悪かったな」
 言えば追加の敷き草を小屋の中に広げていた陸斗の手が止まって困ったように振り向いていた。
「俺も綾人さんに助けられたので……」
 困ってる人を見捨てれないのだろうと言いたそうな口調だったが俺は首を横に振り
「あんな事をした相手にそっくりな奴をいきなり連れて来て、連絡の一本でも先に入れていたらもうちょっと落ち着いていられただろう?」
 違うと言いたそうだったけど、素直に出なかった言葉が陸斗の心の総てを語っていた。何も言えずに俯く陸斗にそんな顔をさせたいわけじゃないんだとかぶりを振って
「だけどあいつ、あのままだと兄貴みたいに嘘ついて生きて行きそうだったから。
 兄貴の方はどうしようもなかったけど、幸治の方は鉄治さんや良恵さんに嘘ついてまで良い子になろうとしてたから。そんなの絶対苦しいのを俺は知ってるから。
 陸斗が圭斗の力になりたいって思う様に、嘘から出た真じゃないけど幸治にはその優しさを本物にさせたかったんだ」
 言い訳をせず、一人でも冷たい視線に立ち向かおうとするにはまだ幼い心はすぐにくじけそうで……
「お世話になってる内田さんにお返しができるとするなら、ささやかだけど手を差し出せる事があれば見落とす前に差し出したい。
 俺のおせっかいで陸斗を苦しませて悪い」
 丁寧とは言えないけど、言葉不足な俺が出来る限り吐きだした本音に陸斗は困ったかのように、でも笑みを浮かべて
「俺も、いつまでも内田に怯えるのは嫌です」
 学力もついて、友達も出来て、声もこれだけ大きくなったのに未だに雅治の影におびえる陸斗は一年近くしてやっと立ち向かおうと言う所まで心が育った。
 同年代の子供に怯える事もなくなり、原因の雅治とよく似た家族の人とも話が出来るようになった。そして以外に似てる弟とも顔を合わせる事が出来た挙句に、あの悲惨な、この家に来た頃の陸斗と同レベルの学力。恥かしいと思っている陸斗は自分のように大変な事になる前に何とかしないとと焦る様子はこっちにまで伝わって。
 口を出すのは簡単だけどそれでは陸斗の成長に繋がらない。 
 ヒントは十分に出したし、どうすればいいかなんて考えるのも十分に教えてきたつもりだ。あとは陸斗が行動に出れるかただそれだけ。
 ポンと宮下が切りそろえたばかりの髪を優しくなでながら
「陸斗の気持ちは分かった。だけど、自分をだまして無理するような真似だけはするなよ?」
 なでなでと頭を撫でながら、たった一年の間に成長期を迎えた陸斗の頬は少しふくらみがなくなりだしているのを寂しく思いながらも鼻を摘み
「さて、みんなが起きだす前に少し畑の雑草取りをしよう」
「ひゃい」
 朝ごはんは宮下と皆さんに任せて新しいクラスの話しを聞きながら雑草を取る事にした。



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