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休みなんて所詮社会に縛られてる人のものであり、年中無休の引きこもりにはここで働かずにいつ働くと言われるように働かせていただきます 1

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 ついにゴールデンウィークがやって来た。前半と後半の間の平日の為に高校生達は後半本気で来ると謎の呪文を唱えていた。勿論それはダメな先生も同じで仕事終わったら真っ直ぐ来るとの呪いの言葉に高校生達も同じ事言ってたなと妙なつながりを覚えるのだった。
 ちなみにこのゴールデンウィーク中は他にもお客さんが来る。
 森下さんご家族がやってくる事になっている。
 娘さんと奥さんの水疱瘡も完治し、森下さんもワクチンを打って改めてご丁寧にも戴いたお見舞いのお礼に来ると言う。
 職人仲間も引き連れて。
 うん、別にいいよ?
 知らない仲でもないし、混雑するゴールデンウィークの一日にここで遊ぶ位寝る場所用意しておくからと言えば
「ありがとうございます。
 一度圭斗君の家に行って車の台数を減らして街の家の方に乗り込んでいきますね」
「くれぐれも圭斗の家に費用がかさむ事がないようにお願いします」
「重々承知!」
 キリッと響くいい声で森下さんも圭斗の家の懐事情を理解して車を置く場所を借りるだけと言う予定だ。さすが二百坪以上の農家だった家。いざとなったら月極駐車場として収入源にすると言う。車一世帯一台時代の家の作りのこの町では駐車場不足。そうしないのは圭斗と前の持ち主の孫との友情の問題でそこは今の家主の意見を重用するべきだ。
 そんな圭斗の家の利便さに何かあれば経費としてうちに請求する様に森下さんにお願いしておく。

 ゴールデンウィークだろうが何だろうが長閑な山の家も皆さんがやってくる当日となったら途端に騒がしくなった、の前に……

「あーやーと―!久しぶりぃ!」
「みーやちゃーん!会いたかった!」
 久しぶりの再会にハグッ!
 むさくるしいと言う目で俺を見る圭斗と微笑ましいと笑みを浮かべる陸斗にもかかわらず宮下の手を引いて庭の縁側前にやってきて

「それじゃあお願いします」
「うん。どうせこんな事だろうと判ってた」

 しっかり椅子とケープと隙ばさみと髪切りばさみと櫛。
 それを見て圭斗も納得と言う様に半分呆れた様に口を半開きにしていたが

「やっぱりこればかりは宮下に頼むのが一番だよな」
「ずいぶん伸びたねぇ。ひょっとして正月以来切ってないとか?」
「切ってない。今年はお客さん居たからほとんど下りなかったからね。
 切ろうかと思ったけど宮下ももうすぐ帰ってくると思ったらまあいいかってなった」
「今なら髪の毛縛れるよ?」
「すっきりやっちゃってください」
「まぁ、いつもの通り切るだけだけど、綾人が終わったら陸斗も切ってあげるからね」
「ついでに俺も頼むわ」
 圭斗もよろしくーと言うがそこでふと疑問を覚えたようで
「宮下は何所で切ってるんだ?」
 近くにいい床屋でも見つけたのかとあまり変わらない髪型を見て聞いたつもりだろうが
「俺?俺は三面鏡があれば自分で切るよ?
 西野さんの奥さんの鏡を貸してもらって切ってたらついでに西野さんの奥さんと西野さんも切る事になったけど、おおむね好評だよ?」
 そうなのだ。
 宮下はまさかの自分で切ると言う器用さを発揮してくれたのだ。
 もともとは俺のめんどくささに散髪してもらったのが始まりだったが、わざわざ下に切りに行かなくてもいいと言う事に気付いて自分で切れば時間も取られないしお金もかからないと言う事に気付いて技を磨いたと言う。
 だけど言われないと気付かなかったから大したもんだよなと俺には出来そうもない事なので感心してしまうが、それが近所にも広まって足の悪いご近所さん達からも何度もお駄賃と引き換えに引き受けてバリカンも使いこなすようになってちょっとした小遣い稼ぎをしていた。
「昨日も仕事終わってから帰って来て夜中だろ?
 わざわざお帰りーなんて言ってくれるから親切だよなーなんて思ったら『明日の朝ちょっと切ってもらえないか?』なんて店先で切ってたら次々来てさあ」
 という割には嬉しそうに言う。だがここには朝八時には来たので一体朝の何時から始まったのかなんて聞きはしない。聞いてはいけない。聞きたくもない。
 お約束と言うように三脚に立てたカメラ三台に囲まれる中リズムの良いハサミの音が響く。湿らせた髪を切ってはケープから滑り落ちていく。
「アヤって一見ストレートだけど伸びるとクセが出るねー」
「マジかー?!俺初耳ー!!」
「いや、それ重要か?」
 俺と宮下の妙なハイテンションに冷静な圭斗のツッコミが妙にウケる視聴者さんだがこいつの場合は計算ではなく素なのだからタチが悪い。だけどそれに慣れている俺と宮下は華麗にスルーして俺をこざっぱりと正月の前のような姿に戻した後
「次はリクでーっす!」
 気合を込めての紹介にモジモジとする陸斗。
 実年齢より幼く見えるせいか妙齢なお姉さま達の母性をくすぐりある一定のファンを持つ陸斗が椅子に座らせられれば俺は宮下にリクエスト。
 キランとその目を輝かせてあげられた動画のレクチャーに
「こんな感じかな~?」
 なんて鼻歌混じりにそれっぽく仕上げるのだった。
 もともと篠田の家は性格とは関係なく顔立ちはおじさんおばさん共に綺麗系だ。バアさんの顔は知らないが、圭斗も学校での友人の対比が女子多目である事からそう言う事なのだろう。そして、陸斗も学力のヒエラルキーの中でのトップに君臨してから女の子ともお話をするようになり……
 正統派な美形、少し可愛い目に仕立て上げた宮下の腕前を褒めるべきかどうするべきかと思うも鏡を見ながら「思ったより長いなー」何てシャンプー代を気にする様にそれぐらい俺が払ってあげるからと心の中で突っ込んでおく。
 最後の圭斗は……
 いつものように切り終えて
「もっと短くってもいいぞ?」
「それ以上となると五分刈りだ」
 俺がバリカンを握りしめていれば失礼な事に
「いつも悪いな」
「気にしないで。アヤのおもちゃになるくらいなら無難なところで終わるだけだから」
 そんな会話をする二人の妙な視線の居た堪れなさに陸斗を連れて草刈りへと出かけるのだった。
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