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桜が咲く季節に 2
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スマホのけたたましさに目が覚めて画面を見て絶望を覚えた。
何で寝起きにと思うと同時にメッセージにも簡単な一文。
『駅に居るから来いや』
なんて乱暴な文ではないけど昼寝を邪魔する呼び出しは脳内変換されるとこんな内容に変わる。
高い金払って無視するわけにもいかないと仕方がなくと言う様に起きて着替えをして家の中を覗けば飯田さんのメッセージ。出かける旨とおやつが揃っておいてあって……
「今食べると絶対勿体ないな」
なのでメモに今から出かけますので帰ったら食べますと書き加えてしっかりと鍵を閉めて街へと降りるのだった。
綾人の住む村から町に入る入口の所に先生の家があって、そこに飯田さんを始めとした車が止めてあり、あいつに会う前に少しでも良い状態で挨拶だけはしておこうと車を止める。
何やら話し声が聞こえたと思ったらその内容に足を踏み入れる事が出来なかった。
扉越しに親の葛藤と子供への愛情、そしてやるせなさに耳を傾けながらも肝心の本人の意思が全く反映してない会話に殴り込みではないが挨拶もろくにせずに話に混ざる。
驚きの視線を集め飯田さんが止めに入ってくれたけど、俺の子供の主張を言うだけ言って、長谷川さんを連れてその場を逃げる様に後にするのだった。
隣の家の庭の片隅でおもむろにしゃがみこんだ俺は長谷川さんの心配する視線を他所に
「俺何やってんだあああぁぁぁ……」
情けない声でへこめば可哀想な子を見る視線の長谷川さんは
「だが、そう言ってもらえるだけあいつは幸せだ。
というか吉野の、おまえさん向こう見ずだなぁ」
「高校の恩師には後悔は行動した後からしろと言われてますので」
「なるほど。何もしないで後悔するするより何かしてから後悔しろと。よく出来た先生じゃないか」
「本当にそう言う意味があるのならね」
テキトーな先生のテキトーな言葉。
時々ぐさりと容赦なくえぐってくるのが厄介で。
「それより話しは柵の事か?さっきののっぽの兄ちゃんから西側の畑の柵が倒木に巻きこまれて根こそぎダメになったと聞いたが?」
「あと下の畑、柵の範囲を絞ろうかと思いまして」
「そりゃあ別に構わないが、東側の川沿いはどうする?」
俺は顔も上げずに
「家の周りは現状通りの柵でお願いします。なので東の沢沿いのは無しのままで。
何かジイちゃんががぶつくさ言ってたから。そこは入口として開けといてください」
言えばしばらく無言で居たかと思えばニカリと笑った長谷川さんは
「やっぱりそこはお山の子だな」
「こと山に関するルールはジイちゃんはウザイくらいウザかったから。
まぁ、あの家を継ぐならそれなりにそう言った言葉も受け継ぎますよ」
俗にいう山岳信仰と言う物。
近くの山と言うかこの山の天辺付近ににもそういうものがあって、子供のころロープウェイに乗ってよく遊びに行ったが、ジイちゃんが言う山岳信仰はこの地に根付いた風習みたいなものだ。
家の上の山から下りてくる獣は退治しても、東の川を渡ってくる獣は神様の御使いなのでお客様として受け入れろが家では最初に覚えさせられる言葉だった。
狐が神様の使いとか神棚の水は毎日変えろは当たり前か。そう言った当たり前の事までいくつもあり、信じ深くない俺だがそれでも約束として守っている。
まぁ、東側の柵の一部がなかろうとも庭でガンガン暴れていれば東側からくる獣はまずいないし、まず沢がちょうど深く流れも速いので獣達も滅多に渡ってこない。俺が川に落とされた時はまだ雪解け水が少なくて膝下ぐらいしかない時だったが、あれから少しして水の量が急激に増えたからあのトラウマ事件のタイミングが少しでもズレていたら絶対に俺は生きてないと言い切れる。
「仕事を始めてゴールデンウィークに入るのも何ですので休み明けからの作業でお願いします」
「分かった。だが、休み明けになってから仕事に入るとなると色々揃える時間も必要になる。明日一度下見をさせてくれ。なに、俺も息子も今は街に住んでいるが元々山育ちだ。山の恵みも怖さもちゃんと知ってる。
悪いが明日の天気は良さそうだから朝一番にお邪魔させてもらう」
「そう言う事なら。
では明日お待ちしてます」
ペコリと頭を下げて強引に失礼させてもらった。
何で寝起きにと思うと同時にメッセージにも簡単な一文。
『駅に居るから来いや』
なんて乱暴な文ではないけど昼寝を邪魔する呼び出しは脳内変換されるとこんな内容に変わる。
高い金払って無視するわけにもいかないと仕方がなくと言う様に起きて着替えをして家の中を覗けば飯田さんのメッセージ。出かける旨とおやつが揃っておいてあって……
「今食べると絶対勿体ないな」
なのでメモに今から出かけますので帰ったら食べますと書き加えてしっかりと鍵を閉めて街へと降りるのだった。
綾人の住む村から町に入る入口の所に先生の家があって、そこに飯田さんを始めとした車が止めてあり、あいつに会う前に少しでも良い状態で挨拶だけはしておこうと車を止める。
何やら話し声が聞こえたと思ったらその内容に足を踏み入れる事が出来なかった。
扉越しに親の葛藤と子供への愛情、そしてやるせなさに耳を傾けながらも肝心の本人の意思が全く反映してない会話に殴り込みではないが挨拶もろくにせずに話に混ざる。
驚きの視線を集め飯田さんが止めに入ってくれたけど、俺の子供の主張を言うだけ言って、長谷川さんを連れてその場を逃げる様に後にするのだった。
隣の家の庭の片隅でおもむろにしゃがみこんだ俺は長谷川さんの心配する視線を他所に
「俺何やってんだあああぁぁぁ……」
情けない声でへこめば可哀想な子を見る視線の長谷川さんは
「だが、そう言ってもらえるだけあいつは幸せだ。
というか吉野の、おまえさん向こう見ずだなぁ」
「高校の恩師には後悔は行動した後からしろと言われてますので」
「なるほど。何もしないで後悔するするより何かしてから後悔しろと。よく出来た先生じゃないか」
「本当にそう言う意味があるのならね」
テキトーな先生のテキトーな言葉。
時々ぐさりと容赦なくえぐってくるのが厄介で。
「それより話しは柵の事か?さっきののっぽの兄ちゃんから西側の畑の柵が倒木に巻きこまれて根こそぎダメになったと聞いたが?」
「あと下の畑、柵の範囲を絞ろうかと思いまして」
「そりゃあ別に構わないが、東側の川沿いはどうする?」
俺は顔も上げずに
「家の周りは現状通りの柵でお願いします。なので東の沢沿いのは無しのままで。
何かジイちゃんががぶつくさ言ってたから。そこは入口として開けといてください」
言えばしばらく無言で居たかと思えばニカリと笑った長谷川さんは
「やっぱりそこはお山の子だな」
「こと山に関するルールはジイちゃんはウザイくらいウザかったから。
まぁ、あの家を継ぐならそれなりにそう言った言葉も受け継ぎますよ」
俗にいう山岳信仰と言う物。
近くの山と言うかこの山の天辺付近ににもそういうものがあって、子供のころロープウェイに乗ってよく遊びに行ったが、ジイちゃんが言う山岳信仰はこの地に根付いた風習みたいなものだ。
家の上の山から下りてくる獣は退治しても、東の川を渡ってくる獣は神様の御使いなのでお客様として受け入れろが家では最初に覚えさせられる言葉だった。
狐が神様の使いとか神棚の水は毎日変えろは当たり前か。そう言った当たり前の事までいくつもあり、信じ深くない俺だがそれでも約束として守っている。
まぁ、東側の柵の一部がなかろうとも庭でガンガン暴れていれば東側からくる獣はまずいないし、まず沢がちょうど深く流れも速いので獣達も滅多に渡ってこない。俺が川に落とされた時はまだ雪解け水が少なくて膝下ぐらいしかない時だったが、あれから少しして水の量が急激に増えたからあのトラウマ事件のタイミングが少しでもズレていたら絶対に俺は生きてないと言い切れる。
「仕事を始めてゴールデンウィークに入るのも何ですので休み明けからの作業でお願いします」
「分かった。だが、休み明けになってから仕事に入るとなると色々揃える時間も必要になる。明日一度下見をさせてくれ。なに、俺も息子も今は街に住んでいるが元々山育ちだ。山の恵みも怖さもちゃんと知ってる。
悪いが明日の天気は良さそうだから朝一番にお邪魔させてもらう」
「そう言う事なら。
では明日お待ちしてます」
ペコリと頭を下げて強引に失礼させてもらった。
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