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山を歩くも柵はどこだ 3
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家に帰る途中寄り道をして麓の家の工事現場に突入する。
長谷川さんと内田さんは当たり前だが面識もあるので声をかけて行くと言えば俺達も挨拶をするとついて来てくれる事になった。
ちなみに沢村さんはチョコレートを貰って帰っていってしまった。
交通量の割には雪の為に立派な車幅の道路の片隅に車を止めて賑やかな物音溢れる家足を運び入れる。
「おはようございます!」
大きな声であいさつをすれば幾つもの賑やかな音がピタリと止まった。
「吉野の、おはよう。今日は何かあったか?変更点でもできたか?」
内田さんが手を止めれば浩太さんがすぐにお茶の用意を始め、圭斗が机の準備や茶碗の準備をしてくれていた。ずいぶん躾けられたらしいと感心しながら見守り
「すみません。下に降りて来たので挨拶だけでもと覗いただけなのに」
「いやいや、そうやって気遣ってもらうだけでもわしらは張り合いがあるってもんだ」
にこにこと二人で頂いたお茶を啜れば改めて内田さんに紹介をする。
「先日紹介して頂いた長谷川工務店さんに山の柵の修理をお願いした帰り道なんです。とりあえず下の畑からですが今の状況を見ていただく為に戻る所で」
今年もガッツリ山の家に投資しますよと笑って誤魔化そうとする所で内田さんはともかく浩太さんが露骨に嫌な顔をした挙句に健太郎さんも似たような顔をするのだった。
え?
何この空気?
やっちまった?
何かまずった?
引き攣りそうになる顔で気づかないふりの笑顔を張り付けてごまかす。頑張れ俺。
「長谷川さんにお願いする事にしたんだ」
「はい。前回の工事をバアちゃんが長谷川さんにお願いしていたようなので今回もお願いする事にしました」
他はオブラートに断られたとは言わない。
「まぁ、長谷川は吉野の家族だからな」
「そこの所バアちゃんは何も教えてくれなかったので猟友会の人達も吉野の職人さん達だったなんて今頃知ったぐらいですし」
「既に解散した樵達に昔の縁でお前を縛りつけたくないとは言ってたからな」
ぼやく内田さんはジイちゃんと仲が良く最後まで交友があった一人だと言う。
「だが俺達は吉野に沢山の恩を貰ったんだ。こうやって飯を食って行けるのも一郎さんのおかげだから、返しきれなかった恩は吉野を継いだ綾人だったな。精一杯返えさせてもらうよ」
なんて豪快に笑う様がどことなくジイちゃんがを思い出して自然に笑みがこぼれる。
ただその横で健太郎さんは一人納得しない顔をしている。
浩太さんはお茶を持って奥で圭斗とお茶休憩してたのでこっそり聞こうにも聞けない距離に俺だけが居心地悪い顔をしていれば
「ほら健太郎、お前はお客様の前で何ていう顔をしてる」
ごつっ、と本日何度目だったかの鈍い音を聞く。
それはもういい。簡潔に理由を教えてくれと途方に暮れていれば
「吉野の、そんな顔をするな。
与一とは長沢や一郎さんと同じく年も近くて良く連んで遊んだ仲でな、結婚後も健太郎と浩太も歳が近いから家族ぐるみでよく遊んだんだ」
へーなんて思いながら近いとは思っていたがとそんなにも近いんだと感心してしまえば
「ただ、浩太が三月生まれで健太郎が四月生まれ。出来ることはどんぐりの背比べなのにお兄ちゃん呼ばわりとか、学年も変わって、見ての通り体も健太郎の方が大きいし男前だからな」
「だが健太郎にはついぞ嫁が来なかった。こんなガキみたいな性格じゃあ嫁なんてこないわな!」
「離婚すれば同じさ」
「浩太が悪いわけじゃないんだろ。なら再婚だって希望がある」
「子供付きだ。それはどうじゃろうな」
やれやれと言う爺さん二人の会話に息子さん達は大ダメージを負っているようでそれぐらいにしろよと心の中で突っ込むも面白いので止めようとはしない。
「そんな感じで拗れに拗れた大人になったんだ」
「吉野と篠田はああなるなよ。
顔を合わす度に鬱陶しい」
辛辣な内田さんの言葉に曖昧に笑って返事をしておく。宮下とは卒業間際に一瞬拗れたような気もしたがよくわからないうちにいつもの通りに戻っていたが、圭斗とは……まだ喧嘩をした事もない。喧嘩になった事もないし、喧嘩するほど濃厚な付き合いもしていない。むしろ陸斗の件があるから圭斗の性格的に喧嘩になる事はないだろうし喧嘩になったら俺が絶対負ける。その自信はあるが
「確かにそうですね。こんな鬱陶しい大人になりたくないですね」
チラリと圭斗に視線を流せばこくんと頷いていた。だよねーと今更この歳で喧嘩って……
「内田さん。綾人の場合殴りあいではなく社会的に家族単位で抹殺して来るので喧嘩になった時点で全面降伏します」
そんな告白。
無言で俺を見る大人四人の視線を浴びて
「あれは向こうが悪い。二度と顔を合わさないための処置だから平和的解決だ」
「お前だけのな」
うんざりと言う顔の圭斗も綾人が何をしたのか全部は知らない。ただ冬前に生みの父親を刑務所にぶち込んだ時のやり方は生優しいな、と思うくらい証拠をかき集めた事前準備が既に不自然で。
「俺は綾人の犬って言われても構いません。綾人には喧嘩売らないのでそれだけは約束します」
静まる室内。
だけどそれを打ち破るには当然
「圭斗ちょっと待て!
何俺危険人物にしちゃってるんだよ!」
「はあ?!お前あれだけいろんなことしといて自覚ないのかよ?!」
「いろんなことしてねーし!
ちょっとしたゲーム程度だし?
まあ、あの程度で二度とこないならオーケーじゃね?」
「じゃねえ……」
頭が痛いって壁に頭を打ち付けて圭斗は悶絶する。
「浩太さん圭斗が壊れた」
「あー、とりあえずこう言うのは放って置くのが一番だから、そろそろ下の畑の柵を見に行くといいよ?」
その後健太郎さんになぜか強制退場させられるのだった。
長谷川さんと内田さんは当たり前だが面識もあるので声をかけて行くと言えば俺達も挨拶をするとついて来てくれる事になった。
ちなみに沢村さんはチョコレートを貰って帰っていってしまった。
交通量の割には雪の為に立派な車幅の道路の片隅に車を止めて賑やかな物音溢れる家足を運び入れる。
「おはようございます!」
大きな声であいさつをすれば幾つもの賑やかな音がピタリと止まった。
「吉野の、おはよう。今日は何かあったか?変更点でもできたか?」
内田さんが手を止めれば浩太さんがすぐにお茶の用意を始め、圭斗が机の準備や茶碗の準備をしてくれていた。ずいぶん躾けられたらしいと感心しながら見守り
「すみません。下に降りて来たので挨拶だけでもと覗いただけなのに」
「いやいや、そうやって気遣ってもらうだけでもわしらは張り合いがあるってもんだ」
にこにこと二人で頂いたお茶を啜れば改めて内田さんに紹介をする。
「先日紹介して頂いた長谷川工務店さんに山の柵の修理をお願いした帰り道なんです。とりあえず下の畑からですが今の状況を見ていただく為に戻る所で」
今年もガッツリ山の家に投資しますよと笑って誤魔化そうとする所で内田さんはともかく浩太さんが露骨に嫌な顔をした挙句に健太郎さんも似たような顔をするのだった。
え?
何この空気?
やっちまった?
何かまずった?
引き攣りそうになる顔で気づかないふりの笑顔を張り付けてごまかす。頑張れ俺。
「長谷川さんにお願いする事にしたんだ」
「はい。前回の工事をバアちゃんが長谷川さんにお願いしていたようなので今回もお願いする事にしました」
他はオブラートに断られたとは言わない。
「まぁ、長谷川は吉野の家族だからな」
「そこの所バアちゃんは何も教えてくれなかったので猟友会の人達も吉野の職人さん達だったなんて今頃知ったぐらいですし」
「既に解散した樵達に昔の縁でお前を縛りつけたくないとは言ってたからな」
ぼやく内田さんはジイちゃんと仲が良く最後まで交友があった一人だと言う。
「だが俺達は吉野に沢山の恩を貰ったんだ。こうやって飯を食って行けるのも一郎さんのおかげだから、返しきれなかった恩は吉野を継いだ綾人だったな。精一杯返えさせてもらうよ」
なんて豪快に笑う様がどことなくジイちゃんがを思い出して自然に笑みがこぼれる。
ただその横で健太郎さんは一人納得しない顔をしている。
浩太さんはお茶を持って奥で圭斗とお茶休憩してたのでこっそり聞こうにも聞けない距離に俺だけが居心地悪い顔をしていれば
「ほら健太郎、お前はお客様の前で何ていう顔をしてる」
ごつっ、と本日何度目だったかの鈍い音を聞く。
それはもういい。簡潔に理由を教えてくれと途方に暮れていれば
「吉野の、そんな顔をするな。
与一とは長沢や一郎さんと同じく年も近くて良く連んで遊んだ仲でな、結婚後も健太郎と浩太も歳が近いから家族ぐるみでよく遊んだんだ」
へーなんて思いながら近いとは思っていたがとそんなにも近いんだと感心してしまえば
「ただ、浩太が三月生まれで健太郎が四月生まれ。出来ることはどんぐりの背比べなのにお兄ちゃん呼ばわりとか、学年も変わって、見ての通り体も健太郎の方が大きいし男前だからな」
「だが健太郎にはついぞ嫁が来なかった。こんなガキみたいな性格じゃあ嫁なんてこないわな!」
「離婚すれば同じさ」
「浩太が悪いわけじゃないんだろ。なら再婚だって希望がある」
「子供付きだ。それはどうじゃろうな」
やれやれと言う爺さん二人の会話に息子さん達は大ダメージを負っているようでそれぐらいにしろよと心の中で突っ込むも面白いので止めようとはしない。
「そんな感じで拗れに拗れた大人になったんだ」
「吉野と篠田はああなるなよ。
顔を合わす度に鬱陶しい」
辛辣な内田さんの言葉に曖昧に笑って返事をしておく。宮下とは卒業間際に一瞬拗れたような気もしたがよくわからないうちにいつもの通りに戻っていたが、圭斗とは……まだ喧嘩をした事もない。喧嘩になった事もないし、喧嘩するほど濃厚な付き合いもしていない。むしろ陸斗の件があるから圭斗の性格的に喧嘩になる事はないだろうし喧嘩になったら俺が絶対負ける。その自信はあるが
「確かにそうですね。こんな鬱陶しい大人になりたくないですね」
チラリと圭斗に視線を流せばこくんと頷いていた。だよねーと今更この歳で喧嘩って……
「内田さん。綾人の場合殴りあいではなく社会的に家族単位で抹殺して来るので喧嘩になった時点で全面降伏します」
そんな告白。
無言で俺を見る大人四人の視線を浴びて
「あれは向こうが悪い。二度と顔を合わさないための処置だから平和的解決だ」
「お前だけのな」
うんざりと言う顔の圭斗も綾人が何をしたのか全部は知らない。ただ冬前に生みの父親を刑務所にぶち込んだ時のやり方は生優しいな、と思うくらい証拠をかき集めた事前準備が既に不自然で。
「俺は綾人の犬って言われても構いません。綾人には喧嘩売らないのでそれだけは約束します」
静まる室内。
だけどそれを打ち破るには当然
「圭斗ちょっと待て!
何俺危険人物にしちゃってるんだよ!」
「はあ?!お前あれだけいろんなことしといて自覚ないのかよ?!」
「いろんなことしてねーし!
ちょっとしたゲーム程度だし?
まあ、あの程度で二度とこないならオーケーじゃね?」
「じゃねえ……」
頭が痛いって壁に頭を打ち付けて圭斗は悶絶する。
「浩太さん圭斗が壊れた」
「あー、とりあえずこう言うのは放って置くのが一番だから、そろそろ下の畑の柵を見に行くといいよ?」
その後健太郎さんになぜか強制退場させられるのだった。
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