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キャンプ・キャンプ・キャンプ 3

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 朝を迎えて烏骨鶏を放した後すぐに先生の家へと急ぐのだった。
 一応、まさか、と思っアバラハウスでキャンプしていないか確認に行けばそこはまだ誰もいなく、当然だがキャンプをした後もなかった。ほっとしつつそのまま圭斗の家にお邪魔すればちゃんと森下さんの車があって胸を撫でおろすのだった。
「おはようございます」
 エンジン音に気付いてすぐに陸斗が迎えに来てくれた。もこもこの暖かいジャンパーが妙に似合ってる陸斗をほっこりと眺め
「おはよう。森下さんちゃんとここに泊まってくれた?」
「はい。内田さんにお願いしてこっちに移ってもらいました。
「さすがの森下さんも内田さんには逆らえないか」
 なんて言ってる間にも圭斗が出てきてよおと声をかけてきた。
「どうなったか心配で来てみた」
「うちにあまり負担にならないようにって庭でキャンプするって言ってたから綾人が言った通りに納屋の作業場でキャンプしてもらったぞ。
 あそこなら一応水場があったからそこでコーヒーぐらいは作れるたと思う。ただし水は使わないでくれってお願いしたがな」
 水道の元栓を締めてもう何年か。ずっと使ってないと言う水道から赤さびが流れる水しか想像できなくていい判断だと頷くしかなかった。
 そんな事を薄っすらと明るくなった庭の片隅でだべっていれば
「やあ、おはよう。皆早いね?」
 少し寝ぼけ眼だけど顔をさすりながら起きてきた森下さんに
「なんか先生の家でキャンプするって耳を疑うような事を聞いたので慌ててきましたよ」
「ああ、うん。ごめんなさい。そこは内田さんにもしっかりと怒られたのでもう許してやってください」
 許してやってくださいって内田さんどんな説得の仕方したんだよと思うも、圭斗に誘われて家で温かいお茶を飲もうと台所へと移動すれば寒かったと言うように湯呑を両手で包むように持つのは俺もだが森下さんは一口ゆっくりと啜り
「俺家造りとか間取りとか構造とか考えるのが好きなんですよ。勿論素材に触れあったり、家を作る材料から工具も嫁さんに言わすとときめいちゃう人なんですよ」
 ぐいぐいとくるあの嫁さんならそう言う言い方しそうだなと大工の鏡のような人の話に耳を傾けるように聞いておく。
「家造りで一番萌える所が基礎を打って大黒柱を立てて屋根を乗せた状態なのですよ」
「まぁ、これからワクワクドキドキのやりたい放題な状況ですしね」
 理解できるのか圭斗の口からそんな言葉が出てくる背後で陸斗が味噌汁と目玉焼きを作っていた。珍しくソーセージも焼いているが五本入りなので一本余るそれをどうしようかという顔をしていたので
「残り一本は成長期の陸斗が食べるべきだよ」
 判断に困っているようなので指摘はしておく。圭斗はすまんと言うが、ソーセージ一本で戦争になる面子でもないので遠慮はちゃんとできる。
 だって俺達大人だしね。
 旅行先の晩餐で奪い合うように食事をしていた俺が言っても説得力はないかもしれないが……
 一年前の陸斗だったら唾を飲んで自分の分も差し出して我慢をする所だったのだろう。今まで食べれなかった分、幸せな楽しい食事を堪能してもらいたいと願うのはあの骨と皮のあばらが浮く姿を知っているだけに今もこの気持ちは変わらない。
 やがて運ばれてきた朝食を食べながら
「そこまでできていると作りかけの家ってもう遊び場なんですよ」
 さっきの話に戻った。
 卵の黄身を割ってソーセージに絡めながら口へ運ぶ様子を陸斗ががんみしているのが微笑ましく、近く真似をするんだろうなと思いながらも森下さんの話しをふんふんと聞く。
「間取りを見てここは風呂場で、こっちは台所でって。他所の家の、自分では考えない間取りを見ていろいろ、妄想ですね。
 ここをこんなふうに俺なら使うだろうなとか、秘密基地じゃないけど本来の使い方じゃない……牢屋とか。そんな事を想像するんですよ」
「今ので森下さんの人間性が分っちゃいましたね」
「いやー!綾人君俺をそんな簡単に決めつけないでー!」
 さすがに少し引くわぁと、でも笑っておく。おたがい冗談なのはわかっているので悪の秘密結社だろうが、謎の組織本部とか言われてもロマンだよねと笑えるぐらいの心づもりで居た。さすがに牢屋が出て来るとは思わなかったが、それもまたロマンと思う事にして置いた。
「だからか、予定からどんどん変わっていく綾人君の家がこれからもどんなふうに変わっていくのか想像してしまうのですよ。
 まあ、長沢さんの家と西野さんの工房を見れば何を目指しているかはすぐ分かりましたが……
 でも二軒の家を一つにするって発想はありませんでしたね」
 中古とは言え二軒買う意味わかりませんと真顔で言われてしまった。
 なんか傷つくなとキャベツと玉ねぎの味噌汁を啜ってしまう。
「綾人はあの大きな家に住んでるからな。普通の家じゃ烏骨鶏の家の方が大きいから住む所じゃないんだろう」
「ああ、うん。烏骨鶏の家も普通の家より大きいしね」
「記憶の限りじゃ既に農機具庫だった烏骨鶏ハウスの事まで知らないよ」
 既に人も住んでいない場所は離れのように雨に濡れてもひょいと足を運ぶのをためらう場所だけに記憶はない。
「家を繋げて庭を作って、展望風呂。展望風呂は想定外だったなー。
 あ、檜風呂は任せておけ。吉野の倉庫にいい檜があったからそれで作ろう。
 檜はいいぞ。埃が積もってるけど鉋で整えれば匂いも溢れてくる」
 木だけ見ればあの旅館よりいい素材だぞとの言葉に陸斗が檜風呂って何?と圭斗に聞くあたり作ったら真っ先に入れてあげようよ心の中で誓うのだった。


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