278 / 976
春の足音はゆっくりじっくり 1
しおりを挟む
内田さんに依頼して長沢さんがやる気になって数日後、街に降りて来たら寄ってくれと言うLIMEに内田さんの事務所に向えば
「これが設計書と見積もりだ」
圭斗も連れて来て設計書は圭斗に、俺は見積書を見て
「離れよりは少なくてよかったと言うべきだろうか」
「思ったより簡単に終わりそうですね」
「まぁ、間の廊下を作るぐらいだからな。多少の段差に階段作るぐらいだろうか」
山を切り開いて作った家の避けて通れない問題にそこは仕方がないだろうと思う。
「作業場の二階の窓を変えて開け閉めできるようにするかそのままはめ殺しのままにするかだが」
「あー、そのままでいいですよ。何だったら脚立持って来て掃除すればいいですし、俺が窓を掃除するわけじゃないですし」
言えば少し怪訝な顔をした内田さんに
「俺か宮が掃除するから心配はいらないですよ」
途端に呆れた視線に変って俺を見ていた。
「内田さん良いんですよ。陸斗にバイトと称して小遣い稼ぎさせる理由になるので」
「おま、陸斗を理由にするとは!いくらにするか後で相談な?」
「綾人君……」
何とも言えない内田さんの視線には圭斗と共に背中を向けて
「週一でいいから風を通して欲しい。雑草も取って欲しいし、水槽の水を抜いて入れ替えて欲しい。夏場は、金魚でも入れておこうか」
「ボウフラ対策としてははいいが、魚臭い水で家の掃除をするつもりか?」
「あー、十円玉でも沈めておくか」
「そこは普通に銅板でいいだろう」
綾人と圭斗の管理体制にもっと文明を使えと言うが圭斗も綾人もわかってないなと失笑する。
「陸が今家にあった火鉢で金魚を飼っているんですよ。そこからこっちに出張させて行ったり来たり楽しく面倒をみさせるつもりだから」
「ただお小遣いの為の手伝いより可愛がってる金魚へのご挨拶というプラスの楽しみがここにくる足を楽しませてくれるって奴だ」
ほーと感心している内田さんに内心ちょろいなと思う綾人だが
「ろくに小遣いに渡せてやれないからな。搾り取れる奴がそばにいるなら活用しないとな」
圭斗は確実に生活の為の節制を考えての言葉だが、親として満足な小遣いを渡せてやれなくて情けないとしょげる割には借金の返済と少なからずの貯金は着々と予定のペースを上回っている。
理由は理科部の仲間から野菜をいつももらえているので買わなくて良くなったと言うのが一番の理由。肉はうちから分けているので加工食品だけが求められる食費はどこまでも抑えられている。代わりに学校帰りの溜まり場になってしまったが、勉強するための集まる場所だからでてけと言えるはずもない。先生もいなくなり理科部は廃部となってしまったが、残ったメンバーで圭斗の家に集まり今も勉強を頑張っている姿勢に圭斗は黙って応援をするのだった。
ガラリ……
内田さんの店のドアが開けば長沢さんがそこにいた…俺たちをみて驚いたように目を見開くが
「吉野のが居るとは好都合。
あの家の鍵を借りてもいいだろうか。建具を直すのに呼び出すのも何だろう」
「まあ、その度に呼び出されるのも何だしね。長沢さんじゃなきゃ預けるにはできないけど」
「家の中はまだ何もない廃墟だがな」
取られるものは何もないだろうと圭斗は言うものの
「あそこは最低限のものを置く程度にするぞ」
綾人は密かに決意を固める。物を置き始めたら最後の予感、一瞬にしてゴミ屋敷に元通りだと身を震わすもあの状況を見ていない内田さんも長沢さんも大袈裟だなあと呆れていた。この場で唯一あの現場を知りながらも一部屋確保して居座った圭斗は綾人の宣言にそれがいい。物なんて置くもんじゃないと何度も頷くも
「最低限机は作ろう。
床に置いて食べるのは背中が曲がるぞ」
圭斗は体験からの忠告をするが
「いや、最低限の物は用意するぞ?
俺はそこまでミニマムに暮らすつもりはないからな?」
いくら何でもそこまでシンプルな暮らしはできんと逆に綾人、内田、長沢から距離を取られる圭斗は納得できない顔をするのだった。
「これが設計書と見積もりだ」
圭斗も連れて来て設計書は圭斗に、俺は見積書を見て
「離れよりは少なくてよかったと言うべきだろうか」
「思ったより簡単に終わりそうですね」
「まぁ、間の廊下を作るぐらいだからな。多少の段差に階段作るぐらいだろうか」
山を切り開いて作った家の避けて通れない問題にそこは仕方がないだろうと思う。
「作業場の二階の窓を変えて開け閉めできるようにするかそのままはめ殺しのままにするかだが」
「あー、そのままでいいですよ。何だったら脚立持って来て掃除すればいいですし、俺が窓を掃除するわけじゃないですし」
言えば少し怪訝な顔をした内田さんに
「俺か宮が掃除するから心配はいらないですよ」
途端に呆れた視線に変って俺を見ていた。
「内田さん良いんですよ。陸斗にバイトと称して小遣い稼ぎさせる理由になるので」
「おま、陸斗を理由にするとは!いくらにするか後で相談な?」
「綾人君……」
何とも言えない内田さんの視線には圭斗と共に背中を向けて
「週一でいいから風を通して欲しい。雑草も取って欲しいし、水槽の水を抜いて入れ替えて欲しい。夏場は、金魚でも入れておこうか」
「ボウフラ対策としてははいいが、魚臭い水で家の掃除をするつもりか?」
「あー、十円玉でも沈めておくか」
「そこは普通に銅板でいいだろう」
綾人と圭斗の管理体制にもっと文明を使えと言うが圭斗も綾人もわかってないなと失笑する。
「陸が今家にあった火鉢で金魚を飼っているんですよ。そこからこっちに出張させて行ったり来たり楽しく面倒をみさせるつもりだから」
「ただお小遣いの為の手伝いより可愛がってる金魚へのご挨拶というプラスの楽しみがここにくる足を楽しませてくれるって奴だ」
ほーと感心している内田さんに内心ちょろいなと思う綾人だが
「ろくに小遣いに渡せてやれないからな。搾り取れる奴がそばにいるなら活用しないとな」
圭斗は確実に生活の為の節制を考えての言葉だが、親として満足な小遣いを渡せてやれなくて情けないとしょげる割には借金の返済と少なからずの貯金は着々と予定のペースを上回っている。
理由は理科部の仲間から野菜をいつももらえているので買わなくて良くなったと言うのが一番の理由。肉はうちから分けているので加工食品だけが求められる食費はどこまでも抑えられている。代わりに学校帰りの溜まり場になってしまったが、勉強するための集まる場所だからでてけと言えるはずもない。先生もいなくなり理科部は廃部となってしまったが、残ったメンバーで圭斗の家に集まり今も勉強を頑張っている姿勢に圭斗は黙って応援をするのだった。
ガラリ……
内田さんの店のドアが開けば長沢さんがそこにいた…俺たちをみて驚いたように目を見開くが
「吉野のが居るとは好都合。
あの家の鍵を借りてもいいだろうか。建具を直すのに呼び出すのも何だろう」
「まあ、その度に呼び出されるのも何だしね。長沢さんじゃなきゃ預けるにはできないけど」
「家の中はまだ何もない廃墟だがな」
取られるものは何もないだろうと圭斗は言うものの
「あそこは最低限のものを置く程度にするぞ」
綾人は密かに決意を固める。物を置き始めたら最後の予感、一瞬にしてゴミ屋敷に元通りだと身を震わすもあの状況を見ていない内田さんも長沢さんも大袈裟だなあと呆れていた。この場で唯一あの現場を知りながらも一部屋確保して居座った圭斗は綾人の宣言にそれがいい。物なんて置くもんじゃないと何度も頷くも
「最低限机は作ろう。
床に置いて食べるのは背中が曲がるぞ」
圭斗は体験からの忠告をするが
「いや、最低限の物は用意するぞ?
俺はそこまでミニマムに暮らすつもりはないからな?」
いくら何でもそこまでシンプルな暮らしはできんと逆に綾人、内田、長沢から距離を取られる圭斗は納得できない顔をするのだった。
127
お気に入りに追加
2,655
あなたにおすすめの小説
家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
裏路地古民家カフェでまったりしたい
雪那 由多
大衆娯楽
夜月燈火は亡き祖父の家をカフェに作り直して人生を再出発。
高校時代の友人と再会からの有無を言わさぬ魔王の指示で俺の意志一つなくリフォームは進んでいく。
あれ?
俺が思ったのとなんか違うけどでも俺が想像したよりいいカフェになってるんだけど予算内ならまあいいか?
え?あまい?
は?コーヒー不味い?
インスタントしか飲んだ事ないから分かるわけないじゃん。
はい?!修行いって来い???
しかも棒を銜えて筋トレってどんな修行?!
その甲斐あって人通りのない裏路地の古民家カフェは人はいないが穏やかな時間とコーヒーの香りと周囲の優しさに助けられ今日もオープンします。
第6回ライト文芸大賞で奨励賞を頂きました!ありがとうございました!
隣の古道具屋さん
雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。
幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。
そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。
修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる