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始まる季節に空を見上げ 5
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新しい土地を買ってまず始めなければいけない事。
「まずは草取りか」
何年も放置された家のお約束。
作業の為にも一応草刈りしなくてはと準備はしておいた。雪が溶けてくれないと何ともならないなと言いたいがさすが下界。日陰に積もってる程度にしか雪は積もってなく、先ほどまで吹雪いていた雪もいつの間にかおさまり、吹き付ける風は山の上ほどでもない。
日陰に雪が少し残る程度で、北側の軒先の雪は引き込んだ山水を集めた水槽から流れ出た水が軒下に作られた側溝を通る為に勝手に雪が溶ける仕様となっていた。
因みに先生の家にまでその融雪水路は届いていない。お隣独自の設備だけどお隣に使わせないあたり両家の関係を邪推してしまう。
「そういや先生が住む前も長い事空き家だっけ」
子供に引き取られど故郷の生家に興味を持たないあたり静かな確執とかあったのかと黙々と草刈りをしながら想像を広げていく。だがその前に
「内田さーん、ちょっと良いですか?」
声を上げながら家の中に入れば圭斗と床を剥がす様子におや?と少し様子が違う事に首を傾げる。
台所のフローリング。丁寧に剥がせばそこには大引きしかなく
「根太がないとか?」
面白い光景があった。
「綾人どうした?」
バールで一枚の床を剥がしたところを足がかりに丁寧に床を剥がしていた。
「ああ、うん。外の融雪の水路、先生の家の方まで伸ばしてもらいたいって内田さんにお願いに来たんだけど」
「ああ、そんなのはお安い御用だ。
それより綾人君、珍しい作りだから見においで」
そのままめくられた床の所まで行けば
「根太がないのは気づいたとは思うがこの床の厚さを見てみろ」
通常の十ニミリ程度の厚さではなく
「五十ミリぐらいある?」
「昔の断熱方法だ。綾人君の家の母屋の板の間も同じ作りだ」
「へー、あー、なんかバアちゃん言ってたような?」
「自分の家なのに知らないのか?」
「畳を上げる時は湿気を抜くのに合板を上げる程度にしか触らないからな」
「まあ、普通はそうだな。
綾人君の家が昔木を切って卸していたからそれなりに材木も選び放題だから贅沢な使い方ができるのは当然だが、一般の家でも憧れて作った家は少なくないな」
「へー」
「お前少しは自分の家に興味持て」
すっかり古民家の魅力に取り憑かれた圭斗の軽蔑をする視線が痛いが、ごく当たり前のように暮らしている家の床下まではさすがに興味持てない。
「大引きに直接床材を敷いてる。大引きと同じ太さだから四十五ミリだな。これだけの厚さがあれば床からの寒さも伝わってこない」
「なるほど。自然の断熱方法だな」
感心しながら聞けば更に続く。
「こうすると床がたわんだりしないし、床鳴りもしない。そして不思議な事に膝にかかる負担が少なくなる」
「そういやバアちゃん膝が痛いとかは言わなかったな」
言ってる暇がないくらいに毎日が忙しかったのもあるが
「それが愛情ってやつだ」
「ジイちゃんの愛情って分かりにくいからな」
箪笥然り、五右衛門風呂然り……これはジイちゃんの趣味か?まあ良い何て思ってるそばで内田さんはそうだと言うように頷いていた。きっと色々巻き込まれたんだろうなと苦労かけて悪いねと心の中で感謝をする。
「まあ、今はただ重いし大引きの負担になる。吉野みたいに立派な材木を用意できれば良いが、束石や床束に負担がかかりすぎるし何より金がかかりすぎる」
真顔で言うあたり相当かかるんだろうなと顔が引き攣らずにはいられないが綾人君には安いものかもしれないがなと言うのは離れの当初よりはるかに高額になった支払いを一括で支払った事が原因だろう。因みにその半分ほどを台所が占めている。飯田さんのリクエストの中で何故か最上級のもので揃えた素材に俺は請求書を見て店でも開くつもりかと思ったのだからあの離れがどこに向かって進んでいくのか俺の中では迷走していたが終わってしまえばごく普通の飯田さんのおもちゃ。うん。きっと問題なし!
隣で内田さんが一生懸命に語る言葉を聞きながらこの家もどんなふうに変わるのかなー何て呑気に考えていれば圭斗に話をしっかり聞けと足を踏まれてしまった。酷い。
「でも今は断熱材の物も良くなったし、今ではこんな木材も中々手に入り辛い」
「ふーん」
材木市場なんてわからないから適当に相槌を打っておく。
「長沢が小さくする台所の材木を磨き直して材料にすると言ってな、先生の家は悪いが何だか匂うから。色々変えないといけないだろう」
やっぱりビール臭はファ●リーズじゃ消せれなかったかと家にまで染みつく臭いって何だよと恨んでしまうのは当然だと思う。
「圭斗悪いが外を見てくる」
「おう、こっちはやっておくよ」
師匠と弟子は蟠りがないと言うように仕事を進める中で俺は内田さんを連れて引きこんだ山水の貯水槽に案内した。
山から樋を伝って集められた貯水槽はコンクリートで作っただけの物。上部から排水できるように穴があるが下の方にも水を抜くように穴があった。蓋がわりの板を外せば透明な水の底では砂も溜まり、下の整備用の排水用の穴から水を抜いた。水の流れからすぐに砂が舞い上がって流されていくものの全てが流れていくわけではない。
「こんな物だよな」
規模が変わり幾つも並べばうちの魚の養殖場と変わらない作りとレベル。
「吉野の養殖場と同じだな」
内田さんも同じ感想に笑いなが久しぶりに勢いよく水を流したこともありゴミが水路を流れていく。ちょうどよくモップもあり、金網の側溝の蓋をはずし水路を掃除しながら水の流れを追っていく。
北側の軒下を通り、排水溝から九十度に曲がり、先生との家の間を通るように軒下を走って行って斜面の下に流れる配管へと消えていった。
「ねえ内田さん。先生の家の前の人とこの家の人、すごい仲悪かったでしょ?」
聞かずにはいられない疑問に内田さんは苦笑する。
「それはもう、先生の前の持ち主も人が悪いがここの人もかなり、な?」
「は、ははは……」
「先生の家の前の人が吉野の木で内田で家を作るのを見て、出来を見た後真似をしてな。ただの真似じゃなくってより良い家をって。
当然だが金がかかってお前のせいだ!お前も金を出せってなってな……」
「圭斗の実家のような家が他にあるなんて」
「あの当時は割と良くあったぞ」
「マジか……」
「うんざりしたのはうちもだが吉野の大旦那もうんざりしてそう言う奴にはって良い木材を大量に売りつけやがった」
「大旦那って曾祖父さんだよな?会った事ないけど」
写真の、仏間に飾られている程度でしか知らないが。
「おかげで支払いに生活が厳しくてな、五人子供がいたと思ったが、それは見栄ばっかりの親を毛嫌いして」
もう言わなくても理解できた。
「で、先生の家の人はあまりに絡まれるから嫌気がさして出ていったと」
「うわあ」
「でもただでは逃げなくって、奥の家に車で出入り出来ないようにわざわざしっかりとした柵を作って行ったと……」
「悪いけど柵も外してもらえます?」
「おう、今更必要はないからな」
カカカと高笑いして
「水路は二軒の北側の庇の下を通るようにして道路の排水溝に流すように、だな」
「間を通る水路は通路を作ってもらうから潰さないといけないからな」
言えば内田さんは二軒の間の壁も壊さないとなと言って街を望む庭の方へと足を運びくるりと山を見る方へと視線を向ける。
「廊下を作ったこちら側に窓を作って中庭を作ろう」
「良いですね」
「そうなると作業場の方からも見えるように窓を作ろう」
「反対側は納戸だけどそっちからも見えるようにしたいですね」
「それは良い眺めだな」
少しの間何かに馳せた視線で街を眺め
「前の持ち主達は仲が悪かったが、その家はどちらも吉野と内田で作った家だ。そして長沢もいる。やっとこの家達も落ち着くだろう」
街を見るように、空を見上げながら込み上げる何かにを誤魔化すようにしんみりと語る内田さんの隣で俺は『先生がゴミ屋敷にしてごめんなさい!!!』と言う謝罪を心の中で繰り返すのだった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
『始まる季節に空を見上げ全力で謝罪する』
さすがにこんなタイトルつけれませんでした。
と言うようにタイトルは大体全部最後の言葉を削っているけど、それで良い雰囲気になるってマジックだよねといつも思ってますと告白。
「まずは草取りか」
何年も放置された家のお約束。
作業の為にも一応草刈りしなくてはと準備はしておいた。雪が溶けてくれないと何ともならないなと言いたいがさすが下界。日陰に積もってる程度にしか雪は積もってなく、先ほどまで吹雪いていた雪もいつの間にかおさまり、吹き付ける風は山の上ほどでもない。
日陰に雪が少し残る程度で、北側の軒先の雪は引き込んだ山水を集めた水槽から流れ出た水が軒下に作られた側溝を通る為に勝手に雪が溶ける仕様となっていた。
因みに先生の家にまでその融雪水路は届いていない。お隣独自の設備だけどお隣に使わせないあたり両家の関係を邪推してしまう。
「そういや先生が住む前も長い事空き家だっけ」
子供に引き取られど故郷の生家に興味を持たないあたり静かな確執とかあったのかと黙々と草刈りをしながら想像を広げていく。だがその前に
「内田さーん、ちょっと良いですか?」
声を上げながら家の中に入れば圭斗と床を剥がす様子におや?と少し様子が違う事に首を傾げる。
台所のフローリング。丁寧に剥がせばそこには大引きしかなく
「根太がないとか?」
面白い光景があった。
「綾人どうした?」
バールで一枚の床を剥がしたところを足がかりに丁寧に床を剥がしていた。
「ああ、うん。外の融雪の水路、先生の家の方まで伸ばしてもらいたいって内田さんにお願いに来たんだけど」
「ああ、そんなのはお安い御用だ。
それより綾人君、珍しい作りだから見においで」
そのままめくられた床の所まで行けば
「根太がないのは気づいたとは思うがこの床の厚さを見てみろ」
通常の十ニミリ程度の厚さではなく
「五十ミリぐらいある?」
「昔の断熱方法だ。綾人君の家の母屋の板の間も同じ作りだ」
「へー、あー、なんかバアちゃん言ってたような?」
「自分の家なのに知らないのか?」
「畳を上げる時は湿気を抜くのに合板を上げる程度にしか触らないからな」
「まあ、普通はそうだな。
綾人君の家が昔木を切って卸していたからそれなりに材木も選び放題だから贅沢な使い方ができるのは当然だが、一般の家でも憧れて作った家は少なくないな」
「へー」
「お前少しは自分の家に興味持て」
すっかり古民家の魅力に取り憑かれた圭斗の軽蔑をする視線が痛いが、ごく当たり前のように暮らしている家の床下まではさすがに興味持てない。
「大引きに直接床材を敷いてる。大引きと同じ太さだから四十五ミリだな。これだけの厚さがあれば床からの寒さも伝わってこない」
「なるほど。自然の断熱方法だな」
感心しながら聞けば更に続く。
「こうすると床がたわんだりしないし、床鳴りもしない。そして不思議な事に膝にかかる負担が少なくなる」
「そういやバアちゃん膝が痛いとかは言わなかったな」
言ってる暇がないくらいに毎日が忙しかったのもあるが
「それが愛情ってやつだ」
「ジイちゃんの愛情って分かりにくいからな」
箪笥然り、五右衛門風呂然り……これはジイちゃんの趣味か?まあ良い何て思ってるそばで内田さんはそうだと言うように頷いていた。きっと色々巻き込まれたんだろうなと苦労かけて悪いねと心の中で感謝をする。
「まあ、今はただ重いし大引きの負担になる。吉野みたいに立派な材木を用意できれば良いが、束石や床束に負担がかかりすぎるし何より金がかかりすぎる」
真顔で言うあたり相当かかるんだろうなと顔が引き攣らずにはいられないが綾人君には安いものかもしれないがなと言うのは離れの当初よりはるかに高額になった支払いを一括で支払った事が原因だろう。因みにその半分ほどを台所が占めている。飯田さんのリクエストの中で何故か最上級のもので揃えた素材に俺は請求書を見て店でも開くつもりかと思ったのだからあの離れがどこに向かって進んでいくのか俺の中では迷走していたが終わってしまえばごく普通の飯田さんのおもちゃ。うん。きっと問題なし!
隣で内田さんが一生懸命に語る言葉を聞きながらこの家もどんなふうに変わるのかなー何て呑気に考えていれば圭斗に話をしっかり聞けと足を踏まれてしまった。酷い。
「でも今は断熱材の物も良くなったし、今ではこんな木材も中々手に入り辛い」
「ふーん」
材木市場なんてわからないから適当に相槌を打っておく。
「長沢が小さくする台所の材木を磨き直して材料にすると言ってな、先生の家は悪いが何だか匂うから。色々変えないといけないだろう」
やっぱりビール臭はファ●リーズじゃ消せれなかったかと家にまで染みつく臭いって何だよと恨んでしまうのは当然だと思う。
「圭斗悪いが外を見てくる」
「おう、こっちはやっておくよ」
師匠と弟子は蟠りがないと言うように仕事を進める中で俺は内田さんを連れて引きこんだ山水の貯水槽に案内した。
山から樋を伝って集められた貯水槽はコンクリートで作っただけの物。上部から排水できるように穴があるが下の方にも水を抜くように穴があった。蓋がわりの板を外せば透明な水の底では砂も溜まり、下の整備用の排水用の穴から水を抜いた。水の流れからすぐに砂が舞い上がって流されていくものの全てが流れていくわけではない。
「こんな物だよな」
規模が変わり幾つも並べばうちの魚の養殖場と変わらない作りとレベル。
「吉野の養殖場と同じだな」
内田さんも同じ感想に笑いなが久しぶりに勢いよく水を流したこともありゴミが水路を流れていく。ちょうどよくモップもあり、金網の側溝の蓋をはずし水路を掃除しながら水の流れを追っていく。
北側の軒下を通り、排水溝から九十度に曲がり、先生との家の間を通るように軒下を走って行って斜面の下に流れる配管へと消えていった。
「ねえ内田さん。先生の家の前の人とこの家の人、すごい仲悪かったでしょ?」
聞かずにはいられない疑問に内田さんは苦笑する。
「それはもう、先生の前の持ち主も人が悪いがここの人もかなり、な?」
「は、ははは……」
「先生の家の前の人が吉野の木で内田で家を作るのを見て、出来を見た後真似をしてな。ただの真似じゃなくってより良い家をって。
当然だが金がかかってお前のせいだ!お前も金を出せってなってな……」
「圭斗の実家のような家が他にあるなんて」
「あの当時は割と良くあったぞ」
「マジか……」
「うんざりしたのはうちもだが吉野の大旦那もうんざりしてそう言う奴にはって良い木材を大量に売りつけやがった」
「大旦那って曾祖父さんだよな?会った事ないけど」
写真の、仏間に飾られている程度でしか知らないが。
「おかげで支払いに生活が厳しくてな、五人子供がいたと思ったが、それは見栄ばっかりの親を毛嫌いして」
もう言わなくても理解できた。
「で、先生の家の人はあまりに絡まれるから嫌気がさして出ていったと」
「うわあ」
「でもただでは逃げなくって、奥の家に車で出入り出来ないようにわざわざしっかりとした柵を作って行ったと……」
「悪いけど柵も外してもらえます?」
「おう、今更必要はないからな」
カカカと高笑いして
「水路は二軒の北側の庇の下を通るようにして道路の排水溝に流すように、だな」
「間を通る水路は通路を作ってもらうから潰さないといけないからな」
言えば内田さんは二軒の間の壁も壊さないとなと言って街を望む庭の方へと足を運びくるりと山を見る方へと視線を向ける。
「廊下を作ったこちら側に窓を作って中庭を作ろう」
「良いですね」
「そうなると作業場の方からも見えるように窓を作ろう」
「反対側は納戸だけどそっちからも見えるようにしたいですね」
「それは良い眺めだな」
少しの間何かに馳せた視線で街を眺め
「前の持ち主達は仲が悪かったが、その家はどちらも吉野と内田で作った家だ。そして長沢もいる。やっとこの家達も落ち着くだろう」
街を見るように、空を見上げながら込み上げる何かにを誤魔化すようにしんみりと語る内田さんの隣で俺は『先生がゴミ屋敷にしてごめんなさい!!!』と言う謝罪を心の中で繰り返すのだった。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
『始まる季節に空を見上げ全力で謝罪する』
さすがにこんなタイトルつけれませんでした。
と言うようにタイトルは大体全部最後の言葉を削っているけど、それで良い雰囲気になるってマジックだよねといつも思ってますと告白。
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