251 / 976
白銀の世界で春を謳う 3
しおりを挟む
プロの皆様の本気の遊びはほんとに需要在るのだろうかと思うも、新たな視聴者の獲得という結果でぐっと伸びた結果を出したのだ。
何しろ本当に腕のいい職人集団。
説明も上手く作業の一つ一つの意味をきちんと説明してくれて俺を含めた素人の方にもわかりやすく山川さん、井上さん、森下さんのお三方はお弟子さんをお持ちと言う事もあり、教師の如くかゆい所に手の届く説明は教本のようになっている回もある。コメントでも作業の仕方で盛り上がり、さらにこの三人より長沢さんと西野さん長老コンビの職人技が女性のハートを射止めていた。直した建具の細工の繊細さや長沢さんの奥さんが用意した手漉きの和紙の襖の風合いの優しさ。即席で作った花器などの彫刻、果てには浮かべた笑顔が可愛いと謎の高評価に俺達はジェラシーを覚える。
「俺だって笑うとかわいいんだから」
と自分でも疑問を持ちながら言えば
「だったら素顔を隠すマスクを取ればー?画像処理しただけなんだからすぐに取れるだろー?」
なんて先生は至極当然のように言う。今更感もあるし、俺達のチャームポイントにもなる。何よりばれているだろうが親戚一同にこうやって少しでも稼いでいる所を知られるとまたたかりに来る、そんな恐怖に今もこのマスクは外せずにいる。
いつかはどこかで決着がつく日が来るのだろうと思っているけど、負ける気はしないし、負けるつもりもないし、勝つ!
もっとも夏樹と陽菜の二人でグロッキーになるのだから本当に勝てるのかと先生は心配げな視線を隠せずにいるが、自分をだまして踏ん張る事ぐらいはできる。
バアちゃんにあんな寂しい思いをさせて一人旅立たせたあいつらを許す事は今も出来ないのだから。
学校に連絡が来て急いで病院に足を運び、何とか間際には間に合った。
バアちゃんは俺の手を握り
「ああ、幸一来てくれたんだね。啓治、弘蔵、勝司お前達も。
お前達に囲まれて私は幸せだ」
涙ながらの最後の言葉。
俺の手を握り、病院の先生と沢村さんと俺を連れてきた校長先生に幻を重ねての言葉に誰もが悔し涙を流した。なんだかんだと寂しくないと言いつつも息子の帰りを信じて待ち続けた母親の姿に俺は怒りを越えた感情がある事を知った。
学校から病院に来るまでの短い間で何度電話をするも誰も出てくれず、その日の夜になってやっと連絡が付いた。
何でもっと早く連絡をといわれた物の連絡の履歴を見せさせてそれは黙らせた。
見舞いに来いと言っても来ず、母さんの弟と沢村さんが葬儀屋の手配を整えてくれたのにこんなちっぽけな葬儀かと怒り出す始末。最もそこはべしゃりのプロの沢村さんが黙らせてくれた物の、高校生の俺に何の何が出来るのかという様に宮下のおじさんおばさん達も手を貸してくれた。
見事我が家の実態を地元の人の目に晒す結果となったが、それはそれで親父を含めた親戚一同をこの村から追い出すには十分な成果となった。代わりに俺が残る事になったが、今となってはこれも良い結果だろう。
もんもんとしてしまうのは本当にそろそろマスクのアイコンを外そうかどうかと考えている所だ。宮下のデザインしたアイコンも愛着があるし、見慣れたのもある。今更素顔を晒す反響はどうでもいいが、やはり心が弱い俺の問題であって、何かきっかけが欲しい思っている。言えなかったが宮下が京都に引っ越す時にマスクを取ろうかと言おうとして言えなかった。離れの完成を経て取ろうかと言いだそうとしても言えなかったし、今もまだ言い出せないままでもある。
この俺の葛藤を知ってる先生は何か言いたげに俺を見るだけで決して何も言わない事に腹を立てるもそれは単なるやつ当たりで先生には酷い迷惑だなと悪いとは理解しているのに甘えてしまう。
「綾人さっきから百面相して何か考えてるのは先生的にはどうでもいいけど、明日から始めるんでしょ?鳥小屋の二階の改造」
「ん?ああ、ぼちぼち晴れ間も見えだしたしあてにならない天気予報でも晴れになってるし。烏骨鶏を外に出した間に少しいじりだそうかって圭斗が言ってくれたんだ。とりあえず抜けそうな階段の補修から」
一瞬先生の声を聴き損ねたけど目はちょうど口元を見ていたのでそこから何を言い出したのか拾い上げて返答をする。だけど先生は俺をよく理解した物で人の話を聞いてないなと半眼で睨んでいた。
「あとついでに烏骨鶏の奴ら数えるから手伝ってー」
「家畜伝染病予防法だっけ?」
「二月から六月の半ばまでに報告すればいいけど、さっさと報告は済ませた方が良いだろうし。十万円以下の罰則もあるからね。何よりネットで申告できるからさっさとやれって話しだ」
「えー、烏骨鶏ってそんな書類出さないといけないの?」
蓮司まで興味深げに聞いて来る。
「昔文鳥を飼ってたんだけど、ひょっとしてとか?」
「全部が全部じゃないよ。インコとかハムスターとかは対象じゃなかったはずだし。鳥インフルエンザとか家畜の伝染病をばらまきそうなのが対象の調査だったとおもったから」
「へー、飼うのも大変だな」
「飼料の代金もかかるし、世話もかかる。何よりせっかく飼ってるのに逃げられてばかりって言うのもつまらないしな。そこそこ構ってやればそこそこ甘えてくれるぞ」
餌やり機として。
……切ねえ。
「まあ、可愛いけど……飼えないな。
ここだから気兼ねなく庭に放せるって言うか」
「飼うだけなら犬用ゲージサイズがあれば十分だぞ」
「室内飼い前提かよ。こんな伸び伸びした姿を見せておいてひどくね?」
「田舎ならではの可愛がり方だ」
「いいさ。俺はお前の烏骨鶏を飼い主より可愛がって飼い主よりモテモテになって満足するさ」
それは嬉しい事なのかと先生は突っ込む中綾人は笑う。
「烏骨鶏の物忘れの速さを侮るな?」
東京に帰ればもう忘れられると言うことを言われて改めて鳥頭と言う言葉を思い出す蓮司だった。
何しろ本当に腕のいい職人集団。
説明も上手く作業の一つ一つの意味をきちんと説明してくれて俺を含めた素人の方にもわかりやすく山川さん、井上さん、森下さんのお三方はお弟子さんをお持ちと言う事もあり、教師の如くかゆい所に手の届く説明は教本のようになっている回もある。コメントでも作業の仕方で盛り上がり、さらにこの三人より長沢さんと西野さん長老コンビの職人技が女性のハートを射止めていた。直した建具の細工の繊細さや長沢さんの奥さんが用意した手漉きの和紙の襖の風合いの優しさ。即席で作った花器などの彫刻、果てには浮かべた笑顔が可愛いと謎の高評価に俺達はジェラシーを覚える。
「俺だって笑うとかわいいんだから」
と自分でも疑問を持ちながら言えば
「だったら素顔を隠すマスクを取ればー?画像処理しただけなんだからすぐに取れるだろー?」
なんて先生は至極当然のように言う。今更感もあるし、俺達のチャームポイントにもなる。何よりばれているだろうが親戚一同にこうやって少しでも稼いでいる所を知られるとまたたかりに来る、そんな恐怖に今もこのマスクは外せずにいる。
いつかはどこかで決着がつく日が来るのだろうと思っているけど、負ける気はしないし、負けるつもりもないし、勝つ!
もっとも夏樹と陽菜の二人でグロッキーになるのだから本当に勝てるのかと先生は心配げな視線を隠せずにいるが、自分をだまして踏ん張る事ぐらいはできる。
バアちゃんにあんな寂しい思いをさせて一人旅立たせたあいつらを許す事は今も出来ないのだから。
学校に連絡が来て急いで病院に足を運び、何とか間際には間に合った。
バアちゃんは俺の手を握り
「ああ、幸一来てくれたんだね。啓治、弘蔵、勝司お前達も。
お前達に囲まれて私は幸せだ」
涙ながらの最後の言葉。
俺の手を握り、病院の先生と沢村さんと俺を連れてきた校長先生に幻を重ねての言葉に誰もが悔し涙を流した。なんだかんだと寂しくないと言いつつも息子の帰りを信じて待ち続けた母親の姿に俺は怒りを越えた感情がある事を知った。
学校から病院に来るまでの短い間で何度電話をするも誰も出てくれず、その日の夜になってやっと連絡が付いた。
何でもっと早く連絡をといわれた物の連絡の履歴を見せさせてそれは黙らせた。
見舞いに来いと言っても来ず、母さんの弟と沢村さんが葬儀屋の手配を整えてくれたのにこんなちっぽけな葬儀かと怒り出す始末。最もそこはべしゃりのプロの沢村さんが黙らせてくれた物の、高校生の俺に何の何が出来るのかという様に宮下のおじさんおばさん達も手を貸してくれた。
見事我が家の実態を地元の人の目に晒す結果となったが、それはそれで親父を含めた親戚一同をこの村から追い出すには十分な成果となった。代わりに俺が残る事になったが、今となってはこれも良い結果だろう。
もんもんとしてしまうのは本当にそろそろマスクのアイコンを外そうかどうかと考えている所だ。宮下のデザインしたアイコンも愛着があるし、見慣れたのもある。今更素顔を晒す反響はどうでもいいが、やはり心が弱い俺の問題であって、何かきっかけが欲しい思っている。言えなかったが宮下が京都に引っ越す時にマスクを取ろうかと言おうとして言えなかった。離れの完成を経て取ろうかと言いだそうとしても言えなかったし、今もまだ言い出せないままでもある。
この俺の葛藤を知ってる先生は何か言いたげに俺を見るだけで決して何も言わない事に腹を立てるもそれは単なるやつ当たりで先生には酷い迷惑だなと悪いとは理解しているのに甘えてしまう。
「綾人さっきから百面相して何か考えてるのは先生的にはどうでもいいけど、明日から始めるんでしょ?鳥小屋の二階の改造」
「ん?ああ、ぼちぼち晴れ間も見えだしたしあてにならない天気予報でも晴れになってるし。烏骨鶏を外に出した間に少しいじりだそうかって圭斗が言ってくれたんだ。とりあえず抜けそうな階段の補修から」
一瞬先生の声を聴き損ねたけど目はちょうど口元を見ていたのでそこから何を言い出したのか拾い上げて返答をする。だけど先生は俺をよく理解した物で人の話を聞いてないなと半眼で睨んでいた。
「あとついでに烏骨鶏の奴ら数えるから手伝ってー」
「家畜伝染病予防法だっけ?」
「二月から六月の半ばまでに報告すればいいけど、さっさと報告は済ませた方が良いだろうし。十万円以下の罰則もあるからね。何よりネットで申告できるからさっさとやれって話しだ」
「えー、烏骨鶏ってそんな書類出さないといけないの?」
蓮司まで興味深げに聞いて来る。
「昔文鳥を飼ってたんだけど、ひょっとしてとか?」
「全部が全部じゃないよ。インコとかハムスターとかは対象じゃなかったはずだし。鳥インフルエンザとか家畜の伝染病をばらまきそうなのが対象の調査だったとおもったから」
「へー、飼うのも大変だな」
「飼料の代金もかかるし、世話もかかる。何よりせっかく飼ってるのに逃げられてばかりって言うのもつまらないしな。そこそこ構ってやればそこそこ甘えてくれるぞ」
餌やり機として。
……切ねえ。
「まあ、可愛いけど……飼えないな。
ここだから気兼ねなく庭に放せるって言うか」
「飼うだけなら犬用ゲージサイズがあれば十分だぞ」
「室内飼い前提かよ。こんな伸び伸びした姿を見せておいてひどくね?」
「田舎ならではの可愛がり方だ」
「いいさ。俺はお前の烏骨鶏を飼い主より可愛がって飼い主よりモテモテになって満足するさ」
それは嬉しい事なのかと先生は突っ込む中綾人は笑う。
「烏骨鶏の物忘れの速さを侮るな?」
東京に帰ればもう忘れられると言うことを言われて改めて鳥頭と言う言葉を思い出す蓮司だった。
127
お気に入りに追加
2,655
あなたにおすすめの小説
家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
裏路地古民家カフェでまったりしたい
雪那 由多
大衆娯楽
夜月燈火は亡き祖父の家をカフェに作り直して人生を再出発。
高校時代の友人と再会からの有無を言わさぬ魔王の指示で俺の意志一つなくリフォームは進んでいく。
あれ?
俺が思ったのとなんか違うけどでも俺が想像したよりいいカフェになってるんだけど予算内ならまあいいか?
え?あまい?
は?コーヒー不味い?
インスタントしか飲んだ事ないから分かるわけないじゃん。
はい?!修行いって来い???
しかも棒を銜えて筋トレってどんな修行?!
その甲斐あって人通りのない裏路地の古民家カフェは人はいないが穏やかな時間とコーヒーの香りと周囲の優しさに助けられ今日もオープンします。
第6回ライト文芸大賞で奨励賞を頂きました!ありがとうございました!
隣の古道具屋さん
雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。
幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。
そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。
修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる