237 / 976
春は遠いよどこまでも 4
しおりを挟む
スキーウェアを着て雪まみれになってやって来た飯田さんはかわいい離れの竈を温めようとここ数日一晩中ドラマにくぎ付けになっている蓮司の様子にうわぁと引いていた。
離れの電気が付いているからなんだろうと思って覗いてみたら目の下にくっきりと浮かべたくまと片づけられてない食器、冷えたお茶のカップ、手の付けられてない夜食が手の届く範囲で蓮司を囲むように置かれていたのだ。
猫背で前かがみになって何やらぶつぶつぶつぶつ……
その何かに憑りつかれた様子を見てそっと離れの扉を閉めるのだった。
「蓮司君に何があったのですか?」
「さあ?俺もよくわからないからとりあえず水分と栄養は取らせるようにしてるんだけど、もうずっとこんな状態で何か言ってるんだけどよくわからなくってさ。
先生にもどうすればいいか聞いたけど放っておけばいいって言うし」
近づきたくないと綾人はオブラートに包んで主張する。
「さすがにダメでしょう。
目の下のくまもですが、目も充血もしてるし、唇も乾燥して皮がめくれてます。水分不足なのでとりあえずこのドラマが終わったらテレビを消して離れから引きずり出しますよ」
「ええ……」
関わりたくないと距離を取るも飯田さんは溜息をついていきなり納屋へと俺の手を掴んで飛び込んだ。
勇者だー!
心の中はそんなフィーバーに沸いているもいきなりテレビのコンセントを抜いて、ふと視線が上がった蓮司の腕を掴み、もう一方の手でつかまれてた俺はそこで放置されて、ひっくり返ったコップ達とご対面する事になった。あとよろしくじゃないだろうなと、近くに在ったタオルでざっと拭いただけで追いかけて行けば何が起きたか判らないと言う顔の蓮司を飯田さんは屋根から落ちた雪が積もった雪山に蓮司を放り投げるのだった。
「ええ……」
思わず玄関にしがみついてその様子を見守ってしまう。
暖かな部屋は半袖でも十分なほど快適空間で、足は夜風呂に入ってから裸足のまま。
絶対冷たい奴だと目を瞑って仕舞えば深と静かな雪で閉ざされた無音の世界が暫く続く。あまりの静かさにゆっくりと目を開けて様子を伺えば仁王立ちした飯田さんとなかなかどうして固まることのないパウダースノーの雪質の山をかき分けては崩れ、山を飛び越えるように一気に寒さを覚えた顔が必死になってやってきた。這いずってやっと出てきた顔に飯田さんは握りしめても固まらない雪玉を蓮司に投げつけた。
「少しは目が覚めましたか?」
「え、永遠の眠りに着くところでした」
ぶるぶると震える様子と反論しない態度に反省はここまでと言うように手を差し伸ばして
「今じゃなくてもいずれすぐの話ですよ」
厳しめな声に心当たりあるのか蓮司はしゅんとしてしまった。
「何か言うことは?」
「大変ご迷惑をおかけしました」
うんとひとつだけうなづき
「さあ、今日はテレビを止めて、まずは寝ましょう」
言いながら離れに敷かれた布団へと放り込み、おやすみなさいと俺の腕を引っ張って母屋に戻るのだった。
離れの電気が付いているからなんだろうと思って覗いてみたら目の下にくっきりと浮かべたくまと片づけられてない食器、冷えたお茶のカップ、手の付けられてない夜食が手の届く範囲で蓮司を囲むように置かれていたのだ。
猫背で前かがみになって何やらぶつぶつぶつぶつ……
その何かに憑りつかれた様子を見てそっと離れの扉を閉めるのだった。
「蓮司君に何があったのですか?」
「さあ?俺もよくわからないからとりあえず水分と栄養は取らせるようにしてるんだけど、もうずっとこんな状態で何か言ってるんだけどよくわからなくってさ。
先生にもどうすればいいか聞いたけど放っておけばいいって言うし」
近づきたくないと綾人はオブラートに包んで主張する。
「さすがにダメでしょう。
目の下のくまもですが、目も充血もしてるし、唇も乾燥して皮がめくれてます。水分不足なのでとりあえずこのドラマが終わったらテレビを消して離れから引きずり出しますよ」
「ええ……」
関わりたくないと距離を取るも飯田さんは溜息をついていきなり納屋へと俺の手を掴んで飛び込んだ。
勇者だー!
心の中はそんなフィーバーに沸いているもいきなりテレビのコンセントを抜いて、ふと視線が上がった蓮司の腕を掴み、もう一方の手でつかまれてた俺はそこで放置されて、ひっくり返ったコップ達とご対面する事になった。あとよろしくじゃないだろうなと、近くに在ったタオルでざっと拭いただけで追いかけて行けば何が起きたか判らないと言う顔の蓮司を飯田さんは屋根から落ちた雪が積もった雪山に蓮司を放り投げるのだった。
「ええ……」
思わず玄関にしがみついてその様子を見守ってしまう。
暖かな部屋は半袖でも十分なほど快適空間で、足は夜風呂に入ってから裸足のまま。
絶対冷たい奴だと目を瞑って仕舞えば深と静かな雪で閉ざされた無音の世界が暫く続く。あまりの静かさにゆっくりと目を開けて様子を伺えば仁王立ちした飯田さんとなかなかどうして固まることのないパウダースノーの雪質の山をかき分けては崩れ、山を飛び越えるように一気に寒さを覚えた顔が必死になってやってきた。這いずってやっと出てきた顔に飯田さんは握りしめても固まらない雪玉を蓮司に投げつけた。
「少しは目が覚めましたか?」
「え、永遠の眠りに着くところでした」
ぶるぶると震える様子と反論しない態度に反省はここまでと言うように手を差し伸ばして
「今じゃなくてもいずれすぐの話ですよ」
厳しめな声に心当たりあるのか蓮司はしゅんとしてしまった。
「何か言うことは?」
「大変ご迷惑をおかけしました」
うんとひとつだけうなづき
「さあ、今日はテレビを止めて、まずは寝ましょう」
言いながら離れに敷かれた布団へと放り込み、おやすみなさいと俺の腕を引っ張って母屋に戻るのだった。
応援ありがとうございます!
27
お気に入りに追加
2,605
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる