215 / 976
冬の訪れ 4
しおりを挟む
「綾っち―!何かバイトさせて!!!」
何を血迷ってか三年チームの植田、水野、上島ブラザーズが水野の車に乗ってやって来た。ちゃんとタイヤもスタッドに変えているあたりは認めてやろう。
だがだ。
「お前らはいきなり何を……」
金曜日の夕方に何故かお泊りセットのような大荷物を持って押しかけてきた四人組に時計を見るもまだ四時過ぎ。学校終わったら直できたなと睨みつける。金曜は来るなと言ったはずだと言う事を聞かない奴らにイラッとする。本音を言えばもう少し炬燵でごろごろしていたいと思うもアポなしの襲撃に全く無防備な俺の姿はかなり人相が悪いツラになっている自覚はある。
だけど四人とも両手をついて
「お願いです!現金収入を下さい!」
「他を当れ」
何をあほな事を言ってると先頭に立って頭を下げる植田を見てこの計画は植田プロジェクトと言う事だけは判った。というか植田の企画と言う事だけで失敗の匂いしかしないだろうと突っ込んでしまうが
「一応圭斗さんの所にお願いしに行きました!」
「よく殺されなかったな」
「あの人ガチでした。これを言ったらダメなのはわかってますが篠田一族だとじっかんしました」
「わかってるのなら二度と言うなよ」
「はい」
圭斗と陸斗が生家で受けた仕打ちの全部を俺は知らない。だけど子供が親を見捨てるぐらいなのだからよほどの事だろうと思う事にしている。俺の家が上か圭斗の家が上かなんて、まだ常識あるバアちゃんに空付けられた事を思えばましなのかと思うも人の不幸は比べるもんじゃないと珍しく怒る先生の言葉は素直に受け取った。
俺が本気で怒っているのを理解してかしょぼんとする植田だが言わずにはいられないと言う気持ちもわからなくない。夏に少し会ったあれだけで巷の噂通りの非常識と言う事を理解できるのだから。改めて危険なのはよく分かったつもりだから近づかないようにするのが対策だ。
とは言え、仕事なんて……あった。
「折角来たんだから文句は言わさないぞ」
「「「「もちろんです!」」」」
その気合いの良さに俺はにっこりと笑い
「薪割頼むわ」
「「おふ……」」
去年も卒業した三年達に連れて来られて一日薪割をさせられた経験のある植田と水野はその苦行を思い起こしてか涙を流していたが、さすが農家の子供の上島兄弟はどれから片づけますかとなれた返答は頼もしいと既に薄暗い外を見ながら
「今日は暗いからもうやらないぞ。先日熊も出たし明日明るくなったら上で丸太を切ってからここに運んで割るぞ」
「いまなんと?」
空耳ですかと問う上島兄に
「昔の吉野がらみの人に木の倒し方を教えてもらってるんだ。とりあえずこの間から何本か立ち枯れした木で練習したからそれを割って薪にしてもらいたい」
「こんな季節になんて珍しいですね」
「まぁ、本当なら冬は切らない季節だけどもう枯れている木だから。雪の重みで倒れるぐらいなら先に倒しておこうってな。その方が狩猟の季節にも安全だし。そもそも枯れてるから季節なんて関係ないし、木材として使うわけじゃないから問題ない」
「あ、そうか。薪にするんだったね」
弟の達弥が思い出したと言えばそうだったと言う高校三年ズ。こいつらには心配しかないと思っている間に上島兄の颯太が台所に立って今晩のごはんを作ると言いだした。何やら家から食材を持って来てくれたらしいからありがたく頂く事にして置いた。
「あーやとー、なんか不吉な番号の車があったんだけどー」
「あ、先生きた。先生も相変わらず綾っちにたかってるな」
大人なのに情けないと言う植田に
「俺と綾人は持ちつ持たれつな関係なの。って言うかお前らなんでいるんだ?」
先生は自分のお酒と串揚げを持って風呂の準備をする。その姿を見て相変わらずダメな先生だなあと生暖かい目で見守られながらも風呂にいく先生がたくましいなと思うが、くるりと振り向いた先生は
「そういや綾人、今年はいつまで外の風呂を焚く?」
「あー、毎年雪が積もる頃だからそろそろかな」
紅葉も鮮やかに色づく様子に雪が降る日が近い事を想定するも
「まあ、今夜が初雪だろうからそろそろ今年の五右衛門風呂も終わりか」
冬が来るなと言うも窓の外を見れば何やら白いものが舞っている様な気がする。
例えば雪の様な……
「マジか?!」
水野が嘘だ!!!とうめくも積もりもしないべちゃっとした水分を多く含む初雪に先生はタオルを頭に巻いて風呂場へと向かうのを見送った。
「それよりも綾っち、烏骨鶏鶏小屋に入れなくていいの?」
上島弟が開け広げた玄関から侵入しようとする頭に青のペンでマーキングされた烏骨鶏を捕まえて捕獲された姿をみて
「ああ、忘れてた」
ぼんやりとした返事になってしまった。だけど誰も気にせずに
「小屋に入れてくるよ」
「頼む。あとおやつ箱のミルワームをやっていいぞ」
「やった!」
烏骨鶏の奴らモテモテだなと感心しながら、大人しく抱かれ続けるマーキングの烏骨鶏を綾人はこっそりとちけた名前で良かったなと風に消えそうな声で語りかけるのだった。
何を血迷ってか三年チームの植田、水野、上島ブラザーズが水野の車に乗ってやって来た。ちゃんとタイヤもスタッドに変えているあたりは認めてやろう。
だがだ。
「お前らはいきなり何を……」
金曜日の夕方に何故かお泊りセットのような大荷物を持って押しかけてきた四人組に時計を見るもまだ四時過ぎ。学校終わったら直できたなと睨みつける。金曜は来るなと言ったはずだと言う事を聞かない奴らにイラッとする。本音を言えばもう少し炬燵でごろごろしていたいと思うもアポなしの襲撃に全く無防備な俺の姿はかなり人相が悪いツラになっている自覚はある。
だけど四人とも両手をついて
「お願いです!現金収入を下さい!」
「他を当れ」
何をあほな事を言ってると先頭に立って頭を下げる植田を見てこの計画は植田プロジェクトと言う事だけは判った。というか植田の企画と言う事だけで失敗の匂いしかしないだろうと突っ込んでしまうが
「一応圭斗さんの所にお願いしに行きました!」
「よく殺されなかったな」
「あの人ガチでした。これを言ったらダメなのはわかってますが篠田一族だとじっかんしました」
「わかってるのなら二度と言うなよ」
「はい」
圭斗と陸斗が生家で受けた仕打ちの全部を俺は知らない。だけど子供が親を見捨てるぐらいなのだからよほどの事だろうと思う事にしている。俺の家が上か圭斗の家が上かなんて、まだ常識あるバアちゃんに空付けられた事を思えばましなのかと思うも人の不幸は比べるもんじゃないと珍しく怒る先生の言葉は素直に受け取った。
俺が本気で怒っているのを理解してかしょぼんとする植田だが言わずにはいられないと言う気持ちもわからなくない。夏に少し会ったあれだけで巷の噂通りの非常識と言う事を理解できるのだから。改めて危険なのはよく分かったつもりだから近づかないようにするのが対策だ。
とは言え、仕事なんて……あった。
「折角来たんだから文句は言わさないぞ」
「「「「もちろんです!」」」」
その気合いの良さに俺はにっこりと笑い
「薪割頼むわ」
「「おふ……」」
去年も卒業した三年達に連れて来られて一日薪割をさせられた経験のある植田と水野はその苦行を思い起こしてか涙を流していたが、さすが農家の子供の上島兄弟はどれから片づけますかとなれた返答は頼もしいと既に薄暗い外を見ながら
「今日は暗いからもうやらないぞ。先日熊も出たし明日明るくなったら上で丸太を切ってからここに運んで割るぞ」
「いまなんと?」
空耳ですかと問う上島兄に
「昔の吉野がらみの人に木の倒し方を教えてもらってるんだ。とりあえずこの間から何本か立ち枯れした木で練習したからそれを割って薪にしてもらいたい」
「こんな季節になんて珍しいですね」
「まぁ、本当なら冬は切らない季節だけどもう枯れている木だから。雪の重みで倒れるぐらいなら先に倒しておこうってな。その方が狩猟の季節にも安全だし。そもそも枯れてるから季節なんて関係ないし、木材として使うわけじゃないから問題ない」
「あ、そうか。薪にするんだったね」
弟の達弥が思い出したと言えばそうだったと言う高校三年ズ。こいつらには心配しかないと思っている間に上島兄の颯太が台所に立って今晩のごはんを作ると言いだした。何やら家から食材を持って来てくれたらしいからありがたく頂く事にして置いた。
「あーやとー、なんか不吉な番号の車があったんだけどー」
「あ、先生きた。先生も相変わらず綾っちにたかってるな」
大人なのに情けないと言う植田に
「俺と綾人は持ちつ持たれつな関係なの。って言うかお前らなんでいるんだ?」
先生は自分のお酒と串揚げを持って風呂の準備をする。その姿を見て相変わらずダメな先生だなあと生暖かい目で見守られながらも風呂にいく先生がたくましいなと思うが、くるりと振り向いた先生は
「そういや綾人、今年はいつまで外の風呂を焚く?」
「あー、毎年雪が積もる頃だからそろそろかな」
紅葉も鮮やかに色づく様子に雪が降る日が近い事を想定するも
「まあ、今夜が初雪だろうからそろそろ今年の五右衛門風呂も終わりか」
冬が来るなと言うも窓の外を見れば何やら白いものが舞っている様な気がする。
例えば雪の様な……
「マジか?!」
水野が嘘だ!!!とうめくも積もりもしないべちゃっとした水分を多く含む初雪に先生はタオルを頭に巻いて風呂場へと向かうのを見送った。
「それよりも綾っち、烏骨鶏鶏小屋に入れなくていいの?」
上島弟が開け広げた玄関から侵入しようとする頭に青のペンでマーキングされた烏骨鶏を捕まえて捕獲された姿をみて
「ああ、忘れてた」
ぼんやりとした返事になってしまった。だけど誰も気にせずに
「小屋に入れてくるよ」
「頼む。あとおやつ箱のミルワームをやっていいぞ」
「やった!」
烏骨鶏の奴らモテモテだなと感心しながら、大人しく抱かれ続けるマーキングの烏骨鶏を綾人はこっそりとちけた名前で良かったなと風に消えそうな声で語りかけるのだった。
116
お気に入りに追加
2,670
あなたにおすすめの小説
家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
裏路地古民家カフェでまったりしたい
雪那 由多
大衆娯楽
夜月燈火は亡き祖父の家をカフェに作り直して人生を再出発。
高校時代の友人と再会からの有無を言わさぬ魔王の指示で俺の意志一つなくリフォームは進んでいく。
あれ?
俺が思ったのとなんか違うけどでも俺が想像したよりいいカフェになってるんだけど予算内ならまあいいか?
え?あまい?
は?コーヒー不味い?
インスタントしか飲んだ事ないから分かるわけないじゃん。
はい?!修行いって来い???
しかも棒を銜えて筋トレってどんな修行?!
その甲斐あって人通りのない裏路地の古民家カフェは人はいないが穏やかな時間とコーヒーの香りと周囲の優しさに助けられ今日もオープンします。
第6回ライト文芸大賞で奨励賞を頂きました!ありがとうございました!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる