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意外な形で宝と呼ばれる物達 5
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映画の撮影、それは予想よりも大人数だと思った。
時間が来て待ち合わせの場に行けば、そこには道路の片隅にずらりと並んだワンボックスの車が連なって止まっていた。
「何これ」
「うちの撮影隊の機材。外で撮影するための機材が一式とスタッフの荷物とか、私達の休憩所兼ロッカールームね」
「宮下のおばさん怒らないかなあ」
「まあ、あれなら怒られないでしょう」
スタッフの皆さんはしっかりと飲料を買ったり軽食を購入したりと大忙しのようだった。
その中で何人かの人を引き連れて来た多紀さんは
「それで楮畑どこにあるの?」
何故かキラキラとした瞳の多紀さんに俺はこの暑苦しい中草刈りスタイルで案内をする。多紀さんもその格好なあに?と小首傾げる中俺は黙って宮下商店の前の緩やかな坂を歩いていく。興味津々な多紀さんとは別にスタッフの皆さんはうんざりとした顔をしているけど、この先は急に道が変わる。車一台分の細い道はすれ違うこともできない道幅。低いガードレールは酷い錆が浮き出ていて機能するかどうかも怪しい所だ。
てくてくと歩いた俺の言わんとする所を理解した皆様は谷底まで続く崖を見下ろしながらしばらく歩けば先日刈り取った畑へと足を入れた。
「ここが入り口の元蕎麦畑。この奥の先に楮畑があるらしいが、俺は本当にあるか知らないというのを先に断っておく」
「この先にあるんだね」
「あるのならね」
言いながら俺は草刈機を構え直せば見学について来た井上さんも草刈りが必要?と言わんばかりに草刈り鎌や草刈機を構えていたが
「撮影準備!」
何の?!
心の声が飛び出さなかった代わりに多紀さんがカメラを構えて立っていた。
「ここから先は色々と記録したい。下見をして使えるかどうか判断する」
その後ろには波瑠さん達がいなくて、ただ撮影をするだけの人がついてくるだけだった。
あまりにびっくりして声も出せずに、でも早く関わらないようにと足をすすめてしまう。
最初の元蕎麦畑を通り越して元果物畑へと向かう。
ここまでは先日刈り取ったので見通しもよく歩きやすいが、その先は雑草の壁が立ちはだかっていた。
それ以上は先に進んではいけない。
んなわけあるかと草刈機を起動させて多分この辺に道があるだろうと進もうとするもポンと肩に手が置かれた。
「一度草刈機なしに進んでみたい」
「多紀さんそばに来ちゃダメえええっ!!!」
あまりの同様に裏返った声が悲鳴となれば、後からついて来た井上さん達が慌てて多紀さんを俺から離してくれた。
「はい、ここで草刈機のレクチャーをするので覚えてくださーい。
草刈機は肩からのベルトをかけてしっかりと本体を脇に挟むようにして構えます。
草刈機は右から左に振るように刈り、振り切った反動で右に戻します。これが基本の動作で全部です。だけどこのように障害が多い場所ではキックバックと言う現象が起きます。これがそうです」
近くの枯れ木に高速で回転する草刈機の刃を当てればあっという間に反発する力が発生して草刈り機は持つ人の体を半回転するくらいの力で使用者を振り回すのだった。
「と、このような現象をキックバックと呼んで、ほぼ人の力では押さえつけることができません。そして悲しい事に一年に一度は悲しい事故として新聞記事にあげられる事は皆さんご存知かと思います。なので、使用者の側には絶対に近寄らないように。これはお願いではりません。
不用意に近づいて使用者を人殺しにしない為の命令です」
言いながら突如撮影隊を集めて草刈機のレクチャーを始めた井上さんは、俺の動揺が収まるまで草刈り機を取り上げて安全対策を始めるのだった。
ちなみにその間は井上さんの命令で多紀さんは正座で座らされていた。剥き出しの地面に草を刈ったままの絨毯の上でカメラを構えたまま正座をさせられていた。素晴らしい事にその光景を宮下が撮影するというファインプレーは是非とも動画で無事だったからこその公開処刑という思いで近く公表の約束をさせてもらうのだった。
改めてカメラを持った多紀さんを俺が案内する形で奥へと入っていく。草刈りはその後でと言う事で元果物畑へと置いてどんどん奥へと入って行く。
気分は何とか探検隊と言うべきだろうが、背より高い雑草に囲まれれば楽しさは半減どころかマイナスだ。
俺は一緒についてきてもらった井上さんに和紙の原料というぐらいの知識のない木について尋ねことにした。
「楮ってどんな木?」
吉野の子供が知らないのかい?なんて顔をしながら
「低木樹の落葉樹でね、初夏には真っ赤な実をつけて食べれるんだ。桑の実にも似てて、商品価値はないかな。でもちゃんと熟したやつなら美味しいよ。子供の頃よく食べたなあ」
「つまり熟さないと美味しくない?」
「鳥達なんかは喜んで食べるけどね」
「やっぱり発掘したくないなー」
「だけど一度状態は見ておいた方がいいよ?」
「何で?」
「鹿が食べるんだ」
「鹿が食べていくのなら太った所を俺が食べてやる」
「いいね、逞しい。
その為にも一度は確認しておいた方がいいかもね」
なんて井上さんは落ちていた枝を振り回しながら雑草をかき分け、畑と畑の間にある急な段差で足場を作りながら俺と一緒に道を作るように雑草を踏みしめ歩いてくれる。そこは年の功で山歩きをよくご存知でと二人で雑草をかき分けるように歩けば、背後からぜいぜいと息を切らしながらただ懸命についてくる多紀さん達がいた。
「標高高いからゆっくりついてきてください」
なんて注意を言うも多紀さんは気持ちが走るタイプなのかひたすら懸命についてきて、頭から汗を滴り落としていた。距離はなくても道なき道の登山にも等しいこの道程。視界が広くない不安は心労に現れて疲労が激しくなる。そんな道のりを俺は記憶を頼りに道を進んでいるが、三段目の畑には楮の木がないと井上さんが言えば背後からついてくる人のため息が響いた。
井上さんに視線を向ければ皺の深い顔をくしゃっとさせて笑う。経験が違うと言わんばかりに背後の不満を笑ってあしらい、また俺の案内で畑の斜面を登っていく。背後の人達と足音が離れていくけど俺は構わず進んでいく。すぐ後ろにいた多紀さんも置いて四段目の畑につくも
「ここにもないようだねえ」
なぜだか井上さんの楽しそうな大きな声が響き、返事代わりの絶望の悲鳴に井上さんは笑う。
「さて、次の畑に行こうか」
これはこれで井上さんなりの嫌がらせかと納得しながら井上さんは怒らせてはいけないなと、心理攻撃とは言わないがあからさまに楽しんでいる様子に俺はドン引きだ。
だけど五段目の畑で井上さんは足を止めた。規則正しく植樹された配置の木を見上げ、草むらを分けてその木に向かって歩く背後を俺も追いかける。木の下だからか落ちた葉っぱのおかげで雑草が少ない場所にたどり着いて遥かに成長をし過ぎた手入れのされてない紅葉を始めた木を見上げるのだった。
井上さんは手の届く枝を手折り、樹皮を剥く。
枯れ枝なのか黒い樹皮の下からは内皮が見えて
「綾人君、これが和紙になるんだよ」
テレビで見たりしてぼんやりとした知識はあるけど
「こんな硬いものが?」
「煮て柔らかくして外皮をとって漉いて和紙になる。説明は簡単だが実際はめんどくさいよ」
「和紙が高級になるのは納得だなあ」
先日の長沢さんの領収書に認められた仏間に使った紙のお値段は普通の襖の三倍ほどのお値段。裏打ちの紙ですら二倍のお値段と言う格式高く仕上げてくれたとは言え高すぎるだろうと思うもそう言う知識が全くないので勉強代と無理矢理納得するも、飯田さんのお母さんが仏間の建具を見て
「若いのにきちんと先祖を大切に敬ってるのね」
なんて褒めてくれた。
その時は素直にわからないから全てお任せなのでと言うも
「こうやって気にかけてくれる人がいるって言う事が一つの財産よ?本来なら気を使うべき親が役目を果たしてないけど周囲が気にかけてくれる人が居る。学校では学べない素晴らしいことなのよ」
それなら先に見積もりをくれともぼやきたいけど
「それにしてもこの和紙は手漉きなのかしら?同じ柄がひとつもないわ。お店でも使いたいわね。どこで手に入るのかしら?」
素敵と触れずにただうっとりと眺めるお母さんに
「それは長沢さんの奥さんの作品よ。
今はやめてしまったけど奥さんが作った和紙で長沢さんが仕立ててくれたのよ。
奥さんの和紙はとっても丈夫だったんだけど、やっぱり水仕事は体の負担が大きいからね」
内田さんの奥さんが驚きの情報をくれれば
「珍しく主人が紙を漉いてくれっていうからどうしたかと思えば吉野の仏間に使いたいって言うの。久しぶりだから水の冷たさよりも感を取り戻す方が大変だったわ」
コロコロと笑う長沢さんの奥様の手は水で荒れた指先をしていて、飯田さんのお母さんが言う通り、これは手に入れ難い縁だとストンと胸のなかに何かが落ちて、それもまたジイちゃんが繋いでくれた縁だとありがたく感謝するのだった。
この木の細い枝をどれぐらい使えばあんな風になるのかと途方もない作業だなんて唖然としている間に多紀さんが追いついてきて、楮の木を見上げて
「こんなにも立派な木を……
こんなにも沢山、予定地だったものより何て見事な、こんなにも理想的な絵があるなんて!!!」
雑草の中を足を取られながらも一本一本確認を取るように走り回る多紀さんを見ながら一行はこれ以上登らなくて済む事に安堵してしゃがみ込むのを井上さんはだらしがないと笑うその横で、俺はジイちゃん達がつなげてくれた縁こそ宝だと知るのだった。
時間が来て待ち合わせの場に行けば、そこには道路の片隅にずらりと並んだワンボックスの車が連なって止まっていた。
「何これ」
「うちの撮影隊の機材。外で撮影するための機材が一式とスタッフの荷物とか、私達の休憩所兼ロッカールームね」
「宮下のおばさん怒らないかなあ」
「まあ、あれなら怒られないでしょう」
スタッフの皆さんはしっかりと飲料を買ったり軽食を購入したりと大忙しのようだった。
その中で何人かの人を引き連れて来た多紀さんは
「それで楮畑どこにあるの?」
何故かキラキラとした瞳の多紀さんに俺はこの暑苦しい中草刈りスタイルで案内をする。多紀さんもその格好なあに?と小首傾げる中俺は黙って宮下商店の前の緩やかな坂を歩いていく。興味津々な多紀さんとは別にスタッフの皆さんはうんざりとした顔をしているけど、この先は急に道が変わる。車一台分の細い道はすれ違うこともできない道幅。低いガードレールは酷い錆が浮き出ていて機能するかどうかも怪しい所だ。
てくてくと歩いた俺の言わんとする所を理解した皆様は谷底まで続く崖を見下ろしながらしばらく歩けば先日刈り取った畑へと足を入れた。
「ここが入り口の元蕎麦畑。この奥の先に楮畑があるらしいが、俺は本当にあるか知らないというのを先に断っておく」
「この先にあるんだね」
「あるのならね」
言いながら俺は草刈機を構え直せば見学について来た井上さんも草刈りが必要?と言わんばかりに草刈り鎌や草刈機を構えていたが
「撮影準備!」
何の?!
心の声が飛び出さなかった代わりに多紀さんがカメラを構えて立っていた。
「ここから先は色々と記録したい。下見をして使えるかどうか判断する」
その後ろには波瑠さん達がいなくて、ただ撮影をするだけの人がついてくるだけだった。
あまりにびっくりして声も出せずに、でも早く関わらないようにと足をすすめてしまう。
最初の元蕎麦畑を通り越して元果物畑へと向かう。
ここまでは先日刈り取ったので見通しもよく歩きやすいが、その先は雑草の壁が立ちはだかっていた。
それ以上は先に進んではいけない。
んなわけあるかと草刈機を起動させて多分この辺に道があるだろうと進もうとするもポンと肩に手が置かれた。
「一度草刈機なしに進んでみたい」
「多紀さんそばに来ちゃダメえええっ!!!」
あまりの同様に裏返った声が悲鳴となれば、後からついて来た井上さん達が慌てて多紀さんを俺から離してくれた。
「はい、ここで草刈機のレクチャーをするので覚えてくださーい。
草刈機は肩からのベルトをかけてしっかりと本体を脇に挟むようにして構えます。
草刈機は右から左に振るように刈り、振り切った反動で右に戻します。これが基本の動作で全部です。だけどこのように障害が多い場所ではキックバックと言う現象が起きます。これがそうです」
近くの枯れ木に高速で回転する草刈機の刃を当てればあっという間に反発する力が発生して草刈り機は持つ人の体を半回転するくらいの力で使用者を振り回すのだった。
「と、このような現象をキックバックと呼んで、ほぼ人の力では押さえつけることができません。そして悲しい事に一年に一度は悲しい事故として新聞記事にあげられる事は皆さんご存知かと思います。なので、使用者の側には絶対に近寄らないように。これはお願いではりません。
不用意に近づいて使用者を人殺しにしない為の命令です」
言いながら突如撮影隊を集めて草刈機のレクチャーを始めた井上さんは、俺の動揺が収まるまで草刈り機を取り上げて安全対策を始めるのだった。
ちなみにその間は井上さんの命令で多紀さんは正座で座らされていた。剥き出しの地面に草を刈ったままの絨毯の上でカメラを構えたまま正座をさせられていた。素晴らしい事にその光景を宮下が撮影するというファインプレーは是非とも動画で無事だったからこその公開処刑という思いで近く公表の約束をさせてもらうのだった。
改めてカメラを持った多紀さんを俺が案内する形で奥へと入っていく。草刈りはその後でと言う事で元果物畑へと置いてどんどん奥へと入って行く。
気分は何とか探検隊と言うべきだろうが、背より高い雑草に囲まれれば楽しさは半減どころかマイナスだ。
俺は一緒についてきてもらった井上さんに和紙の原料というぐらいの知識のない木について尋ねことにした。
「楮ってどんな木?」
吉野の子供が知らないのかい?なんて顔をしながら
「低木樹の落葉樹でね、初夏には真っ赤な実をつけて食べれるんだ。桑の実にも似てて、商品価値はないかな。でもちゃんと熟したやつなら美味しいよ。子供の頃よく食べたなあ」
「つまり熟さないと美味しくない?」
「鳥達なんかは喜んで食べるけどね」
「やっぱり発掘したくないなー」
「だけど一度状態は見ておいた方がいいよ?」
「何で?」
「鹿が食べるんだ」
「鹿が食べていくのなら太った所を俺が食べてやる」
「いいね、逞しい。
その為にも一度は確認しておいた方がいいかもね」
なんて井上さんは落ちていた枝を振り回しながら雑草をかき分け、畑と畑の間にある急な段差で足場を作りながら俺と一緒に道を作るように雑草を踏みしめ歩いてくれる。そこは年の功で山歩きをよくご存知でと二人で雑草をかき分けるように歩けば、背後からぜいぜいと息を切らしながらただ懸命についてくる多紀さん達がいた。
「標高高いからゆっくりついてきてください」
なんて注意を言うも多紀さんは気持ちが走るタイプなのかひたすら懸命についてきて、頭から汗を滴り落としていた。距離はなくても道なき道の登山にも等しいこの道程。視界が広くない不安は心労に現れて疲労が激しくなる。そんな道のりを俺は記憶を頼りに道を進んでいるが、三段目の畑には楮の木がないと井上さんが言えば背後からついてくる人のため息が響いた。
井上さんに視線を向ければ皺の深い顔をくしゃっとさせて笑う。経験が違うと言わんばかりに背後の不満を笑ってあしらい、また俺の案内で畑の斜面を登っていく。背後の人達と足音が離れていくけど俺は構わず進んでいく。すぐ後ろにいた多紀さんも置いて四段目の畑につくも
「ここにもないようだねえ」
なぜだか井上さんの楽しそうな大きな声が響き、返事代わりの絶望の悲鳴に井上さんは笑う。
「さて、次の畑に行こうか」
これはこれで井上さんなりの嫌がらせかと納得しながら井上さんは怒らせてはいけないなと、心理攻撃とは言わないがあからさまに楽しんでいる様子に俺はドン引きだ。
だけど五段目の畑で井上さんは足を止めた。規則正しく植樹された配置の木を見上げ、草むらを分けてその木に向かって歩く背後を俺も追いかける。木の下だからか落ちた葉っぱのおかげで雑草が少ない場所にたどり着いて遥かに成長をし過ぎた手入れのされてない紅葉を始めた木を見上げるのだった。
井上さんは手の届く枝を手折り、樹皮を剥く。
枯れ枝なのか黒い樹皮の下からは内皮が見えて
「綾人君、これが和紙になるんだよ」
テレビで見たりしてぼんやりとした知識はあるけど
「こんな硬いものが?」
「煮て柔らかくして外皮をとって漉いて和紙になる。説明は簡単だが実際はめんどくさいよ」
「和紙が高級になるのは納得だなあ」
先日の長沢さんの領収書に認められた仏間に使った紙のお値段は普通の襖の三倍ほどのお値段。裏打ちの紙ですら二倍のお値段と言う格式高く仕上げてくれたとは言え高すぎるだろうと思うもそう言う知識が全くないので勉強代と無理矢理納得するも、飯田さんのお母さんが仏間の建具を見て
「若いのにきちんと先祖を大切に敬ってるのね」
なんて褒めてくれた。
その時は素直にわからないから全てお任せなのでと言うも
「こうやって気にかけてくれる人がいるって言う事が一つの財産よ?本来なら気を使うべき親が役目を果たしてないけど周囲が気にかけてくれる人が居る。学校では学べない素晴らしいことなのよ」
それなら先に見積もりをくれともぼやきたいけど
「それにしてもこの和紙は手漉きなのかしら?同じ柄がひとつもないわ。お店でも使いたいわね。どこで手に入るのかしら?」
素敵と触れずにただうっとりと眺めるお母さんに
「それは長沢さんの奥さんの作品よ。
今はやめてしまったけど奥さんが作った和紙で長沢さんが仕立ててくれたのよ。
奥さんの和紙はとっても丈夫だったんだけど、やっぱり水仕事は体の負担が大きいからね」
内田さんの奥さんが驚きの情報をくれれば
「珍しく主人が紙を漉いてくれっていうからどうしたかと思えば吉野の仏間に使いたいって言うの。久しぶりだから水の冷たさよりも感を取り戻す方が大変だったわ」
コロコロと笑う長沢さんの奥様の手は水で荒れた指先をしていて、飯田さんのお母さんが言う通り、これは手に入れ難い縁だとストンと胸のなかに何かが落ちて、それもまたジイちゃんが繋いでくれた縁だとありがたく感謝するのだった。
この木の細い枝をどれぐらい使えばあんな風になるのかと途方もない作業だなんて唖然としている間に多紀さんが追いついてきて、楮の木を見上げて
「こんなにも立派な木を……
こんなにも沢山、予定地だったものより何て見事な、こんなにも理想的な絵があるなんて!!!」
雑草の中を足を取られながらも一本一本確認を取るように走り回る多紀さんを見ながら一行はこれ以上登らなくて済む事に安堵してしゃがみ込むのを井上さんはだらしがないと笑うその横で、俺はジイちゃん達がつなげてくれた縁こそ宝だと知るのだった。
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