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意外な形で宝と呼ばれる物達 3

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 波瑠さんの社交性でこの場のリーダーの井上さんに見学の交渉と多紀さんが迷惑をかけるからと先に断りを入れるあたり多紀さんに関する扱いは任せておけばいいだろうと思う。そんな中多紀さんはススキ畑の前のハーブ畑を何時かの飯田さん達の如く駆けまわり、戻って来た所で息を切らせながら優美な景色を撮影して息を整えてからススキ畑の撮影始めていた。
 だけどそこから先は足の踏み入れようもない位に成長したススキが頭を垂れ下げていた。人の背より高いススキがお辞儀する様を撮ろうとススキの中に突っ込んで行こうとするのを井上さんは押しとどめた。
「ここから先は大切な資材なので足を踏み入れて無駄にするような真似ならご遠慮ください」
「ああ、すまない。あまりに見事なススキだからつい」
 慌てて少し高い場所に移ってこの景色をビデオに収めるその背後からドッ、ドッ、ドッっと空気を震わし迫りくるエンジン音に誰もが振り向いた。
 誰もの顔にそれでやるの?と言う疑問が浮かんでいて、それは多紀さんも同様だ。近代農業は情緒よりも効率。機械化こそ農家の悲願。農業を知らない奴の無言の訴え何て聞く意味が分からないと無視をすれば皆さん道を譲ってくれた。
「綾人ー、悪いけど乗り入れる場所作ってー」
「少し待ってて―」
 それなりに年を重ねたエンジン音は街中で使うには申し訳ないほどの騒音をまき散らしていて、大声でないと会話すら成立しない。
 俺は草刈り鎌で乗り入れる為の場所を皆さんの協力を得ながら手早く刈り取り、元々田んぼだったための段差に板を敷いて宮下を誘導する。
 それからはあっという間だった。幾らゆっくりと進むとは言え機械の休みなき刈り取り、束ねられて畑に放置されるススキの穂はちゃんと収穫されて……詰まらないか心配だったけど何枚の田んぼを攻略するわけではないので問題なく仕事を終わらせる事が出来た。と言うか、代用できた方が驚きで、これなら来年以降も刈り取りだけでも出来るなと仕事の手間が減ってにんまりとしてしまう。
 だけど整えられた田んぼを想定として作られた機械は歪な山の形に添わせて作られた田んぼではどうしても手が出せない場所が在り
「井上さーん!残りはお願いしまーす!」
「ありがとうございます!」
 数十分ほど畑を走り回ったトラクターはそのまま急な山道さえも上りながら退場して、残りを井上さん達は奪い合う様にススキを刈るのだった。
 俺も宮下のトラクターに掴まってメンテナンスの為に一緒に上がっていけば瞬く間にススキを刈り取った様子をぽかんと見て居た俺より少し年上っぽい人達がトラクターの排気ガスに負けじとついてきた。
 宮下はそのまま納屋へと向かいトラクターを置いて収穫してしまったススキの穂先を集めて五右衛門風呂の薪をくべる中に詰め込んで燃やして処分してくれたその間俺は箒を持って掃除をしていれば白い綿毛に烏骨鶏が集まってつつく様を波瑠さんの手下は楽しんでくれていた。
「すみませんね。面白い所なんて何もなくって」
「いえ、そうでもないですよ。初めてセットじゃない物がたくさんで新鮮です」
 帽子をかぶったいい匂いのする女の人が烏骨鶏について回って遊ぶのをみて他の人達も一緒になって遊びだしていた。
「だけど撮影の方は良いんですか?」
「まぁ、多紀さんがあれだからね。だけどなんか拾い出したって言うか、こう言うのはしょっちゅうだとか、慣れっことかあるから、とりあえず今のうちに遊ぶ事にしてますよ」
「スタッフさんも大変だねぇ」
 言えば何か複雑な視線を向けられてしまった。何だと思うも俺は一輪車、通称ネコを持ち出して来てタイヤに空気を補充してまた畑を下りるのだった。
 あとは踏みしめただけの道を往復するだけの力勝負。交代しながらススキを積み込んで井上さんのトラックに乗せ換える。その頃にはあまりの汗だくに波瑠さんの手下の方も手伝いに来てくれて何とかトラックに詰める事が出来た。幌の付いたトラックはしっかりとロープで閉ざされて
「また来年も刈り取りに来ます」
「だったらもっと足がかりの良い道を作らないとね」
 みんなでこの急斜面の往復にぜーぜーと息を切らして座り込む中をだいぶ数が減った烏骨鶏がうろつく様子に警戒心どうしたと盛大に突っ込みたかった。
「そういや宮下はいつ帰るんだ?」
「お昼を食べたら行こうかって話になってる」
「いつもあまり観光が出来なくて申し訳ないと言うか……」
「西野さんもこんなにもいいもの見せてもらってって喜んでたし、西野の奥さんも長沢さんの奥さんとすっかり打ち解けたみたいでこっちに来ることを楽しみにしてくれてたんだよ」
「何よりで」
「そしてウチのおふくろもなんかハイテンションになって新蕎麦があるから帰りに皆さんに持って帰ってもらいなさいって持って来たんだ」
「と言うか圭斗の家に泊まった人達はどうしたんだろう?」
「やる事なくなっちゃったねぇ」
 ぼへーと未だに地面と仲良くなってる皆さんを見守りながら縁側に座って年寄りのように日向ぼっこをする。
 だが時間はまだ朝の八時前。
 温かさより寒さの方を覚えるこの頃だけどストーブはまだ早いと我慢をする。薪割も重労働だしねと山ほどある薪でもなくなるのは一瞬だから冬が来る前に気合を入れて薪割しないとなと、毎年の事ながらため息が出た。
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