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まずは一歩 7
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山歩きの装備をして水と軽食を入れた籠を背負い、鉈を装備して裏山から普段は決して足を運ばない方向へと進む。家を囲む柵を抜けて西へ西へと山を足を進めて一時間位した頃、崖と言うような急な斜面を見下ろすのだった。
「一度ここで休憩しようか」
「うん、さすがにもう無理」
体がなまったと言う宮下はへたり込んで籠の中のお茶を喉を鳴らして飲み始める。さすが標高千メートル以上は酸素が薄いと汗をぬぐっても止まらぬ汗を放置していた。飯田さんに頼んで朝ごはんの残りで作ってもらったおにぎりは完全に食事と言うよりエネルギー補給の為の物に変ってしまっているものの、二つばかり食べた所で
「松茸が生えている所に連れてってくれるって言ったけど、こんなに離れた場所なんだ」
「まぁ、栽培が出来ないからね。生えている所に足を向けるしかないけど群生地を知ってるだけでもラッキーだよ」
「今までおすそ分け貰うばっかりだったけどこんな苦労があったなんてな」
「先生は見当違いの方向を探索してるけどね」
言いながら俺もお茶を飲んだ所で
「さて、行こうか」
と言って立ち上がった宮下に頷いて俺は崖の下を見下ろす。
「ん?」
歩こうとせずに崖を見下ろす俺に宮下も崖を見下ろして
「ひょっとして?」
青い顔のまま笑う宮下に俺もここからが本日のメインイベントだとニヤリと笑う。
「次はここを下りて行くぞ。
下りる途中に松茸生えているから取りながら下りるぞ。
松の落ち葉のせいで片道通行だから取り損ねたらそれまでが今回の収穫だ!宮下の技術にお昼が豪華になるかどうか決まるんだぞ!」
「うそでしょ?!こんな所をどうやって降りるのさ?!」
「当然滑り落ちながら(笑)
小学生の時ジイちゃんに連れて来られて落ちて行けばいいって言われた時可愛い初孫に正気かと思ったしな。
因みに命綱なんてないから。あっても滑って登れないから途中の木にぶつかる様にして止まってその近くの手の届く範囲の松茸を探す。説明だけならとっても簡単楽しいアトラクションクライミングだ」
「紐なしバンジーに匹敵してるよ?!」
「だから吉野はここを誰にも教えないのです。落ちても誰も助けに来ないし、知らない所で仏さんが出来ているのだけは勘弁してほしいしね」
「絶対教えないで!こんな恐怖体験俺で十分だから!」
涙目の宮下を残して俺は一番最初に足を掛けやすい木に向かって滑り落ちる様に降りる。ザザザっ、葉っぱを滑り落ちる音が静かに響く中こうやるんだぞと宮下にレクチャー。運動神経は良い奴だから問題はないと思って手を伸ばせば恐る恐ると言う様に降りてきた」
「わ、わわ、あーっ!!!」
本当に落下するような下山の宮下をしっかりと木に抱き着かせ俺は別の木へと移動する。足場がないから仕方がないんだよとそこでしゃがみこんで落ち葉をかき分け
「松茸は粘菌で増殖するから一つ見付ければその周りにも群生している」
こうやって生えていると見せれば宮下も怖さを無視して生えている様子を見て近くをきょろきょろと探す。こう言う切り替えが早くていいよなと感心している間に宮下は見つけた!と嬉しそうな悲鳴を上げた。
「全部松茸を取ると来年生えなくなるからいくつかは必ず残せ。そして傘が開き切った奴は香りが飛んでるから取る必要はない。
店でもよく見かけるような形を選んでおけば問題なし!」
「綾人からもらったよな奴だね?」
あれだけ毎年貰うんだから買うわけないじゃんと言う宮下の冷静なツッコミに俺も長い事買った事ないなと同意。値段を見て買うもんじゃないと思うしねと言いながらまた別の木に移って松茸の収穫。宮下も止まらぬ悲鳴と共に、それでもやはり山の子。上手に木に飛び移りながら松茸を見つけては狩っていく。ゆっくりと横に移る様にしてでも気が付けば群生地帯は通過して開けた場所に降りるのだった。とは言え雑草畑。綾人は宮下の手を引いて近くの道路へと案内すれば、見覚えのある景色に宮下は道路の柵に手をついて
「あれだけ歩かされてまさかここに出るとか」
「当然だろ。一体家の山はどれだけ広いんだと勘違いしてる」
「十分広いよ。この村一番の山持ちめ」
「それでも二束三文。世知枯れぇ……」
それに夢を見て殺されかかった過去はどうやっても覆せない。
車も通らない道路に寝転がって息を整えながらおにぎりの残りを食べる。
「それにしても疲れた……」
食べ終わればまた寝転びひと眠りしたいと言う所だろうが
「それよりも早く帰るぞ。飯田さんが炊き込みご飯作るの待ってくれてるんだから」
「そうだった。取って満足しちゃったよ」
飯田さんのご飯が待ってると言う所でよいしょと立ち上がる。
二人で籠半分ほどの大収穫は年に一度の大イベント。一人で収穫してた時はもう一周すると言う気合を入れるが、今回は宮下が一緒なのでこれで勘弁してやろうと山の恵みに感謝する。
あとはひたすら道路を歩くと言う安全な道。枯葉に足を取られる事もないし、根っこに躓く事もないし、獣にも出会う事は……どうだろうか。少し遠くに鹿を見つけてしまったなと思った物のすぐに逃げて行ってくれた事に感謝して、鉈が活躍しなくて済んだ事をホッとするのだった。
「一度ここで休憩しようか」
「うん、さすがにもう無理」
体がなまったと言う宮下はへたり込んで籠の中のお茶を喉を鳴らして飲み始める。さすが標高千メートル以上は酸素が薄いと汗をぬぐっても止まらぬ汗を放置していた。飯田さんに頼んで朝ごはんの残りで作ってもらったおにぎりは完全に食事と言うよりエネルギー補給の為の物に変ってしまっているものの、二つばかり食べた所で
「松茸が生えている所に連れてってくれるって言ったけど、こんなに離れた場所なんだ」
「まぁ、栽培が出来ないからね。生えている所に足を向けるしかないけど群生地を知ってるだけでもラッキーだよ」
「今までおすそ分け貰うばっかりだったけどこんな苦労があったなんてな」
「先生は見当違いの方向を探索してるけどね」
言いながら俺もお茶を飲んだ所で
「さて、行こうか」
と言って立ち上がった宮下に頷いて俺は崖の下を見下ろす。
「ん?」
歩こうとせずに崖を見下ろす俺に宮下も崖を見下ろして
「ひょっとして?」
青い顔のまま笑う宮下に俺もここからが本日のメインイベントだとニヤリと笑う。
「次はここを下りて行くぞ。
下りる途中に松茸生えているから取りながら下りるぞ。
松の落ち葉のせいで片道通行だから取り損ねたらそれまでが今回の収穫だ!宮下の技術にお昼が豪華になるかどうか決まるんだぞ!」
「うそでしょ?!こんな所をどうやって降りるのさ?!」
「当然滑り落ちながら(笑)
小学生の時ジイちゃんに連れて来られて落ちて行けばいいって言われた時可愛い初孫に正気かと思ったしな。
因みに命綱なんてないから。あっても滑って登れないから途中の木にぶつかる様にして止まってその近くの手の届く範囲の松茸を探す。説明だけならとっても簡単楽しいアトラクションクライミングだ」
「紐なしバンジーに匹敵してるよ?!」
「だから吉野はここを誰にも教えないのです。落ちても誰も助けに来ないし、知らない所で仏さんが出来ているのだけは勘弁してほしいしね」
「絶対教えないで!こんな恐怖体験俺で十分だから!」
涙目の宮下を残して俺は一番最初に足を掛けやすい木に向かって滑り落ちる様に降りる。ザザザっ、葉っぱを滑り落ちる音が静かに響く中こうやるんだぞと宮下にレクチャー。運動神経は良い奴だから問題はないと思って手を伸ばせば恐る恐ると言う様に降りてきた」
「わ、わわ、あーっ!!!」
本当に落下するような下山の宮下をしっかりと木に抱き着かせ俺は別の木へと移動する。足場がないから仕方がないんだよとそこでしゃがみこんで落ち葉をかき分け
「松茸は粘菌で増殖するから一つ見付ければその周りにも群生している」
こうやって生えていると見せれば宮下も怖さを無視して生えている様子を見て近くをきょろきょろと探す。こう言う切り替えが早くていいよなと感心している間に宮下は見つけた!と嬉しそうな悲鳴を上げた。
「全部松茸を取ると来年生えなくなるからいくつかは必ず残せ。そして傘が開き切った奴は香りが飛んでるから取る必要はない。
店でもよく見かけるような形を選んでおけば問題なし!」
「綾人からもらったよな奴だね?」
あれだけ毎年貰うんだから買うわけないじゃんと言う宮下の冷静なツッコミに俺も長い事買った事ないなと同意。値段を見て買うもんじゃないと思うしねと言いながらまた別の木に移って松茸の収穫。宮下も止まらぬ悲鳴と共に、それでもやはり山の子。上手に木に飛び移りながら松茸を見つけては狩っていく。ゆっくりと横に移る様にしてでも気が付けば群生地帯は通過して開けた場所に降りるのだった。とは言え雑草畑。綾人は宮下の手を引いて近くの道路へと案内すれば、見覚えのある景色に宮下は道路の柵に手をついて
「あれだけ歩かされてまさかここに出るとか」
「当然だろ。一体家の山はどれだけ広いんだと勘違いしてる」
「十分広いよ。この村一番の山持ちめ」
「それでも二束三文。世知枯れぇ……」
それに夢を見て殺されかかった過去はどうやっても覆せない。
車も通らない道路に寝転がって息を整えながらおにぎりの残りを食べる。
「それにしても疲れた……」
食べ終わればまた寝転びひと眠りしたいと言う所だろうが
「それよりも早く帰るぞ。飯田さんが炊き込みご飯作るの待ってくれてるんだから」
「そうだった。取って満足しちゃったよ」
飯田さんのご飯が待ってると言う所でよいしょと立ち上がる。
二人で籠半分ほどの大収穫は年に一度の大イベント。一人で収穫してた時はもう一周すると言う気合を入れるが、今回は宮下が一緒なのでこれで勘弁してやろうと山の恵みに感謝する。
あとはひたすら道路を歩くと言う安全な道。枯葉に足を取られる事もないし、根っこに躓く事もないし、獣にも出会う事は……どうだろうか。少し遠くに鹿を見つけてしまったなと思った物のすぐに逃げて行ってくれた事に感謝して、鉈が活躍しなくて済んだ事をホッとするのだった。
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