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これもまた山暮しのお約束 2

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 車を見送ったところで家に戻る。今はまだ竈の熱で家の中は温かいが、すぐに冷えるのは古民家ならではの断熱効果のない問題だ。なので一度温かい事を覚えた体の為にもとロケットストーブを焚くのだった。ロケットストーブに近い部屋で二日酔いの気持ち悪さを訴える体を横たえればすぐに眠気がやってきて、もうすぐ内田さんが来るだろうけどと思って横になった。
 きっとすぐに起こしてくれるだろうと眠気に負けて横たわっていれば
「綾人、目が覚めたか?」
 強烈な喉の痛みと頭痛で意識を取り戻した。
 あ……
 何で先生が?
 その疑問の前に陸斗が顔を覗き込んできて、冷たいタオルをおでこの乗せてくれた。
「……」
 ありがとうと声を出そうとして声が出なくて驚いた代わり咳が出たと思ったら止まらなかった。
「ごほっ、げほっ、ごほっ!」
「ああ、ほら。とりあえず白湯だ。ゆっくりと飲め」
 圭斗がぬるめの白湯を作って持って来てくれた。
 ゆっくりと飲もうとするも
「ごふっ、けふっ……」
 上手く飲み込めなくて慌てて手で口を押えるも吹きだしてしまった。飲んだのが少量なので被害はないが、情けないと言うより横になりたいと体を横にさせてしまう。
「ほら、飯田さんに喉に良いからって教えてもらったから」 
 飯田さん?
 何でと眉を潜めれば
「綾人のスマホに何度か連絡が入ってて代わりに俺が受けた。
 只今三十九度の熱が出たのでって言ったら驚いてたぞ?気づかずに帰ってしまって申し訳ないとか言ってたし。
 ぜーぜー呼吸してるって言ったら目を覚ましたらスプーン一杯のハチミツに婆さんのコレクションの金柑のお酒の実を一粒入れて金柑が隠れるくらいお湯を入れて飲ましてくれって。薬の位置も判らないから宮下に連絡したら場所教えてもらったから。これ飲んだら薬を飲む事」
 そんな声を聴きながらスマホに手を伸ばして
『頭が痛いから頭痛薬も』
 ブラインドタッチが出来て良かったと思った。
「あー、一緒に飲んでいいのか?わかんないからとりあえず頭痛薬からのもう。しんどいのは仕方がないから一度頭をしゃきっとしてから病人になろう」
 なんだその順番はと思えば陸斗が用意してくれたハチミツ金柑のお湯割りをちびりちびりと飲む。
 とろっとしたハチミツはまったりと口に広がって、金柑のさっぱりとした香りが広がる。金柑をゆっくりと噛みながら種をペッと吐きだし、ティッシュを貰ってほろ苦さが残る金柑も吐きだした。上手く飲み込めなくって変に引っかかったら迷惑をかけると大惨事になる事を想定としての回避。ティッシュでくるっと包んで陸斗が持って来てくれたゴミ箱にポイ。気が利く子だとありがたく思いながら残りのすっかりとぬるくなってしまった白湯をゆっくりと飲む。金柑を齧った事で口の中に水分が広がって何とか呑み込む事が出来た。
「先生からも聞いたけど、毎年冬の始まりって言うかストーブをつけ出した頃こうやって熱を出すんだってな」
 オカンな圭斗に背中を向ければまたケホケホと咳が出た。寒くないようにと移動した断熱材にしっかりと囲まれた俺の部屋にこの人数はさすがに狭い。ベットを置いてあるのもそうだが、八畳とは言えパソコン六台を置く部屋はほとんど机に占領されてよく入れたなと言う物だろうか。
「先生から綾人が熱を出したって連絡が来て俺じゃなくて陸斗を連れて来いって言うのも腹が立ったが、陸が烏骨鶏を小屋に入れのを見て納得したし内田さんも心配してたけどいつ目を覚すかわからなかったから帰ってもらったぞ。
 声をかけても返ってこなかったから様子を見れば寝てたから布団をかけて置いてくれてたからこの程度で済んだぞ。昼すぎても起きてこないから昨夜はだいぶ飲んだのだろうって放っておいてくれたけどさすがに夕方になっても起きてこないのを心配したらこの熱だ。
 先生がちょうど来たから良かったけど、先生が全くの役立たずだったのが想定外で俺にまで連絡が来たんだ。陸を連れてこいって」
「翔ちゃんに何がどこに置いてあるか教えてもらったから大丈夫だよ」
 任せてと言う誇らしげな顔がドヤ顔に見えたのはそれだけ俺が弱ってる証拠だと言う事にしておこう。
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