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瞬く星は近く暖かく 10
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「賑やかだな」
遅れてくると宣言した通り昼ごろになってやって来た圭斗は賑やかな食卓が並ぶテーブルを見て少しだけ呆れていたのだ。
呆れていたと言うのは失礼だが、昼間から食べるには豪勢な食卓についてだろう。質素倹約がもっとうの篠田家では昼からはこんなにも食べないと言うのは俺も宮下も知っている。その証拠に肉体労働者だと言うのに細マッチョなのだ。
あえて言おう。
もう少し太った方が良いぞ。
飯田さんじゃないけどそう圭斗を評する俺は高校時代バアちゃんに頼み込んでおにぎりを余分に作ってもらってた。昼飯だけじゃおなかがすくからと。高校男児の胃袋としては至極まっとうな言い訳をバアちゃんは仕方がないねぇと言って大きめのおにぎりを弁当のおにぎりとは別に二つ用意してくれるのだった。弁当がある日は勿論、テストの早帰りの日も腹がすくからと用意してもらっていた。勿論俺の言い分はバアちゃんにも圭斗にもバレバレだ。だけど二人は黙って俺の気遣いを受け入れてくれたのだ。バアちゃんも篠田の事は知っているし、圭斗も妹と弟にはしっかり食べさせないとと自分の食事は最低限にしているので誘惑にはどうしても勝てない。俺は知らないふりをしているが、いつだったか圭斗が家に来た時バアちゃんに頭を下げて感謝していたのを見た事がある。バアちゃんはそんな圭斗の頭を撫でてやっていて、圭斗は泣き声を上げずに泣いていたのが印象的だった。
そんな食生活なので中々肉が付きにくい身体となり、重い物を運ぶ重労働のせいで筋肉だけが薄っすらとついた体になっていた。食は俺が知る限り随分と食べる様になっていたのでほっとしているし、先日会った陸斗も少し頬の辺りがふっくらとして子供らしさを覚えて、まだ十六歳の子供だと言う事を思いだすのだった。
「圭斗紹介するよ。
宮下の師匠の西野藤次郎さんと奥さんの桔梗さん。
こちらの二人が飯田さんのお父さんの稔さんと紗凪さん。
圭斗は俺の高校の時からの親友で、宮下の幼馴染で、いろいろ助けてもらってます」
「どっちが助けてもらってるんだか」
苦笑する圭斗に席を進めれば宮下がお膳の準備をしてくれた」
よう元気だったか?そっちこそ!と言う挨拶の幼馴染は当然のように隣同士に座る。末席の台所に一番近い席に。
まだ内田さん達皆さん仕事があるのでお酒は用意してないが、幾つもの竈の使い勝手を覚えた飯田さんは沢山の煮物を作ったりして長沢さんや内田さん、宮下や圭斗にお持ち帰りしてもらう為の分量も十分に用意してくれていた。
烏骨鶏を持ち出した辺りから飯田父も怪我を無視し参加して色とりどりの料理は普段飯田さんが作る事のないメニューもあるからだ。
「それではさっそく頂きましょう」
家主の俺が合図をしないと誰も箸に手を付けない昔ながらの風習が強い年齢ばかりなので、この料理はなんだかんだは食べながら教えてもらう事にする。
案の定西野さんの奥さんは飯田さんのお母さんと女性同士は話に花が咲き、同じ京都の人間だからか話が盛り上がっていた。
「それにしてもよく怪我をした手で鳥を捌けたもんだな」
長沢さんは感心しながら大根や人参と煮た烏骨鶏を取り皿に取り分けて一口大に切られた肉を食べ
「茅を下ろした日に食べた煮物と同じ味だな」
ゆっくりと何度も噛み締めながらの感想に紗凪さんはクスクスと笑い
「主人から学んだお料理ですもの。当然ですわ」
なぜか飯田さんは恥ずかしそうに俯いてしまうも内田さんは微笑ましそうに笑い
「うちの浩太の仕事もわしと同じ仕事をすると麓の坊主に言われてたな」
「それは師として最高の褒め言葉だな」
西野さんはうちから育った弟子どもはどうなんだかと苦笑しているあたりあまりこまめな連絡を取りあってないのだろう。荒れ果てた庭を見ての通り娘夫婦がそこまで帰ってきてるようには見えないし。
「宮下責任重大だな」
圭斗が冷やかすも
「圭斗も同じだろ」
浩太さんに仕事を学ぶ圭斗も他人事ではないようだった。
「それより藤次郎がくたばるのが先か問題だな」
「お前より長生きはするから心配しなくていいぞ」
カラカラと笑う二人にいまひとつ笑えない若人達は鹿肉で作ったハムに箸を伸ばすのだった。
ダラダラと食べて話し続けるのかと思うも一時間の休息はぴたりと終わり、当然と言うように仕事場に向かっていく。
残されたのは女衆と飯田親子と俺。圭斗達も旧家へと足を向けて大人数で仕事をする様を見ていれば突如仕事道具を持って全員で戻ってきて
「吉野の、襖の滑りが悪いから少し手直しするぞ」
「ええと、ありがとうございます?」
でいいんだよなとお願いすれば台所側ではなく仏壇の裏側にある階段を長沢さんが案内するように上がっていくのを眺めてしまう。
勝手知ったる他人の家。
見られて困るものはないが飯田母が一緒に見てらっしゃいと洗い物を引き受けてくれる言葉に甘えて飯田親子と二階に一緒に上がるのだった。
「そう言えば二階にはあまり上がった事ありませんでしたね」
「最近は陸斗が掃除してくれてたからマシだったはず」
雨戸を開けて空気を入れ替える為にしか二階に上がってなかったなと掃除をしてなかった事がここにきて悔やまれる。まさかのいきなりのルームツアーが始まるなんて誰が想像する?しかも襖や障子を外されて丸裸なんてどんな羞恥プレイ?!押し入れの中に布団しかない事にホッとするのがせいぜいだった。
とは言え年季の入った机とネットで買った組み立ての本棚と痛んでリメイクされたタンスがあるだけ。
「二階に書斎は優雅だなあ」
山川さんののんびりした声は本棚の背表紙を眺めて黙って漫画のタイトルをなぞりながら借りて行っていい?と繋がる言葉にはどうぞと苦笑。
一階同様部屋は全て襖で仕切られている。開け放てば一階同様の広さがあり、空に近い分明るい。
普通なら景色を堪能するべく広い窓から覗く景色を堪能する所を
「やっぱりいい柱を使ってるだけあって木目が美しいですね」
「天井も。木目が良い」
「これはタンスか?またなんでこんなふうに切っちまったんだ」
「ネズミに齧られたり腐ったりで。
洗って使えるようにしてくれたんです宮下が」
言えば西野さんと長沢さんが引き出しを次々と取り出して行くのを森下さん達も手伝い始める。
何が始まったと思う合間に引き出しもバラバラにされて行く様子に宮下の顔も真っ青だ。
「何が起きてるんだよ」
聞けば
「お前達が無謀な事をしたのが気になったんだろうな」
広げられたブルーシートの上で浩太さんが電気サンダーで表面の汚れを落とし、長沢さんと内田さんが鉋で長年の歪みを直して行く。西野さんが次々に木槌で解体して山川さんが彫金の飾り金具を丁寧な手つきで外して行く。
何が起きているのか分からないが誰がどんな役割の指示を出したわけでもなく次々に、苦もなく作業にありつける様はこの広い部屋ならではだろうか。飴色で漆を塗っていたと思っていた箪笥は桐の無垢材で、きっとこの家にやってきた頃と変わらぬ姿になっていた。ただし少し痛々しげに半分に切られて。
その違和感も和らぎようにと森下さんが彫刻刀を持ち出して下段の一段に彫刻を施し始めるその隣で山川さんと浩太さんで家具を組み直す背後で手の空いた老人達は今度は机に手を伸ばし始め、瞬く間に解体を始めるのだった。
あまりにも見事な丁寧な作業を宮下はいつの間に取ってきたのか動画用のカメラで撮り出していた。その頃には圭斗も一緒になってサンダーで表面を磨いている。
賑やかさはない。ただ事故が起きないようにとタイミングを知らせる掛け声と作業の音が響く。気がつけば飯田さん達はおらず、別の部屋の納戸に篭っていた。退屈するのも申し訳ないが、納戸はそれこそ出入りのない場所。いいのだろうかと思いながらも圧倒するような作業の熱気がじわじわと俺にも伝わってくる。宮下も同様のようで俺にビデオを持たせたかと思えばサンダーで薄くなった彫刻を森下さんの側で作業を始める。一から下絵もなく彫るわけでもないので丁寧になぞるように消えないように集中しながら作業を進めていた。この輪の中に混ざりたい。でもその作業のスキルは一切俺にはない。自慢じゃないが宮下のように器用ではなく、圭斗のような努力はしてない。
悔しい……
初めて二人に嫉妬した。
心のどこかでずっと二人を下に見ていたのだろう。だけど今確実に二人に置いていかれて……悔しくはあるけど、二人の成長が眩しくて、羨ましくて。
なんだろう。
悔しいより羨ましい方が勝るってなんて。
嫉妬というより完全な敗者の俺はひたすらこの瞬間を見逃すまいと羨望の眼差しでカメラを回し続けていた。
「誰か手隙の方はいるか?
階段の向こう側の納戸の戸棚を直してもらいたい」
飯田父の掛け声に圭斗と宮下を置いて四畳半の納戸へと足を運べばガタのついた戸棚を鳴らす飯田父の言葉少なげな訴えに板戸を外して山のような荷物を運び出し、奥様二人も巻き添えになって使ってない部屋に運び込んだりと大騒動へと発展することになった。
遅れてくると宣言した通り昼ごろになってやって来た圭斗は賑やかな食卓が並ぶテーブルを見て少しだけ呆れていたのだ。
呆れていたと言うのは失礼だが、昼間から食べるには豪勢な食卓についてだろう。質素倹約がもっとうの篠田家では昼からはこんなにも食べないと言うのは俺も宮下も知っている。その証拠に肉体労働者だと言うのに細マッチョなのだ。
あえて言おう。
もう少し太った方が良いぞ。
飯田さんじゃないけどそう圭斗を評する俺は高校時代バアちゃんに頼み込んでおにぎりを余分に作ってもらってた。昼飯だけじゃおなかがすくからと。高校男児の胃袋としては至極まっとうな言い訳をバアちゃんは仕方がないねぇと言って大きめのおにぎりを弁当のおにぎりとは別に二つ用意してくれるのだった。弁当がある日は勿論、テストの早帰りの日も腹がすくからと用意してもらっていた。勿論俺の言い分はバアちゃんにも圭斗にもバレバレだ。だけど二人は黙って俺の気遣いを受け入れてくれたのだ。バアちゃんも篠田の事は知っているし、圭斗も妹と弟にはしっかり食べさせないとと自分の食事は最低限にしているので誘惑にはどうしても勝てない。俺は知らないふりをしているが、いつだったか圭斗が家に来た時バアちゃんに頭を下げて感謝していたのを見た事がある。バアちゃんはそんな圭斗の頭を撫でてやっていて、圭斗は泣き声を上げずに泣いていたのが印象的だった。
そんな食生活なので中々肉が付きにくい身体となり、重い物を運ぶ重労働のせいで筋肉だけが薄っすらとついた体になっていた。食は俺が知る限り随分と食べる様になっていたのでほっとしているし、先日会った陸斗も少し頬の辺りがふっくらとして子供らしさを覚えて、まだ十六歳の子供だと言う事を思いだすのだった。
「圭斗紹介するよ。
宮下の師匠の西野藤次郎さんと奥さんの桔梗さん。
こちらの二人が飯田さんのお父さんの稔さんと紗凪さん。
圭斗は俺の高校の時からの親友で、宮下の幼馴染で、いろいろ助けてもらってます」
「どっちが助けてもらってるんだか」
苦笑する圭斗に席を進めれば宮下がお膳の準備をしてくれた」
よう元気だったか?そっちこそ!と言う挨拶の幼馴染は当然のように隣同士に座る。末席の台所に一番近い席に。
まだ内田さん達皆さん仕事があるのでお酒は用意してないが、幾つもの竈の使い勝手を覚えた飯田さんは沢山の煮物を作ったりして長沢さんや内田さん、宮下や圭斗にお持ち帰りしてもらう為の分量も十分に用意してくれていた。
烏骨鶏を持ち出した辺りから飯田父も怪我を無視し参加して色とりどりの料理は普段飯田さんが作る事のないメニューもあるからだ。
「それではさっそく頂きましょう」
家主の俺が合図をしないと誰も箸に手を付けない昔ながらの風習が強い年齢ばかりなので、この料理はなんだかんだは食べながら教えてもらう事にする。
案の定西野さんの奥さんは飯田さんのお母さんと女性同士は話に花が咲き、同じ京都の人間だからか話が盛り上がっていた。
「それにしてもよく怪我をした手で鳥を捌けたもんだな」
長沢さんは感心しながら大根や人参と煮た烏骨鶏を取り皿に取り分けて一口大に切られた肉を食べ
「茅を下ろした日に食べた煮物と同じ味だな」
ゆっくりと何度も噛み締めながらの感想に紗凪さんはクスクスと笑い
「主人から学んだお料理ですもの。当然ですわ」
なぜか飯田さんは恥ずかしそうに俯いてしまうも内田さんは微笑ましそうに笑い
「うちの浩太の仕事もわしと同じ仕事をすると麓の坊主に言われてたな」
「それは師として最高の褒め言葉だな」
西野さんはうちから育った弟子どもはどうなんだかと苦笑しているあたりあまりこまめな連絡を取りあってないのだろう。荒れ果てた庭を見ての通り娘夫婦がそこまで帰ってきてるようには見えないし。
「宮下責任重大だな」
圭斗が冷やかすも
「圭斗も同じだろ」
浩太さんに仕事を学ぶ圭斗も他人事ではないようだった。
「それより藤次郎がくたばるのが先か問題だな」
「お前より長生きはするから心配しなくていいぞ」
カラカラと笑う二人にいまひとつ笑えない若人達は鹿肉で作ったハムに箸を伸ばすのだった。
ダラダラと食べて話し続けるのかと思うも一時間の休息はぴたりと終わり、当然と言うように仕事場に向かっていく。
残されたのは女衆と飯田親子と俺。圭斗達も旧家へと足を向けて大人数で仕事をする様を見ていれば突如仕事道具を持って全員で戻ってきて
「吉野の、襖の滑りが悪いから少し手直しするぞ」
「ええと、ありがとうございます?」
でいいんだよなとお願いすれば台所側ではなく仏壇の裏側にある階段を長沢さんが案内するように上がっていくのを眺めてしまう。
勝手知ったる他人の家。
見られて困るものはないが飯田母が一緒に見てらっしゃいと洗い物を引き受けてくれる言葉に甘えて飯田親子と二階に一緒に上がるのだった。
「そう言えば二階にはあまり上がった事ありませんでしたね」
「最近は陸斗が掃除してくれてたからマシだったはず」
雨戸を開けて空気を入れ替える為にしか二階に上がってなかったなと掃除をしてなかった事がここにきて悔やまれる。まさかのいきなりのルームツアーが始まるなんて誰が想像する?しかも襖や障子を外されて丸裸なんてどんな羞恥プレイ?!押し入れの中に布団しかない事にホッとするのがせいぜいだった。
とは言え年季の入った机とネットで買った組み立ての本棚と痛んでリメイクされたタンスがあるだけ。
「二階に書斎は優雅だなあ」
山川さんののんびりした声は本棚の背表紙を眺めて黙って漫画のタイトルをなぞりながら借りて行っていい?と繋がる言葉にはどうぞと苦笑。
一階同様部屋は全て襖で仕切られている。開け放てば一階同様の広さがあり、空に近い分明るい。
普通なら景色を堪能するべく広い窓から覗く景色を堪能する所を
「やっぱりいい柱を使ってるだけあって木目が美しいですね」
「天井も。木目が良い」
「これはタンスか?またなんでこんなふうに切っちまったんだ」
「ネズミに齧られたり腐ったりで。
洗って使えるようにしてくれたんです宮下が」
言えば西野さんと長沢さんが引き出しを次々と取り出して行くのを森下さん達も手伝い始める。
何が始まったと思う合間に引き出しもバラバラにされて行く様子に宮下の顔も真っ青だ。
「何が起きてるんだよ」
聞けば
「お前達が無謀な事をしたのが気になったんだろうな」
広げられたブルーシートの上で浩太さんが電気サンダーで表面の汚れを落とし、長沢さんと内田さんが鉋で長年の歪みを直して行く。西野さんが次々に木槌で解体して山川さんが彫金の飾り金具を丁寧な手つきで外して行く。
何が起きているのか分からないが誰がどんな役割の指示を出したわけでもなく次々に、苦もなく作業にありつける様はこの広い部屋ならではだろうか。飴色で漆を塗っていたと思っていた箪笥は桐の無垢材で、きっとこの家にやってきた頃と変わらぬ姿になっていた。ただし少し痛々しげに半分に切られて。
その違和感も和らぎようにと森下さんが彫刻刀を持ち出して下段の一段に彫刻を施し始めるその隣で山川さんと浩太さんで家具を組み直す背後で手の空いた老人達は今度は机に手を伸ばし始め、瞬く間に解体を始めるのだった。
あまりにも見事な丁寧な作業を宮下はいつの間に取ってきたのか動画用のカメラで撮り出していた。その頃には圭斗も一緒になってサンダーで表面を磨いている。
賑やかさはない。ただ事故が起きないようにとタイミングを知らせる掛け声と作業の音が響く。気がつけば飯田さん達はおらず、別の部屋の納戸に篭っていた。退屈するのも申し訳ないが、納戸はそれこそ出入りのない場所。いいのだろうかと思いながらも圧倒するような作業の熱気がじわじわと俺にも伝わってくる。宮下も同様のようで俺にビデオを持たせたかと思えばサンダーで薄くなった彫刻を森下さんの側で作業を始める。一から下絵もなく彫るわけでもないので丁寧になぞるように消えないように集中しながら作業を進めていた。この輪の中に混ざりたい。でもその作業のスキルは一切俺にはない。自慢じゃないが宮下のように器用ではなく、圭斗のような努力はしてない。
悔しい……
初めて二人に嫉妬した。
心のどこかでずっと二人を下に見ていたのだろう。だけど今確実に二人に置いていかれて……悔しくはあるけど、二人の成長が眩しくて、羨ましくて。
なんだろう。
悔しいより羨ましい方が勝るってなんて。
嫉妬というより完全な敗者の俺はひたすらこの瞬間を見逃すまいと羨望の眼差しでカメラを回し続けていた。
「誰か手隙の方はいるか?
階段の向こう側の納戸の戸棚を直してもらいたい」
飯田父の掛け声に圭斗と宮下を置いて四畳半の納戸へと足を運べばガタのついた戸棚を鳴らす飯田父の言葉少なげな訴えに板戸を外して山のような荷物を運び出し、奥様二人も巻き添えになって使ってない部屋に運び込んだりと大騒動へと発展することになった。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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