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心は砂漠のように乾いて行く物だと思い出す 1

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 今週も飯田さんは現れずに週末となった。
 昨日は明日東京に行かないといけないのと飯田さんのご飯パワーが無い為にぼちぼちの結果しか出せずに終わった俺だが、その夜圭斗が陸斗を連れてやって来てくれた。勿論当然のように先生もいる。
 そしてなぜか下田と葉山のコンビ。
「何でお前らまで」
「綾人は知らないと思うが勉強に目覚めたこいつら学校帰りはいつもうちで勉強会だ。しかもお泊りで」
「何があった……」
「そんなの俺が知りたい。と言うわけで、陸斗が行くならついて行きたいとか言い出したから連れてきた」
「圭斗がめんどくさいって言うのが理解できたが、先生の世話できるのか?」
「まぁ、陸斗が居れば何とかなるだろう」
「ちょっと―、綾人酷くない?
 先生―こう見えても立派な成人男性で生徒を導く教師なのよ」
「人間として褒められる人格者になってください」
「そこは長所あらば短所有でしょ?せんせーのチャームポイントじゃない」
 お気楽極楽な先生は今日も相変らずのマイペースで世話は焼けるが基本放置で良いので烏骨鶏と同じと思えば問題ない。
「じゃあ行ってくるけど火の取り扱いだけは注意してくれ」
「竈は使わないから安心してくれ」
 言えば少し悲しげな視線の陸斗が兄を見上げていたがそこは兄弟。俺なら絶対負ける陸斗の視線に負けずに無視をして
「それよりも財布は持ったか?スマホとカード。ETCはちゃんとセットしてあるか?
 カーナビに目的地のセットは」
「どこのオカンだ」
 俺ではなく先生がつっこんだが
「俺が就職先に行く時に綾人に言われたからいつか言ってやろうと思って」
 ニヤリと笑う顔に俺もさすがに思い出してて笑ってしまうも
「だけどたかが一泊二日のお出かけなんだから大げさなんだよ。
 寧ろいつも頼ってた宮下が居ないだけでこうも不安になるとは思わなかったけど」
「まぁ、先生がいる時点で不安しかないしな」
「綾人も圭斗も失礼しちゃうわねぇ。さすがの先生だってたった二日で自分の巣は作り上げれないわよ」
 やあねぇこの子達はと言うけどだったらどれだけあればあの巣を完成させるのかと聞きたくもなるのは数日にわたって掃除を手伝わされた冷たい雪に包まれた日だった事を思いだして真面目に掃除は日々のルーティンの中に組みこもうと決心して実践している位の惨状だった。
「まあ、いいや。土産買って来るから後は頼むな」
「ああ、気を付けて行って来い」
「「「行ってらっしゃーい」」」
 土産を期待しての明るい声で見送ってくれた不安しかない留守番部隊を置いて車は坂を下って行く。
 それから街中を通ってこの地方の代名詞にもなる川を渡り高速に向かって山に沿った道を進み、いくつもの山を越えてやっと高速に乗る。それだけでも二時間以上するこの距離にどこかのサービスエリアから入れればいいのにと思うもそのサービスエリアも遥か彼方の山の上。どちらを取ると問われたら安全な道一択だ。普通に崖崩れもあるからね。
 ポツリポツリと走る車に続く形で東京へと向かえば段々と車も増え、やがて生まれ育った東京の街中に辿り着いた。
 記憶からすっかり変わってしまった町並みの中をカーナビ頼りに道を進む。
 目的地は年に一度来るか来ないかの場所なのでぼんやりと思えているが、正直ここ以外はもうあまり覚えていない。
 だけど、最寄りの駅から育った家のマンションまでは悔しい事に覚えている。二度と行く事はないのにと思いながらもまだキーケースに家の鍵があるのは誰にも言った事はない。憎たらしい事に未だに捨てれずにいるのはなんでだと俺の生涯の問題だと言う事にしてある。
 永遠に答えの出ない問題だなと答えを出す気のない問題を記憶の彼方に放り投げて目的地のホテルに着いた。
 東京に来て判った事だが車は随分とボコってるなと少しだけ幾ら命大切にとは言え獣たちにダイレクトアタックは止めようと運転の荒さを自覚するのだが今更仕方がないとすぐにまたボコる事になる車の買い替えはするつもりはない。
 ホテルの駐車場に車を預けて荷物を持ってフロントへと向かう。
 そこで待ち構えてたのは
「大変申し訳ありません。ご予約いただいたお部屋に別の方のご予約が重なってしまい……」
「これが世に言うダブルブッキングか。初めての体験だ」
「大変申し訳なくおもいます」
「まぁ、なっちゃったものは仕方がないから」
 チラチラと周囲から視線を投げられてなるべく穏便に早くこの茶番を済まそうと何度頭を下げられても仕方がないので
「だったら別の部屋はある?」
「それが生憎……」
 人気アイドルグループのコンサートがあるので部屋は満室とか。
「マジか。となると他のホテルもだよな」
「申し訳ありません。ですが、スイートなら空いていますが……」
 お値段が桁違いになるお部屋。
 どうしようかと思うも考えるのは一瞬。
「泊まれるならどの部屋でもいいから、そこを」
「ですが……」
 俺の服装を見て躊躇ったのだろう。
 俺も何でこんな時にこんな恰好で来たと短パンとTシャツと言う長距離移動向けの残念仕様。
 せめてもうちょっとまともな格好で来ればよかったと後悔先絶たずで大変申し訳なく思いながらも
「お金の方は大丈夫なので。
 とりあえず長距離移動して来たので休みたいのですが」
「承りました。こちらにご記入をお願いします」
 これ以上のやり取りは無粋だと、営業モードに戻ったフロントマンの名札には支配人と書かれてあり、俺は下に書かれた名前を覚えるのだった。
 荷物を持ってもらい、案内された部屋は高層階の見晴らし……はご近所の高層ビルを眺める微妙な景色。格式は高いがお値段も高く、部屋の設備の説明を受けてこんなところに一人で泊まる虚しさを覚えながら目覚ましをセットしてベットに転がる前に室内のドリンクは全てサービスで、バーカウンターの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して煽った。朝はここでと朝食をお願いした。
 これから会う約束の為にタクシーも予約してもらったし、今はとりあえず寝たいと瞼を閉じるのだった。
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