146 / 976
心は砂漠のように乾いて行く物だと思い出す 1
しおりを挟む
今週も飯田さんは現れずに週末となった。
昨日は明日東京に行かないといけないのと飯田さんのご飯パワーが無い為にぼちぼちの結果しか出せずに終わった俺だが、その夜圭斗が陸斗を連れてやって来てくれた。勿論当然のように先生もいる。
そしてなぜか下田と葉山のコンビ。
「何でお前らまで」
「綾人は知らないと思うが勉強に目覚めたこいつら学校帰りはいつもうちで勉強会だ。しかもお泊りで」
「何があった……」
「そんなの俺が知りたい。と言うわけで、陸斗が行くならついて行きたいとか言い出したから連れてきた」
「圭斗がめんどくさいって言うのが理解できたが、先生の世話できるのか?」
「まぁ、陸斗が居れば何とかなるだろう」
「ちょっと―、綾人酷くない?
先生―こう見えても立派な成人男性で生徒を導く教師なのよ」
「人間として褒められる人格者になってください」
「そこは長所あらば短所有でしょ?せんせーのチャームポイントじゃない」
お気楽極楽な先生は今日も相変らずのマイペースで世話は焼けるが基本放置で良いので烏骨鶏と同じと思えば問題ない。
「じゃあ行ってくるけど火の取り扱いだけは注意してくれ」
「竈は使わないから安心してくれ」
言えば少し悲しげな視線の陸斗が兄を見上げていたがそこは兄弟。俺なら絶対負ける陸斗の視線に負けずに無視をして
「それよりも財布は持ったか?スマホとカード。ETCはちゃんとセットしてあるか?
カーナビに目的地のセットは」
「どこのオカンだ」
俺ではなく先生がつっこんだが
「俺が就職先に行く時に綾人に言われたからいつか言ってやろうと思って」
ニヤリと笑う顔に俺もさすがに思い出してて笑ってしまうも
「だけどたかが一泊二日のお出かけなんだから大げさなんだよ。
寧ろいつも頼ってた宮下が居ないだけでこうも不安になるとは思わなかったけど」
「まぁ、先生がいる時点で不安しかないしな」
「綾人も圭斗も失礼しちゃうわねぇ。さすがの先生だってたった二日で自分の巣は作り上げれないわよ」
やあねぇこの子達はと言うけどだったらどれだけあればあの巣を完成させるのかと聞きたくもなるのは数日にわたって掃除を手伝わされた冷たい雪に包まれた日だった事を思いだして真面目に掃除は日々のルーティンの中に組みこもうと決心して実践している位の惨状だった。
「まあ、いいや。土産買って来るから後は頼むな」
「ああ、気を付けて行って来い」
「「「行ってらっしゃーい」」」
土産を期待しての明るい声で見送ってくれた不安しかない留守番部隊を置いて車は坂を下って行く。
それから街中を通ってこの地方の代名詞にもなる川を渡り高速に向かって山に沿った道を進み、いくつもの山を越えてやっと高速に乗る。それだけでも二時間以上するこの距離にどこかのサービスエリアから入れればいいのにと思うもそのサービスエリアも遥か彼方の山の上。どちらを取ると問われたら安全な道一択だ。普通に崖崩れもあるからね。
ポツリポツリと走る車に続く形で東京へと向かえば段々と車も増え、やがて生まれ育った東京の街中に辿り着いた。
記憶からすっかり変わってしまった町並みの中をカーナビ頼りに道を進む。
目的地は年に一度来るか来ないかの場所なのでぼんやりと思えているが、正直ここ以外はもうあまり覚えていない。
だけど、最寄りの駅から育った家のマンションまでは悔しい事に覚えている。二度と行く事はないのにと思いながらもまだキーケースに家の鍵があるのは誰にも言った事はない。憎たらしい事に未だに捨てれずにいるのはなんでだと俺の生涯の問題だと言う事にしてある。
永遠に答えの出ない問題だなと答えを出す気のない問題を記憶の彼方に放り投げて目的地のホテルに着いた。
東京に来て判った事だが車は随分とボコってるなと少しだけ幾ら命大切にとは言え獣たちにダイレクトアタックは止めようと運転の荒さを自覚するのだが今更仕方がないとすぐにまたボコる事になる車の買い替えはするつもりはない。
ホテルの駐車場に車を預けて荷物を持ってフロントへと向かう。
そこで待ち構えてたのは
「大変申し訳ありません。ご予約いただいたお部屋に別の方のご予約が重なってしまい……」
「これが世に言うダブルブッキングか。初めての体験だ」
「大変申し訳なくおもいます」
「まぁ、なっちゃったものは仕方がないから」
チラチラと周囲から視線を投げられてなるべく穏便に早くこの茶番を済まそうと何度頭を下げられても仕方がないので
「だったら別の部屋はある?」
「それが生憎……」
人気アイドルグループのコンサートがあるので部屋は満室とか。
「マジか。となると他のホテルもだよな」
「申し訳ありません。ですが、スイートなら空いていますが……」
お値段が桁違いになるお部屋。
どうしようかと思うも考えるのは一瞬。
「泊まれるならどの部屋でもいいから、そこを」
「ですが……」
俺の服装を見て躊躇ったのだろう。
俺も何でこんな時にこんな恰好で来たと短パンとTシャツと言う長距離移動向けの残念仕様。
せめてもうちょっとまともな格好で来ればよかったと後悔先絶たずで大変申し訳なく思いながらも
「お金の方は大丈夫なので。
とりあえず長距離移動して来たので休みたいのですが」
「承りました。こちらにご記入をお願いします」
これ以上のやり取りは無粋だと、営業モードに戻ったフロントマンの名札には支配人と書かれてあり、俺は下に書かれた名前を覚えるのだった。
荷物を持ってもらい、案内された部屋は高層階の見晴らし……はご近所の高層ビルを眺める微妙な景色。格式は高いがお値段も高く、部屋の設備の説明を受けてこんなところに一人で泊まる虚しさを覚えながら目覚ましをセットしてベットに転がる前に室内のドリンクは全てサービスで、バーカウンターの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して煽った。朝はここでと朝食をお願いした。
これから会う約束の為にタクシーも予約してもらったし、今はとりあえず寝たいと瞼を閉じるのだった。
昨日は明日東京に行かないといけないのと飯田さんのご飯パワーが無い為にぼちぼちの結果しか出せずに終わった俺だが、その夜圭斗が陸斗を連れてやって来てくれた。勿論当然のように先生もいる。
そしてなぜか下田と葉山のコンビ。
「何でお前らまで」
「綾人は知らないと思うが勉強に目覚めたこいつら学校帰りはいつもうちで勉強会だ。しかもお泊りで」
「何があった……」
「そんなの俺が知りたい。と言うわけで、陸斗が行くならついて行きたいとか言い出したから連れてきた」
「圭斗がめんどくさいって言うのが理解できたが、先生の世話できるのか?」
「まぁ、陸斗が居れば何とかなるだろう」
「ちょっと―、綾人酷くない?
先生―こう見えても立派な成人男性で生徒を導く教師なのよ」
「人間として褒められる人格者になってください」
「そこは長所あらば短所有でしょ?せんせーのチャームポイントじゃない」
お気楽極楽な先生は今日も相変らずのマイペースで世話は焼けるが基本放置で良いので烏骨鶏と同じと思えば問題ない。
「じゃあ行ってくるけど火の取り扱いだけは注意してくれ」
「竈は使わないから安心してくれ」
言えば少し悲しげな視線の陸斗が兄を見上げていたがそこは兄弟。俺なら絶対負ける陸斗の視線に負けずに無視をして
「それよりも財布は持ったか?スマホとカード。ETCはちゃんとセットしてあるか?
カーナビに目的地のセットは」
「どこのオカンだ」
俺ではなく先生がつっこんだが
「俺が就職先に行く時に綾人に言われたからいつか言ってやろうと思って」
ニヤリと笑う顔に俺もさすがに思い出してて笑ってしまうも
「だけどたかが一泊二日のお出かけなんだから大げさなんだよ。
寧ろいつも頼ってた宮下が居ないだけでこうも不安になるとは思わなかったけど」
「まぁ、先生がいる時点で不安しかないしな」
「綾人も圭斗も失礼しちゃうわねぇ。さすがの先生だってたった二日で自分の巣は作り上げれないわよ」
やあねぇこの子達はと言うけどだったらどれだけあればあの巣を完成させるのかと聞きたくもなるのは数日にわたって掃除を手伝わされた冷たい雪に包まれた日だった事を思いだして真面目に掃除は日々のルーティンの中に組みこもうと決心して実践している位の惨状だった。
「まあ、いいや。土産買って来るから後は頼むな」
「ああ、気を付けて行って来い」
「「「行ってらっしゃーい」」」
土産を期待しての明るい声で見送ってくれた不安しかない留守番部隊を置いて車は坂を下って行く。
それから街中を通ってこの地方の代名詞にもなる川を渡り高速に向かって山に沿った道を進み、いくつもの山を越えてやっと高速に乗る。それだけでも二時間以上するこの距離にどこかのサービスエリアから入れればいいのにと思うもそのサービスエリアも遥か彼方の山の上。どちらを取ると問われたら安全な道一択だ。普通に崖崩れもあるからね。
ポツリポツリと走る車に続く形で東京へと向かえば段々と車も増え、やがて生まれ育った東京の街中に辿り着いた。
記憶からすっかり変わってしまった町並みの中をカーナビ頼りに道を進む。
目的地は年に一度来るか来ないかの場所なのでぼんやりと思えているが、正直ここ以外はもうあまり覚えていない。
だけど、最寄りの駅から育った家のマンションまでは悔しい事に覚えている。二度と行く事はないのにと思いながらもまだキーケースに家の鍵があるのは誰にも言った事はない。憎たらしい事に未だに捨てれずにいるのはなんでだと俺の生涯の問題だと言う事にしてある。
永遠に答えの出ない問題だなと答えを出す気のない問題を記憶の彼方に放り投げて目的地のホテルに着いた。
東京に来て判った事だが車は随分とボコってるなと少しだけ幾ら命大切にとは言え獣たちにダイレクトアタックは止めようと運転の荒さを自覚するのだが今更仕方がないとすぐにまたボコる事になる車の買い替えはするつもりはない。
ホテルの駐車場に車を預けて荷物を持ってフロントへと向かう。
そこで待ち構えてたのは
「大変申し訳ありません。ご予約いただいたお部屋に別の方のご予約が重なってしまい……」
「これが世に言うダブルブッキングか。初めての体験だ」
「大変申し訳なくおもいます」
「まぁ、なっちゃったものは仕方がないから」
チラチラと周囲から視線を投げられてなるべく穏便に早くこの茶番を済まそうと何度頭を下げられても仕方がないので
「だったら別の部屋はある?」
「それが生憎……」
人気アイドルグループのコンサートがあるので部屋は満室とか。
「マジか。となると他のホテルもだよな」
「申し訳ありません。ですが、スイートなら空いていますが……」
お値段が桁違いになるお部屋。
どうしようかと思うも考えるのは一瞬。
「泊まれるならどの部屋でもいいから、そこを」
「ですが……」
俺の服装を見て躊躇ったのだろう。
俺も何でこんな時にこんな恰好で来たと短パンとTシャツと言う長距離移動向けの残念仕様。
せめてもうちょっとまともな格好で来ればよかったと後悔先絶たずで大変申し訳なく思いながらも
「お金の方は大丈夫なので。
とりあえず長距離移動して来たので休みたいのですが」
「承りました。こちらにご記入をお願いします」
これ以上のやり取りは無粋だと、営業モードに戻ったフロントマンの名札には支配人と書かれてあり、俺は下に書かれた名前を覚えるのだった。
荷物を持ってもらい、案内された部屋は高層階の見晴らし……はご近所の高層ビルを眺める微妙な景色。格式は高いがお値段も高く、部屋の設備の説明を受けてこんなところに一人で泊まる虚しさを覚えながら目覚ましをセットしてベットに転がる前に室内のドリンクは全てサービスで、バーカウンターの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して煽った。朝はここでと朝食をお願いした。
これから会う約束の為にタクシーも予約してもらったし、今はとりあえず寝たいと瞼を閉じるのだった。
116
お気に入りに追加
2,655
あなたにおすすめの小説
家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
裏路地古民家カフェでまったりしたい
雪那 由多
大衆娯楽
夜月燈火は亡き祖父の家をカフェに作り直して人生を再出発。
高校時代の友人と再会からの有無を言わさぬ魔王の指示で俺の意志一つなくリフォームは進んでいく。
あれ?
俺が思ったのとなんか違うけどでも俺が想像したよりいいカフェになってるんだけど予算内ならまあいいか?
え?あまい?
は?コーヒー不味い?
インスタントしか飲んだ事ないから分かるわけないじゃん。
はい?!修行いって来い???
しかも棒を銜えて筋トレってどんな修行?!
その甲斐あって人通りのない裏路地の古民家カフェは人はいないが穏やかな時間とコーヒーの香りと周囲の優しさに助けられ今日もオープンします。
第6回ライト文芸大賞で奨励賞を頂きました!ありがとうございました!
隣の古道具屋さん
雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。
幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。
そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。
修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる