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流星雨と共に 14
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お腹は昼からいつでも何か食べれる状態だったからこれと言って欲しい物はない。ただ二階で勉強か本を読んでいたかは知らないけど陸斗は炊き立てのご飯をおにぎりにして焼きおにぎりを育てていた。そしていつの間にかみそだれを作っていて、それを塗って食べ始めると言う……香ばしい味噌の焦げた臭いに飯田さんまでもおにぎりを握って焼き始めると言う最強の料理人がこんな所に居た事を痛感するのだった。
そして木の器にざっくりと盛られた味噌煮込み。ゴロゴロと骨付きのまま煮込んでくれた憎い演出に
「さあ、食べてみてください。猪の肉は固いと言うイメージを壊させてもらいますよ」
「ふふふ、その言葉期待する!」
器の縁からはみ出した骨を持ち上げてそのまま大きく開けた口へと運ぶ。
「はふっ!」
齧りついた直後空に向かって口の中に広がる熱を逃がすように口を広げながらもほろほろと崩れて行く猪の肉は舌の上で溶けて行く。そして獣の臭さの残る肉にも負けない味噌が主張する。そして不思議な事に肉の脂身には甘さも溢れだし、口の中で調和と言うより競い合う大乱闘!だけど不思議な事にそれが一つにまとまって、もう一口齧る頃にはじゃれ合うようなまとまりを見せ、もう一口と癖になる競演にいつしか虜になっていた。
たった一切れの肉に俺達は完敗。そして乾杯。
口の中に広がるワイルドな臭みと舌の上に残る味噌を洗い流すようにビールを一気に煽る。
「うまっ!信じられん!猪ってこんなに美味かったのかよ!」
目を見開いて骨から外れ落ちた肉にガッツリと再び食らいつく圭斗の横では小食の陸斗もひたすら黙々とイノシシの肉にかぶりついていた。
俺と宮下は脂の乗り切った冬場に何度もご馳走になる為に知っている味とは言え病みつきになる獣臭さに間違いはない事は知っていたが、
素朴な疑問を訪ねる素直な陸斗に
「前にお客さんにご馳走になったんだよ。
だけど臭くて匂って、でも親父達はそれが美味いんだって言ってたんだけどまさかいきなりこんな感嘆の悲鳴を聞けるとは思いもしなかった。
「圭ちゃん猪食べた事あったの?」、珍しいから食べれただけで到底食べれる物じゃなくてな。いや食ったけど」
圭斗の言う親父とは前に務めていた前社長の事。間違っても自分の実の父親を親しく呼ぶ真似はしない。そこはさらりとスルーした飯田さんが
「あー、血抜きがハンパだったり古いと匂いますね」
「それなりの有名店だったから楽しみにしてたけど、がっかりだったな」
「まぁ、知らな人はそう言う物だと思って食べますからね」
少なくとも綾人はバアちゃんが作ったシシ汁を食べた事があるのでそれなりに猪の味を知っている。雑煮に猪の肉が入っているのはどの家位かは知らないが、少なくとも冬休みに雪をかき分けてやって来た圭斗と宮下にバアちゃんが振舞ってくれたのは冬中食べる事になる我が家の定番の雑煮だ。
さすがジビエを学んだだけあって飯田さんは可哀想にと言う視線で圭斗を見る。だけど当の本人は猪の臭が旨みに変る汁をすすりながらこの季節なのにとろっとろに煮込まれた大根にかぶりついていた。
火傷するぞ……
俺と同じく無謀な事をとこの後に来る熱の暴力に暴れる姿を想像して、また想像通りなのでニマニマと笑いながらその暴れる姿を堪能しながら筋を食べる。こちらもくにゅっとした食感ではなくサクッとした歯ごたえにどうしたらこんなにもと思うも
「下ゆでの時圧力鍋にかけるのですよ。
大根も猪の肉も皆一度圧力鍋で煮こんで下準備をするのです。しっかりと冷まさせてから味付けするんですよ。何の変哲もない煮物の作り方です」
そうは言うも
「ほんとは野菜ごとに下茹でしたりするんじゃないの?」
一人暮らしでそれなりに知識を得た圭斗が言うも
「お金を頂いて提供する時はそうします。
ですが今は楽しんで料理をする事に優先んされているのでそのような手間は致しません」
きっぱりと今はプライベートだと言う飯田さんにそれもそうだと俺は頷きながら
「お金を取るならこんな素人の作った野菜とか捌いた猪とかじゃなくってしっかりお金を払った正規の物を用意するよ」
頷いてしまえば飯田さんは俺をじーっと見てどこか悲しそうな顔。
な、なんなんだよと、猪の肉を齧りながら距離を取れば
「いつ猪解体したのです?」
「いつだったか、八月入った頃かな?罠に掴まってて子供だったから力ずくで抑え込んで川でナイフで頑張って捌いた程度に適当な具合に」
何で俺にやらせてくれなかったのですか?!と無言で視線だけで訴える危ない人から顔を背けつつもあの時マイナスドライバーがあってよかったと、血の匂いにつられて近くに居たキツネに頭を投げつけ内臓は川辺に置いて一目散に逃げる始末。あいつら目を合わせると襲って来るんだよと肉だけが持ち帰れればいいのでそのままダッシュで逃走。頭と内臓があれば足止めには十分だろうと、あれが熊じゃなくってよかったと、肉を抱えて帰って来た血まみれの俺に先生に呆れた目で見られたのは当然だと思う。
それから桶に入れて山水を流して我が家の解体場で一晩放置。朝には血も濁らないくらい綺麗に血抜きが完了。翌日猪を捌いた場所に様子を見に行ったが内臓は勿論頭も皮もなかったので美味しく頂かれたのだろうと判断して、血で汚れた石をモップで洗ってそれ以来行ってはいない。台風が来る前に倒木が無いか見に行かないとなーと思うもここまでなかなか台風はやってこない。
海から遠い海なし県だが、それでも最近ではちょこちょこ台風が通り過ぎて行く。もっとも海辺の映像と比べれば全く大した事ないが、それでも鉄砲水や土石流と言う危険がある以上川の手入れ、山の手入れはこまめにやっておきたい。家から上はちょくちょく手を付けているが畑から下は全く手を入れてない。近いうち手を付けようと予定に組み込んでおく。
そして木の器にざっくりと盛られた味噌煮込み。ゴロゴロと骨付きのまま煮込んでくれた憎い演出に
「さあ、食べてみてください。猪の肉は固いと言うイメージを壊させてもらいますよ」
「ふふふ、その言葉期待する!」
器の縁からはみ出した骨を持ち上げてそのまま大きく開けた口へと運ぶ。
「はふっ!」
齧りついた直後空に向かって口の中に広がる熱を逃がすように口を広げながらもほろほろと崩れて行く猪の肉は舌の上で溶けて行く。そして獣の臭さの残る肉にも負けない味噌が主張する。そして不思議な事に肉の脂身には甘さも溢れだし、口の中で調和と言うより競い合う大乱闘!だけど不思議な事にそれが一つにまとまって、もう一口齧る頃にはじゃれ合うようなまとまりを見せ、もう一口と癖になる競演にいつしか虜になっていた。
たった一切れの肉に俺達は完敗。そして乾杯。
口の中に広がるワイルドな臭みと舌の上に残る味噌を洗い流すようにビールを一気に煽る。
「うまっ!信じられん!猪ってこんなに美味かったのかよ!」
目を見開いて骨から外れ落ちた肉にガッツリと再び食らいつく圭斗の横では小食の陸斗もひたすら黙々とイノシシの肉にかぶりついていた。
俺と宮下は脂の乗り切った冬場に何度もご馳走になる為に知っている味とは言え病みつきになる獣臭さに間違いはない事は知っていたが、
素朴な疑問を訪ねる素直な陸斗に
「前にお客さんにご馳走になったんだよ。
だけど臭くて匂って、でも親父達はそれが美味いんだって言ってたんだけどまさかいきなりこんな感嘆の悲鳴を聞けるとは思いもしなかった。
「圭ちゃん猪食べた事あったの?」、珍しいから食べれただけで到底食べれる物じゃなくてな。いや食ったけど」
圭斗の言う親父とは前に務めていた前社長の事。間違っても自分の実の父親を親しく呼ぶ真似はしない。そこはさらりとスルーした飯田さんが
「あー、血抜きがハンパだったり古いと匂いますね」
「それなりの有名店だったから楽しみにしてたけど、がっかりだったな」
「まぁ、知らな人はそう言う物だと思って食べますからね」
少なくとも綾人はバアちゃんが作ったシシ汁を食べた事があるのでそれなりに猪の味を知っている。雑煮に猪の肉が入っているのはどの家位かは知らないが、少なくとも冬休みに雪をかき分けてやって来た圭斗と宮下にバアちゃんが振舞ってくれたのは冬中食べる事になる我が家の定番の雑煮だ。
さすがジビエを学んだだけあって飯田さんは可哀想にと言う視線で圭斗を見る。だけど当の本人は猪の臭が旨みに変る汁をすすりながらこの季節なのにとろっとろに煮込まれた大根にかぶりついていた。
火傷するぞ……
俺と同じく無謀な事をとこの後に来る熱の暴力に暴れる姿を想像して、また想像通りなのでニマニマと笑いながらその暴れる姿を堪能しながら筋を食べる。こちらもくにゅっとした食感ではなくサクッとした歯ごたえにどうしたらこんなにもと思うも
「下ゆでの時圧力鍋にかけるのですよ。
大根も猪の肉も皆一度圧力鍋で煮こんで下準備をするのです。しっかりと冷まさせてから味付けするんですよ。何の変哲もない煮物の作り方です」
そうは言うも
「ほんとは野菜ごとに下茹でしたりするんじゃないの?」
一人暮らしでそれなりに知識を得た圭斗が言うも
「お金を頂いて提供する時はそうします。
ですが今は楽しんで料理をする事に優先んされているのでそのような手間は致しません」
きっぱりと今はプライベートだと言う飯田さんにそれもそうだと俺は頷きながら
「お金を取るならこんな素人の作った野菜とか捌いた猪とかじゃなくってしっかりお金を払った正規の物を用意するよ」
頷いてしまえば飯田さんは俺をじーっと見てどこか悲しそうな顔。
な、なんなんだよと、猪の肉を齧りながら距離を取れば
「いつ猪解体したのです?」
「いつだったか、八月入った頃かな?罠に掴まってて子供だったから力ずくで抑え込んで川でナイフで頑張って捌いた程度に適当な具合に」
何で俺にやらせてくれなかったのですか?!と無言で視線だけで訴える危ない人から顔を背けつつもあの時マイナスドライバーがあってよかったと、血の匂いにつられて近くに居たキツネに頭を投げつけ内臓は川辺に置いて一目散に逃げる始末。あいつら目を合わせると襲って来るんだよと肉だけが持ち帰れればいいのでそのままダッシュで逃走。頭と内臓があれば足止めには十分だろうと、あれが熊じゃなくってよかったと、肉を抱えて帰って来た血まみれの俺に先生に呆れた目で見られたのは当然だと思う。
それから桶に入れて山水を流して我が家の解体場で一晩放置。朝には血も濁らないくらい綺麗に血抜きが完了。翌日猪を捌いた場所に様子を見に行ったが内臓は勿論頭も皮もなかったので美味しく頂かれたのだろうと判断して、血で汚れた石をモップで洗ってそれ以来行ってはいない。台風が来る前に倒木が無いか見に行かないとなーと思うもここまでなかなか台風はやってこない。
海から遠い海なし県だが、それでも最近ではちょこちょこ台風が通り過ぎて行く。もっとも海辺の映像と比べれば全く大した事ないが、それでも鉄砲水や土石流と言う危険がある以上川の手入れ、山の手入れはこまめにやっておきたい。家から上はちょくちょく手を付けているが畑から下は全く手を入れてない。近いうち手を付けようと予定に組み込んでおく。
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