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流星雨と共に 12

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 サザエを網の上に並べて中からふつふつと水分が溢れ出すように沸騰したらほんの少しのお酒と醤油を垂らす。軍手をはめてサザエを持ち、箸の先で持ちあがった蓋の隙間に刺して蓋を外す。そのまま中の身に刺すように、サザエの渦に合わせてくるりと回転させながら取ると、綺麗に内臓まで取れた。
 身は皿に置いて貝の中の醤油と酒でほんのりと味付けされたスープをなめるように飲み、砂が残ってる可能性を想定して全部は飲まない。にんまりと自然に笑みを浮かべながらほっくりと火の通ったサザエの身にかぶりつく。の前に臓器と切り分けてから口へと無謀にも放り込み、空に向かって湯気を逃すように口を開ける。
 はふーーー熱い!!!
 だけどそれが美味さと幸せと言う物。変態じゃないよと舌の上で踊る熱を誤魔化す為に足をばたつかせている俺に陸斗がさっと飲みかけのビールを出してくれた。良い子や……
 三分の二ほどの残りを全部飲んで何とか落ち着いた俺にみんなが笑いかける。
 熱いんだから注意しなよ、火傷しますよ?火傷したでしょ。
 そんな周りの心配と言うスパイスにもにんまりと大丈夫と笑いながらもサザエのはらわたの、先端のクルリとした場所を切り取る。いわゆる肝。砂袋まで食べるとじゃりじゃりして折角の気分が台無しです。なので贅沢にも先端のあの気持ち悪い色の部分だけを頂きます。肝をつぶして酒で臭みを消し、醤油で味付ける様に足せばそれだけで珍味の出来上がり。裏ごしは見逃してください。酒のあてにはサイコーです!
 いつの間にか飯田さんが隣にやってきて日本酒を並べて二人で箸の先ですくっては舐めながら日本酒を傾けていた。
「「んまー!!!」」
 何とも言えないほろ苦さと磯と、ほんのりと香る日本酒に醤油の塩気が辛口の日本酒に合って八個ほど食べてあつめた肝が見る間に無くなって行く。
 因みに作り方を教えてくれたのは飯田さん。いい塩梅ですねと中々にして料理への評価の厳しい飯田さんからその言葉を頂ければ満足です!
 うまー…… 
 サザエの身にちょんと乗せて魂を半分飛ばしながらコリコリとした食感を楽しんでいれば
「陸斗、今のうちに肉を食っておけ」
「うん」
 篠田兄弟は綾人と飯田がサザエで日本酒を楽しんでいる隙にサーロインをバクバクと気持ち良いペースで食べていた。
「圭斗、陸に変な事させないの。陸もお肉はまだいっぱいあるから落ち着いて色々な物も食べる事。
 綾人もそろそろアワビのステーキ焼けたから。折角なんだからアワビの肝ソースも作れば?」
 言いながらアワビの肝は飯田さんに茶こしに入れた状態で渡されれば滑らかに綺麗にすり潰させていきく。
「陸、いいか?
 美味い物を食べたければ高価な物はちゃんと見合った人に渡すんだぞ。
 そして宮下はこれを理由に売り上げに貢献させた人でなしだぞ?
 今回の綾人を励ます会のバーベキューの回避のほとんどは綾人持ちだからってお高い奴らばかり発注したダメな社員の見本だぞ?あ、ウニも美味いから食っておけ。アワビの貝の上に置いて焼いた奴も旨いぞ」
「あ、綾人君。ご馳走になってます……」
 飛び入り参加の小山はこのバーベキューの裏の事情に凝縮してしまうもほぼただで食べている彼は次回何かと言葉を濁して今回は誤魔化すも
「そういや圭斗君のお庭の草刈りは昨日行ったのでは?」
 昨日の今日で発注が間に合うのか?と小山が問えば
「元々この季節は毎年集まってるんですよ」
「今年は俺もちょうど休みが合ったし、だったらバーベキュー決定で豪華にしようってな?」
 言われてもピンとこずに
「今日何かあったか?」
 小首かしげる小山に宮下が答えを発表。
「今夜ペルセウス座流星群のピークなんだよ」
「ああ、新聞に載ってたな。北側から放射状に飛ぶんだっけ?
 今夜だったか……」
 うろ覚えでひねり出した記憶に綾人は満足げに頷き
「東京じゃあ見れないし、バアちゃんの家に居た時に見たぐらいしかなかったからな」
「別に流れ星何て空見てたら流れて行くもんだからありがたがる理由がわからない」
 圭斗のシビアな言葉に
「いやいや、これだけ空気の澄んだ空自体がありがたいのですよ」
 飯田も贅沢者めと圭斗に行かにここが素晴らしいかを力説する。
「そんなわけで、折角だから綾人の家で星空観賞会。
 夜中の二時までぼんやりと過ごす予定だから、小山さんもおなか一杯になったら好きなことしてください。俺達も夜まで適当に過ごすので」
 そんな宮下の説明に
「ずーるーいー。俺だって夜までバーベキューしたーい」
「お前は明日からの仕込に帰れ」
 飯田はあくまでも現実主義だった。
「お前俺に冷たくね?」
「アポイントもなく来るような奴と知り合いになた覚えはない」
「綾人君!薫ちゃんがいじめるよう!」
「小山さん、三十過ぎて泣きながら喧嘩売るのはやめましょう」
「そういえば今回高校の先生居ないな?」
 三十代三人組では無いがもう一人の三十代をキョロキョロと探すように周囲を
伺う小山さんに
「お父さんが体調悪いらしくってお盆の間帰ってるらしいよ」
 圭斗が牛タンを育てながらポツリとつぶやいた。俺聞いてないぞ?と伺うように圭斗へと視線を向ければ
「俺だって聞いたわけじゃ無いぞ。暫く泊まらせてもらってたからそう言った話が聞こえて来るんだ。
 八月の頭に倒れて検査入院。手術が必要で、体力をつけるために入院していたけど予定をしていた日より具合が悪くなったから急遽手術をする事になった。
 手術は終わったけど術後が芳しく無い状態。
 ってことぐらいしか聞こえてきた話はわからなかったけどな」
「俺聞いてねーぞ」
 それなのに呑気にも俺の世話とか従兄妹への指導とか
「俺の事構ってる場合じゃないだろ」
 家族への憧れは多分押し込めてるだけで人一倍憧れはある。ましてや世話になってる先生の家族。俺なんかより大切にしてほしいと常々言っていたのに……
「そんな顔しないの。先生にとったら綾人は手間のかかる弟みたいなもんなんだから。先生が心配だと思うのなら先生も綾人と同じ分だけ心配しているだけなんだよ」
 ちゃんと綾人の気持ちが伝わっているから、それに見合った気持ちを返したいだけだと生意気な事を言う……うなぎの白焼きを焼き直しながらタレを塗る宮下から本当に心配されているのかは全く伝わってこない。それどころかタレの匂いが香ばしく漂い出した頃を見計らって
「はい。スポンサーの綾人のは一番いい所」
 だけどここにいない人物に文句を言っても仕方がないので、熱々のウナギを食べる事でこの話題を終わりにするのだった。
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