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流星雨と共に 10

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 朝食は小山さんが作ってくれる事になり、その間に飯田さんは五右衛門風呂で何かの葉っぱを浮かべてゆったりと入っていた。
 何の葉っぱだろうと思っていれば
「レモングラスだよ。レモングラスって放っておくと人の背より高くなるんだな」
 感心した声にレモングラスってアジアン系の料理で良く入ってる奴だよな?ハーブティーにも使う奴だよな?そういやそんな物植えたな?と思い出しながらへーと聞いていれば
「レモングラス植えて使わなかったのかい?」
「そもそも忘れていたって言うか、ハーブのティーバックのを飲んでみたけど好きじゃなかったから」
 多分ここがハーブの興味を失った原因だ。
 そっと視線を反らす小山さん。止めてよ、そんな可愛そうな子を見ないようにする動作。俺だって判ってるんだからそんな目でちらちら見るなと心の中で懇願してこの屈辱に耐える。
「ハーブティーは好みもあるから、今材料がないから今度マイルドな物から作ってあげるよ」
「お子様向けからお願いします」
「今度休みになった時にまた来ますね」
 なんて約束を取り付けている合間に飯田さんが風呂から上がって来た。爽やかなレモンの香りが漂っているような気がする。
 ゆったりとしたズボンとシャツに着替えた所で土間のテーブルに付き
「なんか半分寝かけているからご飯急ごうか」
 小山さんが急いで器に盛る料理の内容を見て一度テーブルに着いたけど立ち上がり戸棚から梅酒を取り出してきた。
 うん。ぶれない。
「お前朝っぱらから呑むのかよ……」
 小山さんが信じられんと言うも飯田さんはぐい呑みに氷を一つ置いてくいっと呑む。
「お前には朝かも知れないが俺はこれから寝る。つまり夜だから問題ない」
 なんて屁理屈かと思うもクレソンとベーコンのバター炒めに手を伸ばしたり、トマトの卵炒めに手を伸ばしたりしながら自分でお酒を作って俺達よりも幸せそうに食べていた。
「飯田さん、俺も貰います!」
 あまりの旨そうに呑むから思わず我慢できなくて自分でぐい呑みを持ってくればすぐにお酌をしてもらった。
「お前らホント楽しそうだなぁ」
 呆れた苦笑に小山さんも一杯だけと言って金木犀のお酒を選んで口に含む。
「うわ、なにこれ。金木犀の香りが凄い!」
 思わずと言う様に声を上げる小山さんに
「綾人さんのおばあさんが作ってくれた物だ。最低四年以上寝かしているから心して呑め」
「いや、それはお前だろう。もう何杯飲んでるんだよ」
 既に幾つも並ぶぐい呑みを見てまだこれだけと空になったぐい呑みをまた一つ増やす。
「ざるだとは思っていたがほどほどにしろよ」
「だから一杯ずつと決めている」
 ふふんと楽しげな顔でまた別の物を持ってきた。
「俺は明るいうちに帰るつもりだし、ハーブ畑の方を堪能したい。
 良かったら刈り取って乾燥ハーブ作りたい」
「好きなだけどうぞ。もう育てるつもりないから全部刈り取って下さい」
 ハーブティーがかなりがっかりなお味だったので畑を潰してなに植えようかと考えていれば正面からの圧の半端なさに冷や汗が流れる。
 いや、俺何か変な事言った?って言うか俺の畑の何がいけなかったのか?
 チラリと視線を向けた瞬間視線が合った。あまりの圧に冷や汗は滝のように流れ出す。
 なにがいけなかった?思わず一人反省会を始めてしまえば
「まさかハーブ畑つぶすきじゃありませんよね?」
「いや、だって使わなければただだの雑草地だし?」
 今まで使わなくて不便の無いものだったから今更なくても問題ないし?とは言えなかったが飯田さんは俺の作った味の薄い梅酒を小山さんに渡せば一気に煽り
「こんな夢のようなハーブ畑を潰すなんてどーーーして残酷な事ができるんだよおおお!」
「こ、小山さん?」
 さらに飯田さんが梅酒を渡す。もちろん俺作の。俺とも視線を合わせ無いように差し出した梅酒を一気に呑み
「あんな理想の畑を作っておきながら!
 何で!何て残虐非道な事を!何でできるんだあああ!!!」
 よ、酔ってる???
 さらに梅酒を飲ませたあと飯田さんは枕を差し出して隣の座敷へと誘導して横にさせた瞬間
「ん、ごごごー……」
 豪快ないびきと共に潰れてしまった。
「すみません。こいつ下戸でして」
「ぐい呑みだったけどコップ一杯程度で……」
「ぐい呑み一杯でスイッチ入るとは思わなくて、めんどくさくてすみません」
「いえ、なんか、ありがとうございます」
 言いながら食事を終えた飯田さんは後片付けをして
「では寝ますがお昼は宮下君から綾人さんに海鮮バーベキューを食べさせて欲しいとリクエストがありましたので。
 皆さんも来ると言ってたのでテーブルの準備をお願いしても良いですか?」
「ちゃんと火も熾しておくよ」
「ではいつもと同じくらいのお昼前に起きるのでそちらはよろしくお願いします」
「了解です。ではおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
 そう言って仏間の奥の日当たりの悪い、だけど縁側の奥に広がる裏庭を覗く部屋に自分で布団を敷いてスイッチが切れたように眠りにつくのを邪魔しないように烏骨鶏達に何かおいしいもの持ってない?と絡まれながら裏山にヘルメットと籠を担いでゴミバサミに腰に鉈を装備して皮の手袋という夏には過酷な装備で山に登るのだった。





 
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