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生まれ変わりは皆様とご一緒に 7

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 日付が変わる前になって小山さんと山口さんは姿を現し、大量の食材を二人は車を何往復貸して運びこんでやっと挨拶となった。だけど俺は早々に先に休ませてもらい、後はミーティングしてその後もう少し仕込んでから休むと言っていた。先程先生のおつまみの冬瓜を見て畑にもまだあるか確認して取りに行き冬瓜の下ゆでを始めたが明らかに予定外のメニューだろうと理解するも
「フランス料理に冬瓜なんて使わないから久し振りだなぁ」
 お年寄りメニューって思った奴誰だ?こんなにもナイスミドルなスレンダー美人(?)の青山さんだって食べるんだぞ?料理の仕方を考えれば真冬のとろっとろの大根に対抗できる夏食材だぞ?と心の中で突っ込むのはバアちゃんが作ってくれた料理が……以下省略。
 昨年の夏だったか飯田さんの手によって生まれ変わった冬瓜料理は先生と宮下とニマニマしながらつつく魅惑の料理へと変るのだった。
「今年も食べきれない量が取れたのでよかったら持って帰ってください」
 レストランの人達の人数分ぐらいは消費できるだろう。一人一個としても。
 え?要らない?遠慮しないで?店で出すわけじゃない?え?何だったら出すって?さすが料理人飯田。冬瓜をフランス料理の品に変えるとはさすがだと少しだけ食べてみたい気もするが所詮は冬瓜。そこまでの期待はない。明日の朝はどうなるのか楽しみだなと部屋へと戻ろうとすれば一緒に先生も日本酒の一升分を片手に仏間の奥の部屋へと引き込むのだった。
 


 そしていつもの通り日の出と共に起きる。
 たとえ来客があろうと今日は忙しくなろうと変わらず同じ時間に目が覚める俺の神経は図太いと思う。でなきゃ今もこんな所に引きこもってるわけないしと部屋を出ればぎょっとした。
「ああ、綾人さんおはようございます!
 今日は楽しみで早朝からお邪魔させていただきました!」
 朝から出会いたくないようなハイテンション森下がいた。
 飯田さんは休んでいるのかいつもと同じ仏間で青山さん、山口さんと並んで寝ている姿が縁側から雪見障子越しに見えたが……
「森下さんおはようございます。
 そして小山さん、おはようございます。ひょっとして徹夜ですか?」
「ああ、おはようございます。とりあえず飯田を休ませたかったので朝五時交代で休ませました」
 そろそろ五時と言う時間。俺に合わせてくれたのだろうが、小山さんは外をちらりちらりと見ながら顔を引き攣らせ
「あと、今日の大工の人達が来てるから顔を出した方がいいぞ?」
「もう?!」
 顔も洗わず着の身着のまま台所の勝手口を開ければ既にわいわいと賑やかな声が響く納屋はすでに賑やいでいて、その片隅には圭斗がいた。
「よお、なんか朝から疲れてるな?いや、憑かれてる?」
「おう、そんなかんじだ。あの人たち容赦なく昨夜やって来てよ、明日万全に迎える為に家に野営しに来たとか言いやがってよ……」
「野営って……」
 うんざりだと言わんばかりに溜息を零し
「前回家に来ただろ?その時と駐車できる車の台数とかライフラインの確保とかして行きやがって……」
 ただの行為ではなかったらしい。
「お疲れ様」
「まぁ、いろいろ人の所の事情も聞けて独り立ちするに当たり心強い話とか横の繋がりとか出来て勉強を兼ねた仕事も貰えて万々歳だがよ、事前に一言欲しかったっんだよ」
 たまたま先生が合宿でこっちに来てたから圭斗は家に居てお出迎えが出来たから良かったものの
「いなかったらどうするつもりだったんだか」
「そりゃその時は吉野さんの家にお邪魔するつもりだったよ。
 なんせ俺達キャンパーだからな」
 車からテントやら色んなものが出て来て最後には炭まであった。
「必要な物はその場で作るし、寝泊まりは車の中で過ごすのは慣れているし」
 水が確保できれば万々歳だと笑うも
「ここでは熊が出るのでやめてください」
「いくらなんでも人のそばまでは来な……」
「ここでは来るのでその考えは止めてください」
 思わずと言う様に半眼で睨んでしまえば
「マジ?」
「根っからのアウトドアの飯田さんでさえここでは家の外では寝ませんよ。
 一度忠告を無視して熊に襲われかけた話聞きます?」
 しばらく考え込むような沈黙をした後に
「いや、なんとなくわかった。っていうか、襲われたんだ」
「食料を犠牲に何とか返り討ちにしたけど、あれ以来俺の安全の為にも家の中に寝てもらってるし外でテント張るって言わないし」
「……判ってたけど山だしな」
「俺達人が獣の住処に住まわせてもらってる以上自衛と防衛はセルフサービスだから」
「くうっ!圭斗の家に泊めてもらって正解だった!」
「せめて事前に連絡してから泊まるようにしてくださいよ?」
「いやぁ、まさかここまで人が集まるとは思わなくってな」
 あははと笑う笑顔にどこまでも白い目を向けててしまうのは
「それに今にいる人は?」
 誰?って訴えれば
「俺の嫁さんと子供二人。あとあいつらの奥さん達とか子供とか……」
 小山さんをジロリと見れば
「いや、だって眠そうな奥さんとか子供さんが手持ちぶたさに眠そうにふらふらだったら上がって休んでくださいって言うのが普通だろ?」
「人の家に約束もなく常識のない時間に訪問する人に親切にする理由はありません」
「そこまで言う?」
「目が覚めたら家を乗っ取られていた家主の気持ちがわからないようですが、小山さんも自分のレストランが青山さんの店の人たちに乗っ取られたらどう思います?」
「いや、普通に働いてもらおうかな?」
 そしてラクをさせてもらおうなんて呟いている背中から肩にポンと手が乗せられた。
「小山、裏までちょっとおいで」
「じゃあ後は引き継ぎますので」
 いつのまにか青山さんと飯田さんが小山さんの背後に立ち言葉通り裏庭に連れて行かれるのを森下さんと一緒に眺めてしまった。
 なんていうか
「青山さんを怒らせないようにしなくちゃ」
「やっぱり都会もんは怖いなあ」
「まあ、あの人ヨーロッパを単独で三年ほど行き当たりばったりの旅をしたぐらいの根性はありますので」
「むしろその話聞かせて欲しいな」
 俺にはそんな根性はない物の興味がないわけでもない。ただ我が家のチキン共を考えれば行くとするなら問分先だなと先すぎる未来に思いを馳せていれば、家主の許可なく他人を家にあげるなとか、非常識な訪問者が普通なわけないんだから扉を開けるなとかきっちりとシメるドスの効いた声とどこか涙声の悲鳴に心当たりがあるとでもいうように森下さんはガタガタと震えていた。




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