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わらしべ長者とは言わないけど頂き物はありがたく頂く事にしています 1
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当たりはずれの激しい水野メシに耐えて月曜日。
先生は宮下商店で待ち合わせの理科部の一年生を連れてやってきた。何故か親御さんもやってきたが今年の新一年生は葉山藤二と下田渉、そして陸斗を含めての三人だが一年生同士は他の学年と比べて陸斗達の噂が濃く行き渡っているようで陸斗の存在にあからさまにギクッとしていた。そして初めてやって来た吉野家を見てその親御さん達はやはりと言うか手土産を用意してくれていた。ありがたいけど宿泊費ももらっているのに良いのかな?と思いつつもありがたくもらうけど。
「うちで作った自家製味噌ですがよかったら焼いて肴のあてにしてください」
大きなジッパー付きの袋に詰め込んでくれた物をありがたく頂き、もう一人の人からは農協で買ってきてくれたのだろう。皮まで食べれる葡萄の詰め合わせなる物を箱で持って来てくれた。
先日農協に行ったからお値段知ってます。なんて口が裂けても言えないが、決してお安い値段ではない物なので慌ててありがとうございますと頂く。土地面積としては広い物のコミュニティとしては狭いこの山間の村で葉山と下田は部活仲間と言う他に川上や山田達と知り合いだったようで親とも挨拶をしてすぐにおしゃべりを楽しみだしていた。
「さて、荷物を片付けたら午前の勉強の時間にするぞ」
今日は昨夜に内田さんから電話がかかってきて急きょご近所で壁に穴が開いたから塞いでほしいと依頼が来てそちらに行く事となり工事もなく烏骨鶏達がのびのびと庭を闊歩している長閑な光景に親御さん達は頭を下げて帰って行った。
そして思い知るが良い。
この不便な生活は並みの田舎では味わえないぞと逃げる事のは出来るけどここに来るまでに十分に心折れそうな僻地を堪能するがいいと一階の居間での勉強会は始まった。
「じゃあ、本日着たばかりの葉山と下田はこのプリントから始めてできる所まで良い。終わったら先生を呼ぶように。
他の奴らは宿題を始め」
パンと手を叩いてスタートの合図。
ちなみに本日一回目の第二種電気工事士は朝食後直ぐにやったので今はしない。次は昼食後なので今は葉山と下田に合わせる気はない。
初めての参加でいきなり開始された勉強会は葉山も下田ももっと和気藹々した物を、それこそ部活みたいな時間を想像していた予想を裏切り、俺が主導するみっちりとしたスケジュールが始まった。
慌てながらも誰もが無言で黙々と進める様子に戸惑いながらもプリントをこなして行く。少なくとも小学生レベルで躓く事はないが紙の捲れる音からして中学生辺りからそのペースは遅くなった。だけど何も言わない奴らを無視して他の奴らの面倒を見る。
綾っち、この公式の解き方がわからなくなったんだけど、綾っち言うな。
綾っち、どの公式使うんだっけ、だから綾っち言うな。
綾っち、スペルが分りません。綾っち言うな。スペルぐらい自分で調べろ!
どいつもこいつも綾っちって呼びやがって綾人先生ってぐらい言ってみろと二年の奴らの面倒を見る先生まで
「綾っち、先生お茶欲しいー」
「綾っち言う奴らは山水で十分だ!」
消毒も沸騰もしていない水の怖さを知らないわけではないこの地域の子供達はおうぼうだと言う物の山水のおいしさもまたよく知っている。親の言う事を聞かない子供時代を正しく過ごした証拠だ。とは言えそう言う声も出て来たから少しおやつの時間にする。腹を空かせて畑に侵入して食べ放題なんて事だけはさせてはやらない。
山水で良く冷やした麦茶に朝、水野がご飯を作りながら作ったパウンドケーキを持ち出して来た。お前女子かよと思うも角切りに切ったジャガイモやベーコン、チーズ、アスパラの入った甘いのかしょっぱいのかよくわからないケーキだった。
「ふふふ、俺の欲望の入ったケーキを食すが良い!」
「水野、こういう時は甘いケーキに決まってるだろ?」
「そういうと思って紅茶の茶葉とチョコレート入れた奴もあるぞー」
「水野先輩最高!」
「先生は甘いのよりしょっぱいの貰うわ」
「陸、フォークとかどこだっけ?」
「食器棚の真ん中の引き出しに在ります」
おやつの時間になった瞬間途端にパタパタと走り出す元気な様子をみて葉山も下田も顔を上げて嬉しそうな顔をして手伝いに参加をする。
バター、卵、砂糖、小麦粉を同量で一つのボールで作る事の出来る生焼けぐらいしか失敗はしないだろうホットケーキ同様の初心者向けのケーキ。飯田さんが作れば別物になる事を知る俺だがこのかっすかすでも慣れた手つきで作った水野のパウンドケーキは合宿の恒例のおやつの一つでもあり楽しみの一つだ。
男の料理なせいか三つも作ってあるのに切り分ける数は人数分。分厚くて他の味が楽しめないという大雑把さも毎度おなじみでじゃんけんで買った奴から好きな味と食べたい場所から持って行くそんな戦いが今始まった。
先生は宮下商店で待ち合わせの理科部の一年生を連れてやってきた。何故か親御さんもやってきたが今年の新一年生は葉山藤二と下田渉、そして陸斗を含めての三人だが一年生同士は他の学年と比べて陸斗達の噂が濃く行き渡っているようで陸斗の存在にあからさまにギクッとしていた。そして初めてやって来た吉野家を見てその親御さん達はやはりと言うか手土産を用意してくれていた。ありがたいけど宿泊費ももらっているのに良いのかな?と思いつつもありがたくもらうけど。
「うちで作った自家製味噌ですがよかったら焼いて肴のあてにしてください」
大きなジッパー付きの袋に詰め込んでくれた物をありがたく頂き、もう一人の人からは農協で買ってきてくれたのだろう。皮まで食べれる葡萄の詰め合わせなる物を箱で持って来てくれた。
先日農協に行ったからお値段知ってます。なんて口が裂けても言えないが、決してお安い値段ではない物なので慌ててありがとうございますと頂く。土地面積としては広い物のコミュニティとしては狭いこの山間の村で葉山と下田は部活仲間と言う他に川上や山田達と知り合いだったようで親とも挨拶をしてすぐにおしゃべりを楽しみだしていた。
「さて、荷物を片付けたら午前の勉強の時間にするぞ」
今日は昨夜に内田さんから電話がかかってきて急きょご近所で壁に穴が開いたから塞いでほしいと依頼が来てそちらに行く事となり工事もなく烏骨鶏達がのびのびと庭を闊歩している長閑な光景に親御さん達は頭を下げて帰って行った。
そして思い知るが良い。
この不便な生活は並みの田舎では味わえないぞと逃げる事のは出来るけどここに来るまでに十分に心折れそうな僻地を堪能するがいいと一階の居間での勉強会は始まった。
「じゃあ、本日着たばかりの葉山と下田はこのプリントから始めてできる所まで良い。終わったら先生を呼ぶように。
他の奴らは宿題を始め」
パンと手を叩いてスタートの合図。
ちなみに本日一回目の第二種電気工事士は朝食後直ぐにやったので今はしない。次は昼食後なので今は葉山と下田に合わせる気はない。
初めての参加でいきなり開始された勉強会は葉山も下田ももっと和気藹々した物を、それこそ部活みたいな時間を想像していた予想を裏切り、俺が主導するみっちりとしたスケジュールが始まった。
慌てながらも誰もが無言で黙々と進める様子に戸惑いながらもプリントをこなして行く。少なくとも小学生レベルで躓く事はないが紙の捲れる音からして中学生辺りからそのペースは遅くなった。だけど何も言わない奴らを無視して他の奴らの面倒を見る。
綾っち、この公式の解き方がわからなくなったんだけど、綾っち言うな。
綾っち、どの公式使うんだっけ、だから綾っち言うな。
綾っち、スペルが分りません。綾っち言うな。スペルぐらい自分で調べろ!
どいつもこいつも綾っちって呼びやがって綾人先生ってぐらい言ってみろと二年の奴らの面倒を見る先生まで
「綾っち、先生お茶欲しいー」
「綾っち言う奴らは山水で十分だ!」
消毒も沸騰もしていない水の怖さを知らないわけではないこの地域の子供達はおうぼうだと言う物の山水のおいしさもまたよく知っている。親の言う事を聞かない子供時代を正しく過ごした証拠だ。とは言えそう言う声も出て来たから少しおやつの時間にする。腹を空かせて畑に侵入して食べ放題なんて事だけはさせてはやらない。
山水で良く冷やした麦茶に朝、水野がご飯を作りながら作ったパウンドケーキを持ち出して来た。お前女子かよと思うも角切りに切ったジャガイモやベーコン、チーズ、アスパラの入った甘いのかしょっぱいのかよくわからないケーキだった。
「ふふふ、俺の欲望の入ったケーキを食すが良い!」
「水野、こういう時は甘いケーキに決まってるだろ?」
「そういうと思って紅茶の茶葉とチョコレート入れた奴もあるぞー」
「水野先輩最高!」
「先生は甘いのよりしょっぱいの貰うわ」
「陸、フォークとかどこだっけ?」
「食器棚の真ん中の引き出しに在ります」
おやつの時間になった瞬間途端にパタパタと走り出す元気な様子をみて葉山も下田も顔を上げて嬉しそうな顔をして手伝いに参加をする。
バター、卵、砂糖、小麦粉を同量で一つのボールで作る事の出来る生焼けぐらいしか失敗はしないだろうホットケーキ同様の初心者向けのケーキ。飯田さんが作れば別物になる事を知る俺だがこのかっすかすでも慣れた手つきで作った水野のパウンドケーキは合宿の恒例のおやつの一つでもあり楽しみの一つだ。
男の料理なせいか三つも作ってあるのに切り分ける数は人数分。分厚くて他の味が楽しめないという大雑把さも毎度おなじみでじゃんけんで買った奴から好きな味と食べたい場所から持って行くそんな戦いが今始まった。
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