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夏の向日葵の如く背筋を伸ばし顔を上げて 2
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気が付けば十台近く車がやってきて一緒に乗り合わせてきた為に二十人近くも集まっていた。そんな中一番最後に内田さんがやってきた。
「内田さんいらっしゃい」
少しだけ恨めしく思いながら見ていればようやく俺に見学者が来る事を連絡し忘れた事に気づいてぺこぺこと頭を下げられる事になったが井上さんから話を聞けたし、それほど怒る事でもないのですぐに話しを変えようとした所で宮下がごゆっくりと会釈して陸斗がいるだろう二階へと向かって行った。
少しの沈黙の後
「圭斗もだけど浩太さんもやはり来れませんでしたか」
「すまない。今日は自分の子供に親としてケジメを付けるつもりだと言ってな」
「大丈夫ですか?」
仕事を後回しにしてまで自身の子供の事を優先できる良い親だなと羨ましく思うも
「どうも香……浩太の嫁だが、雅治の事に気づいていたようだ」
「気づいていたのですか」
気づいていてどうしてあそこまで放っておいたのかと恨んでしまうも
「小遣い以上の物を持っていたり、ブランド品を持っていたり。何度も聞いたらしいが友達のお下がりとかプレゼントとか言うだけで。
一緒に遊ぶ奴らもそんな金がない事は判っていたからまさか自分の子供がと随分悩んでいたらしい」
「一言話してくれたら変わったかもしれないのに、ですね」
「変わらんよ」
ぴしゃりと否定された。
「一度甘い蜜を覚えてしまったらどこまでも性根は腐って行く。
手を変えてどんどん巧妙になって行く、それが人間だ」
孫に未来を期待しないような言葉に黙ってしまう。
「人を殴る事を覚えた。力で押さえつけ言葉で支配する事も覚えた。
物を奪う事も盗む事にも罪悪感を持たなくなった孫にどんな希望を持てばいい……」
背中を向けてぐしぐしと鼻を擦りながら
「昨夜浩太と香と話し合って例の友達から離す為に転校させると言う。香の実家に香と二人で行くと話になった」
「他に兄弟がいたと聞きましたが?」
「そこはばあさんが頑張ってくれると言ってくれた。
こんな狭い田舎の完結された人間関係の中でなく、たくさんの出会いがあの子に良い刺激になってもらいたい」
希望を求めるかのように熱く語るも所詮は夢だとすぐに意気消沈。夢を見るよりも現実を見る歳なだけにそんな事で何が変わると言った物だろう。
「寂しくなりますね」
「ああ、チビ達が寂しがる」
まだ母親が必要な年だと言うのにと言ってポケットにくしゃくしゃになったハンカチを押し込んだ内田さんはさて、と言って顔を上げ
「綾人君も病院に行かないといけないのなら早く挨拶をしなくてはな」
ぴしりと背筋を伸ばした内田さんからは先ほどまでの寂しげな空気はどこにもなく、今から解体が始まる小屋の内覧会を楽しんでいる一行に張りのある声で収集をかけた。
「今日は内田一族の歴史とも言うべき吉野家の改築工事初日に集まってくれてありがとう。こちらが当代家主の綾人君だ」
背中を叩かれて
「吉野綾人です。お世話になります。
何か大事になってる気がしますが、怪我だけはしないように気を付けてください。」
宮下が呼んできてくれたのか挨拶の為に姿を現した包帯ぐるぐる巻きの陸斗と一緒に頭を一度だけ下げればそのとおりと苦笑を頂くのだった。
「今日は初日だが一階土間からの東側天井を抜いて、床板を剥がして基礎を見る。見たい奴は仕事に参加をするように!」
言えば
「ただ働きさせるとは内田さんも人使いが荒いなあ」
などとヤジが飛ぶ。
だけど見学にきた人達の顔には誰もが笑みを浮かべていてその手にはバールが握られていた。
大工の集団って事を知らなかったら今から何しに行くんだろうあの人たちとビビる光景だと絶対思う。内田さんに危ないから下がってろと言われて宮下と陸斗と一緒にあれだけ物に溢れた小屋の何もなくなった室内の角に追いやられ
「せーの!」
気合と共にバールを真っ直ぐ突き上げて、貫通。の後一呼吸おいて
「ふんっ!」
物凄い鼻息と共にバールを引っ掛けるように引き下ろせば
ベキッ!
撓る天井に乾いた木の折れた音。
それから真っ白な百数十年分の埃。
だけど
「すごい木目だ!天井を貼る板にこんな樹齢の材木を、贅沢だなあ!」
「オヤジ!これだけ立派なら磨いて使い回しができますよ」
「おう、おう、使えそうな所は集めてドアにでも仕立て直すか?」
「若い衆!細かいゴミは薪の燃料にするから集めておけよ」
内田さんの一打をきっかけに皆さん手持ちのバールで天井をどんどん剥がして行き
「天井の梁もすごいがこの家全然釘を打ってないぞ!さすが内田の爺様だ!」
森下さんだったか興奮する声に培った技術だけを誇りとした職人とこの山のことなら精通した木こりの腕と腕の見せ合いのような歴史の最後に俺は知らず知らず涙を流していた。
「内田さんいらっしゃい」
少しだけ恨めしく思いながら見ていればようやく俺に見学者が来る事を連絡し忘れた事に気づいてぺこぺこと頭を下げられる事になったが井上さんから話を聞けたし、それほど怒る事でもないのですぐに話しを変えようとした所で宮下がごゆっくりと会釈して陸斗がいるだろう二階へと向かって行った。
少しの沈黙の後
「圭斗もだけど浩太さんもやはり来れませんでしたか」
「すまない。今日は自分の子供に親としてケジメを付けるつもりだと言ってな」
「大丈夫ですか?」
仕事を後回しにしてまで自身の子供の事を優先できる良い親だなと羨ましく思うも
「どうも香……浩太の嫁だが、雅治の事に気づいていたようだ」
「気づいていたのですか」
気づいていてどうしてあそこまで放っておいたのかと恨んでしまうも
「小遣い以上の物を持っていたり、ブランド品を持っていたり。何度も聞いたらしいが友達のお下がりとかプレゼントとか言うだけで。
一緒に遊ぶ奴らもそんな金がない事は判っていたからまさか自分の子供がと随分悩んでいたらしい」
「一言話してくれたら変わったかもしれないのに、ですね」
「変わらんよ」
ぴしゃりと否定された。
「一度甘い蜜を覚えてしまったらどこまでも性根は腐って行く。
手を変えてどんどん巧妙になって行く、それが人間だ」
孫に未来を期待しないような言葉に黙ってしまう。
「人を殴る事を覚えた。力で押さえつけ言葉で支配する事も覚えた。
物を奪う事も盗む事にも罪悪感を持たなくなった孫にどんな希望を持てばいい……」
背中を向けてぐしぐしと鼻を擦りながら
「昨夜浩太と香と話し合って例の友達から離す為に転校させると言う。香の実家に香と二人で行くと話になった」
「他に兄弟がいたと聞きましたが?」
「そこはばあさんが頑張ってくれると言ってくれた。
こんな狭い田舎の完結された人間関係の中でなく、たくさんの出会いがあの子に良い刺激になってもらいたい」
希望を求めるかのように熱く語るも所詮は夢だとすぐに意気消沈。夢を見るよりも現実を見る歳なだけにそんな事で何が変わると言った物だろう。
「寂しくなりますね」
「ああ、チビ達が寂しがる」
まだ母親が必要な年だと言うのにと言ってポケットにくしゃくしゃになったハンカチを押し込んだ内田さんはさて、と言って顔を上げ
「綾人君も病院に行かないといけないのなら早く挨拶をしなくてはな」
ぴしりと背筋を伸ばした内田さんからは先ほどまでの寂しげな空気はどこにもなく、今から解体が始まる小屋の内覧会を楽しんでいる一行に張りのある声で収集をかけた。
「今日は内田一族の歴史とも言うべき吉野家の改築工事初日に集まってくれてありがとう。こちらが当代家主の綾人君だ」
背中を叩かれて
「吉野綾人です。お世話になります。
何か大事になってる気がしますが、怪我だけはしないように気を付けてください。」
宮下が呼んできてくれたのか挨拶の為に姿を現した包帯ぐるぐる巻きの陸斗と一緒に頭を一度だけ下げればそのとおりと苦笑を頂くのだった。
「今日は初日だが一階土間からの東側天井を抜いて、床板を剥がして基礎を見る。見たい奴は仕事に参加をするように!」
言えば
「ただ働きさせるとは内田さんも人使いが荒いなあ」
などとヤジが飛ぶ。
だけど見学にきた人達の顔には誰もが笑みを浮かべていてその手にはバールが握られていた。
大工の集団って事を知らなかったら今から何しに行くんだろうあの人たちとビビる光景だと絶対思う。内田さんに危ないから下がってろと言われて宮下と陸斗と一緒にあれだけ物に溢れた小屋の何もなくなった室内の角に追いやられ
「せーの!」
気合と共にバールを真っ直ぐ突き上げて、貫通。の後一呼吸おいて
「ふんっ!」
物凄い鼻息と共にバールを引っ掛けるように引き下ろせば
ベキッ!
撓る天井に乾いた木の折れた音。
それから真っ白な百数十年分の埃。
だけど
「すごい木目だ!天井を貼る板にこんな樹齢の材木を、贅沢だなあ!」
「オヤジ!これだけ立派なら磨いて使い回しができますよ」
「おう、おう、使えそうな所は集めてドアにでも仕立て直すか?」
「若い衆!細かいゴミは薪の燃料にするから集めておけよ」
内田さんの一打をきっかけに皆さん手持ちのバールで天井をどんどん剥がして行き
「天井の梁もすごいがこの家全然釘を打ってないぞ!さすが内田の爺様だ!」
森下さんだったか興奮する声に培った技術だけを誇りとした職人とこの山のことなら精通した木こりの腕と腕の見せ合いのような歴史の最後に俺は知らず知らず涙を流していた。
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