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似た者同士、と言うのだろうか 6

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 先生はまた日本酒を持ち出して来てちびちびと嗜みながらそばを食べ始める。そばには日本酒だなと主張する飲んだくれの先生に陸斗は驚いていたが宮下達は昼からまた飲んでやがると呆れるも先生はこれが大人の醍醐味だと笑っていた。
「で、家から切り離して卒業させて就職するもよし、専門学校行かせるも良し、で、なんだ?何時かお嫁さんを連れて来る日までお前が親代わりになるって言うのか?」
 あの親が本当に許すと思ってるのかとずるずると蕎麦をすすりながら聞けば
「少なくとも学校には家を出て兄貴の家で過ごすって言う書類一式を書き直したいし、今まで役に立たなかった役所どもに成人の兄の家に身を寄せるって言う保護者替わりを認めさせたいし」
「で、お前自体は仕事あるのかよ?」
 収入のない奴に保護者は認められないと言えば
「だもんで沢村さんを紹介してほしい。
 弁護士に今までそろえた虐待の証拠と病院に作ってもらった診断書もあるし、これ以上となると警察に行く覚悟も考えている。
 だからあとは……」
「お前の気持ちは分かったけど、沢村さんはボランティアはしないからしっかりと金をとるぞ?
 相談するだけでも三十分で五千円だし、公式の書類を書いてもらうとなると数万はかかる。
 今のお前に継続的に相談できるかどうか考えろよ」
「もちろん考えてはいる」
 不安げな顔で兄を見上げる弟にお前は気にするなと言う様に頭を撫でるのを兄弟がいるのは羨ましいなと眺めながら俺は食べ終わったそばの器を片付ける。
 その間先生と話し合いをしていて今時スマホも持たせてもらえない高校生は退屈の極み、と言うか話の内容におびえていた。
 俺は宮下に目配せして少し頼みごとをすればそんな事?と言わんばかりに了承してくれた。なので二人が話に夢中になっている間に陸斗を手招きして呼び寄せる。
 親に関心を持ってもらえない子はまず容姿、目立つ所で顔や髪型に現れる。
 俺は庭に椅子を出して座らせて宮下に鋏を持たせた。
 キョトンとしていた陸斗に今から髪を切るけど何か希望があるか聞くも特にと言って首を横に振る。自分自身にももう興味を持てなくなっていたみたいだ。
 なので後は宮下の腕の見せ所だ。
 チョキチョキと小気味良い鋏の音が響く。
 襟足の手入れと濃くなりだした口周りや手入れのされてない顔の産毛にシェービングクリームと剃刀も用意しておく。俺も月一ぐらいで毛先や襟足を整えてもらっているくらいに上手だと思っている。
 器用貧乏で損をしていると思うもいくら上手くてもこいつが試験を通るのは無理だろう。それくらいにバカだからどうしようもない。なので、髪を切ってもらって俺はお礼に散髪料を払うと言うやり取りを高校卒業後ずっと続けている。
 ただ設備何て全くないので髪を切った後は陸斗を手招きして風呂に入れさせる。五右衛門風呂の入り方は判るかと聞くもここでも声が出せずに首を横に振るだけ。そこは宮下が簀子を上手に沈めるように入ればいいだけと教えている横で俺は二階の物置から小さくなって着なくなった服を取り出してきた。
 さすがに下着は他にない物の、ここに来た時の服一式から制服までも揃っていた。バアちゃん物持ち良すぎと思うも大切にとっておいてくれた事に感謝しつつ、そして今役に立とうとしている事に一人ありがとうと言った。
 俺はそれを鞄に詰めて、あと適当に短パンとシャツを持って風呂の窓から陸斗に声をかける。
「さすがに髪が付いてチクチクするから昔の服だけどこっちに着替えるといいよ」
「あ、ありがとうございます」
 ここでやっと声を出して感謝を述べてくれた。
 ちゃんと声が出るじゃないかと前に髪を切ったのは何時だろうと言うぼさぼさ具合から頭も洗ってすっきりとした顔立ちはやはり圭斗に似てそれなりにイケメンだ。ただそれを総て無駄にさせる鬱々とした自信のない表情がもったいないと思うも先生と圭斗が今だ話しを続けている間に陸斗が風呂から出てきた。
「お風呂ありがとうございます。久しぶりに暖かい風呂に入れて嬉しかったです」
「ああ、よかった。五右衛門風呂も今時めずらしいからまた兄貴と入り来ると良いよ」
 顔はにこやかに、そしてその嬉しそうな言葉を一緒に聞いた宮下と俺は涙をこらえて心で怒りを爆発させていた。
 久しぶりって言うのは何時からか?温かい風呂って言うのは普段どんなんだ?
 圭斗の知らないだろう彼の日常に宮下も俺も絶対こいつを家に帰らせてはいけないと無言のまま頷くのだった。



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