60 / 84
お月様が浮かぶコーヒーカップ 7
しおりを挟む
七輪で虹鱒を焼いていた篠田の手慣れた感に感心しながら俺も手伝わせてもらう。
高校時代はまだバーベキュー何て楽しむ年齢でもなかったし、社会人になってそう言う集まりに呼んでもらった事はないので実質初めての体験に俺は頑張って団扇をパタパタとさせていた。
因みに篠田は俺の横でミニ扇風機で援護してくれている。
ひょっとして俺必要ないんじゃね?
悩みながらもパタパタとしていれば
「あー、やっぱり炭熾しは団扇だよな。扇風機なんざ邪道だぞ」
「だったら先生虹鱒生でよいね?」
「申し訳ありません。確り焼目が付くまでこんがりと焼いてください」
秒で寝返る先生の根性を褒め称えたい。
「先生も懲りないんだから」
笑いながら宮下が暖かな真っ白のご飯とみそ汁、そしてこんもりと生姜焼きを焼いて来てくれた。
「お肉は猪だけど大丈夫だよね?」
七輪の近くに持って来たテーブルの中央にどんと置いた大皿にキャベツと豚ではない猪の薄切りに
「うわっ、猪初めて!何か感動!」
してしまうも宮下も篠田も
「猪は山で採れて無料だからな」
「むしろお金を払って食べる豚の方が貴重品になるよ」
感動をぶち壊す二人に先生も呆れていたが
「俺的には鹿肉をとろっとろになるまで煮込んだシチューも捨てがたい」
園芸部のお薦めに
「俺は野兎のグリルが地味に好きだな。山葡萄のソースを付けて食べたあれはもう感動ものだったし」
「しかもみんな無料。美味いはずだ」
「圭斗ー。損得考えずに美味い物は美味いと素直に言えるようになれ」
苦労人の篠田の気持ちもわからないでもないがと思いながらも笑えてしまうのは目の前に次々運ばれてくる料理の匂いが幸せも運んで来てくれるからだろう。
魚はもう少し時間がかかりそうだからと先にお料理の方を頂く。
「うんめぇ!生姜がピリリとキていて、酒とみりんと醤油だけじゃないこのタレなんだ?」
たれをしっかりからめたキャベツを口に運びながら何か覚えのある味だなと思うも答えは見つからないまま答えを探すように猪の肉を口に運べば
「ああ、焼き肉のたれだよ。酒、みりん、しょうゆ、生姜だけじゃシンプルになりすぎるから少しだけ焼き肉のたれを入れると複雑になって美味しいですよって教えてもらったんだ」
「宮下家の味じゃないのか」
少し残念と言えば
「うちの味はそれににんにくを少し入れるんだ。だけど皆明日仕事だからにんにく抜きにするんだけどそれじゃあ物足りないからね」
だからこその焼き肉のタレ。万能だなあとまた一人で暮し始めるころになったら試してみようとスマホに宮下から教えてもらった生姜焼きのタレの作り方をメモしていた。
その間に虹鱒も焼けて、俺は串にかぶりついて食べる憧れのBBQスタイルを堪能してしまう。
「宮下、夜月に猪の串食わせてやれ」
「うん。あまりに良い食べっぷりだから構わないよ。
お肉がまだあるから全部焼いちゃおうか。圭斗、炭は大丈夫?」
「だったらもう少し炭追加しよう」
「たくさん肉を焼けって事だね。判ったよ……」
少し呆れる宮下にいつの間にか虹鱒を綺麗に食べた先生は骨まであぶりだして、いい感じに焼き色が付いた所でおせんべいのようにぱりぱりと食べだしていた。
それを見ていた俺もほとんど骨になった虹鱒の姿を見ていれば
「夜月も骨食べるなら自分で焼けよ」
園芸部も言いながら自分の分の骨を焼きだしていた。
「骨に関しては自分好みで焼いてくれ」
言いながら先生よりもこんがりと焼いた所でパリパリと良い音を立てながら食べ始めるのを真似る様に俺も焼いてみて
「うっま!家で焼いた魚とは比べようもないな」
「当然。自分で作る料理って今一つ美味しいか判らないけど、こうやって自分で育てて食べるってまた味がぜんぜん違ってほんと美味いよな!」
「ほんとそれ!」
なんて言ってる合間に先生は二匹目の虹鱒を食べ、再び焼いた骨を今度は湯呑の中に入れ
「宮下ー、熱燗出来た?」
「できたから。あとは自分で飲んでよ」
虹鱒の骨が入った湯呑に宮下自ら熱燗を注ぐ。
先生は嬉しそうに骨が沈む湯呑を見てにたりと笑い
「これもまたうまいんだよな」
「明日も学校があるんだから飲みすぎ注意だよ」
「だいじょーぶだって」
言いながら至福の顔で啜りながら飲む先生を無視して俺達は
「夜月、肉焼けたぞー」
塩と胡椒を振っただけのシンプルなお味。
だけど野生のくせのある猪の串焼きが焼き上がり、一人楽しむ先生を無視して俺達は串にかぶりつく様に猪の肉を堪能した。
しあわせー!
高校時代はまだバーベキュー何て楽しむ年齢でもなかったし、社会人になってそう言う集まりに呼んでもらった事はないので実質初めての体験に俺は頑張って団扇をパタパタとさせていた。
因みに篠田は俺の横でミニ扇風機で援護してくれている。
ひょっとして俺必要ないんじゃね?
悩みながらもパタパタとしていれば
「あー、やっぱり炭熾しは団扇だよな。扇風機なんざ邪道だぞ」
「だったら先生虹鱒生でよいね?」
「申し訳ありません。確り焼目が付くまでこんがりと焼いてください」
秒で寝返る先生の根性を褒め称えたい。
「先生も懲りないんだから」
笑いながら宮下が暖かな真っ白のご飯とみそ汁、そしてこんもりと生姜焼きを焼いて来てくれた。
「お肉は猪だけど大丈夫だよね?」
七輪の近くに持って来たテーブルの中央にどんと置いた大皿にキャベツと豚ではない猪の薄切りに
「うわっ、猪初めて!何か感動!」
してしまうも宮下も篠田も
「猪は山で採れて無料だからな」
「むしろお金を払って食べる豚の方が貴重品になるよ」
感動をぶち壊す二人に先生も呆れていたが
「俺的には鹿肉をとろっとろになるまで煮込んだシチューも捨てがたい」
園芸部のお薦めに
「俺は野兎のグリルが地味に好きだな。山葡萄のソースを付けて食べたあれはもう感動ものだったし」
「しかもみんな無料。美味いはずだ」
「圭斗ー。損得考えずに美味い物は美味いと素直に言えるようになれ」
苦労人の篠田の気持ちもわからないでもないがと思いながらも笑えてしまうのは目の前に次々運ばれてくる料理の匂いが幸せも運んで来てくれるからだろう。
魚はもう少し時間がかかりそうだからと先にお料理の方を頂く。
「うんめぇ!生姜がピリリとキていて、酒とみりんと醤油だけじゃないこのタレなんだ?」
たれをしっかりからめたキャベツを口に運びながら何か覚えのある味だなと思うも答えは見つからないまま答えを探すように猪の肉を口に運べば
「ああ、焼き肉のたれだよ。酒、みりん、しょうゆ、生姜だけじゃシンプルになりすぎるから少しだけ焼き肉のたれを入れると複雑になって美味しいですよって教えてもらったんだ」
「宮下家の味じゃないのか」
少し残念と言えば
「うちの味はそれににんにくを少し入れるんだ。だけど皆明日仕事だからにんにく抜きにするんだけどそれじゃあ物足りないからね」
だからこその焼き肉のタレ。万能だなあとまた一人で暮し始めるころになったら試してみようとスマホに宮下から教えてもらった生姜焼きのタレの作り方をメモしていた。
その間に虹鱒も焼けて、俺は串にかぶりついて食べる憧れのBBQスタイルを堪能してしまう。
「宮下、夜月に猪の串食わせてやれ」
「うん。あまりに良い食べっぷりだから構わないよ。
お肉がまだあるから全部焼いちゃおうか。圭斗、炭は大丈夫?」
「だったらもう少し炭追加しよう」
「たくさん肉を焼けって事だね。判ったよ……」
少し呆れる宮下にいつの間にか虹鱒を綺麗に食べた先生は骨まであぶりだして、いい感じに焼き色が付いた所でおせんべいのようにぱりぱりと食べだしていた。
それを見ていた俺もほとんど骨になった虹鱒の姿を見ていれば
「夜月も骨食べるなら自分で焼けよ」
園芸部も言いながら自分の分の骨を焼きだしていた。
「骨に関しては自分好みで焼いてくれ」
言いながら先生よりもこんがりと焼いた所でパリパリと良い音を立てながら食べ始めるのを真似る様に俺も焼いてみて
「うっま!家で焼いた魚とは比べようもないな」
「当然。自分で作る料理って今一つ美味しいか判らないけど、こうやって自分で育てて食べるってまた味がぜんぜん違ってほんと美味いよな!」
「ほんとそれ!」
なんて言ってる合間に先生は二匹目の虹鱒を食べ、再び焼いた骨を今度は湯呑の中に入れ
「宮下ー、熱燗出来た?」
「できたから。あとは自分で飲んでよ」
虹鱒の骨が入った湯呑に宮下自ら熱燗を注ぐ。
先生は嬉しそうに骨が沈む湯呑を見てにたりと笑い
「これもまたうまいんだよな」
「明日も学校があるんだから飲みすぎ注意だよ」
「だいじょーぶだって」
言いながら至福の顔で啜りながら飲む先生を無視して俺達は
「夜月、肉焼けたぞー」
塩と胡椒を振っただけのシンプルなお味。
だけど野生のくせのある猪の串焼きが焼き上がり、一人楽しむ先生を無視して俺達は串にかぶりつく様に猪の肉を堪能した。
しあわせー!
56
お気に入りに追加
398
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる