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お月様が浮かぶコーヒーカップ 7
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七輪で虹鱒を焼いていた篠田の手慣れた感に感心しながら俺も手伝わせてもらう。
高校時代はまだバーベキュー何て楽しむ年齢でもなかったし、社会人になってそう言う集まりに呼んでもらった事はないので実質初めての体験に俺は頑張って団扇をパタパタとさせていた。
因みに篠田は俺の横でミニ扇風機で援護してくれている。
ひょっとして俺必要ないんじゃね?
悩みながらもパタパタとしていれば
「あー、やっぱり炭熾しは団扇だよな。扇風機なんざ邪道だぞ」
「だったら先生虹鱒生でよいね?」
「申し訳ありません。確り焼目が付くまでこんがりと焼いてください」
秒で寝返る先生の根性を褒め称えたい。
「先生も懲りないんだから」
笑いながら宮下が暖かな真っ白のご飯とみそ汁、そしてこんもりと生姜焼きを焼いて来てくれた。
「お肉は猪だけど大丈夫だよね?」
七輪の近くに持って来たテーブルの中央にどんと置いた大皿にキャベツと豚ではない猪の薄切りに
「うわっ、猪初めて!何か感動!」
してしまうも宮下も篠田も
「猪は山で採れて無料だからな」
「むしろお金を払って食べる豚の方が貴重品になるよ」
感動をぶち壊す二人に先生も呆れていたが
「俺的には鹿肉をとろっとろになるまで煮込んだシチューも捨てがたい」
園芸部のお薦めに
「俺は野兎のグリルが地味に好きだな。山葡萄のソースを付けて食べたあれはもう感動ものだったし」
「しかもみんな無料。美味いはずだ」
「圭斗ー。損得考えずに美味い物は美味いと素直に言えるようになれ」
苦労人の篠田の気持ちもわからないでもないがと思いながらも笑えてしまうのは目の前に次々運ばれてくる料理の匂いが幸せも運んで来てくれるからだろう。
魚はもう少し時間がかかりそうだからと先にお料理の方を頂く。
「うんめぇ!生姜がピリリとキていて、酒とみりんと醤油だけじゃないこのタレなんだ?」
たれをしっかりからめたキャベツを口に運びながら何か覚えのある味だなと思うも答えは見つからないまま答えを探すように猪の肉を口に運べば
「ああ、焼き肉のたれだよ。酒、みりん、しょうゆ、生姜だけじゃシンプルになりすぎるから少しだけ焼き肉のたれを入れると複雑になって美味しいですよって教えてもらったんだ」
「宮下家の味じゃないのか」
少し残念と言えば
「うちの味はそれににんにくを少し入れるんだ。だけど皆明日仕事だからにんにく抜きにするんだけどそれじゃあ物足りないからね」
だからこその焼き肉のタレ。万能だなあとまた一人で暮し始めるころになったら試してみようとスマホに宮下から教えてもらった生姜焼きのタレの作り方をメモしていた。
その間に虹鱒も焼けて、俺は串にかぶりついて食べる憧れのBBQスタイルを堪能してしまう。
「宮下、夜月に猪の串食わせてやれ」
「うん。あまりに良い食べっぷりだから構わないよ。
お肉がまだあるから全部焼いちゃおうか。圭斗、炭は大丈夫?」
「だったらもう少し炭追加しよう」
「たくさん肉を焼けって事だね。判ったよ……」
少し呆れる宮下にいつの間にか虹鱒を綺麗に食べた先生は骨まであぶりだして、いい感じに焼き色が付いた所でおせんべいのようにぱりぱりと食べだしていた。
それを見ていた俺もほとんど骨になった虹鱒の姿を見ていれば
「夜月も骨食べるなら自分で焼けよ」
園芸部も言いながら自分の分の骨を焼きだしていた。
「骨に関しては自分好みで焼いてくれ」
言いながら先生よりもこんがりと焼いた所でパリパリと良い音を立てながら食べ始めるのを真似る様に俺も焼いてみて
「うっま!家で焼いた魚とは比べようもないな」
「当然。自分で作る料理って今一つ美味しいか判らないけど、こうやって自分で育てて食べるってまた味がぜんぜん違ってほんと美味いよな!」
「ほんとそれ!」
なんて言ってる合間に先生は二匹目の虹鱒を食べ、再び焼いた骨を今度は湯呑の中に入れ
「宮下ー、熱燗出来た?」
「できたから。あとは自分で飲んでよ」
虹鱒の骨が入った湯呑に宮下自ら熱燗を注ぐ。
先生は嬉しそうに骨が沈む湯呑を見てにたりと笑い
「これもまたうまいんだよな」
「明日も学校があるんだから飲みすぎ注意だよ」
「だいじょーぶだって」
言いながら至福の顔で啜りながら飲む先生を無視して俺達は
「夜月、肉焼けたぞー」
塩と胡椒を振っただけのシンプルなお味。
だけど野生のくせのある猪の串焼きが焼き上がり、一人楽しむ先生を無視して俺達は串にかぶりつく様に猪の肉を堪能した。
しあわせー!
高校時代はまだバーベキュー何て楽しむ年齢でもなかったし、社会人になってそう言う集まりに呼んでもらった事はないので実質初めての体験に俺は頑張って団扇をパタパタとさせていた。
因みに篠田は俺の横でミニ扇風機で援護してくれている。
ひょっとして俺必要ないんじゃね?
悩みながらもパタパタとしていれば
「あー、やっぱり炭熾しは団扇だよな。扇風機なんざ邪道だぞ」
「だったら先生虹鱒生でよいね?」
「申し訳ありません。確り焼目が付くまでこんがりと焼いてください」
秒で寝返る先生の根性を褒め称えたい。
「先生も懲りないんだから」
笑いながら宮下が暖かな真っ白のご飯とみそ汁、そしてこんもりと生姜焼きを焼いて来てくれた。
「お肉は猪だけど大丈夫だよね?」
七輪の近くに持って来たテーブルの中央にどんと置いた大皿にキャベツと豚ではない猪の薄切りに
「うわっ、猪初めて!何か感動!」
してしまうも宮下も篠田も
「猪は山で採れて無料だからな」
「むしろお金を払って食べる豚の方が貴重品になるよ」
感動をぶち壊す二人に先生も呆れていたが
「俺的には鹿肉をとろっとろになるまで煮込んだシチューも捨てがたい」
園芸部のお薦めに
「俺は野兎のグリルが地味に好きだな。山葡萄のソースを付けて食べたあれはもう感動ものだったし」
「しかもみんな無料。美味いはずだ」
「圭斗ー。損得考えずに美味い物は美味いと素直に言えるようになれ」
苦労人の篠田の気持ちもわからないでもないがと思いながらも笑えてしまうのは目の前に次々運ばれてくる料理の匂いが幸せも運んで来てくれるからだろう。
魚はもう少し時間がかかりそうだからと先にお料理の方を頂く。
「うんめぇ!生姜がピリリとキていて、酒とみりんと醤油だけじゃないこのタレなんだ?」
たれをしっかりからめたキャベツを口に運びながら何か覚えのある味だなと思うも答えは見つからないまま答えを探すように猪の肉を口に運べば
「ああ、焼き肉のたれだよ。酒、みりん、しょうゆ、生姜だけじゃシンプルになりすぎるから少しだけ焼き肉のたれを入れると複雑になって美味しいですよって教えてもらったんだ」
「宮下家の味じゃないのか」
少し残念と言えば
「うちの味はそれににんにくを少し入れるんだ。だけど皆明日仕事だからにんにく抜きにするんだけどそれじゃあ物足りないからね」
だからこその焼き肉のタレ。万能だなあとまた一人で暮し始めるころになったら試してみようとスマホに宮下から教えてもらった生姜焼きのタレの作り方をメモしていた。
その間に虹鱒も焼けて、俺は串にかぶりついて食べる憧れのBBQスタイルを堪能してしまう。
「宮下、夜月に猪の串食わせてやれ」
「うん。あまりに良い食べっぷりだから構わないよ。
お肉がまだあるから全部焼いちゃおうか。圭斗、炭は大丈夫?」
「だったらもう少し炭追加しよう」
「たくさん肉を焼けって事だね。判ったよ……」
少し呆れる宮下にいつの間にか虹鱒を綺麗に食べた先生は骨まであぶりだして、いい感じに焼き色が付いた所でおせんべいのようにぱりぱりと食べだしていた。
それを見ていた俺もほとんど骨になった虹鱒の姿を見ていれば
「夜月も骨食べるなら自分で焼けよ」
園芸部も言いながら自分の分の骨を焼きだしていた。
「骨に関しては自分好みで焼いてくれ」
言いながら先生よりもこんがりと焼いた所でパリパリと良い音を立てながら食べ始めるのを真似る様に俺も焼いてみて
「うっま!家で焼いた魚とは比べようもないな」
「当然。自分で作る料理って今一つ美味しいか判らないけど、こうやって自分で育てて食べるってまた味がぜんぜん違ってほんと美味いよな!」
「ほんとそれ!」
なんて言ってる合間に先生は二匹目の虹鱒を食べ、再び焼いた骨を今度は湯呑の中に入れ
「宮下ー、熱燗出来た?」
「できたから。あとは自分で飲んでよ」
虹鱒の骨が入った湯呑に宮下自ら熱燗を注ぐ。
先生は嬉しそうに骨が沈む湯呑を見てにたりと笑い
「これもまたうまいんだよな」
「明日も学校があるんだから飲みすぎ注意だよ」
「だいじょーぶだって」
言いながら至福の顔で啜りながら飲む先生を無視して俺達は
「夜月、肉焼けたぞー」
塩と胡椒を振っただけのシンプルなお味。
だけど野生のくせのある猪の串焼きが焼き上がり、一人楽しむ先生を無視して俺達は串にかぶりつく様に猪の肉を堪能した。
しあわせー!
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