裏路地古民家カフェでまったりしたい

雪那 由多

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ブラック?ミルク?基本のコーヒー牛乳 10

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 急勾配の階段のヘリに手を添えながら下りて母屋へと向かう。 
 いつの間にか一階はまだ新しいキッチンが来てないけどシックな色合いにしてくれた床と真っ白の漆喰が輝く壁。太い梁を見上げながら遊び心にあふれた穴みたいな半個室とその上の高い天井を生かした開放感あふれる室内テラスみたいな場所を見上げる。プライベートにもつながる扉で区切られた室内から入る事の出来る扉を潜る。勿論外からも入れるのだが、そこはしっかりと玄関として仕上がっていて、大容量のシューズクロークも設置されている。壁際に階段があり、明かり窓から外の自然光を取り入れる事の出来る明るい階段を靴を持って上がれば
「こんにちは……」
 目の前には知らない家が仕上がりかけていた。
「あ、ようやく見に来たか。まだ床を張ってないから靴を履くといいよ。木屑だらけになる」
 浩太さんが笑いながら手招きをしてくれた。
「夜月いらっしゃい。どう?だいぶ仕上がって来たけど」
 何やらキッチンを仕上げていた宮下が振り向くも手は離せないと言う様に視線だけの挨拶をしてくれた。
「なんか流しがすごく変わっててかっこいいんだけど。ほんとコレ前使ってた奴?」
「うん。錆を落とそうとしたけど思ったより酷かったから穴が開くといけないからタイル張る事にしたんだ。
 男のキッチンじゃないけどシックに紺色をメインにクラッシックなイメージでさ、でも古めかしさは感じないように、汚れも目立たないようにってね」
 余分な目地を洗い落としながら磨いてくれたシンクは洗い場こそステンレスのままだけど火の回りの壁と統一されたタイルが貼られていて、所々アクセントに同じ青系統のタイルが入っている。ぼろぼろだった扉の化粧板も綺麗に張り替えてくれたし、錆びだらけの取っ手は浮き出ないように真鍮製の新しい物に変えてくれたようだ。
「すごい。想像以上にカッコイイ。婆ちゃんが使ってた奴だとは思えない」
「ふふふ、そこはたくさん資料があったから折角だし見よう見まねで頑張っていたんだ」
「むしろどんな資料だよ。俺も後で見たい。むしろ選ばせてもらいたかった」
 全部お任せにした付けだと思って残念と思うも
「出来る出来ないの限界もあるからね。あと基本資料は女性向け過ぎて可愛いすぎるからこれが無難な所だし掃除もしやすそうだよ?」
「むしろ掃除しにくいキッチンって致命的だろ」
「それ。ステンレスだけじゃ味気ないからってタイルいっぱい買ってきて貼り付けてみたんだ」
「それは、大変だな」
「ちょっと遠かったけど陶器の産地があってそこでタイルも大量に焼いててね。時々激安セールやっててさ、この紺色のタイルとか玄関の所のタイル何てイタリア製で普通に買うととてもじゃないけど激安で手に入れれたから使いまくってみたんだ」
「なるほど。土間仕上げかと思ったのにタイル張りだったのはそれもあったのか」
「まともに買うと何万もするけど1ケース千円だったら絶対買いだよね!」
「買い物上手だな!」
 あまりお金を掛けれないと言うかそんな情報よく知ってたなと褒め称えてしまえば苦笑する浩太さんの笑い声。
「因みに二階のトイレも色々細工してたから見ておいで」
 言われたら見に行くしかない。
 前は二階にトイレがなかったのでトイレ渋滞をしていた不便を思い出した所で二階にトイレを増設してもらったのだがトイレのスペースはあまり取れなかった。店舗の吹き抜けに二階の部分が思ったより削られたのが理由だが、それでも人一人暮らすには十分な広さはある。田舎の無駄に広いお家事情万歳と言う奴だ。
 そんな新品のトイレの扉を開ける。狭いながらもちゃんと綺麗なウォシュレット付きトイレが鎮座していた。だけど本体がやたらとおしゃれな木枠の中に埋め込まれ、上から出る手洗い場がちょんと姿を現していた。
「本当は一階の店のトイレみたいにタンクレスにしたかったんだけど、そうなると手洗い場を作らないといけなくなるだろ?そうすると税金が増えるからここはささやかながらも節税対策してみたんだ。ちなみにその木枠も簡単にばらせれるから上の板を外して手前の所を持ち上げればすぐに分解できるよ。トイレ買い替える時邪魔にならいし掃除する時も楽になるから覚えておいて」
「ちゃんとトイレットペーパー入れる戸棚まである!至れり尽せりだな!」
 前住んでいたアパートには戸棚が無かったので小さな押入れにストックを置いていた事を思い出せば何て便利だと感動する。そんな事で感動するなと言われそうだけど。
「水を流すのはタッチパネルで操作してもらうつもりだから本体の所は隠しちゃったけど問題ないよね?センサーの部分が窓枠になってるけど」
「全然問題ない。やっぱり綺麗なトイレってサイコーだよな」
「ついでにお風呂も綺麗にして置いたから。さすがに劣化が酷くて使いまわせれなかったから新品だよ。シャワーも使えるから便利になるよ」
「それ!爺ちゃんの家シャワー無いから不便だったんだ。盥にお湯が溜まるのを待ってる間にシャンプーが目に染みてさあ」
 子供の頃の懐かしい話を思い出す。目尻に涙が堪りそうになって思わず無言になってしまうも宮下は気づかないと言う様に俺から少し距離を取って庭を見下ろすカウンターテーブルの話しをはじめた。


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