裏路地古民家カフェでまったりしたい

雪那 由多

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ブラック?ミルク?基本のコーヒー牛乳 4

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 お待たせ―と言って漬物を持って来る頃にはコーヒーも麦茶は総て飲み干された後。置いてある麦茶も自分達で注いでいた。
「ほい、宮下のキュウリの一本漬け」
「あー、これよく冷えてて美味いっすよね」
 園芸部が幸せそうな顔で手を伸ばし
「綾さんの所で採れたキュウリだからまた美味いんだよな」
 蒼さんもぼりぼりと頬張り
「相変わらず深山の畑は健在のようだな。
 味も濃いし、宮下君達も上手に畑を作る」
 ぼりぼりと食べている所に篠田も混ざって来た。
 片手には箱を持って
「シャチョーのキュウリの分。のんびりしてると食べられるぞー」
 役職がニックネームになってるようなゆるい職場に俺もいつまでも篠田と苗字呼びするのもなんだかなーなんて思いだしている合間に
「夜月、お前宛だった」
 ほっとした篠田の顔に俺は箱を受け取った。
「これ、サイフォン?」
「あいつからの次のミッションだ。
 今度の水曜日に飯田さんが来てくれるからサイフォンの淹れ方を教えてもらえだとさ」
「あいつ鬼だな。悪魔だけど!」
 反射的に叫んでしまえば誰もがにこやかな顔で
「さすが綾さん。無駄なく他人のスケジュールを組む人でなし具合キレッキレですね!」
 園芸部よ、頼むから嬉しそうな顔で言わないでくれ。
「それー!この家に何処か盗聴器隠してあるんじゃないかってほんと疑いたくなるけど圭斗大丈夫かよ?」
 蒼さんは心配してくれるけど
「あいつがそんな手間かけるわけないだろ。
 どうせこの程度の事ぐらい予測済みなんだろうから想定内なんだろ」
「綾人君だからね」
 篠田も山川さんも当たり前のように言って欲しくないんだけど……
 これが日常だと言う様に篠田は麦茶を一気に飲み干した所で俺が持ち込んだワッフルを齧るけどもっと危機感な言葉はないのかと思うも全員そうだなと納得してしまっていた。
 皆さん食べ慣れてか手づかみで何も付けずに齧る当たり本当にただの甘いおやつ程度しか認識ないのかよと思って涙が零れる。
 まあ、バターもホイップも何も準備しない俺が悪いんだけど、それ以上に俺の行動を遠く離れた場所から想定する魔王ほんと怖い。
 ワッフルを食べてアイスコーヒーを飲んでキュウリを食べてまた麦茶を飲んで。
「さて、行くか」
「「おう」」
 親分と子分気合の入れ方を山川さんは微笑ましそうに見ながらも
「そうだ夜月君。良かったらお爺さんが残してくれた蔵の漆喰を一緒に塗らないかい?」
 そんな提案。
「え?いいんですか?俺塗り方もネットで見てたぐらいしか知らないですよ?」
うきうきとしながらの返答は既によろしくお願いしますと言うのも同然。苦笑する山川さんだが言う事はいう。
「大丈夫。人の目に当らない場所だし失敗しても俺が直してあげるからチャレンジしよう」
「お願いします!」
 と言った所であれ?俺が手伝う意味ってなんだ?と小首を傾げながらまた法被を着こんで4L水筒に水出し茶葉と氷を入れて再び仕事場に。
 もちろん篠田の家の裏口、園芸部が借りてる家の玄関から出て道路を挟んだ俺の家へと到着。わずか一分の現場に
「やっぱり近いと良いっすね」
「ああ、水分の補給が楽だしトイレも簡易トイレ借りなくて済むから助かる」
「まあね、いざとなったら家のトイレ使ってください」
 蒼さん、篠田、園芸部の言う事に
「本当にそれでいいのかよ?」
 大丈夫なのかと聞くも
「まぁ、トイレレンタルするより安く着くし、やっぱり衛生的じゃないっすか」
「そりゃそうだけどよ……」
 不特定多数が使っても気にならない物かと思うも
「それに俺が借りてる家はみんなで作った家何で、大切に使ってもらえるし建てた家を体験するってなかなかできないので貴重な意見になると思ってるんですよ」
「そう言う物か?」
 何かお気楽だなと思う園芸部に
「さらに言えばちゃんとしたトイレある所で仕事できるって幸せだと思ったよ。ほら、草刈りしてる時ってほとんど周囲に人もいない所だからさwww
 虫に刺されてさwww」
 そんなの知れねーよ、なんて話をしてる合間に着いたのは既に外は真っ白に綺麗になった蔵だった。
 足場に囲まれているとは言え真っ白の壁と一階部分のなまこ壁が幾何学的できれいだなあと子供の頃から見慣れた蔵が真新しくなった事に感動しながらも
「鏝絵はやらないんですか?」
 思わず聞いてしまえば苦笑する山川さん。
 どうしたんだろうと首をひねれば
「それここじゃ禁句だ」
 篠田はいうが意味判らねえと言おうとした所で
「俺がフランスに行った時に好き勝手弄ったのを兄さん方に叱られてね。 
 ただでさえフランスに行って手伝いたかったのに周囲から歳だから止めろって言われてへそを曲げてたらしいし。
 そこで俺の鏝絵が動画で上がってフランス人に大人気になったのが兄さん方のプライドに触ったんだろう」
 何てしょぼんとしながらも口元はやってやったぜと言う様にニヤついていた。




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