上 下
35 / 84

焦げた!生焼け?雪崩るワッフル 5

しおりを挟む
 もっ、もっ、と食べ続ける二人に飯田さんも困ったかのような顔をする物のいつの間にかバーベキューコンロに置かれたスキレットにたっぷりとオリーブオイルとガーリック、そして浮かぶ鷹の爪にごろごろと転がるきのこ達。胃袋をきゅーっと刺激する匂いに俺は我慢できなく迷わずマッシュルームを割り箸で頂いた。瞬間空いた場所に飯田さんによってミニトマトが入れられた。あ、これ無限に食べられると言うより無限に食べるわんこそば状態だ。なんて思ってもいつの間にか宮下と篠田によってアヒージョが食べつくされて行き
「宮下、オクラが生ってただろ」
「トマトもシシトウもまだまだあるから採って来るね!」
 玄関を出て直ぐに戻ってきた手には山のような野菜がいっぱい。よくわからない奴もあり
「お前らどんだけ食べるんだよ」
 思わずひきてしまうその量を宮下と篠田は野菜を見てから小首を傾げる。
「夜月って意外と少食だな?」
「これぐらいはあっというまだよ」
 問題ないだろうと言う言葉と大丈夫かと心配される言葉。確かに就職してから食事が不規則になって高校の時に比べれば量は確実に減ったと思ったがと心配してしまう。
「それに野菜はヘルシーだからどれだけ食べても大丈夫なんだよ」
 謎理論でもっと食べろと言って来た。
 えー……
 なんて思う合間も誰も気にしないと言う様に箸を伸ばす。
 ちらりと飯田さんの様子を伺えればもちろんそんなわけあるかという様に苦笑しているがその横で先生がオイルサーディンとかベーコンのハニーマスタードソースと言う缶詰を直接バーベキューコンロの片隅に置くと言う暴挙をしでかしてくれた。他にも牛すね肉の赤ワイン煮とか牡蠣の燻製とか……
「先生太っ腹!これお高いシリーズじゃないっすか?!」
 次第にオイルがくつくつと温まって行く様子と絶対美味いと約束する匂いをまき散らす缶詰に釘付けになっていれば
「気にしないで食べて良いぞー。
 綾人が隠しておいたの見つけてきただけだから。食品に賞味期限あるからさっさと食おうぜ」
 
 ん?
 
 なんか物凄く物騒な事が聞こえた。
 ちらーと飯田さん達を見れば飯田さんはまるでやってくれたなと言わんばかりに目を手で覆って空を見上げ、俺よりも先に箸を伸ばして食べていた篠田と宮下はそのまま硬直していた。と言うか咥え箸は危ないから止めろ。
 因みに浩太さんやお爺ちゃんズは仕方がないと言う様に苦笑しながらも牡蠣の燻製やオイルサーディンに手を伸ばしていた。渋い。
「もう開けちまったモンは仕方がないだろう。せめておいしく食べておけ」
 長老と言うべき長沢さんの一言にみんな止まった時が動き始めたかのようにモグモグと食べ始め
「先生、綾人が隠しておいたのほんと見つけるの上手いな」
 呆れる篠田はそう言いながらもせっせとベーコンを食べて行く。
「そりゃああいつが俺様に食べられたくないからと隠してるからな。
 こう言う場合はむしろ見つけてほしい。見つけたら食べて良いぞって言うルールだから気にする事ないぞ」
「そんなルール聞いた事ありません……」
 何ですかそれはと言う飯田さんだが
「まぁ、それは俺とあいつの長い闘いの間に生まれた暗黙の了解って奴だな」
「なんという弱肉強食の世界」
 ほんとにいいのかこれと篠田に聞くも無言を貫きながらベーコンを食べていた。
「留学して留守してるのにハンデありすぎだろ」
「そう?コレ離れのキッチンの納戸に隠してた奴。
 俺様がシェフの巣に潜り込まないとか思ってたら大間違いだぞ」
 何てドヤ顔。そして飯田さんは
「いつの間にこんなものを隠してたんですか……」
 管理を任されてる飯田さんですら知らない事実の発覚に両手で顔を覆って俯いてしまっていた。
 もうね、なんなのこのカオス。
 戸惑いながらもキノコの代わりに入ったトマトを食べていれば
「気にする事ないぞ。こんなのはいつもの事だ」
 鉄治さんがカカカと笑いながらオイルサーディンを食べ
「それにしてもこの缶詰は酒が進むな。先生よ、他にはなかったのか?」
「まだまだあったわよー。それは今度のお楽しみって奴だな」
「そうか。楽しみか」
「ならば待ってようか」
 絶対怒られる事はない長老ズは責任を先生に押し付けて悠々と食べる様子に俺もそちら側にそっと混ざって家具のリメイクの状況の話しを聞くのだった。





しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

びびあんママ、何故かビルの屋上に行く。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
大衆娯楽
※連作短編ですが、下記の基本情報を把握していればオールOKです。 ●新宿二丁目でバー『メビウス』のママをやっているオネエ。四十代半ば。お人好し。恋人なし。 ●バイトの子は椿ちゃん(22)。スレンダーな美女オネエ。 ●常連客のラジオのディレクターからの頼みで、人気タレントの逮捕で、その人がやっていた深夜の人生相談番組を穴埋めでやらされるが、引きが強いのか巻き込まれやすいのか事件が起きて「何か持っている」と人気DJに。一回こっきりのハズが、未だに毎週金曜深夜に【びびあんママの人生相談れいでぃお】をやらされている。 ●四谷三丁目の三LDKのマンションで暮らしている。ペットは文鳥のチコちゃん。時々自分のアフロなウイッグに特攻してくるのが悩み。 ●露出狂のイケメン・仙波ちゃん(26)がハウスキーパーになる。 ●そんなびびあんママの日常。

進め!羽柴村プロレス団!

宮代芥
大衆娯楽
関東某所にある羽柴村。人口1000人にも満たないこの村は、その人口に見合わないほどの発展を見せている。それはこの村には『羽柴村プロレス』と呼ばれるプロレス団があるからだ! 普段はさまざまな仕事に就いている彼らが、月に一度、最初の土曜日に興行を行う。社会人レスラーである彼らは、ある行事を控えていた。 それこそが子どもと大人がプロレスで勝負する、という『子どもの日プロレス』である。 大人は子どもを見守り、その成長を助ける存在でなくてならないが、時として彼らの成長を促すために壁として立ちはだかる。それこそがこの祭りの狙いなのである。 両輪が離婚し、環境を変えるためにこの村に引っ越してきた黒木正晴。ひょんなことから大人と試合をすることになってしまった小学三年生の彼は、果たしてどんな戦いを見せるのか!?

処理中です...