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一年、三年、十年先のブルーマウンテン 4
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ペーパーフィルターをセットしたドリッパーにお湯をかけてざっと濡らしながら温めてお湯を捨てる。答え合わせをするようにそこは一緒なんだと一つ一つ確認してほっとする合間もなくサーバーの内側をきっちりと拭いそこで初めてちゃんとセットして粉を入れる。
手慣れた様にドリッパ―の下の羽の方を持って二、三振るだけできっちりと平らにし手からお湯を注ぐ。
スケールの上に置いたコーヒーサーバーにお湯を入れる前に温度計でお湯を計ってから慣れた様に円を描きながら一定の湯量で注いでいく。気になったのは一番外までたどり着いたら縁に付いた粉を落すようにぐるりと一周した所でふんわりとした山を作り上げていた。そこから先は俺と同じように三回に分けて入れるも、どれもお湯を入れ終えた後はきっちりとふっくらとした小さな山が出来ていて、最後は既定の量までその山の頂点からお湯を注いでいた。
と言うか淹れ終えた後のドリッパ―が常に美しい山の状態をキープしていて、俺の物を思い出せばべチャットしたクレーターになっていた。あれでは蒸らし時間に蒸らす間も無く香りが飛んでしまっていたのだろ。ブルマンのすっとした香りがここで決まるのかと俺の淹れるコーヒーどれも物足りなさはここにあると理解してしまった。
それからきっちりと言う様に時計の秒針を眺めながら蒸らし時間を計った後、サーバーを机の底に擦り付けたままくるくると回した。
「こうする事でサーバー内のコーヒーの味を均等に出来ますし、空気に触れさせることでまろやかになります。回し過ぎると冷めてしまうので注意が必要ですが」
メモ帳何て持っていない俺はさっきからスマホのビデオ録画が役に立ちまくりだ。
そして数回くるくる回した所でいつの間に温めていたコーヒーカップのお湯を捨ててさっとふいたカップに初めてコーヒーを注いでくれた。
「どうぞ」
差し出されたコーヒーを受け取って香りを嗅ぐために鼻を近づければ……
「全然違う……」
「はい。良い豆でしたが保存方法が悪かった割には香りがしっかり出ましたね」
遠回しに俺の豆の保管方法が悪い事も指摘された。
「さすが自家製焙煎を販売するだけあって豆もきっちり処理してくれて頭が下がる思いですね」
全く別物の香りのコーヒーを冷めてしまったとは言え俺が淹れた物と比べて嗅ぎながらも一瞬何を言ってるのだろうか理解できなかったが
「このコーヒー豆を焙煎している店は知人の店でしてね。
コーヒーを淹れるのに豆を購入するのは当たり前かもしれませんが、その購入先の腕前が全く好ではなく自分で焙煎する事を選んだそうです。この店のコーヒー豆は全部彼が焙煎した物なので頼まないと包んでくれないのですよ。個人の店なのでそこまで量が作れないのでね」
なんて説明を聞きながらそっと息を吹き付けながらゆっくりと口に含んだ。
そこからは全く別次元の世界が待っていた。
爽やかな酸味と焙煎ながらの苦味がどっしりと存在感を表すも、喉を通ってからの余韻がまろやかな甘みが口の中に広がっていく。
これがコーヒーの王様と言われるブルーマウンテンのポテンシャル。感動を通り越えて言葉もなく立ち尽くしていた。
「これでもうちの店ではコーヒーを出す事が出来ないレベルです。うちのソムリエも世界で通用するレベルですが、彼が師とする方がいますので会いに行きましょう。
感動を通り越えたコーヒーを飲みに行きませんか?」
そんなお誘いに俺は無言で頷いていた。
「では、行き先をカーナビにセットします。申し訳ありませんが運転をお願いしますね。これでも昨夜仕事を終えてから高速飛ばして来たのでさすがにもう眠くて」
はふっとあくびを零す姿に徹夜なのかよ?!と驚きは隠せない。っていうか徹夜で高速って大丈夫かと思うも
「おっはよーございます!
あ、飯田さんもおはようございます。珍しいですね、こんな時間まで起きてるなんて?」
「宮下君おはようございます。コーヒーの件で頼まれていたのでお会いするまで頑張ってましたが、さすがに眠いです」
なんて言うも全然眠そうな顔をしていない爽やかな笑顔はもう胡散臭い笑顔にしか見えない。
「もう、無茶しないでよ?怒られるの俺達なんだから」
「はははっ、それじゃあ迷惑はかけれませんね。
なので今からちょっと小山の所まで行ってきますので今晩は山のお家ではなく圭斗君のお家に泊まらせてください」
「部屋はあるから全然いいけど。麓の家もあるけど?」
「あんなのが住み着いている家にお邪魔するなんて冗談じゃない」
「相変わらず辛辣だな。布団は余分なのがあるから。鍵渡しておくから遅くなっても気兼ねなく入ってきてください」
「ありがとうございます」
そう言って受け取った鍵をキーケースに繋げるのを家の鍵渡すのってこれ普通のやりとりか?何て考える間も無く
「さあ、行きましょう。
連絡は入れてあるのでカーナビにセットした店の駐車場に止めちゃってください」
なんて言いながら貴重品を持って俺の車に乗りこんで勝手にカーナビをセット。
「ではおやすみなさい」
助手席に座り、窓側にもたれるようにして秒で寝てしまう。本当に眠たかったんだと、俺はラジオも付けずに車を走らせるのだった。
手慣れた様にドリッパ―の下の羽の方を持って二、三振るだけできっちりと平らにし手からお湯を注ぐ。
スケールの上に置いたコーヒーサーバーにお湯を入れる前に温度計でお湯を計ってから慣れた様に円を描きながら一定の湯量で注いでいく。気になったのは一番外までたどり着いたら縁に付いた粉を落すようにぐるりと一周した所でふんわりとした山を作り上げていた。そこから先は俺と同じように三回に分けて入れるも、どれもお湯を入れ終えた後はきっちりとふっくらとした小さな山が出来ていて、最後は既定の量までその山の頂点からお湯を注いでいた。
と言うか淹れ終えた後のドリッパ―が常に美しい山の状態をキープしていて、俺の物を思い出せばべチャットしたクレーターになっていた。あれでは蒸らし時間に蒸らす間も無く香りが飛んでしまっていたのだろ。ブルマンのすっとした香りがここで決まるのかと俺の淹れるコーヒーどれも物足りなさはここにあると理解してしまった。
それからきっちりと言う様に時計の秒針を眺めながら蒸らし時間を計った後、サーバーを机の底に擦り付けたままくるくると回した。
「こうする事でサーバー内のコーヒーの味を均等に出来ますし、空気に触れさせることでまろやかになります。回し過ぎると冷めてしまうので注意が必要ですが」
メモ帳何て持っていない俺はさっきからスマホのビデオ録画が役に立ちまくりだ。
そして数回くるくる回した所でいつの間に温めていたコーヒーカップのお湯を捨ててさっとふいたカップに初めてコーヒーを注いでくれた。
「どうぞ」
差し出されたコーヒーを受け取って香りを嗅ぐために鼻を近づければ……
「全然違う……」
「はい。良い豆でしたが保存方法が悪かった割には香りがしっかり出ましたね」
遠回しに俺の豆の保管方法が悪い事も指摘された。
「さすが自家製焙煎を販売するだけあって豆もきっちり処理してくれて頭が下がる思いですね」
全く別物の香りのコーヒーを冷めてしまったとは言え俺が淹れた物と比べて嗅ぎながらも一瞬何を言ってるのだろうか理解できなかったが
「このコーヒー豆を焙煎している店は知人の店でしてね。
コーヒーを淹れるのに豆を購入するのは当たり前かもしれませんが、その購入先の腕前が全く好ではなく自分で焙煎する事を選んだそうです。この店のコーヒー豆は全部彼が焙煎した物なので頼まないと包んでくれないのですよ。個人の店なのでそこまで量が作れないのでね」
なんて説明を聞きながらそっと息を吹き付けながらゆっくりと口に含んだ。
そこからは全く別次元の世界が待っていた。
爽やかな酸味と焙煎ながらの苦味がどっしりと存在感を表すも、喉を通ってからの余韻がまろやかな甘みが口の中に広がっていく。
これがコーヒーの王様と言われるブルーマウンテンのポテンシャル。感動を通り越えて言葉もなく立ち尽くしていた。
「これでもうちの店ではコーヒーを出す事が出来ないレベルです。うちのソムリエも世界で通用するレベルですが、彼が師とする方がいますので会いに行きましょう。
感動を通り越えたコーヒーを飲みに行きませんか?」
そんなお誘いに俺は無言で頷いていた。
「では、行き先をカーナビにセットします。申し訳ありませんが運転をお願いしますね。これでも昨夜仕事を終えてから高速飛ばして来たのでさすがにもう眠くて」
はふっとあくびを零す姿に徹夜なのかよ?!と驚きは隠せない。っていうか徹夜で高速って大丈夫かと思うも
「おっはよーございます!
あ、飯田さんもおはようございます。珍しいですね、こんな時間まで起きてるなんて?」
「宮下君おはようございます。コーヒーの件で頼まれていたのでお会いするまで頑張ってましたが、さすがに眠いです」
なんて言うも全然眠そうな顔をしていない爽やかな笑顔はもう胡散臭い笑顔にしか見えない。
「もう、無茶しないでよ?怒られるの俺達なんだから」
「はははっ、それじゃあ迷惑はかけれませんね。
なので今からちょっと小山の所まで行ってきますので今晩は山のお家ではなく圭斗君のお家に泊まらせてください」
「部屋はあるから全然いいけど。麓の家もあるけど?」
「あんなのが住み着いている家にお邪魔するなんて冗談じゃない」
「相変わらず辛辣だな。布団は余分なのがあるから。鍵渡しておくから遅くなっても気兼ねなく入ってきてください」
「ありがとうございます」
そう言って受け取った鍵をキーケースに繋げるのを家の鍵渡すのってこれ普通のやりとりか?何て考える間も無く
「さあ、行きましょう。
連絡は入れてあるのでカーナビにセットした店の駐車場に止めちゃってください」
なんて言いながら貴重品を持って俺の車に乗りこんで勝手にカーナビをセット。
「ではおやすみなさい」
助手席に座り、窓側にもたれるようにして秒で寝てしまう。本当に眠たかったんだと、俺はラジオも付けずに車を走らせるのだった。
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