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祝いと呪いのブレンドコーヒー 7
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少ししんみりとした気持ちで運ばれていくのを黙って見送れば二人はすぐにくるりと踵を返して戻ってきて宮下は回収していく物があると言う。
「玄関側の古い曇りガラスは模様が入ってる手が込んだやつだし今時手に入らないからね。
使える物は使いたいけど今時の防犯ガラスと違ってあまり強度がないから二階の障子代わりに使おうと思うんだ。障子貼りかえるの面倒だろ?
和室から洋室にするけどやっぱりこのガラスはレトロでかっこいいから処分するのはもったいないから」
物凄く良い顔をして言いながら丁寧に毛布でくるんで車に乗せて行く。なんか全部持って行かれる錯覚をするも壁を抜いたりしている様子を見ればそうではない事は判明している。話を聞きながらついて行けばそこでやっと車の中を見て納得した。
「トラックじゃないからどうしたかと思ったら中はこんな風に板で区切られてたんだ」
「うん。建具屋だから襖とか曲がらないように運ぶための車なんだ」
「へー、古い町だから繁盛してそうだな」
聞けばそうでもないと言う。
「今はアイロンで襖が貼れたりしちゃうからね。みんな安く上げる方を努力するから」
苦笑交じりの声だが
「あ、古い町なりに宿場町特有の宿とかお寺とかからの張替の依頼もあるから安定はしてるんだ。
今の所くいっぱぐれる事もないし先輩の長沢さんからお客様の引き継ぎをしているから。長沢さんが元気なうちに一緒に顔を出してもらいながら顔を売ってるよ」
昔は意味もなくにこにこと笑っていた笑顔だったと思ったが、今となっては宮下の人となりを表しているようで凄い武器のように見えた。
にじみ出る人の良さと言う笑顔に安心感を覚え商売客相手にはぴったりだと思いながらふと今の俺はどんな顔をしているのだろうかと考えるも
「ガラスが割れる前に一度戻るぞ」
浩太さんの一声に
「はい!じゃあ、一度置いてくるから、そうしたらお互いご飯にしよう」
言われて気が付いた。とっくに昼を回っていた事に。
「あー、なんかあっという間だった」
「身体動かして仕事に追われるとそう言うもんだろ」
この中で一番足取り軽く働いていた篠田は外した窓の代わりに板を打ちつけていた。
「まぁ、獣の侵入対策ぐらいしか効果ないから。足元暗くなるから注意しろよ」
そんな危険を促す声にこの薄暗い中で俺は後片付けを続けなくてはと思えばいい事を思い付いた。
「悪いけど午後からキャンプ用のランプを幾つか買って来ても良いか?」
部屋の片隅に置けば足元位見えるからいいし非常灯としてもあっても良いかと考えれば
「それだったらうちにもある。急いで買う事はないから貸してやるから昼食後は一度ゴミを運びに出そう。一気に出せばあっと言う間に終わるからな。その後の帰り道に工房の方に顔を出そう。早めに意見を言わないと魔王好みにされちまうぞ」
「いや、もう俺と魔王のストライクゾーンが全く同じ方だからお任せの方が失敗しない気もするから口出す気はないかも」
なんて言うも
「それは止めておけ」
と何故か真顔で言われた。
あ、なんか急に寒気が……
いや、寒気の前に目の前のゴミの山を眺めながら節約の為にちまちまとゴミの日に出そうと節約も併せて家にも持ち帰ったりしながら考えていたのだが
「まだ連絡は来てないけどそろそろ着工すると思うから。連絡が来る前に片づけれる物は片づけるぞ」
「おう、もうそんなにも早く動くんだ」
俺がリフォームの話しを持って行ったのはまだほんのひと月前の話しだと思ってたのにと言うも
「先に水道と下水道があるからな」
終わらない事には車で乗りこむ事も出来ない理由はは駐車場側から水道管が走っているからだと言う。
「それとだ」
言いながら玄関側から顔を出して
「実桜さーん、そろそろお昼にしよう!」
「はい!じゃあ、片づけたら行きますね!」
タオルを首に巻いてつばの大きな麦わら帽子をかぶる兄貴の姿は初めて紹介してもらってから毎日顔を合わせる一番の顔馴染になっていた。
「玄関側の古い曇りガラスは模様が入ってる手が込んだやつだし今時手に入らないからね。
使える物は使いたいけど今時の防犯ガラスと違ってあまり強度がないから二階の障子代わりに使おうと思うんだ。障子貼りかえるの面倒だろ?
和室から洋室にするけどやっぱりこのガラスはレトロでかっこいいから処分するのはもったいないから」
物凄く良い顔をして言いながら丁寧に毛布でくるんで車に乗せて行く。なんか全部持って行かれる錯覚をするも壁を抜いたりしている様子を見ればそうではない事は判明している。話を聞きながらついて行けばそこでやっと車の中を見て納得した。
「トラックじゃないからどうしたかと思ったら中はこんな風に板で区切られてたんだ」
「うん。建具屋だから襖とか曲がらないように運ぶための車なんだ」
「へー、古い町だから繁盛してそうだな」
聞けばそうでもないと言う。
「今はアイロンで襖が貼れたりしちゃうからね。みんな安く上げる方を努力するから」
苦笑交じりの声だが
「あ、古い町なりに宿場町特有の宿とかお寺とかからの張替の依頼もあるから安定はしてるんだ。
今の所くいっぱぐれる事もないし先輩の長沢さんからお客様の引き継ぎをしているから。長沢さんが元気なうちに一緒に顔を出してもらいながら顔を売ってるよ」
昔は意味もなくにこにこと笑っていた笑顔だったと思ったが、今となっては宮下の人となりを表しているようで凄い武器のように見えた。
にじみ出る人の良さと言う笑顔に安心感を覚え商売客相手にはぴったりだと思いながらふと今の俺はどんな顔をしているのだろうかと考えるも
「ガラスが割れる前に一度戻るぞ」
浩太さんの一声に
「はい!じゃあ、一度置いてくるから、そうしたらお互いご飯にしよう」
言われて気が付いた。とっくに昼を回っていた事に。
「あー、なんかあっという間だった」
「身体動かして仕事に追われるとそう言うもんだろ」
この中で一番足取り軽く働いていた篠田は外した窓の代わりに板を打ちつけていた。
「まぁ、獣の侵入対策ぐらいしか効果ないから。足元暗くなるから注意しろよ」
そんな危険を促す声にこの薄暗い中で俺は後片付けを続けなくてはと思えばいい事を思い付いた。
「悪いけど午後からキャンプ用のランプを幾つか買って来ても良いか?」
部屋の片隅に置けば足元位見えるからいいし非常灯としてもあっても良いかと考えれば
「それだったらうちにもある。急いで買う事はないから貸してやるから昼食後は一度ゴミを運びに出そう。一気に出せばあっと言う間に終わるからな。その後の帰り道に工房の方に顔を出そう。早めに意見を言わないと魔王好みにされちまうぞ」
「いや、もう俺と魔王のストライクゾーンが全く同じ方だからお任せの方が失敗しない気もするから口出す気はないかも」
なんて言うも
「それは止めておけ」
と何故か真顔で言われた。
あ、なんか急に寒気が……
いや、寒気の前に目の前のゴミの山を眺めながら節約の為にちまちまとゴミの日に出そうと節約も併せて家にも持ち帰ったりしながら考えていたのだが
「まだ連絡は来てないけどそろそろ着工すると思うから。連絡が来る前に片づけれる物は片づけるぞ」
「おう、もうそんなにも早く動くんだ」
俺がリフォームの話しを持って行ったのはまだほんのひと月前の話しだと思ってたのにと言うも
「先に水道と下水道があるからな」
終わらない事には車で乗りこむ事も出来ない理由はは駐車場側から水道管が走っているからだと言う。
「それとだ」
言いながら玄関側から顔を出して
「実桜さーん、そろそろお昼にしよう!」
「はい!じゃあ、片づけたら行きますね!」
タオルを首に巻いてつばの大きな麦わら帽子をかぶる兄貴の姿は初めて紹介してもらってから毎日顔を合わせる一番の顔馴染になっていた。
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