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祝いと呪いのブレンドコーヒー 6
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二人はさっきの荷運び用のトラックとは違うバンで戻って来たから少し不思議になりながらも皆さんぜんぜん不思議にも思わない顔で仕事をしているデジャブ。
仲間はずれ感半端ないと少し寂しく思いながら同じ職場の人間でない事を改めて思い出す。当然と言えば当然なのだが一緒にご飯を食べる仲にもなったのに寂しいと思うのはなれ親しんだ街とは言えども友達がいないのが原因だろう。
改めて気づけばほんと寂しい……
さて浩太さん。
本名、内田浩太さん。奥さんと離婚したけど三人の子持ちだと言う。
本名でも何でもないが何で年上なのにみんな親しく浩太さんって呼ぶかと思えばおじいちゃん組の一人が浩太さんのお父さん。見ているとみんなの先生役というかお父さん役と言うか、いろいろ細かい所を指導してくれてる浩太さんを更に指導するのが鉄治さんと言う縦社会が厳しくもなくゆるくもなく形成されていた。まあ、同じ苗字なので鉄治さんと混乱しないように名前呼びをしていると言うただそれだけの記号。自分達の店をたたんで若者の中に混ざるのは少し勇気がいたと思うも、みんな浩太さんを尊敬しているようで何かあれば声をかけて相談をしている光景に上手く転職できたなと羨ましく思えた。
ここは羨ましい位に社内の雰囲気が良いなとこう言う職場に憧れてしまうも長老衆のお二人は篠田の所でアルバイトをしていると言う。定年幾つだって聞きたい。
ほら、どうやって見てももう年金貰ってる年齢だしね。
暇つぶしに身体を動かして小遣いもらってるって言ってたけど勤労な人達だなあと感心する反面一度手にした職は歳なんて関係なく残る物なんだと言う事を見せられて憧れるしかない光景だ。
俺も年を取って髪が真っ白の爺さんになってもコーヒーをこの店で淹れつづけれたらいいなと少しだけ未来を描いてしまう。
そんな夢を描いて妄想している所で部屋に入って来た宮下と浩太さんは片手にバールとハンマー、そしてデンノコを持ってしっかりとヘルメットとゴーグルをつけて立っていた。
「な、ちょ……」
怖い。
マジ怖い。
動画でこの出で立ちは何度も見たけど現実に目の前にするとどこかの家に打ち入りかというくらい怖くて逃げたい。
呆然と土足のまま上がって来た所で部屋の中にブルーシートを丁寧に綺麗に敷き始めた。もう違和感しかなくてなんだか笑えてきてやっと少し落ち着きを取り戻した。
もちろん襖も外して丁寧に部屋の片隅に追いやった所で二階から最後の家具を降ろしてきた篠田達も車に乗せた所で同じ装備になって戻ってきた。
「さてヤるか」
だから篠田よ、言葉が怖いって。
さてと、抑揚もなく気合を入れた粉塵マスクを装備した浩太さんの合図に宮下が鴨居にデンノコで切りつける。 一本筋を入れた所で篠田達がバールを引っ掻けるようにして引き落とせば盛大な物音と埃が舞いあがった。
そして残されたのは宙ぶらりんになった欄間。
落ちない不思議だがしっかりと楔でくい止めてあったものが剥がされた鴨居の中に隠れていた。釘使ってないのかと感心しながらも岡野旦那がビデオの位置を移動させながらしっかりと記録を取っていた。
「よーし、落とさないように丁寧に降ろせよ」
浩太さんの指示に宮下と篠田でいつの間にか用意された脚立に上がって欄間をそっと外し、部屋の片隅に寝かして毛布に巻く。
対になる様にもう一つの欄間も外して同じように毛布に巻いて車に乗せたかと思えば二階にある欄間も外して持っていくと言う。
「宮下がこれだけ立派な欄間だからクリーニングして使いたいっていうからさ。
それにこれだけ立派な彫刻なかなかお目にかかれないからなかなかいいインテリアになるぞ」
「なるほど」
思い出すのは寝ながら隣室から零れ落ちてくる明りを欄間越しに見上げていた記憶。
従兄弟たちが隣ですーすーと寝息を零すのを聞きながら欄間越しに零れる灯と聞こえる大人達の楽しそうな声を子守唄代わりに安心を覚えて眠りについた。
そんな幼い記憶。
この家の思い出が一つ残る。
それもすごいなと感じながら嬉しさが隠せれず、派手な音と埃を巻き散らかし、そして薄らと埃を纏う欄間のくたびれた姿にまたよろしくなと心で挨拶をして送り出すのを見送った。
仲間はずれ感半端ないと少し寂しく思いながら同じ職場の人間でない事を改めて思い出す。当然と言えば当然なのだが一緒にご飯を食べる仲にもなったのに寂しいと思うのはなれ親しんだ街とは言えども友達がいないのが原因だろう。
改めて気づけばほんと寂しい……
さて浩太さん。
本名、内田浩太さん。奥さんと離婚したけど三人の子持ちだと言う。
本名でも何でもないが何で年上なのにみんな親しく浩太さんって呼ぶかと思えばおじいちゃん組の一人が浩太さんのお父さん。見ているとみんなの先生役というかお父さん役と言うか、いろいろ細かい所を指導してくれてる浩太さんを更に指導するのが鉄治さんと言う縦社会が厳しくもなくゆるくもなく形成されていた。まあ、同じ苗字なので鉄治さんと混乱しないように名前呼びをしていると言うただそれだけの記号。自分達の店をたたんで若者の中に混ざるのは少し勇気がいたと思うも、みんな浩太さんを尊敬しているようで何かあれば声をかけて相談をしている光景に上手く転職できたなと羨ましく思えた。
ここは羨ましい位に社内の雰囲気が良いなとこう言う職場に憧れてしまうも長老衆のお二人は篠田の所でアルバイトをしていると言う。定年幾つだって聞きたい。
ほら、どうやって見てももう年金貰ってる年齢だしね。
暇つぶしに身体を動かして小遣いもらってるって言ってたけど勤労な人達だなあと感心する反面一度手にした職は歳なんて関係なく残る物なんだと言う事を見せられて憧れるしかない光景だ。
俺も年を取って髪が真っ白の爺さんになってもコーヒーをこの店で淹れつづけれたらいいなと少しだけ未来を描いてしまう。
そんな夢を描いて妄想している所で部屋に入って来た宮下と浩太さんは片手にバールとハンマー、そしてデンノコを持ってしっかりとヘルメットとゴーグルをつけて立っていた。
「な、ちょ……」
怖い。
マジ怖い。
動画でこの出で立ちは何度も見たけど現実に目の前にするとどこかの家に打ち入りかというくらい怖くて逃げたい。
呆然と土足のまま上がって来た所で部屋の中にブルーシートを丁寧に綺麗に敷き始めた。もう違和感しかなくてなんだか笑えてきてやっと少し落ち着きを取り戻した。
もちろん襖も外して丁寧に部屋の片隅に追いやった所で二階から最後の家具を降ろしてきた篠田達も車に乗せた所で同じ装備になって戻ってきた。
「さてヤるか」
だから篠田よ、言葉が怖いって。
さてと、抑揚もなく気合を入れた粉塵マスクを装備した浩太さんの合図に宮下が鴨居にデンノコで切りつける。 一本筋を入れた所で篠田達がバールを引っ掻けるようにして引き落とせば盛大な物音と埃が舞いあがった。
そして残されたのは宙ぶらりんになった欄間。
落ちない不思議だがしっかりと楔でくい止めてあったものが剥がされた鴨居の中に隠れていた。釘使ってないのかと感心しながらも岡野旦那がビデオの位置を移動させながらしっかりと記録を取っていた。
「よーし、落とさないように丁寧に降ろせよ」
浩太さんの指示に宮下と篠田でいつの間にか用意された脚立に上がって欄間をそっと外し、部屋の片隅に寝かして毛布に巻く。
対になる様にもう一つの欄間も外して同じように毛布に巻いて車に乗せたかと思えば二階にある欄間も外して持っていくと言う。
「宮下がこれだけ立派な欄間だからクリーニングして使いたいっていうからさ。
それにこれだけ立派な彫刻なかなかお目にかかれないからなかなかいいインテリアになるぞ」
「なるほど」
思い出すのは寝ながら隣室から零れ落ちてくる明りを欄間越しに見上げていた記憶。
従兄弟たちが隣ですーすーと寝息を零すのを聞きながら欄間越しに零れる灯と聞こえる大人達の楽しそうな声を子守唄代わりに安心を覚えて眠りについた。
そんな幼い記憶。
この家の思い出が一つ残る。
それもすごいなと感じながら嬉しさが隠せれず、派手な音と埃を巻き散らかし、そして薄らと埃を纏う欄間のくたびれた姿にまたよろしくなと心で挨拶をして送り出すのを見送った。
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