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祝いと呪いのブレンドコーヒー 3
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工事の為に電気水道を止められた爺ちゃんの家で黙々と残置物の処分をする。
それと同時進行で喪女改め兄貴も同時進行で庭木の手入れをしてくれる。
いや、兄貴ってホント呼びたいくらいの逞しさ。是非見習いたい。
遠藤さんと言う通称園芸部さんが指示を受けて地上からロープを引っ張るのもすごいけど、実桜さんは物凄く身軽に木に登り、どう見ても簡易すぎる命綱を木に絡めて小さなデンノコで枝打ちしたり日当たりが良くなるように、そして隣家に伸びた枝をご迷惑にならないように切り落として小さく纏めてく行く。
大丈夫かなんて心配よりもヘルメットとゴーグル、腰回りにはのこぎりや防腐剤の入ったボトルなどももって木の上で作業する様はほんと兄貴と言うのにふさわしいカッコよさ。
ロープ一本で枝から降りながら着地する姿に
「兄貴と呼んでいいですか?」
「実桜さんって呼んでね?」
笑顔で即断。
残念な事に断られてしまった物の断り方も即断ってかっこよすぎだろうと地味や喪女と言うイメージはこの一件で消え去るのだった。
お昼には実桜さん達は裏の篠田の所でお昼にすると言うので俺ももってきた弁当を片手にご近所のよしみで混ぜさせてもらい、過日のお祝いの贈り物の話をする。
「って言う事があって、魔王の奴何処か隠れてないか?」
「安心しろ。今はすぐ来れない距離にいるから大丈夫だ。それにあいつの直感は安定のクリティカルの連続だぞ」
こんな事朝飯前だと苦い顔をする篠田に何かいろいろ思い当たる事があるのだろう。同様に宮下や園芸部に実桜さんと実桜さんのご主人も思い当たる事がありすぎると言う様に渋い顔で苦笑を零していた。
「あとさ、内田って言う工務店だけどさ、同じ工務店同士で知らないか?この街にあったらしいんだけど……」
既に店をたたんでいて連絡が取れなくなってしまった。いや、しっかりググればちゃんとヒットするのだろうが、調べるよりも早いだろうからと聞けば
「家に何の用だい?」
「は?」
このメンツの中で一番年上の浩太さんが当の内田さんだった。いや、これは驚くわ。
「あ、いや、うちの家昔内田さんの所にリフォームしてもらったとかそんな話を親父から聞かせてもらいましたので」
聞けばそうだと言う様に頷いて
「ちょくちょく手入れはさせてもらってたんだけど、俺もその話は先日親父から聞いたばかりなんだよ。
この街も狭いけど人間関係もほんと狭いよな?」
にぱっと笑う浩太さんに
「お店は畳んでしまったとか……」
聞いていいのかと言うように周囲を伺いながら聞くも別にどうとでもと言うような周囲の視線のなか
「親父と一緒にやってたんだけどな。
親父も歳だし、ちょうど圭斗も会社を立ち上げた所だったから就職させてもらう事にしたんだ。独立が魅力だけどやっぱり大工は一人で出来る仕事には限界があるから。何かするたびに知り合いに頼んで仕事を調節してもらうのも気が引けてたし、ならいっその事長い物に巻かれろってね」
「勇気ある事に共倒れも巻き添えになってくれるって言ってくれた勇者だ」
篠田の言葉に二人して声を立てて笑っていた。
「夜月さんの家は全く知らないわけじゃないけど入手方法とかそう言った事は初めて聞いたな。爺さん達が手を入れた家をまた触らせてもらえる機会があってほんと嬉しいよ」
作り手側のそんなあかるい感謝。
俺がただ家を手放したくないだけで口から飛び出したでたらめの言葉でこんなにも喜んでくれる人がいる何て誇らしく思う反面、一瞬で潰してしまいそうなコーヒーの腕前にどんどん申し訳なさが募って行けば
ぽとっ……
ぎょっとしていた面々にやっと俺が泣いている事に気が付いた。
「燈火、どうしたんだ?いきなり泣き出して」
慌てて宮下がティッシュを渡してくれるので、涙よりも先にに溢れそうになる鼻水をずびっとひとかみして
「実は……」
俺はここまで来てしまった所でやっと懺悔を口にする事が出来た。
それと同時進行で喪女改め兄貴も同時進行で庭木の手入れをしてくれる。
いや、兄貴ってホント呼びたいくらいの逞しさ。是非見習いたい。
遠藤さんと言う通称園芸部さんが指示を受けて地上からロープを引っ張るのもすごいけど、実桜さんは物凄く身軽に木に登り、どう見ても簡易すぎる命綱を木に絡めて小さなデンノコで枝打ちしたり日当たりが良くなるように、そして隣家に伸びた枝をご迷惑にならないように切り落として小さく纏めてく行く。
大丈夫かなんて心配よりもヘルメットとゴーグル、腰回りにはのこぎりや防腐剤の入ったボトルなどももって木の上で作業する様はほんと兄貴と言うのにふさわしいカッコよさ。
ロープ一本で枝から降りながら着地する姿に
「兄貴と呼んでいいですか?」
「実桜さんって呼んでね?」
笑顔で即断。
残念な事に断られてしまった物の断り方も即断ってかっこよすぎだろうと地味や喪女と言うイメージはこの一件で消え去るのだった。
お昼には実桜さん達は裏の篠田の所でお昼にすると言うので俺ももってきた弁当を片手にご近所のよしみで混ぜさせてもらい、過日のお祝いの贈り物の話をする。
「って言う事があって、魔王の奴何処か隠れてないか?」
「安心しろ。今はすぐ来れない距離にいるから大丈夫だ。それにあいつの直感は安定のクリティカルの連続だぞ」
こんな事朝飯前だと苦い顔をする篠田に何かいろいろ思い当たる事があるのだろう。同様に宮下や園芸部に実桜さんと実桜さんのご主人も思い当たる事がありすぎると言う様に渋い顔で苦笑を零していた。
「あとさ、内田って言う工務店だけどさ、同じ工務店同士で知らないか?この街にあったらしいんだけど……」
既に店をたたんでいて連絡が取れなくなってしまった。いや、しっかりググればちゃんとヒットするのだろうが、調べるよりも早いだろうからと聞けば
「家に何の用だい?」
「は?」
このメンツの中で一番年上の浩太さんが当の内田さんだった。いや、これは驚くわ。
「あ、いや、うちの家昔内田さんの所にリフォームしてもらったとかそんな話を親父から聞かせてもらいましたので」
聞けばそうだと言う様に頷いて
「ちょくちょく手入れはさせてもらってたんだけど、俺もその話は先日親父から聞いたばかりなんだよ。
この街も狭いけど人間関係もほんと狭いよな?」
にぱっと笑う浩太さんに
「お店は畳んでしまったとか……」
聞いていいのかと言うように周囲を伺いながら聞くも別にどうとでもと言うような周囲の視線のなか
「親父と一緒にやってたんだけどな。
親父も歳だし、ちょうど圭斗も会社を立ち上げた所だったから就職させてもらう事にしたんだ。独立が魅力だけどやっぱり大工は一人で出来る仕事には限界があるから。何かするたびに知り合いに頼んで仕事を調節してもらうのも気が引けてたし、ならいっその事長い物に巻かれろってね」
「勇気ある事に共倒れも巻き添えになってくれるって言ってくれた勇者だ」
篠田の言葉に二人して声を立てて笑っていた。
「夜月さんの家は全く知らないわけじゃないけど入手方法とかそう言った事は初めて聞いたな。爺さん達が手を入れた家をまた触らせてもらえる機会があってほんと嬉しいよ」
作り手側のそんなあかるい感謝。
俺がただ家を手放したくないだけで口から飛び出したでたらめの言葉でこんなにも喜んでくれる人がいる何て誇らしく思う反面、一瞬で潰してしまいそうなコーヒーの腕前にどんどん申し訳なさが募って行けば
ぽとっ……
ぎょっとしていた面々にやっと俺が泣いている事に気が付いた。
「燈火、どうしたんだ?いきなり泣き出して」
慌てて宮下がティッシュを渡してくれるので、涙よりも先にに溢れそうになる鼻水をずびっとひとかみして
「実は……」
俺はここまで来てしまった所でやっと懺悔を口にする事が出来た。
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