タイプではありませんが

雪本 風香

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【後日談】忘れたフリして★

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忘れて。
お試し交際終了時に告げたのは楓。

先日からまた付き合い出したから、「忘れている」ことに意味がないのはどちらも認識しているけど。

星野が忘れているフリをしてくれている前提で、今日も二人のゲームが始まった。



「やっ……ちがっ」
体をまさぐる星野の手が止まる。
「あれ、ここじゃない?」
スッと掠めたのは、楓の弱いところ。ひゃ、とも、ひゅ、とも聞こえるような音が楓の喉から漏れる。
「そこだけどっ。……ちがっ。それじゃないっ。んっ」
「ん?合ってるの?違うの?」
笑っている星野はずいぶんと楽しそうだ。
楓にはそんな余裕がないのに。


マッサージをしてくれる、と言い出したのは星野だった。
総務部に異動して初めて迎えた四半期決算。
想像以上にバタバタして、ルーティンになっていたヨガに行くこともできなかったからか、体が織のように疲れていた楓はありがたく星野の申し出を受けたのに。
うつ伏せに寝た楓を最初は丁寧に揉みほぐしていたはずの星野の手は、徐々におかしくなってきたのだ。

肩をほぐし、脇の下のリンパ節を触った手が下の方に降りる。胸を掠める手をマッサージのものだと思い込んでいたのが運の尽き。
どんどん星野の手はエスカレートしていったのだ。
気づいた時には、体が解れるよりも、変な風にスイッチが入っていた。

「マッサージしているだけだよ、楓」
「んっ」
耳元で囁かれるの弱いと知っているくせに。
息を吹き掛ける星野に抗議をすると、わざとらしく驚く。
「へぇ、そうなんだ。。なんせ付き合って二週間だし、キスしかしていなし」

返す言葉が出ない。一事が万事。楓の文句は全てこの一言で返される。
「忘れるって約束したんだよね、あの時。守らないといけないし。
でも……」
星野は悪い顔をして笑う。
これはゲームだ。
どっちが先に音を上げるかのゲーム。
星野は勝つ自信に満ち溢れた顔で楓に告げる。
「「思い出していいよ」って言われたらすぐに思い出すけどね」
「っ!絶対言わない。……んっ」

負けるものか。そう思うのに。
ベッドの上でゴロンと仰向けにされた楓は、星野に唇を塞がれる。
舌を器用に動かして、歯列をなぞる。
楓の舌に絡めてくる舌の感触。
そんなに熱っぽいキスをされると、ゾクゾクっと背筋が震えてしまう。

「意地っ張り」
トロンとした目になるくせに、意固地にその一言だけは言わない楓が可愛くて仕方ないというように星野は笑う。
「そんな目で見ているってことは、誘っているんだよね?」
楓の答えを待つ前に、星野は彼女の服のボタンを外した。



一糸まとわぬ姿になると、星野の手の動きはますます磨きがかかる。
楓の弱いところにはわざと触れない。その周りをネチネチと責めて、核心箇所から少しだけずらす。
その度に楓の息が上がる。体が熱くなる。だけど、ここまできたら張った意地は引っ込められない。
星野の指を追いかけて自分で体を動かすけれど、あと一歩のところでヒョイッと逃げられる。
「そろそろ言ってよ」
星野の息も上がる。星野の忍耐ももう限界に近いのは、大きくなった彼のものが物語っている。
頑なに首を振り続ける楓に、星野は奥の手を使う。

ナカに指を二本挿入して、プックリ膨らんだGスポットをクイッと刺激したのだ。

「んっ!あっ……くぅ!!」
たったそれだけの動き。
だけど、体の方はしっかり準備が出来ていた。
待ち望んでいた快楽。
焦らして焦らされた末の絶頂。楓は突然の出来事に呆気なく達した。
はぁはぁと肩で息をする楓は、入りっぱなしの星野の指を締め付ける。

こんなのじゃ足りない。

楓の訴えを敢えて気付かないフリをして、星野は指を引き抜いた。
ドロリと溢れる愛液。吸い付いて舌で味わいたいのを我慢する。
期待した目で見上げてくる楓を振り払うように体を離した。

「え?」
あからさまにがっかりした顔をする楓に星野は詫びる。
「ごめん、今日ゴム持っていないから」
「だって……」
過去、体重ねた時は一度だって着けたことないのだけど。

悪い顔をしているな、俺。
それでも何とか彼女の口からあの一言を引きずり出したい。
そのためには。
「俺、避妊せずにシたことないんだ」
星野の意図するところは正確に伝わったようだ。楓は悔しそうに唇を噛む。

楓は折れるだろう。
お試しで付き合っているときも、生半可な気持ちで抱いてはいない。
体に鮮明に残るように。前の男のことを一切思い出させないつもりで交わっていたのだ。
生で出して孕んだらこっちのもの。
孕まなくても体に快楽を刻み込む。
何重にも仕掛けをして、逃げられないように少しずつ罠を張って。

だから、逃がすつもりはない。

ここまで言っても中々口を開かない楓に、業を煮やした星野は強引に唇を塞ぐ。
肌を重ね、秘部に昂っているモノを押し付ける。
楓の高身長のおかげで、触れたい部分に触れたい場所が当たる。
「んっ……」
「なんで言わんの?」
素のとき出る方言は、楓の琴線に触れるようだ。
ここぞとばかりに使う。
「言うてよ。……頼むけん」
「んんっ!」
楓の瞳が潤ってくる。この自分だけに魅せる顔。
興奮で息が上がる。

よし、行ける。

そう確信した星野は、ダメ押しとばかりにググッと押し付けているモノの先端を、楓のソコに埋めた。
「あっ……」

楓の喘ぎと共に温かい潤いに包まれる星野のモノ。
しまった、と思ったが後の祭りだった。

イったばかりの楓のナカは、男を欲しがるようにくぱくぱと口を開けていたのだ。
溢れ出ている愛液の力もあって、にゅるん、と柔らかく星野のモノを咥える。

体が鮮明に覚えているのは星野も同じだった。

先端しか入っていないのに、奥へ奥へと吸い込もうとする楓のナカ。
星野の肉棒をギチギチに頬張って、奥の方でしゃぶり尽くそうと待ち構えている。


「やあっ……んっ」
ダメ押しとばかりのエロい声。
「ああ!……くそっ」
ズルンと奥まで突っ込む。
これが欲しかった、とばかりに絡みついてくる楓のナカに星野の理性は吹っ飛ぶ。

全部覚えている。忘れられるはずない。
自分の動きに敏感に反応する体も、可愛く喘ぐ声も。
必死にしがみついてくる腕も、切なそうに見返してくるこの瞳も。

「っつ。忘れれるわけないやん」
「あっ……んっ。だめっ!そこっ……んんっ!」
「ここが好きやろ?」
弱いところだけを責め立てる。散々焦らしていたのだ。
そう時間はかからずに楓は上り詰めようとする。
「ほんとっ!だめっ!!……んっ!もっ……ふぁっ!……きちゃっ!!」
「……いいよ」
星野はソレを奥に押し込んだ。
「……一緒に、イこ?」
星野の言葉に反応するように楓はビクンと体を反らした。
トドメとばかりに星野はグッと奥壁に先っぽを擦り付ける。
「あっ……イッ」
「……っく」
楓が達したのが先か、それとも星野が吐精したのが先か。
お互いをしっかり抱きしめ、ほぼ同じタイミングで迎えた絶頂は、とても心地良いものだった。




「あー、悔しい」
ふにふにと楓の体の柔らかさを指で確かめながら星野は呟いた。
言葉は残念そうだが、楽しそうに響く声のためか、全然悔しそうに聞こえない。
「あとちょっとだったのになぁ。
ま、あんな風に奥に誘われると、男だったら我慢できないし」
仕方ないよね、と笑い、楓の耳元にささやく。
「めっちゃエロかった」
一瞬で真っ赤になった楓は、星野の胸板を拳で軽く叩く。
「っつ!……ヘンタイ!!」
「変態?心外だなぁ。興奮したでしょ、楓も」
余裕の笑みを浮かべる星野に楓は更に顔を赤くする。

特別な人にしか見せない顔に、収まっていた星野のモノはムクムクと大きくなる。
「ダメだよ、楓」
楓を抱きしめるとそのまま押し倒す。
「ちょっ……」
「一度で満足すると思った?」
ニコッと笑い、星野は再び楓を刺激し始める。
まだしっかり熱が残っていた楓の体は、すぐに熱くなる。
「俺、めっちゃ我慢した。二週間も」
付き合いだして初めての週末は、タイミング悪く?楓の月のものが来たから、映画を見て帰るだけという至って健全なデートだったのだ。
だからこの週末きょうは、仕事が終わるやいなや、夕飯を食べるのもソコソコにラブホテルここに連れ込まれたのだ。

「今度はどんなコトしようか?バックから責める?それとも楓が上になる?」
「ちょ……」
「オモチャ使うのもいいなぁ。お風呂も広いし、シャワープレイも捨てがたい」
「ホッシー!」
楓の静止する声に星野は動きを止める。

よかった、これで落ち着いてくれる。

楓はホッと息を吐いた。

それが自分の勘違いだと気づいたのは数秒後のことだった。

「決めた」
何を、と尋ねようとして星野を見上げた楓は体を震わせる。

あ、ヤバい。逃げ出さないと。

下からすり抜けようとする楓を、もちろん星野が逃がすはずない。

「さて、と」
唐突に楓の秘部に指を挿入する。
先程の名残の愛液と精液のお陰ですんなりと入る。
「あっ……。ちょっ……!んっ!……はっ」
我ながらチョロい。静止しようとした声が、ナカを掻き回されるだけで切なくなる。
男と違って、昂った熱はすぐには下がらないのだ。
少し弄ばれるだけで、また星野のモノが欲しくなる。

エロい声を上げ始めた楓に向かって星野は不敵に笑った。
「名前で呼んでよ」
「えっ。んっ……はぁん。やっ……」
「ずっと「ホッシー」って呼ぶん?」
だからダメだって、ここで訛るの。
キュウっと楓は星野のモノを締め付ける。

もう、星野のがほしい。

楓の心の声を読んだかのように星野は答えた。

「いいよ、あげる。……楓が「篤郎あつろう」って呼べたらね」
「やっ。そんなのっ!んっ……ふぁ」
星野の指がナカで折り曲げられる。
楓のイイトコロに当たりそうで微妙にズレる。
「ま、好きなだけ耐えてみて。名前で呼ぶまで絶対イかさない」
一度出してスッキリした様子の星野はどんどん責めを強くしていく。

どうせ言わされる。彼が納得するまで何度も何度も星野の名前を呼んでおねだりして。
我慢してもしなくても結果は変わらない。

だから、楓は。

「やっ……。絶対、呼ばないっ……んんっ!!」

限界まで耐えることを選ぶ。
だって。

「……ほんとに」
星野の目が妖しく光る。
トプっと零れる愛液で彼の指を濡らす。ナカをかき混ぜる指が立てる、クチュクチュという水音が大きくなる。
「いちいち俺の性癖ツボ刺激して。……堪んねぇ」
「あっ……」
男の目をした彼の視線にゾクッと背筋が震える。
「加減せんから」

恥ずかしいことに、腹の方までま低く響く星野の声で、楓は軽く絶頂を迎えたのだった。



チェックアウトギリギリにラブホテルから出てきた一組の男女。
その表情は正反対だった。

男性は、今にも鼻歌を歌いそうなくらいご機嫌。ツヤツヤ、という言葉が似合うくらいスッキリした顔をしている。
反対に女性は、疲労困憊を絵に書いたように、ヘロヘロと疲れ切った体を引きずるように歩いている。

「家までタクシーで送るよ。歩くのもしんどいでしょ?」
「……誰のせいよ。ってか一人で帰る」
「なんで?」
星野は楓の片腕を支えながら尋ねる。
わかっているでしょ、というように楓は答えた。
「送り狼に付き合う体力はもうないの」
「心外だなぁ。狼にならないかもしれないじゃん」
「絶対なる。ホッシーだも……。あっ!」
自分の失言に気づいた楓が慌てて口を押さえるが、この男が聞き逃しているはずない。

「またお仕置きしないと、だね。……ワザと、それ?」
「ちがっ……。ってからもう今日は……」
「ダメ。さ、早く乗って」
止めたタクシーに素早く楓を押し込んだ星野は実に楽しそうに運転手に行き先を告げた。

「今度は加減するから。……多分」
「あっ……ん」
星野の甘いささやきに、楓は自宅に着いたあとに起こる出来事を想像する。
満足したと思っていた体が熱くなり、色っぽい声が漏れる。


見た目はタイプじゃないのに。
夜の生活そっちの方だけ相性も、楓の好みにもドンピシャなんて。

「ん?どうしたの?」
見られていることに気づいた星野がそっと顔を寄せる。
楓は嘆息した。このセリフをいうとますます星野を調子に乗らせる。
わかってはいたけど、理性より本能が勝った。

「手加減しないで。まだ篤郎の温もりが足りない……から」
驚いたように目を丸くした星野は、怒ったように眉を寄せた。
「今言うなよ」
はぁ、と息を吐いた星野は、カバンを座席の上から膝の上に移動させた。
スーツの上からでもわかるくらい大きくなった星野のモノ。
楓は運転手から見えないように、そっと上からひと撫でしたのだった。
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