上 下
49 / 61

似た者姉弟6

しおりを挟む
行為後のぐったりしている千尋をベッドに寝かせる。疲れたのか半分夢の中の千尋は武史のなすがままだ。
先程の余韻に浸るように武史は起こさない程度に千尋に触れる。
おでこに、閉じている瞼に唇を寄せる。
そっと指先で頬を撫でる。
そして、風呂でつけたキスマークにも。
無防備に武史に眠っている姿を見せていることすら愛しい。

(ずっと見ときたいわ)
心底千尋に惚れている。千尋に再会する前と後では仕事への取り組み方も変化していた。
高校生の時のクラスメートの死から、どこか人に線を引いて付き合っていたところがあった。
特に女性関係は結婚という風にならないように、ある意味ドライな付き合いをしてきた。
いつだったか、別れる時に言われたことがある。
『武史は誰にでも平等やけど、付き合っていても特別扱いしてくれんよね。私は武史の特別になりたかったのに。誰にでも優しいのは、誰でもいいってことと一緒やけん』
もう彼女の名前も朧気だが、その言葉だけは鮮明に覚えている。

死は何となく身近にあった。もちろん死ぬつもりはなかったが普通のサラリーマンより意識する機会は沢山ある。
今までは万が一のことが起きてもありのまま受け入れようと思っていた。自分も自然から命を頂いているから、と。
それに大好きな海の藻屑になれるなら本望だとも。

今は違う。
千尋のいる家に帰りたいと思うし、なるべく長く生きたいと思う。
どこかで諦めていたことも千尋となら共有したい。
「特別なんは千尋だけや」
寝ている千尋を起こさないように、そっと口付けをした。

10分程で目覚めた千尋の顔が見えるように腕の位置を変えると、武史はずっと聞きたかったことを尋ねた。
「避妊せんくてよかったんか?俺はそのまま繋がりたいし、千尋のこと好きやけん、もし子ども出来ても嬉しい。
やけど、千尋はそうやないやろ?」
何度も避妊せずに繋がっていて、先程もゴムをつけなかった。コトが終わったあとに伝えても遅いが、どうしても武史は確認しておきたかった。
「なんでそう思うの?」
「ん?千尋の性格的に、自分が満たされていないから子どもに愛情注ぎきれないって考えそうやなって」
千尋は、困ったような嬉しいような複雑な表情をした後、苦笑する。
「タケちゃんにはそこまでお見通しなんだね」
「当たりか?」
うん、と頷いた千尋は武史に秘密にしていたことを告白する。
「自然には子どもできないと思うから、これからも避妊しなくていいよ」
詳しく聞くと生理不順で病院にかかった際、自然妊娠はかなり難しいと言われたとのことだった。
「生理もたまにしか来ないから人より楽だし、特段妊娠望んでいないから病院にも通院はしてないけどね。
タケちゃん、ごめんね。最初から分かっていたのに黙っていたの」
「かまわんよ。別に知っても知らんくても俺の気持ちは変わらんし。
ただ、子ども出来たら責任とるという考え方で千尋のこと抱いとる訳やないからそれを伝えたかっただけや。出来ても出来んくても俺は千尋の傍におりたい。 
それに、柳田さんとはゴム無しで繋がったことはないんやろ?」

うん、と再び頷く。
「なんで柳田さんはダメで俺なら良かったん?」
千尋はしばらく考え込んでいたが、何かを思いついたようにハッとした後、顔を真っ赤にする。
「知らない」
そう言って顔を背けようとするが、そんなことは許すはずも無い。
両手で千尋の顔を挟み込むと再度質問する。
「俺を全て受け入れた理由、教えてや」
真っ赤な顔のまま、千尋は首を横に振る。
武史はその反応で顔がほころぶ。
「知らんはずないやろ?是非とも教えて欲しいわ」
ニコニコしている武史に千尋は恥ずかしそうに伝える。
「わかっているでしょ?」
「わからん。俺はエスパーやないし、千尋の口から言ってくれんと全然わからん。……言うまでこのままやけん」

武史の表情から言わせようとしているのは分かる。こういう時の武史は絶対に譲らないことも、この数ヶ月で実感していた。
真っ赤になったまま、千尋は根負けしたように早口で伝える。
「ゴム、使いかけだったし。……それにタケちゃんが今まで他の人としたことの無いことが良かったから」
千尋はそれだけしか言わなかったが、武史には言葉以上に言わんとしている事が伝わった。
「ヤキモチ妬いとる千尋も可愛いわ」
そう言って唇を塞ぐ。何度も何度も角度を変え、味わい尽くす。
触れれば触れる程、もっと深く繋がりたくなって堪らない。

「千尋……。まだ時間あるし、もっかい繋がろや」
真っ赤な顔のまま、千尋は僅かに頷いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

クールな御曹司の溺愛ペットになりました

あさの紅茶
恋愛
旧題:クールな御曹司の溺愛ペット やばい、やばい、やばい。 非常にやばい。 片山千咲(22) 大学を卒業後、未だ就職決まらず。 「もー、夏菜の会社で雇ってよぉ」 親友の夏菜に泣きつくも、呆れられるばかり。 なのに……。 「就職先が決まらないらしいな。だったら俺の手伝いをしないか?」 塚本一成(27) 夏菜のお兄さんからのまさかの打診。 高校生の時、一成さんに告白して玉砕している私。 いや、それはちょっと……と遠慮していたんだけど、親からのプレッシャーに負けて働くことに。 とっくに気持ちの整理はできているはずだったのに、一成さんの大人の魅力にあてられてドキドキが止まらない……。 ********** このお話は他のサイトにも掲載しています

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...