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動く歯車2
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「千尋はペンギンにでもなるつもりか!17度は冷やしすぎやろ!」
「……ペンギンになれるならなりたいよ」
「アホか!」
仕事から帰ってきた武史はキンキンに冷えた自分の部屋に驚き、設定温度を確認する。
ブルッと震え上がるような温度にも関わらず、千尋はまだツラそうに仕事に向かっていた。
「まだ7月頭やぞ。これからどう過ごすんや?と言うか今までどうしていたんや?」
「……基本外に出なかった」
呆れた武史はため息をつくと、設定温度を25度に変える。
「こんな冷やしといたら余計夏バテするわ。とりあえずこれで我慢しぃ」
「……暑いよ」
「後で扇風機持ってくるけん、それでとりあえずしのぎや。日が落ちたら扇風機だけでまだいけるやろ?」
「……多分」
武史はため息をつくと千尋に言う。
「はよ言って欲しかったわ。気づかん俺もいかんけど、千尋もしんどいやろ」
「……ごめんなさい。耐えれるかと思っていたから」
「嘘付けや、また遠慮したんやろが。千尋も金入れとんやから、変に遠慮するなや」
バツが悪そうな顔で目を逸らす千尋に、武史は苦笑いをする。
「怒っとらんよ。気づかんかった俺も悪いけん。他にも不便なところあるんか?」
千尋は武史の言葉に首を振ると少し躊躇いがちに伝える。
「……踏み台ほしい。高いところに手が届かないの。いつもタケちゃんに取って貰うのも申し訳ないし」
そんなことか、と武史はホッと安心したように息を吐く。
「今日、買ってくるわ。でもなんかあったらすぐ言いや」
※
千尋が夏バテしていると気づいたのは、さくらからの電話だった。
「なんや?」
秀樹と毎日のように会っているため、突然のさくらからの電話に不審に思いながら電話に出た武史。
「武史先輩、ちーちゃん夏バテしているようですよ」
さくらは余計なことを言わず、用件だけいうと電話を切った。
かかってきたと同じように突然切れた携帯をしばらく見つめていた武史は、慌てて家に帰った。
案の定、家に帰った武史が問いただしても最初は素直に認めなかった千尋だったが、クーラーがある武史の部屋に連れていき、食欲や仕事の進み具合をしつこく聞くと観念したように白状した。
「ごめん、夏、かなり弱い。最近居間で仕事していたのも、離れより涼しいからなの」
美香からの仕事を受けたあと、よく居間で仕事をしていた千尋を見かけた。
「ここが一番涼しいから。ごめんね、散らかして」
「かまわんよ、それくらい」
それは、ただ単に仕事が忙しいからだと思っていた。元々、美香からの仕事は完全にプライベートの時間で取り組むと話していたこともある。
「美香ちゃんの仕事は正直お金にならないから。だから、今まで通りの仕事の時間以外で取り組むよ」
「大丈夫なんか?」
「もう無茶な仕事はしないよ。それに好きなこと仕事にしているから、半分趣味のようなものだしね」
そういい、笑う千尋にあまり遅くまで仕事しないように声をかけて、武史は祭りの打ち合わせのために連日出掛けていた。
夕飯も打ち合わせがてら外で食べることが多かったため、千尋の様子に気づくのが遅くなった。
忙しかったし、最近は千尋も落ち着いていたから安心していた。
楽しそうに美香の持ってきた仕事をしている様子も見ていたからだ。
それでも、武史はもっと早く気付いてあげればと後悔する。
元々、智史の部屋だった離れはプレハブ造りのため、夏は恐ろしいほど暑くなる。
武史に夏バテがバレるまで、普段と変わらず離れで寝ていた千尋に申し訳なくなった。
武史はすぐにクーラーを設置する手配をした。
「同級生に電気屋がおるんや」
同級生と家を見て回り、設置場所を決める。
やはり離れに設置するのはよくないらしく、1階の玄関のすぐ側の部屋に設置をするようにした。
「じいちゃんたちが使っていた寝室と玄関横の部屋、どっちがええ?」
武史に聞かれた時、千尋は選べるなら、と迷わず玄関横の部屋を指定した。
「朝、うるさいと思うぞ、そっちなら」
駐車場と隣接しているため、朝早くに仕事に向かう武史が車を動かすと起こしてしまう可能性があった。それを伝えても千尋はこっちがいい、と言う。
「だってこっちだったら、タケちゃん帰ってきたらすぐにわかるじゃん」
「え?」
「そうしたらご飯の支度しやすいしね」
千尋の言葉に他意はない。ただ、本音を言っているだけだとわかっている。
勝手に彼女の言葉に一喜一憂してしまう。
わかっているが、顔がニヤけるのを抑えきれなかった。
「……ペンギンになれるならなりたいよ」
「アホか!」
仕事から帰ってきた武史はキンキンに冷えた自分の部屋に驚き、設定温度を確認する。
ブルッと震え上がるような温度にも関わらず、千尋はまだツラそうに仕事に向かっていた。
「まだ7月頭やぞ。これからどう過ごすんや?と言うか今までどうしていたんや?」
「……基本外に出なかった」
呆れた武史はため息をつくと、設定温度を25度に変える。
「こんな冷やしといたら余計夏バテするわ。とりあえずこれで我慢しぃ」
「……暑いよ」
「後で扇風機持ってくるけん、それでとりあえずしのぎや。日が落ちたら扇風機だけでまだいけるやろ?」
「……多分」
武史はため息をつくと千尋に言う。
「はよ言って欲しかったわ。気づかん俺もいかんけど、千尋もしんどいやろ」
「……ごめんなさい。耐えれるかと思っていたから」
「嘘付けや、また遠慮したんやろが。千尋も金入れとんやから、変に遠慮するなや」
バツが悪そうな顔で目を逸らす千尋に、武史は苦笑いをする。
「怒っとらんよ。気づかんかった俺も悪いけん。他にも不便なところあるんか?」
千尋は武史の言葉に首を振ると少し躊躇いがちに伝える。
「……踏み台ほしい。高いところに手が届かないの。いつもタケちゃんに取って貰うのも申し訳ないし」
そんなことか、と武史はホッと安心したように息を吐く。
「今日、買ってくるわ。でもなんかあったらすぐ言いや」
※
千尋が夏バテしていると気づいたのは、さくらからの電話だった。
「なんや?」
秀樹と毎日のように会っているため、突然のさくらからの電話に不審に思いながら電話に出た武史。
「武史先輩、ちーちゃん夏バテしているようですよ」
さくらは余計なことを言わず、用件だけいうと電話を切った。
かかってきたと同じように突然切れた携帯をしばらく見つめていた武史は、慌てて家に帰った。
案の定、家に帰った武史が問いただしても最初は素直に認めなかった千尋だったが、クーラーがある武史の部屋に連れていき、食欲や仕事の進み具合をしつこく聞くと観念したように白状した。
「ごめん、夏、かなり弱い。最近居間で仕事していたのも、離れより涼しいからなの」
美香からの仕事を受けたあと、よく居間で仕事をしていた千尋を見かけた。
「ここが一番涼しいから。ごめんね、散らかして」
「かまわんよ、それくらい」
それは、ただ単に仕事が忙しいからだと思っていた。元々、美香からの仕事は完全にプライベートの時間で取り組むと話していたこともある。
「美香ちゃんの仕事は正直お金にならないから。だから、今まで通りの仕事の時間以外で取り組むよ」
「大丈夫なんか?」
「もう無茶な仕事はしないよ。それに好きなこと仕事にしているから、半分趣味のようなものだしね」
そういい、笑う千尋にあまり遅くまで仕事しないように声をかけて、武史は祭りの打ち合わせのために連日出掛けていた。
夕飯も打ち合わせがてら外で食べることが多かったため、千尋の様子に気づくのが遅くなった。
忙しかったし、最近は千尋も落ち着いていたから安心していた。
楽しそうに美香の持ってきた仕事をしている様子も見ていたからだ。
それでも、武史はもっと早く気付いてあげればと後悔する。
元々、智史の部屋だった離れはプレハブ造りのため、夏は恐ろしいほど暑くなる。
武史に夏バテがバレるまで、普段と変わらず離れで寝ていた千尋に申し訳なくなった。
武史はすぐにクーラーを設置する手配をした。
「同級生に電気屋がおるんや」
同級生と家を見て回り、設置場所を決める。
やはり離れに設置するのはよくないらしく、1階の玄関のすぐ側の部屋に設置をするようにした。
「じいちゃんたちが使っていた寝室と玄関横の部屋、どっちがええ?」
武史に聞かれた時、千尋は選べるなら、と迷わず玄関横の部屋を指定した。
「朝、うるさいと思うぞ、そっちなら」
駐車場と隣接しているため、朝早くに仕事に向かう武史が車を動かすと起こしてしまう可能性があった。それを伝えても千尋はこっちがいい、と言う。
「だってこっちだったら、タケちゃん帰ってきたらすぐにわかるじゃん」
「え?」
「そうしたらご飯の支度しやすいしね」
千尋の言葉に他意はない。ただ、本音を言っているだけだとわかっている。
勝手に彼女の言葉に一喜一憂してしまう。
わかっているが、顔がニヤけるのを抑えきれなかった。
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