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選択肢4
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「柳田さん、離婚しました」
夕飯の後、美香は千尋に告げた。
「そう」
千尋は一瞬息を飲んだが、表情を変えることなかった。
「今、柳田さんの連絡先をブロックしているんですよね。柳田さんから千尋さんと連絡が取りたいと伝言を預かっています」
そうして、柳田の連絡先を差し出す。
美香の手をしばらく見つめていた千尋だが、何かを断ち切るように息を吐いた。
「ごめん、これは受け取れない。もう二度と彼とは個人的に連絡は取らないし、会わない」
美香の立場を考えなかった訳ではない。恐らくこのまま千尋が受け取らなければ編集長に叱責されるのは美香だ。
それでも千尋は受け取らなかった。
「わかりました。このことは忘れてください」
美香も千尋の気持ちを尊重してくれた。
「ありがとう、美香ちゃん」
美香を武史の運転する車で駅まで送っていった。
「また、春に東京に戻ってくるんですよね。待ってますね!」
「ありがとう。美香ちゃんも気を付けてね!」
美香は頷くと軽やかな足取りで改札を潜った。
千尋と車に戻った武史は、寄り道をしていいか、と尋ねた。
「いいけど。タケちゃん、明日仕事大丈夫?」
「まだそんなに遅ないから大丈夫や」
そう言って車を走らせる。
10分程静かに車を走らせる。武史が連れてきた場所はライトアップされた橋がきれいに見える展望台だった。
「こんなところあるんだね!」
車を出た千尋は走りながらライトアップがよく見える場所に向かう。
笑いながら武史は後を追う。
中途半端な時間のため、人はほとんどいなかった。
(ラッキーやな)
もう少し遅くなると周りはカップルだらけになる。流石にデートスポットで知り合いに会うのは気まずかった。
「タケちゃん、大丈夫だよ」
隣に来た武史に千尋は言う。
「バレとったか」
ここに何故連れてきたか、千尋にはお見通しだったようだ。
照れくさそうに頭をかく武史に千尋は笑いかける。
「動揺はしているけどね。離婚したことにも責任も感じるし。でも、もう連絡取らない」
「そうか」
千尋は橋の方に目を向けた。
「いつか……柳田さんのこと思い出にできるかな。初めてだったから自信ないの」
「どうやろうなぁ。無理して忘れるもんでもないやろ。あとは、その人を超えるくらい好きな男ができたら吹っ切れるんやないか」
いつもの武史らしからぬ言い方に千尋は問いかける。
「タケちゃんも忘れられない人いるの?」
こういう時だけ勘がいい千尋に思わず笑う。
武史が持っている千尋への気持ちには驚くほど鈍感なのに、それ以外は敏感に反応する。
環境がそうさせていたのか、それとも元々の性格なのか、千尋には人を寄せ付けないところがある。
良い意味でも悪い意味でも異性が口説く隙がない。
恋愛偏差値が低いからこそ、柳田のような余裕のある男が臆せずに近づいてきて甘い言葉を囁くだけで、簡単に落ちたのだと武史は思っていた。
年の離れた男には警戒しないくせに、同年代の男には無意識に寄せ付けないバリアを張る。
その原因が何なのかまだ武史にも掴めていないが、少しずつバリアの内側に入れてくれているのを感じる。
(その内、話が聞ければええけどな)
「タケちゃん?」
考え込んで黙り込んだ武史に千尋は不審そうに声をかける。
「悪い、考え事してたわ」
千尋は笑いながら、いいよ、と返事をする。
「タケちゃんも忘れられない人いるんだね。どんな人だったの?」
「……気が向いたら教えたるわ」
目の前の千尋が忘れられない人だと伝えるのにはまだ早い。
そういったきり口を噤んだ武史を千尋は拗ねたような口調で軽く責める。
「私のこと色々知ってるのに、タケちゃんは何も教えてくれないんだ。ズルいなぁ」
その言い方があまりにも子供っぽく、武史は吹き出した。
「そんなに聞きたいなら、そのうち教えたるわ」
千尋は満足そうに頷いた。
夕飯の後、美香は千尋に告げた。
「そう」
千尋は一瞬息を飲んだが、表情を変えることなかった。
「今、柳田さんの連絡先をブロックしているんですよね。柳田さんから千尋さんと連絡が取りたいと伝言を預かっています」
そうして、柳田の連絡先を差し出す。
美香の手をしばらく見つめていた千尋だが、何かを断ち切るように息を吐いた。
「ごめん、これは受け取れない。もう二度と彼とは個人的に連絡は取らないし、会わない」
美香の立場を考えなかった訳ではない。恐らくこのまま千尋が受け取らなければ編集長に叱責されるのは美香だ。
それでも千尋は受け取らなかった。
「わかりました。このことは忘れてください」
美香も千尋の気持ちを尊重してくれた。
「ありがとう、美香ちゃん」
美香を武史の運転する車で駅まで送っていった。
「また、春に東京に戻ってくるんですよね。待ってますね!」
「ありがとう。美香ちゃんも気を付けてね!」
美香は頷くと軽やかな足取りで改札を潜った。
千尋と車に戻った武史は、寄り道をしていいか、と尋ねた。
「いいけど。タケちゃん、明日仕事大丈夫?」
「まだそんなに遅ないから大丈夫や」
そう言って車を走らせる。
10分程静かに車を走らせる。武史が連れてきた場所はライトアップされた橋がきれいに見える展望台だった。
「こんなところあるんだね!」
車を出た千尋は走りながらライトアップがよく見える場所に向かう。
笑いながら武史は後を追う。
中途半端な時間のため、人はほとんどいなかった。
(ラッキーやな)
もう少し遅くなると周りはカップルだらけになる。流石にデートスポットで知り合いに会うのは気まずかった。
「タケちゃん、大丈夫だよ」
隣に来た武史に千尋は言う。
「バレとったか」
ここに何故連れてきたか、千尋にはお見通しだったようだ。
照れくさそうに頭をかく武史に千尋は笑いかける。
「動揺はしているけどね。離婚したことにも責任も感じるし。でも、もう連絡取らない」
「そうか」
千尋は橋の方に目を向けた。
「いつか……柳田さんのこと思い出にできるかな。初めてだったから自信ないの」
「どうやろうなぁ。無理して忘れるもんでもないやろ。あとは、その人を超えるくらい好きな男ができたら吹っ切れるんやないか」
いつもの武史らしからぬ言い方に千尋は問いかける。
「タケちゃんも忘れられない人いるの?」
こういう時だけ勘がいい千尋に思わず笑う。
武史が持っている千尋への気持ちには驚くほど鈍感なのに、それ以外は敏感に反応する。
環境がそうさせていたのか、それとも元々の性格なのか、千尋には人を寄せ付けないところがある。
良い意味でも悪い意味でも異性が口説く隙がない。
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年の離れた男には警戒しないくせに、同年代の男には無意識に寄せ付けないバリアを張る。
その原因が何なのかまだ武史にも掴めていないが、少しずつバリアの内側に入れてくれているのを感じる。
(その内、話が聞ければええけどな)
「タケちゃん?」
考え込んで黙り込んだ武史に千尋は不審そうに声をかける。
「悪い、考え事してたわ」
千尋は笑いながら、いいよ、と返事をする。
「タケちゃんも忘れられない人いるんだね。どんな人だったの?」
「……気が向いたら教えたるわ」
目の前の千尋が忘れられない人だと伝えるのにはまだ早い。
そういったきり口を噤んだ武史を千尋は拗ねたような口調で軽く責める。
「私のこと色々知ってるのに、タケちゃんは何も教えてくれないんだ。ズルいなぁ」
その言い方があまりにも子供っぽく、武史は吹き出した。
「そんなに聞きたいなら、そのうち教えたるわ」
千尋は満足そうに頷いた。
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