123 / 126
第三章「魔王の血族編」
第49話 想い、束ねて
しおりを挟む
その魔術は、ほんのわずかな力だった。発動に大量の魔力を必要とせず、ただきっかけを与えるだけのもの。
「なんだ?」
水滴が集まって流れを生むように、わずかな地盤の崩れが大規模な崩落になるように、トウカの放った一手は確かにこの空気を変えていく。アザミはその奇妙な変化が生じていく様を感じ取る。
長引く戦いの中で幾たびの魔法や魔術が行使されてきた。多くの力が消費され、散っていった。その結果、この城を中心として大気中には莫大な量の残留魔力が漂っていた。
「何だこれは!」
集束していく。城内外に漂っていた魔力が謁見の間へ、フロアの魔力がトウカの下へ。魔力もほぼ尽き、『加速』はおろか基礎的な魔術すらまともに使える状態でないはずの彼女。幼い頃より魔術の才がないと言われ、落ちこぼれの烙印を押されていた彼女は誰もが操ったことのない膨大な魔力をその身に集めていく。
「はああああっ!!」
剣を通じて光の刃が顕現する。それはまさしくオウカと同じ『集束』の魔術によるものだった。魔力消費が激しく、術者自身の魔力が不十分であれば満足な威力すら生み出せないトウカに適さない術式。しかし彼女はそれを可能としていた。
「……残留魔力。他者の魔力を糧にしただと!?」
「私は、ずっとそうだったから!」
魔力も足りなく、フロスファミリア家を継ぐ者としては不適格。剣術の腕も当初はオウカに劣っていた。シオンのような指揮もできず、ドラセナのような狙撃もできず、フジのような医療技術もない。一人だけだったら一人の剣士としてこの場に立ってすらいなかっただろう。
「みんなに助けられて、みんなに支えられていた。マリーとの五年間もみんなが居なかったらきっと無理だった」
全てが恵まれていなかったからこそ、トウカは自分にできることを模索し続けた。そして道を拓いた。持たざる者だったからこそ発想を変え、どうすれば術を行使できるのかを見出した。
魔族との戦いでは長期戦になれば人間側は魔力枯渇という課題がある。だがその一方で魔法と魔術が使われ続けたことで大気中には魔力が大量に残されることになる。
「この魔術は……一族が継いできた力と、みんなが託してくれた想いの結実」
かつて元々武具の強化術式であった『付与』を改良して桃華繚乱を編み出した時。トウカは魔力を剣に集めて放つ術式を構築した。そしてそれは『集束』の原理に図らずとも近いものだった。
原理は近い。ならば体内からではなく、体外から魔力を集められるのではないだろうかという発想。そして術式を改良し、彼女は魔力を集める力の向きを逆転させた。
「だから、私はみんなの想いに応える。私にしかできないことで!」
「ならばその想いもまとめて斬り捨ててくれる!」
アザミが腕を振り上げる。剣が、槍が、斧が、ありとあらゆる刃物に魔力が象られ、彼の号令と共に一斉にトウカへ襲い掛かる。
「させない!」
マリーが魔力を繰る。トウカを守るべく再び光の花園が広がり彼女を囲む。幾重にも重なった花びらがトウカへの攻撃を受け止めた。魔王級の膨大な魔力が衝突し合い、削り合い、更にトウカの周囲の魔力は濃くなり、更にその剣に集束されていく。
「ならば、これはどうだ!」
展開した刃の群れをアザミはさらに増やしていく。トウカがどのような攻撃を繰り出しても対応するつもりだ。
「……負けない」
トウカが技の体勢に入る。全ての力を込めた剣を強く握り、迷いのない眼差しでアザミを見据える。
「みんなが託してくれた想い。受け継いできた力。その全てをかけて!」
マリーが、オウカが、キッカが、レンカが、シオンが、フジが、ドラセナが、ノアが、そしてカレンが。アザミとの戦いで放たれた皆の魔力が凝縮されていく。
人間はおろか魔族の力の域を越え、もはや魔王級に等しい膨大な魔力。それだけの力を行使すればどうなるか誰も知らない。
「……それでも!」
「まさか!」
アザミはここで迎撃と言う自らの選んだ策が誤りであったことに気付く。トウカは顕現させた刃ではなく、違う手段で攻撃に転じる――トウカにはそれを実行する術があったことに。
「刺し貫け!」
「オウカでも、マリーでもない……これは、私にしかできないことだから!」
迫り来る殺戮の暴風。だがトウカはその眼差しに一切の恐怖も迷いを見せない。
「――咲き乱れろ!」
剣を振るう。渾身の力で放たれる斬撃はたった一度。凝縮した魔力をそれに合わせて一斉に解き放つ。
「百華斉放!」
振り切った剣から光の束が拡散していく。無数の流星と化した力はアザミの放った刃の魔法と正面からぶつかっていく。
「馬鹿な!?」
だがアザミは異変に気づく。斬撃に乗せて莫大な魔力を放っただけのトウカの技がアザミの魔法を切り裂き、そのことごとくを消滅させていく。まるで魔力の斬撃そのものに魔力を切り裂く力があるかのように。
「まさか……この力は!?」
向けた視線の先でオウカが勝利を確信した笑みを浮かべていた――その手に『集束』の術式を発動させて。
「おのれええええっ!!」
「行け、トウカ!」
「やああああっ!」
『伝心』は術者双方の魔術と効果を共有する。オウカとトウカ二人の『集束』が融合し、その技は全てを断ち切りながら進む光の奔流となる。剣の弾幕は打ち破られ、遂にその切っ先がアザミを脅かす。
「があああっ!!」
両手に魔力を集中させ、アザミは力のままに魔力を放つ。覚醒した力を全開にしてオウカとトウカの力を受け止めた。
己を凌駕する規模の魔力を前に引かないのは魔王を名乗る彼なりの矜持か。彼女らの切り札であるこの力を耐えきれば人間たちの希望は潰える。勝利を目前にしたアザミは全身全霊でその力の方向を逸らしにかかる。
「この……人間ごときの……技でっ! うおおおおっ!」
技の余波でその手を切り刻まれながらもアザミは渾身の力を込めて魔力を放った。アザミを飲み込もうとしていた光は力の方向が逸れて誰もいない方向へと飛んでいく。謁見の間の壁を跡形もなく吹き飛ばし、光は消えた。
「くっ……!」
「ク……ハハハ。これで――」
「諦めないで、ママ!」
アザミが勝利を確信したその時、マリーが続けて叫んでいた。その声に突き動かされるようにトウカは再び構えをとる。
既に彼女の切り札たる残留魔力は放たれている。トウカ本人の魔力では遠く及ばない。ならば何があるというのか。
「受け取ってママ!」
トウカの周囲に広がる光の花園が解除される。咲き誇る光の花々が舞い散り、新たな魔力をトウカへと供給していく。
「私からの、花束を!」
身寄りを失い、住む場所を失った魔王の娘が得た大切な人。どんな時でも守り慈しみ、愛し信じ続けてくれた母へずっと伝えたかった感謝と恩返しの想い。それら全てを束ねて娘は母親へと花束を捧ぐ。
「ありがとう、マリー。術式展開――――『集束』!!」
光の花がトウカの下へと集い、彼女の力となって再び剣へと集束していく。あたかも光の花束を掲げるように剣は振り上げられ、トウカは最後の力を込めてアザミへと鋭い視線を向ける。
「咲き乱れろ……っ!」
「おのれ、人間どもがあああっ!」
アザミが絶叫する中、愛娘からの贈り物を手にトウカは静かに告げる。
「百華斉放!」
「なんだ?」
水滴が集まって流れを生むように、わずかな地盤の崩れが大規模な崩落になるように、トウカの放った一手は確かにこの空気を変えていく。アザミはその奇妙な変化が生じていく様を感じ取る。
長引く戦いの中で幾たびの魔法や魔術が行使されてきた。多くの力が消費され、散っていった。その結果、この城を中心として大気中には莫大な量の残留魔力が漂っていた。
「何だこれは!」
集束していく。城内外に漂っていた魔力が謁見の間へ、フロアの魔力がトウカの下へ。魔力もほぼ尽き、『加速』はおろか基礎的な魔術すらまともに使える状態でないはずの彼女。幼い頃より魔術の才がないと言われ、落ちこぼれの烙印を押されていた彼女は誰もが操ったことのない膨大な魔力をその身に集めていく。
「はああああっ!!」
剣を通じて光の刃が顕現する。それはまさしくオウカと同じ『集束』の魔術によるものだった。魔力消費が激しく、術者自身の魔力が不十分であれば満足な威力すら生み出せないトウカに適さない術式。しかし彼女はそれを可能としていた。
「……残留魔力。他者の魔力を糧にしただと!?」
「私は、ずっとそうだったから!」
魔力も足りなく、フロスファミリア家を継ぐ者としては不適格。剣術の腕も当初はオウカに劣っていた。シオンのような指揮もできず、ドラセナのような狙撃もできず、フジのような医療技術もない。一人だけだったら一人の剣士としてこの場に立ってすらいなかっただろう。
「みんなに助けられて、みんなに支えられていた。マリーとの五年間もみんなが居なかったらきっと無理だった」
全てが恵まれていなかったからこそ、トウカは自分にできることを模索し続けた。そして道を拓いた。持たざる者だったからこそ発想を変え、どうすれば術を行使できるのかを見出した。
魔族との戦いでは長期戦になれば人間側は魔力枯渇という課題がある。だがその一方で魔法と魔術が使われ続けたことで大気中には魔力が大量に残されることになる。
「この魔術は……一族が継いできた力と、みんなが託してくれた想いの結実」
かつて元々武具の強化術式であった『付与』を改良して桃華繚乱を編み出した時。トウカは魔力を剣に集めて放つ術式を構築した。そしてそれは『集束』の原理に図らずとも近いものだった。
原理は近い。ならば体内からではなく、体外から魔力を集められるのではないだろうかという発想。そして術式を改良し、彼女は魔力を集める力の向きを逆転させた。
「だから、私はみんなの想いに応える。私にしかできないことで!」
「ならばその想いもまとめて斬り捨ててくれる!」
アザミが腕を振り上げる。剣が、槍が、斧が、ありとあらゆる刃物に魔力が象られ、彼の号令と共に一斉にトウカへ襲い掛かる。
「させない!」
マリーが魔力を繰る。トウカを守るべく再び光の花園が広がり彼女を囲む。幾重にも重なった花びらがトウカへの攻撃を受け止めた。魔王級の膨大な魔力が衝突し合い、削り合い、更にトウカの周囲の魔力は濃くなり、更にその剣に集束されていく。
「ならば、これはどうだ!」
展開した刃の群れをアザミはさらに増やしていく。トウカがどのような攻撃を繰り出しても対応するつもりだ。
「……負けない」
トウカが技の体勢に入る。全ての力を込めた剣を強く握り、迷いのない眼差しでアザミを見据える。
「みんなが託してくれた想い。受け継いできた力。その全てをかけて!」
マリーが、オウカが、キッカが、レンカが、シオンが、フジが、ドラセナが、ノアが、そしてカレンが。アザミとの戦いで放たれた皆の魔力が凝縮されていく。
人間はおろか魔族の力の域を越え、もはや魔王級に等しい膨大な魔力。それだけの力を行使すればどうなるか誰も知らない。
「……それでも!」
「まさか!」
アザミはここで迎撃と言う自らの選んだ策が誤りであったことに気付く。トウカは顕現させた刃ではなく、違う手段で攻撃に転じる――トウカにはそれを実行する術があったことに。
「刺し貫け!」
「オウカでも、マリーでもない……これは、私にしかできないことだから!」
迫り来る殺戮の暴風。だがトウカはその眼差しに一切の恐怖も迷いを見せない。
「――咲き乱れろ!」
剣を振るう。渾身の力で放たれる斬撃はたった一度。凝縮した魔力をそれに合わせて一斉に解き放つ。
「百華斉放!」
振り切った剣から光の束が拡散していく。無数の流星と化した力はアザミの放った刃の魔法と正面からぶつかっていく。
「馬鹿な!?」
だがアザミは異変に気づく。斬撃に乗せて莫大な魔力を放っただけのトウカの技がアザミの魔法を切り裂き、そのことごとくを消滅させていく。まるで魔力の斬撃そのものに魔力を切り裂く力があるかのように。
「まさか……この力は!?」
向けた視線の先でオウカが勝利を確信した笑みを浮かべていた――その手に『集束』の術式を発動させて。
「おのれええええっ!!」
「行け、トウカ!」
「やああああっ!」
『伝心』は術者双方の魔術と効果を共有する。オウカとトウカ二人の『集束』が融合し、その技は全てを断ち切りながら進む光の奔流となる。剣の弾幕は打ち破られ、遂にその切っ先がアザミを脅かす。
「があああっ!!」
両手に魔力を集中させ、アザミは力のままに魔力を放つ。覚醒した力を全開にしてオウカとトウカの力を受け止めた。
己を凌駕する規模の魔力を前に引かないのは魔王を名乗る彼なりの矜持か。彼女らの切り札であるこの力を耐えきれば人間たちの希望は潰える。勝利を目前にしたアザミは全身全霊でその力の方向を逸らしにかかる。
「この……人間ごときの……技でっ! うおおおおっ!」
技の余波でその手を切り刻まれながらもアザミは渾身の力を込めて魔力を放った。アザミを飲み込もうとしていた光は力の方向が逸れて誰もいない方向へと飛んでいく。謁見の間の壁を跡形もなく吹き飛ばし、光は消えた。
「くっ……!」
「ク……ハハハ。これで――」
「諦めないで、ママ!」
アザミが勝利を確信したその時、マリーが続けて叫んでいた。その声に突き動かされるようにトウカは再び構えをとる。
既に彼女の切り札たる残留魔力は放たれている。トウカ本人の魔力では遠く及ばない。ならば何があるというのか。
「受け取ってママ!」
トウカの周囲に広がる光の花園が解除される。咲き誇る光の花々が舞い散り、新たな魔力をトウカへと供給していく。
「私からの、花束を!」
身寄りを失い、住む場所を失った魔王の娘が得た大切な人。どんな時でも守り慈しみ、愛し信じ続けてくれた母へずっと伝えたかった感謝と恩返しの想い。それら全てを束ねて娘は母親へと花束を捧ぐ。
「ありがとう、マリー。術式展開――――『集束』!!」
光の花がトウカの下へと集い、彼女の力となって再び剣へと集束していく。あたかも光の花束を掲げるように剣は振り上げられ、トウカは最後の力を込めてアザミへと鋭い視線を向ける。
「咲き乱れろ……っ!」
「おのれ、人間どもがあああっ!」
アザミが絶叫する中、愛娘からの贈り物を手にトウカは静かに告げる。
「百華斉放!」
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説


セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる