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第一章「魔王討伐」
第17話 謀略の神官
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「オウカ様!」
「見つけたぞ、こっちだ!」
姉妹二人の姿を見つけた騎士たちが玉座の間へとなだれ込む。
その中にはトウカが見覚えのある顔があった。
「御無事でしたか、オウカ様」
「カルミア、お前もよく無事だった」
「はい、もうこの三人だけになってしまいましたが……」
カルミアはオウカの健在に胸をなでおろすが、それと同時に二人の姿に驚く。
オウカの鎧は砕け散り、全身いたる所を何か硬いもので強く打たれたような痕が見えていた。トウカも右足に包帯を巻き、そこには血が滲んでいた。よく見れば彼女の方も全身に切り傷と擦り傷が見えている。
「お二人とも、こんなにボロボロになって……さぞかし激しい戦いだったのですね」
「え、ええ……」
気まずさで思わずトウカは目を逸らす。まさか姉妹で斬り合っていて付いた傷だとは到底言えなかった。
「しかし、妹さんもよくご無事で……道中で貴方が行方不明になっていたと聞き、気にしていたんですよ?」
「は、はい。色々ありまして……」
「……私が秘密裏に指示を出していたんだ。迷宮の最深部に潜み、私たちの突入の際に手引きをしろと」
「オウカ!?」
オウカの言葉にトウカが驚くが、彼女の目配せでその意図を察する。
すぐに彼女は話を合わせた。
「は、はい。実はそうなんです」
「……お前たちと別れた後に合流できてな。ここまでやって来ることができたと言う訳だ」
「そうだったのですか……?」
「こんなことで嘘をついて何になる」
違和感はあったがオウカが言う以上、嘘とは思い難い。
事実トウカは昨日の内に行方知れずとなり、オウカと合流して今この玉座の間にいる。
一人で迷宮最深部に残ることが明らかに危険な行動である以上、カルミアたちには他に納得のいく理由は思いつかない。
「まあ、私一人で十分とは思ったが相手は魔王だ。どんな罠があるかわからない以上、用心に越したことはないと思ってな。手を打っておいたのさ」
「し、しかし最深部で一晩とは……よく生きていられましたね」
「フロスファミリア家の者を甘く見るなよ。一晩程度なら訳もない」
よく次から次へと考え着くものだとトウカは舌を巻く。
その堂々とした物言いに、カルミアたちもすっかりその話を信じ込んでいた。
「あの、一つだけ伺ってもよろしいでしょうか?」
「む、何だ?」
「お二人は……仲違いされていたのでは?」
オウカが一瞬硬直したのをトウカは見逃さなかった。
痛い所を突かれたと言う事だろうか。
「いや、それは……そう見えていたか?」
「ええ……以前城でオウカ様と対面された時は、それはもう……」
「や、やだなあカルミアさん! あの時はちょっとオウカの虫の居所が悪かっただけですって」
目が泳ぎかけたオウカとカルミアの会話にすぐさまトウカが割り込む。
「そうだったのですか?」
「は、はい。オウカは昔からそう言う所があって、あの日のはただの八つ当たりだったんですよ!」
「……ははは」
オウカが苦笑する。だが、トウカを見る目が笑っていなかった。
トウカは直感した。後で確実に「私は情緒不安定などではない!」と怒られると。
「ま、まあ女性ですからね……そう言う日があるのは私も知っていますので」
そしてカルミアも、何か別の方向で理由を解釈したらしい。
オウカは察しがついたらしく、額に手をやっていた。
「ええっと……事情は大方把握いたしました。それで、魔王は?」
カルミアが話を打ち切って本題に入る。
気まずそうにしていた他の騎士たちも口を開いた。
「そうです。我々は魔王の手下が『魔王が討ち取られた』と話しているのを聞いたのです」
「オウカ様、トウカさん。魔王との戦いはどうなったのですか?」
「え、ええっと……ま、魔王は」
玉座の間に魔王の姿が無い事を騎士たちは不審に思う。
トウカたちも、元々魔王と戦っていない以上どう言えばいいものか困った。
「魔王は……もう、いないんです」
そして何か言わなければと思って発したのは、そんな言葉だった。
「もう、いない……と言う事は」
「おお、やはりあの魔族たちの話は本当だったのか!」
「さすがオウカ様とその妹だ!」
その言葉を好意的に解釈し、騎士たちは歓喜の声を上げる。
だが、次のカルミアたちの会話でトウカは自分の選んだ言葉が間違っていたことに気づいた。
「ですが、首がない事には困りますね」
「そうですね。では、あとは我々がこの奥を探索してきましょう」
カルミアたちが玉座の奥にある通路に目を向けたことにトウカは危機感を覚えた。
その先にはマリーのいる部屋もある。
「ま、待って!」
「御心配なく。手柄を横取りしたり致しませんよ」
「お二人はこちらで休んでいてください。後の処理は我々がします」
騎士たちの行動は傷だらけの姉妹を気遣ってのものだ。だからこそ余計にまずい。このままでは魔王の遺体が見つからないことで探索が進み、その内にマリーが見つかってしまう。
だが、トウカたちには騎士たちを止める言葉が見つからない。
「あ、ああ……」
「では、失礼致します。よし、行こう」
「はっ!」
二人に礼を贈り、カルミアたちが歩き出す――その瞬間に、玉座の間に声が響いた。
「奥へは行かせませんよ」
騎士たちとは違う男の声。
その声を発したものを探し、騎士たちは周囲を見渡す。
「上です!」
やがて、一人の騎士が頭上を指差す。
燭台の火に照らされ、宙に浮く男の姿が浮かび上がる。
「魔族か!」
人が空中を浮遊すると言うありえない光景。
飛行を可能にする魔法を行使している魔族――ノアの登場にカルミアたちはすぐさま剣を取る。
「魔力よ、雷と成れ、そして杭と成れ」
剣に手をかける騎士たちの姿を見て、ノアは魔法を発動する。
ノアの手から発された魔力が変質し、周囲に電撃を纏った杭が展開する。
「雨と成れ」
腕を振り上げ、杭に命令するように振り下ろす。
その動きに合わせ、無数の雷槍がカルミアたちに降り注ぐ。
「術式展開――――『付与』!」
三人は魔術を展開し、剣に魔力耐性を持たせる。
次々と振って来る雷に剣を振るい、弾き飛ばして身を守る。
「浅はかな」
ノアが左手を持ち上げる。その動きに呼応するように、弾き飛ばして床に落ちたはずの雷槍が立ち上がる。
「杭よ、檻と成れ。その中へと雷を浴びせよ」
杭が騎士たちの周囲を囲むように床を砕いて打ち込まれ、彼ら目がけて電撃が走る。
「ぐわぁああああ!」
その全身を電撃が貫き、カルミアたちが床に倒れる。
意識は辛うじて保っていたが、騎士たちは感電で満足に動けない。
だがカルミアだけは電撃を耐えきっており、取り落とした剣に手を伸ばす。
「おっと」
「ぐっ!?」
その手を灰色の体毛に覆われた足が踏みつける。
迷宮内で交戦した人狼――アキレアだった。
「残念だったな」
「ぐああああっ!」
アキレアが脚に体重をかけ、カルミアの手から骨が砕ける音がする。
「ハハハハ! 脆い、脆すぎるぜ人間はよお!」
カルミアの背を踏みつけながらアキレアは笑う。
突如現れたノアとアキレアの行動にトウカは混乱していた。
「ノア……アキレア……何で?」
「トウカ!」
真意を問い質そうと動こうとしたトウカをオウカが引き止める。
「でも、カルミアさんたちが!」
「大丈夫だ。殺しはしない……むしろ逃がすつもりだ」
「え……?」
オウカがノアと視線を交わす。
彼女がその真意に気付いていることを彼も悟り、互いに首肯を交わした。
「……どういうつもりだ」
「はて、何がでしょうか?」
アキレアに踏みつけられながらも、カルミアはノアへ顔を向ける。
ノアもカルミアに視線を戻す。その眼はオウカたちへ向けていたものとは違い、蔑むようなものだった。
「魔王は倒されたのではないのか!」
「ええ、魔王様は倒されましたよ。そこのお二人にね」
「ならば、この戦いは我らの勝ちだ。お前たちがこれ以上戦う意味はない!」
強い敵意を撥ねつけるように睨み返す。
だが、そんな彼に向けて二人は笑い出すのだった。
「何がおかしい」
「いや、あまりに状況が掴めていないみたいだったもんでよ」
「何だと……?」
「馬鹿じゃねえのか、お前!」
アキレアが踏みつける足をどけ、カルミアを思い切り蹴り飛ばす。
「がはっ!」
「カルミアさん!」
残る二人もアキレアは次々と蹴り飛ばし、皆トウカたちの前へと転がる。
「戦う意味がないと仰いましたが……それで、我々に投降しろとでも言いたいのですか?」
「ぐ……それは……」
人間同士の戦いならば投降した相手には捕虜として対応する必要があるが、魔族相手ならばどうなる。人類の敵とされている相手を生かす理由がない。
彼らにとって、降伏し投降することはもとより死を意味していた。
「我々を捕らえた後は首を撥ねるだけでしょう。それで投降しろとは片腹痛い」
ノアの両手に魔力が集中していく。魔力が属性を帯び、彼の両の手に燃え盛る火球が顕現する。
「何をする気だ……」
「魔王様は討ち取られました。貴方たちを……いえ、人間たちをこのまま生かして返すつもりはありません」
更にノアは魔力を操り、更なる命令を与える。
「さあ魔力よ集え、そして炎と成りて燃え盛れ! 全てを侵す焔と成れ!」
両手の火球が浮かび上がり、合わさってその体積を増大させる。
ノアは更に魔力を注ぐ。その大きさは人一人を飲み込むほど巨大な物と化して行く。
「伏せろ!」
トウカを引き寄せ、オウカが身を伏せた。
一際強く火球の輝きが増し、ノアが腕を振り上げる。
炸裂する音とともに、トウカたちの視界は真っ白に染まった――。
「見つけたぞ、こっちだ!」
姉妹二人の姿を見つけた騎士たちが玉座の間へとなだれ込む。
その中にはトウカが見覚えのある顔があった。
「御無事でしたか、オウカ様」
「カルミア、お前もよく無事だった」
「はい、もうこの三人だけになってしまいましたが……」
カルミアはオウカの健在に胸をなでおろすが、それと同時に二人の姿に驚く。
オウカの鎧は砕け散り、全身いたる所を何か硬いもので強く打たれたような痕が見えていた。トウカも右足に包帯を巻き、そこには血が滲んでいた。よく見れば彼女の方も全身に切り傷と擦り傷が見えている。
「お二人とも、こんなにボロボロになって……さぞかし激しい戦いだったのですね」
「え、ええ……」
気まずさで思わずトウカは目を逸らす。まさか姉妹で斬り合っていて付いた傷だとは到底言えなかった。
「しかし、妹さんもよくご無事で……道中で貴方が行方不明になっていたと聞き、気にしていたんですよ?」
「は、はい。色々ありまして……」
「……私が秘密裏に指示を出していたんだ。迷宮の最深部に潜み、私たちの突入の際に手引きをしろと」
「オウカ!?」
オウカの言葉にトウカが驚くが、彼女の目配せでその意図を察する。
すぐに彼女は話を合わせた。
「は、はい。実はそうなんです」
「……お前たちと別れた後に合流できてな。ここまでやって来ることができたと言う訳だ」
「そうだったのですか……?」
「こんなことで嘘をついて何になる」
違和感はあったがオウカが言う以上、嘘とは思い難い。
事実トウカは昨日の内に行方知れずとなり、オウカと合流して今この玉座の間にいる。
一人で迷宮最深部に残ることが明らかに危険な行動である以上、カルミアたちには他に納得のいく理由は思いつかない。
「まあ、私一人で十分とは思ったが相手は魔王だ。どんな罠があるかわからない以上、用心に越したことはないと思ってな。手を打っておいたのさ」
「し、しかし最深部で一晩とは……よく生きていられましたね」
「フロスファミリア家の者を甘く見るなよ。一晩程度なら訳もない」
よく次から次へと考え着くものだとトウカは舌を巻く。
その堂々とした物言いに、カルミアたちもすっかりその話を信じ込んでいた。
「あの、一つだけ伺ってもよろしいでしょうか?」
「む、何だ?」
「お二人は……仲違いされていたのでは?」
オウカが一瞬硬直したのをトウカは見逃さなかった。
痛い所を突かれたと言う事だろうか。
「いや、それは……そう見えていたか?」
「ええ……以前城でオウカ様と対面された時は、それはもう……」
「や、やだなあカルミアさん! あの時はちょっとオウカの虫の居所が悪かっただけですって」
目が泳ぎかけたオウカとカルミアの会話にすぐさまトウカが割り込む。
「そうだったのですか?」
「は、はい。オウカは昔からそう言う所があって、あの日のはただの八つ当たりだったんですよ!」
「……ははは」
オウカが苦笑する。だが、トウカを見る目が笑っていなかった。
トウカは直感した。後で確実に「私は情緒不安定などではない!」と怒られると。
「ま、まあ女性ですからね……そう言う日があるのは私も知っていますので」
そしてカルミアも、何か別の方向で理由を解釈したらしい。
オウカは察しがついたらしく、額に手をやっていた。
「ええっと……事情は大方把握いたしました。それで、魔王は?」
カルミアが話を打ち切って本題に入る。
気まずそうにしていた他の騎士たちも口を開いた。
「そうです。我々は魔王の手下が『魔王が討ち取られた』と話しているのを聞いたのです」
「オウカ様、トウカさん。魔王との戦いはどうなったのですか?」
「え、ええっと……ま、魔王は」
玉座の間に魔王の姿が無い事を騎士たちは不審に思う。
トウカたちも、元々魔王と戦っていない以上どう言えばいいものか困った。
「魔王は……もう、いないんです」
そして何か言わなければと思って発したのは、そんな言葉だった。
「もう、いない……と言う事は」
「おお、やはりあの魔族たちの話は本当だったのか!」
「さすがオウカ様とその妹だ!」
その言葉を好意的に解釈し、騎士たちは歓喜の声を上げる。
だが、次のカルミアたちの会話でトウカは自分の選んだ言葉が間違っていたことに気づいた。
「ですが、首がない事には困りますね」
「そうですね。では、あとは我々がこの奥を探索してきましょう」
カルミアたちが玉座の奥にある通路に目を向けたことにトウカは危機感を覚えた。
その先にはマリーのいる部屋もある。
「ま、待って!」
「御心配なく。手柄を横取りしたり致しませんよ」
「お二人はこちらで休んでいてください。後の処理は我々がします」
騎士たちの行動は傷だらけの姉妹を気遣ってのものだ。だからこそ余計にまずい。このままでは魔王の遺体が見つからないことで探索が進み、その内にマリーが見つかってしまう。
だが、トウカたちには騎士たちを止める言葉が見つからない。
「あ、ああ……」
「では、失礼致します。よし、行こう」
「はっ!」
二人に礼を贈り、カルミアたちが歩き出す――その瞬間に、玉座の間に声が響いた。
「奥へは行かせませんよ」
騎士たちとは違う男の声。
その声を発したものを探し、騎士たちは周囲を見渡す。
「上です!」
やがて、一人の騎士が頭上を指差す。
燭台の火に照らされ、宙に浮く男の姿が浮かび上がる。
「魔族か!」
人が空中を浮遊すると言うありえない光景。
飛行を可能にする魔法を行使している魔族――ノアの登場にカルミアたちはすぐさま剣を取る。
「魔力よ、雷と成れ、そして杭と成れ」
剣に手をかける騎士たちの姿を見て、ノアは魔法を発動する。
ノアの手から発された魔力が変質し、周囲に電撃を纏った杭が展開する。
「雨と成れ」
腕を振り上げ、杭に命令するように振り下ろす。
その動きに合わせ、無数の雷槍がカルミアたちに降り注ぐ。
「術式展開――――『付与』!」
三人は魔術を展開し、剣に魔力耐性を持たせる。
次々と振って来る雷に剣を振るい、弾き飛ばして身を守る。
「浅はかな」
ノアが左手を持ち上げる。その動きに呼応するように、弾き飛ばして床に落ちたはずの雷槍が立ち上がる。
「杭よ、檻と成れ。その中へと雷を浴びせよ」
杭が騎士たちの周囲を囲むように床を砕いて打ち込まれ、彼ら目がけて電撃が走る。
「ぐわぁああああ!」
その全身を電撃が貫き、カルミアたちが床に倒れる。
意識は辛うじて保っていたが、騎士たちは感電で満足に動けない。
だがカルミアだけは電撃を耐えきっており、取り落とした剣に手を伸ばす。
「おっと」
「ぐっ!?」
その手を灰色の体毛に覆われた足が踏みつける。
迷宮内で交戦した人狼――アキレアだった。
「残念だったな」
「ぐああああっ!」
アキレアが脚に体重をかけ、カルミアの手から骨が砕ける音がする。
「ハハハハ! 脆い、脆すぎるぜ人間はよお!」
カルミアの背を踏みつけながらアキレアは笑う。
突如現れたノアとアキレアの行動にトウカは混乱していた。
「ノア……アキレア……何で?」
「トウカ!」
真意を問い質そうと動こうとしたトウカをオウカが引き止める。
「でも、カルミアさんたちが!」
「大丈夫だ。殺しはしない……むしろ逃がすつもりだ」
「え……?」
オウカがノアと視線を交わす。
彼女がその真意に気付いていることを彼も悟り、互いに首肯を交わした。
「……どういうつもりだ」
「はて、何がでしょうか?」
アキレアに踏みつけられながらも、カルミアはノアへ顔を向ける。
ノアもカルミアに視線を戻す。その眼はオウカたちへ向けていたものとは違い、蔑むようなものだった。
「魔王は倒されたのではないのか!」
「ええ、魔王様は倒されましたよ。そこのお二人にね」
「ならば、この戦いは我らの勝ちだ。お前たちがこれ以上戦う意味はない!」
強い敵意を撥ねつけるように睨み返す。
だが、そんな彼に向けて二人は笑い出すのだった。
「何がおかしい」
「いや、あまりに状況が掴めていないみたいだったもんでよ」
「何だと……?」
「馬鹿じゃねえのか、お前!」
アキレアが踏みつける足をどけ、カルミアを思い切り蹴り飛ばす。
「がはっ!」
「カルミアさん!」
残る二人もアキレアは次々と蹴り飛ばし、皆トウカたちの前へと転がる。
「戦う意味がないと仰いましたが……それで、我々に投降しろとでも言いたいのですか?」
「ぐ……それは……」
人間同士の戦いならば投降した相手には捕虜として対応する必要があるが、魔族相手ならばどうなる。人類の敵とされている相手を生かす理由がない。
彼らにとって、降伏し投降することはもとより死を意味していた。
「我々を捕らえた後は首を撥ねるだけでしょう。それで投降しろとは片腹痛い」
ノアの両手に魔力が集中していく。魔力が属性を帯び、彼の両の手に燃え盛る火球が顕現する。
「何をする気だ……」
「魔王様は討ち取られました。貴方たちを……いえ、人間たちをこのまま生かして返すつもりはありません」
更にノアは魔力を操り、更なる命令を与える。
「さあ魔力よ集え、そして炎と成りて燃え盛れ! 全てを侵す焔と成れ!」
両手の火球が浮かび上がり、合わさってその体積を増大させる。
ノアは更に魔力を注ぐ。その大きさは人一人を飲み込むほど巨大な物と化して行く。
「伏せろ!」
トウカを引き寄せ、オウカが身を伏せた。
一際強く火球の輝きが増し、ノアが腕を振り上げる。
炸裂する音とともに、トウカたちの視界は真っ白に染まった――。
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