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忍び寄る影

エリィ様

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 10時。
 何だかんだ久々に見る国王の話の後、祭り開始の宣言がされた。
 
「へー………ほんとに人多いんだなぁ」
「そうですね。いつもよりも他国からの観光客や商人もかなり増えてますからね」
「ほー……」

 開会式の国王の護衛をしながら街を見渡す。
 楽しそうに祭りを楽しむ者達ばかり………羨ましい………。

「ソウイさん!!」
「おっ、エリィ様久しぶり」
「お久しぶりです」

 まあ国王の護衛してたから近くにエリィ様もいるの見えてたけど。
 話すのは久々。流石にお互い忙しいし特に用事もない限り会うこともなかった。しかしたまに会って話したり、というのはしていた。
 そしてこの呼び方。
 なんとエリィ様が呼び捨てにしろとずっと言ってきてそれは出来ないと言っていてしばらくお互い譲らなかったが結局この呼び方で落ち着いたのだ。

「アナラスもご苦労さま」
「ありがたきお言葉」

 恭しく頭を下げるアナラス。

「ソウイさんもこの後街に行かれるのですか?」
「そうだなぁ………まあ警備の仕事あるから…仕事はちゃんとしねえとこいつに怒られるからな」
「ふふっ、それは大変ですね」
「だろ~?」
「仕事はしっかりしてください」
「し、してるだろ!!」
「どうでしょうか?いつもサボってお出かけになるのはどなたでしょう」

 おっと、雲行きが怪しくなってきたぞ????

「ふふふ、そうね、大変ねアナラスも」
「え、エリィ様まで…………」

 やばい。ここは俺が孤島に立たされている。

「と、ところでエリィ様も街に出かけるのか?」
「そうですね………他国からのお客様もいらっしゃって対応も行わなければいけないので少し難しいのですね」

 寂しそうに言うエリィ様に共感する。

「俺と同じで仕事か…………………辛いなほんと………遊びたかった俺も遊びたかったんだよ………………」
「団長????」
「さ、お仕事お仕事たのしーなー」
「ふふふ、」
「さて、団長」
「う、……………はーい…………じゃそろそろ行くわ」
「はい、頑張って下さいね」
「お互いね」

 俺たちはエリィ様とわかれて街へと向かう。

「これさー…………もしかしてずっと歩いたり立ってたりして不審者いたら捕まえてー……ってこと繰り返すの?」
「はい、勿論です」
「うえぇぇぇぇぇ………………地獄やん」
「しっかり働いてくださいね」

 やばい。アナラスと二人でいるとずっと仕事モードだ。やばい。少しもサボれない。
 や、警備するよ?大事だからね。でもさ!!なんか食いたいじゃん!ちょっと見たいじゃん!!!それも出来ないよ。アナラスと一緒だと!!!

「………………………………」

 よし。

「なぁ………」
「なんです?」
「こうやって歩いてても効率悪いからさ」
「はい?」
「二手に別れよう!!!バラバラに行動すりゃ全体をみて回れるからさ!」
「そんなこと言って……サボる気満々なの分かりきってますよ」
「そんなことない!!ということで、じゃ、俺あっち行ってきまーーす」

 回れ右して全力ダッシュ。
 捕まったら終了。

「あ!団長!!!!!!…………………………………………………………………………………………本当に逃げ足早い…………」
 
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