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セーラ皇女の婚約
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世界和平会議は、ゴルトレス帝国が、プレスペル皇国とウィンディア王国、そして砂漠の長を招待する形で開催することとなった。
この案はそもそもウィンディア王が考え、プレスペル皇帝を引き入れて会談まで持ち込んだものだが、国力ではゴルトレス帝国が勝っている。
主催国の名誉を潔く譲ることで、同盟を有為に進めたいとウィンディア王は考えたようだ。
私はノリスにおねだりをして、ゴルトレス帝国に行く前に、ちょっとプレスペル皇国に立ち寄ってもらうことにした。
だって、一度ウィンディア王国に戻ってしまえば、最強保護者軍団がもう外出は許してくれそうになかったから。
成人式のパーティに出れなかったから、どうしてもセーラ皇女に会いたかったんだよね。
セーラにお手紙をだしたら、喜んで招待しますってお返事が来たし、それに実は驚かせることがあるって、書いてあった。
驚かせることって何だろう?
ちょっとワクワクしてしまいますね。
前回迷宮を出る時に私が寝込んだから、ノリスは異次元倉庫に私を放り込むことを、考えた。
いやいや、さすがに無理じゃないでしょうか?
生き物は入れない設定だったりしませんか?
実験の結果、生き物もいれることができましたけどね。
そこでノリスさんは、可愛らしい小さなお家を作り、そこに私をいれると倉庫に放り込みました。
という訳で、私はただいまこの仮のお家を探索しています。
器用な砂漠の民が作った小さな家は、キルトのタペストリーや、クッションで覆われていて、ベッドやソファーもパッチワークが敷かれています。
大好きなお茶を飲もうとして、ふっと気づきました。
これって、何かににていると思ったら鳥かごの形をしていませんか?
いきなり放り込まれたので、しっかり見ていませんが、このドーム型の天井といい、丸みを帯びた窓といい、それに窓枠って金ですよね。
絶対ノリスは面白がって作ったに違いない。
金糸雀だから鳥かごって、しゃれのつもりかもしれないけど、ぜーんぜん笑えませんからね。
いくらブーブーと文句をいっても、プレスペル皇国につくまでは出ることができませんから、諦めてお茶を楽しみました。
ノリスは砂漠は竜になって飛行するって言ってたし、たぶん数時間の我慢だからね。
それにしても、たった数時間のために、ここまで凝るなんてノリスって……。
用意されたベッドでうつらうつらしていると、急に眩しい光がさして、私はノリスに連れ出されていました。
「ノリス、もう着いたの?」
目の前にはノリスとセーラ、そしてセンがいます。
「あれ?なんでセンここにいるの?」
その途端セーラが私に抱き着いて叫びました。
「私たち、婚約したの!。」
婚約ってセーラが?
私たちって誰と?
私が、ボケっとしているとセンが
「うん、まぁ、そーゆーことだ。」
「えーーー。」
「嘘でしょ、セーラとセンが!あんたたちいつのまに……。」
全然気が付きませんでした。
いったいいつ2人は付き合い始めたんでしょうか。
あー、セーラの成人式、センはやけに私の同行を嫌がってませんでしたか?
あのピンクが、セーラに隠し事なんて絶対無理ですよね。
なんでも話すに決まってます。
グルだったのね。
センもセーラも私がノリスの所にいくの知ってたんだぁー!
私が色々気が付いたのをセーラたちもわかったみたいで、きまり悪げにしています。
「セーラ。」
セーラを呼ぶと、ビクンと飛び上がりました。
「今からすぐに女子会よ!。」
セーラは、コクコクと頷きます。
にやにやと笑っていたノリスは、センに
「こっちはこっちで、楽しくやろうぜ。」
と声をかけ、センもにやりと笑って楽し気に出ていきました。
女子会といったら、やっぱりパジャマパーティですよね。
セーラもバレちゃってからは、色々のろけたいようで、大急ぎで夜着に着替えて、あのクッションに陣取りました。
近くのテーブルには、軽食やお菓子、たっぷりのお茶もおいてあります。
お行儀が悪いのですが、お行儀がわるいのが女子会の醍醐味です。
私が女子会を教えてからは、セーラもこの悪癖にどっぷりと浸かっています。
侍女さんたちも、可愛いは正義だそうで、協力してくれてます。
「それで、それで、いつから付き合い始めたのよ。」
「元々は、色々やらかしたせいで、ノバが食べられなくってピンクが荒れてた時期があるじゃない。」
そーだった。
あの時はセーラがとっても大変そうで、見かねてレイにピンクを許してくれるように手紙を書いた覚えがある。
「そうしたら、センがピンクを叱ってくれて、まぁセンが叱るとピンクと喧嘩になるんだけど、最後はいつもセンがピンクをなだめてくれてたの。」
なるほど、なるほど。
「でね、いっつもセンは、お前もあんまピンクを甘やかすな。っていいながら、頭撫でてくれて。」
セーラちゃん、顔が真っ赤ですよ。
「わりとよく私のこと、見ててくれて。私がつかれてると、あんまがんばりすぎるなよって言うんだよね。」
ほー、さすがは彼女を3人も持ってた男は違いますな。
「それで、いつ付き合うことにしたの?」
「それは、レティが攫われて、センったら真っ青になちゃてて、レティはアンクレットで帰ってきたけど、私はセンはレティが好きなんじゃないかなぁって思って悲しくて……。」
「ほほう!その流れだとあれだよね、センがなに落ち込んでんだ。とか聞いて、セーラがセンはレティが好きなの?なんて言うパターンだね。」
セーラが飛び上がりました。
「な、なんで知ってるの?見てたの?」
「いやぁー、だって想いを伝えたなら、そうかなぁって思ったのよ。」
「まぁね。それでセンがすごいのは、それを聞いてすぐに、じゃあお前おれの彼女になるか?っていったのよ。」
「おー!」
「で、うん。って言って。まぁ手紙とかやり取りしてたんだけど、お父様が、私に成人パーティで婚約者を選ぶっていいだして。」
「うん、うん、それで。」
クライマックスきたー!。
「それで成人式のパーティで、ダンスを踊って、その後みんなが見てる前でプロポ-ズしてくれて。きゃー恥ずかしい。」
いやいやセーラさん、聞いてるこっちが恥ずかしいから。
「それで皇帝は、許したの?」
「お父様はセーラが霊獣さまを捕まえたって、喜んでくれたけど、条件があってそれはセンが養子になることなの。」
「養子っていってもどこに?皇子さまが2人もいるから、セーラはお嫁にいくでしょ。」
「お父様の弟のグラントン公爵家には跡取りがいなくて、そこにセンが養子に入ったの。」
「えー。じゃあさ、センて将来公爵さまになるの?」
「そうよ、そして私が公爵夫人って訳。」
「でもそれ、よくウィンディア王が許したね。霊獣を渡すことになるでしょ。」
「そこがね、センはウィンディア王国とプレスペル皇国との友好の絆になるって、許してくれたのよ。」
さすがお父様、プレスペル皇国にウィンディア王国派の公爵が、誕生するんだから、損はしないってわけかぁ~。
「おめでとー。セーラ。センは私のお兄さんみたいなものだから、セーラはお姉さんね。」
「ありがとうレティ。センもナナは妹みたいなもんだって言ってたわ。お姉さまって呼んでちょうだい。」
「それはちょっと。セーラのことお姉さまってよんだら、センもお兄さまって呼ばなきゃいけなくなるじゃない。あいつそんな感じじゃないもん。」
「そうね。」
そう言って2人でぷって噴き出した。
その日の女子会はいつまでも続いていた。
この案はそもそもウィンディア王が考え、プレスペル皇帝を引き入れて会談まで持ち込んだものだが、国力ではゴルトレス帝国が勝っている。
主催国の名誉を潔く譲ることで、同盟を有為に進めたいとウィンディア王は考えたようだ。
私はノリスにおねだりをして、ゴルトレス帝国に行く前に、ちょっとプレスペル皇国に立ち寄ってもらうことにした。
だって、一度ウィンディア王国に戻ってしまえば、最強保護者軍団がもう外出は許してくれそうになかったから。
成人式のパーティに出れなかったから、どうしてもセーラ皇女に会いたかったんだよね。
セーラにお手紙をだしたら、喜んで招待しますってお返事が来たし、それに実は驚かせることがあるって、書いてあった。
驚かせることって何だろう?
ちょっとワクワクしてしまいますね。
前回迷宮を出る時に私が寝込んだから、ノリスは異次元倉庫に私を放り込むことを、考えた。
いやいや、さすがに無理じゃないでしょうか?
生き物は入れない設定だったりしませんか?
実験の結果、生き物もいれることができましたけどね。
そこでノリスさんは、可愛らしい小さなお家を作り、そこに私をいれると倉庫に放り込みました。
という訳で、私はただいまこの仮のお家を探索しています。
器用な砂漠の民が作った小さな家は、キルトのタペストリーや、クッションで覆われていて、ベッドやソファーもパッチワークが敷かれています。
大好きなお茶を飲もうとして、ふっと気づきました。
これって、何かににていると思ったら鳥かごの形をしていませんか?
いきなり放り込まれたので、しっかり見ていませんが、このドーム型の天井といい、丸みを帯びた窓といい、それに窓枠って金ですよね。
絶対ノリスは面白がって作ったに違いない。
金糸雀だから鳥かごって、しゃれのつもりかもしれないけど、ぜーんぜん笑えませんからね。
いくらブーブーと文句をいっても、プレスペル皇国につくまでは出ることができませんから、諦めてお茶を楽しみました。
ノリスは砂漠は竜になって飛行するって言ってたし、たぶん数時間の我慢だからね。
それにしても、たった数時間のために、ここまで凝るなんてノリスって……。
用意されたベッドでうつらうつらしていると、急に眩しい光がさして、私はノリスに連れ出されていました。
「ノリス、もう着いたの?」
目の前にはノリスとセーラ、そしてセンがいます。
「あれ?なんでセンここにいるの?」
その途端セーラが私に抱き着いて叫びました。
「私たち、婚約したの!。」
婚約ってセーラが?
私たちって誰と?
私が、ボケっとしているとセンが
「うん、まぁ、そーゆーことだ。」
「えーーー。」
「嘘でしょ、セーラとセンが!あんたたちいつのまに……。」
全然気が付きませんでした。
いったいいつ2人は付き合い始めたんでしょうか。
あー、セーラの成人式、センはやけに私の同行を嫌がってませんでしたか?
あのピンクが、セーラに隠し事なんて絶対無理ですよね。
なんでも話すに決まってます。
グルだったのね。
センもセーラも私がノリスの所にいくの知ってたんだぁー!
私が色々気が付いたのをセーラたちもわかったみたいで、きまり悪げにしています。
「セーラ。」
セーラを呼ぶと、ビクンと飛び上がりました。
「今からすぐに女子会よ!。」
セーラは、コクコクと頷きます。
にやにやと笑っていたノリスは、センに
「こっちはこっちで、楽しくやろうぜ。」
と声をかけ、センもにやりと笑って楽し気に出ていきました。
女子会といったら、やっぱりパジャマパーティですよね。
セーラもバレちゃってからは、色々のろけたいようで、大急ぎで夜着に着替えて、あのクッションに陣取りました。
近くのテーブルには、軽食やお菓子、たっぷりのお茶もおいてあります。
お行儀が悪いのですが、お行儀がわるいのが女子会の醍醐味です。
私が女子会を教えてからは、セーラもこの悪癖にどっぷりと浸かっています。
侍女さんたちも、可愛いは正義だそうで、協力してくれてます。
「それで、それで、いつから付き合い始めたのよ。」
「元々は、色々やらかしたせいで、ノバが食べられなくってピンクが荒れてた時期があるじゃない。」
そーだった。
あの時はセーラがとっても大変そうで、見かねてレイにピンクを許してくれるように手紙を書いた覚えがある。
「そうしたら、センがピンクを叱ってくれて、まぁセンが叱るとピンクと喧嘩になるんだけど、最後はいつもセンがピンクをなだめてくれてたの。」
なるほど、なるほど。
「でね、いっつもセンは、お前もあんまピンクを甘やかすな。っていいながら、頭撫でてくれて。」
セーラちゃん、顔が真っ赤ですよ。
「わりとよく私のこと、見ててくれて。私がつかれてると、あんまがんばりすぎるなよって言うんだよね。」
ほー、さすがは彼女を3人も持ってた男は違いますな。
「それで、いつ付き合うことにしたの?」
「それは、レティが攫われて、センったら真っ青になちゃてて、レティはアンクレットで帰ってきたけど、私はセンはレティが好きなんじゃないかなぁって思って悲しくて……。」
「ほほう!その流れだとあれだよね、センがなに落ち込んでんだ。とか聞いて、セーラがセンはレティが好きなの?なんて言うパターンだね。」
セーラが飛び上がりました。
「な、なんで知ってるの?見てたの?」
「いやぁー、だって想いを伝えたなら、そうかなぁって思ったのよ。」
「まぁね。それでセンがすごいのは、それを聞いてすぐに、じゃあお前おれの彼女になるか?っていったのよ。」
「おー!」
「で、うん。って言って。まぁ手紙とかやり取りしてたんだけど、お父様が、私に成人パーティで婚約者を選ぶっていいだして。」
「うん、うん、それで。」
クライマックスきたー!。
「それで成人式のパーティで、ダンスを踊って、その後みんなが見てる前でプロポ-ズしてくれて。きゃー恥ずかしい。」
いやいやセーラさん、聞いてるこっちが恥ずかしいから。
「それで皇帝は、許したの?」
「お父様はセーラが霊獣さまを捕まえたって、喜んでくれたけど、条件があってそれはセンが養子になることなの。」
「養子っていってもどこに?皇子さまが2人もいるから、セーラはお嫁にいくでしょ。」
「お父様の弟のグラントン公爵家には跡取りがいなくて、そこにセンが養子に入ったの。」
「えー。じゃあさ、センて将来公爵さまになるの?」
「そうよ、そして私が公爵夫人って訳。」
「でもそれ、よくウィンディア王が許したね。霊獣を渡すことになるでしょ。」
「そこがね、センはウィンディア王国とプレスペル皇国との友好の絆になるって、許してくれたのよ。」
さすがお父様、プレスペル皇国にウィンディア王国派の公爵が、誕生するんだから、損はしないってわけかぁ~。
「おめでとー。セーラ。センは私のお兄さんみたいなものだから、セーラはお姉さんね。」
「ありがとうレティ。センもナナは妹みたいなもんだって言ってたわ。お姉さまって呼んでちょうだい。」
「それはちょっと。セーラのことお姉さまってよんだら、センもお兄さまって呼ばなきゃいけなくなるじゃない。あいつそんな感じじゃないもん。」
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