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ノリスの陰謀

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 プレスペル皇国との約束の癒し行脚も、無事に終了し、たった一つだけれど、約束を果たせて、ちょっとばかり、遊んでもいいかなぁなんて気分で、久しぶりにお庭に出ています。


 なんだか、お疲れモードになってるなぁ。
 ちょっとぼんやりしていると、センがニヤニヤしながらやってきました。

「珍しいわね、セン。この頃はずっと街にばかりいるでしょう?どうしたの?
ご機嫌ね。」

「お前は、なんだか暇そうだな。手紙が来てたぜ、セーラから。」

「セーラから、早く頂戴。あれ?センも同じ手紙がきたの?」

「そうさ、舞踏会の招待状なんだ。セーラ16歳になったんだって。それで成人のお祝いをするから、来てくれってさ。」

「わぁー素敵、行きたい!でも、センは舞踏会なんて興味なかったんじゃないの?」

「だけどさ、きっと国をあげてのお祭りモードになるだろ。最近暇だしさ。祭りってワクワクするんだよね。オレ。」

「私だって同じよ。日本のお祭り、懐かしいなぁ。綿あめとか、リンゴ飴とか。」

「お前、食い物ばっかりだな。」

「で、レイは行っても良いって?」

「う~ん。」

 センが言いにくそうにしてるので、問い詰めたら。センだけならいいけど、私が行くとなると、安全確保のために多くの兵や騎士さまが一緒にいくでしょう。

 レイたちは、もうすぐ帝国に行くつもりなんだよね。交渉とはいえ、かなり大規模な軍も連れていくから、今は兵馬を休めたいんだって。

 申し訳なさそうな顔をするセンをみて、こいつは私をおいていく気満々なのがわかった。

「そんなの簡単じゃない、センがプレスペル皇国に先に行って、セーラ皇女にブレスレットを起動して貰えば、お伴なんていらないじゃない。」

「ガウンとかドレスとかは、結構そのまま皇国に置いてきてるし、セーラも私の部屋はそのままにしておくっていってたもの。身体だけ転移すればいいだけよ。

「えー、そしたらオレお前の護衛をやんなきゃいけないじゃん。」

 まったくなんて我が儘な子なんでしょう。

「わかったわよ。皇国では、セーラの部屋で遊ぶだけにする。絶対どこかに行ったりしません。その代わりお土産買ってきてね。」

「わかったよ、その代わり保護者軍団には、自分で言えよ!」

 まったく、一番困難な場所から逃げましたね。
 でもいいです。セーラと遊べるならね。

 でもその時の私は、忘れていたんです。
 どうしてだか、私が動くと必ずなにか事件が起きることを。


 セーラへのお土産の可愛い手鏡と、サクラへのお土産のノバを詰め込んだ袋を膝の上にのせて、私は今か今かと転移が起こるのを、待っていました。

 お父様とレイには、必殺おねだり攻撃を連発し、それでもなかなか陥落しないので、王妃さまを泣き落としました。

 さすがのお父様も、お母様にはかなわないんですよ。

 やがて、「レティ、レティ。」とセーラの声が響きわたり、私の身体は空に消えていきました。

 
 「あれ?何でノリスがいるの?」
 目の前には、満面の笑みを浮かべたノリスがいます。

「あー、やっぱりピンクの転移はたいしたものだね。ちゃんとこれたんだぁ」

 やっぱりあの時、アンクレットをいじってたと思ったら、転移先を書き換えたんだ!

 「困ります、ノリス。私セーラの成人式のパーティにお呼ばれしているのよ。」

 あれ、私文句を言ってるんですけど、なんで抱っこされてるんでしょう。

 ノリスは私の頭を撫でながら、嬉しそうに怒った顔も可愛いと呟いています。

「それに、私が着かないとみんな心配します。」

 それを聞くとノリスはクスクス笑いだしました。

「ねぇ、レティ、聞いていい? ピンクだって霊獣だ。自分の術に干渉されて気が付かないと思ったの?」

 えー、そういえばそうですね。多分ノリスが干渉してすぐに気が付いたはず。

 なのにどうしてセーラは転移を起動したのかしら????

 私は頭がぐるぐるしてきました。
 さっぱりわかりません。

「交渉しちゃったんだよね。今度の帝国と王国、それに皇国との三者会談に、僕も行くってね。」

 それはノリスがいれば、交渉はとっても有利に運ぶでしょう。
 緑のペガサスは青を恐れてたみたいだし、紫の鷹も青を嫌ってはいないみたいだった。

 私のことは嫌いみたいだけど。
 でも、それって、もしかして

「お父様とレイが、私を売ったの!!!」

 「レティ、違うよ。交渉の内容はこうだ。もしもセーラがアンクレットを起動したら、その日から、交渉日までは、レティは僕とすごす。」

「けれども、帝国との交渉日までに、アンクレットが起動しなくても、僕は交渉の席につく。」

 「ただし、アンクレットの転移先が、変わったのはピンクも王様たちもセーラにも、誰にも言わないこと。」

「これって、どちらかと言えば、王様の方が有利なんだぜ。セーラはよほどのことがなければ、アンクレットを起動しない筈だからね。」

 つまり、つまり、私は自分で墓穴を掘ったってことですか?

 お父様やレイが、あんなに頑強に反対してたのは、転移先が書き換えられていたからで、約束があるから言えなかったんだ。

 わぁーん、私ってばか。
 あれ、でもこの事態って予想できない?
 セーラの成人の日はきまってるし、セーラが私を招待するのも決まってる。

 そして帝国との交渉が迫っている、この時期、王様たちが私の外出を渋るのも予想できたはず。

 そしてその場合の、私の行動も、この男なら予測可能。

 なにが、王様に有利よ。
 嵌める気満々だったんじゃない。

「レティ、君のそういう勘のいいとこ、僕は嫌いじゃないよ。」

 もーノリスの腹黒星人め。
 でも、これって保護者様も承知ってことですよね。

 だったら、楽しまなきゃ。
 砂漠の迷宮と地底都市を。




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