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聖女伝説の幕開け
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お遊びの前にお仕事をしなければなりません。
今朝はいよいよ大神殿で、初めての癒しを行う日なのです。
皇国側としても、せっかくの機会なので一大イベントにする気満々なんですよ。
御触れはもう出ていて、大神殿の前は昨夜から長蛇の列が出来ているって、覗きにいったセンが、教えてくれました。
もう国中お祭り騒ぎなので、屋台も出てるし、この際だからとイベントも目白押し。
夜には、花火を打ち上げるってセンが張り切ってました。
お仕事さえしっかりしたら、夕方の2時間、セーラとお祭りを楽しめるので気合を入れてがんばりますかね。
神殿の出入りはサクラの転移を使います。
人込みの中、馬車での移動は人目につきますし、その方がインパクトがあるんですって。
荘厳なパイプオルガンの演奏のあと、教皇さまが皇国と王国の同盟を寿ぐと、突如
先ほどまで、だれもいない空間に、真っ白なローブを纏った少女が登場しました。
少女は頭から身体全体、薄いベールで覆われていて、そのベールの縁取りには金糸で刺繍が施されています。
少女は民衆に、ゆっくりと礼をすると、どこからともなく取り出した金のフルートを奏でだしました。
柔らかなフルートの音色にあわせて、金色の光が神殿中を包みこみます。
人々は、暖かくまどろむような満ち足りた光が自分を包んでいるのを感じ、安堵のと息をもらしました。
ふっとフルートの音色がとまり、少女をみると柔らかな笑みを浮かべて、手を空に差し出ます。
その手を掴んだのは、皇国の霊獣ピンクのうさぎさまで、うさぎさまは少女を誘うと、そのまま空中に溶けていきました。
オォー!神殿全体が、揺らぐような歓声に包まれています。
「目が、目が見える」
「足が、私のあしが……」
「神様、母の病が治りました。」
もうほとんど阿鼻叫喚のようで、あらかじめ配置していた兵でも抑えることができないほどでしたが、それをとどめたのは教皇さまでした。
「この神威は、王国の聖なる姫君の御業である。姫君は霊獣さまの加護を受けたお方。皇国は王国と永久に同盟国として歩むこととなった。聖なる姫君の加護は、これからも皇国と共にある」
それを聞くと、さらなる歓喜の声が大聖堂にこだましました。
「聖なる姫君」
「癒しの姫さま」
「レティシア姫」
「聖女さま」
聞こえない、聞こえない、他人事、絶対他人事。
クッションを抱え込んで、羞恥に震えていると、
「こんな、後先も考えられねぇバカ娘が、聖なる姫君ねぇ。実態を知ったらどーすんだろうねぇ」
「セン、アイドルなんてそんなもんですよ。皇国のプロデュースが成功して良かったじゃないですか。おかげで街にだしても、この娘が聖女だと気づくことはありませんよ。神格化されちゃいましたからね」
うぅー。そうなんです。「聖なる姫君」という存在を神格化することで、実際の私から目を逸らさせることが、狙いだったんです。
「聖なる姫君」はきっとこれから益々神格化されて伝説になります。
そしたらここにいるナナである私と姫君を、同一人物だと看過できる人はいなくなる筈ですからね。
そーでもなかったら、あんな恥ずかしい真似できません。
精神がゴリゴリ削られて、100年ぐらい引きこもりたい心境です。
しかも、しかも、それが皇国巡礼中だけでなく、王様が
「だったら内もやればいいじゃん。王国と仲良くしたら洩れなく癒しの姫がついてきます。なんて講和条件としては安いものでしょ。戦費も節約できるし」
との賜ったので、王城に帰るまで、この晒し者状態が続くんですよ。
鬼畜です。鬼です。悪魔です。
「 レイ~。」
って甘えてみたら、頭をよしよしと撫でながら
「大人は自分の後始末は自分でするんですよ。ナナちゃんは大人ですね。」
だって!
忘れてた!一番の腹黒冷血人間はレイでした。
もう癒しはセーラさまだけです。
レイが急に真面目な顔になって
「街では、絶対セーラさまから離れてはいけませんよ。サクラはセーラさまに追尾機能をかけて、映像を映し出します。追尾機能は1度にひとりしか使えませんから、ナナがセーラさまから離れたら、ナナを見失ってしまいますからね」
センまで
「お前は、毎回やらかしてるんだ。今度は大丈夫だろうなぁ。セーラと手でも繋いどけ!ぜってい離すなよ。何かあればサクラがすぐにこちらに転移させる。そのためにも見えなきゃ話にならないんだからな」
少しは信頼して欲しいものです。
今回の警護は、ダンたち街に溶け込んでいるグループが行います。
きっとセーラさまにも、隠れた警護がつくはずです。
その上でサクラが監視して、異常があれば、即座にデートは中止。
強制送還されます。
お祭りめあてにセーラの家に親戚の子どもが遊びに来たという設定なので、私やセンが皇都にうとくても大丈夫。
お祭り目当てに遊びに来ているんだから、ぞんぶんに楽しめますしね。
「大丈夫、大丈夫、いくら私だってそうそう何度もやらかしませんよ」
誰も聞いちゃいませんね。
そんなに信用ないんですかね。
ないんですね。
わかりました。
セーラさまと私はこの国の女の子が着る身体全体を覆う服を着て、しっかりベールをかぶったので、見えているのは目だけですね。
センはシャツとズボン、そして目一杯お洒落して、腰に飾り布を巻いてます。
サクラが追尾をかけると、部屋に私たちの姿が映し出されました。
なんか立体的に自分の姿を見ると、へんな感じがしますね。
ダンが借りてくれた宿の部屋にサクラが転移させてくれました。
いよいよ親友デートのスタートです。
行きますよ~。
レッツゴー!
今朝はいよいよ大神殿で、初めての癒しを行う日なのです。
皇国側としても、せっかくの機会なので一大イベントにする気満々なんですよ。
御触れはもう出ていて、大神殿の前は昨夜から長蛇の列が出来ているって、覗きにいったセンが、教えてくれました。
もう国中お祭り騒ぎなので、屋台も出てるし、この際だからとイベントも目白押し。
夜には、花火を打ち上げるってセンが張り切ってました。
お仕事さえしっかりしたら、夕方の2時間、セーラとお祭りを楽しめるので気合を入れてがんばりますかね。
神殿の出入りはサクラの転移を使います。
人込みの中、馬車での移動は人目につきますし、その方がインパクトがあるんですって。
荘厳なパイプオルガンの演奏のあと、教皇さまが皇国と王国の同盟を寿ぐと、突如
先ほどまで、だれもいない空間に、真っ白なローブを纏った少女が登場しました。
少女は頭から身体全体、薄いベールで覆われていて、そのベールの縁取りには金糸で刺繍が施されています。
少女は民衆に、ゆっくりと礼をすると、どこからともなく取り出した金のフルートを奏でだしました。
柔らかなフルートの音色にあわせて、金色の光が神殿中を包みこみます。
人々は、暖かくまどろむような満ち足りた光が自分を包んでいるのを感じ、安堵のと息をもらしました。
ふっとフルートの音色がとまり、少女をみると柔らかな笑みを浮かべて、手を空に差し出ます。
その手を掴んだのは、皇国の霊獣ピンクのうさぎさまで、うさぎさまは少女を誘うと、そのまま空中に溶けていきました。
オォー!神殿全体が、揺らぐような歓声に包まれています。
「目が、目が見える」
「足が、私のあしが……」
「神様、母の病が治りました。」
もうほとんど阿鼻叫喚のようで、あらかじめ配置していた兵でも抑えることができないほどでしたが、それをとどめたのは教皇さまでした。
「この神威は、王国の聖なる姫君の御業である。姫君は霊獣さまの加護を受けたお方。皇国は王国と永久に同盟国として歩むこととなった。聖なる姫君の加護は、これからも皇国と共にある」
それを聞くと、さらなる歓喜の声が大聖堂にこだましました。
「聖なる姫君」
「癒しの姫さま」
「レティシア姫」
「聖女さま」
聞こえない、聞こえない、他人事、絶対他人事。
クッションを抱え込んで、羞恥に震えていると、
「こんな、後先も考えられねぇバカ娘が、聖なる姫君ねぇ。実態を知ったらどーすんだろうねぇ」
「セン、アイドルなんてそんなもんですよ。皇国のプロデュースが成功して良かったじゃないですか。おかげで街にだしても、この娘が聖女だと気づくことはありませんよ。神格化されちゃいましたからね」
うぅー。そうなんです。「聖なる姫君」という存在を神格化することで、実際の私から目を逸らさせることが、狙いだったんです。
「聖なる姫君」はきっとこれから益々神格化されて伝説になります。
そしたらここにいるナナである私と姫君を、同一人物だと看過できる人はいなくなる筈ですからね。
そーでもなかったら、あんな恥ずかしい真似できません。
精神がゴリゴリ削られて、100年ぐらい引きこもりたい心境です。
しかも、しかも、それが皇国巡礼中だけでなく、王様が
「だったら内もやればいいじゃん。王国と仲良くしたら洩れなく癒しの姫がついてきます。なんて講和条件としては安いものでしょ。戦費も節約できるし」
との賜ったので、王城に帰るまで、この晒し者状態が続くんですよ。
鬼畜です。鬼です。悪魔です。
「 レイ~。」
って甘えてみたら、頭をよしよしと撫でながら
「大人は自分の後始末は自分でするんですよ。ナナちゃんは大人ですね。」
だって!
忘れてた!一番の腹黒冷血人間はレイでした。
もう癒しはセーラさまだけです。
レイが急に真面目な顔になって
「街では、絶対セーラさまから離れてはいけませんよ。サクラはセーラさまに追尾機能をかけて、映像を映し出します。追尾機能は1度にひとりしか使えませんから、ナナがセーラさまから離れたら、ナナを見失ってしまいますからね」
センまで
「お前は、毎回やらかしてるんだ。今度は大丈夫だろうなぁ。セーラと手でも繋いどけ!ぜってい離すなよ。何かあればサクラがすぐにこちらに転移させる。そのためにも見えなきゃ話にならないんだからな」
少しは信頼して欲しいものです。
今回の警護は、ダンたち街に溶け込んでいるグループが行います。
きっとセーラさまにも、隠れた警護がつくはずです。
その上でサクラが監視して、異常があれば、即座にデートは中止。
強制送還されます。
お祭りめあてにセーラの家に親戚の子どもが遊びに来たという設定なので、私やセンが皇都にうとくても大丈夫。
お祭り目当てに遊びに来ているんだから、ぞんぶんに楽しめますしね。
「大丈夫、大丈夫、いくら私だってそうそう何度もやらかしませんよ」
誰も聞いちゃいませんね。
そんなに信用ないんですかね。
ないんですね。
わかりました。
セーラさまと私はこの国の女の子が着る身体全体を覆う服を着て、しっかりベールをかぶったので、見えているのは目だけですね。
センはシャツとズボン、そして目一杯お洒落して、腰に飾り布を巻いてます。
サクラが追尾をかけると、部屋に私たちの姿が映し出されました。
なんか立体的に自分の姿を見ると、へんな感じがしますね。
ダンが借りてくれた宿の部屋にサクラが転移させてくれました。
いよいよ親友デートのスタートです。
行きますよ~。
レッツゴー!
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