6 / 32
イタズラ成功!王様とレイとセン
しおりを挟む
害意はない。
たぶん、きっと、カナリアの本能みたいなものが、私に教えてくれているから。
けれど、もしこの場面失敗したら、きっと取り込まれる。
そんな予感がひしひしとする。
私だけならいいけれど、レイやセンを巻き込むことになってしまうかもしれない。
銀色のきつね・黒い獅子・あの2人の能力は、たった1日みただけでもチートといえるものだった。
彼らがもしも、もしも本当に私を探すつもりがあるなら、もしそうならきっとやってくる。
私は彼らに甘えたくなかった。
彼等には自由に気ままに生きて欲しいと願ってしまった。
それでも、もしも彼らがやってきたら、きっと面倒ごとも全部ひっくるめて受け止めてしまうだろう。
だから、平凡で、ヘタレの私でも、この威圧感半端ない人物と、ちゃんと渡り合わなきゃいけない。
「お前は誰だ」
もう一度、ゆっくりと質問を繰り返す男。
「私はナナです。それ以上は言いません」
真っすぐに男の目を見てそう言い切る。
フン、つまらなそうに唸ると男は
「ゴードン、お茶を入れろ。レディと対話するならお茶が必要だからな。あと
何かケーキでも適当に持ってこい」
ゴードンは、目をむいたが何も言わずに、台所に消えていった。
このタイミングでお茶?外では反乱軍が王都を制圧しようとしているというのに?
まさか反乱がフェイクということなの?
「私からも、質問があります。アキレス公とはどのような人物なのですか?」
私の質問に、お茶をセットしようとしたゴードンは一瞬かたまっていたが、すぐにとても上品にお茶をサーブしてくれている。
「この国は初めて来たんじゃなかったのか?」
「いいえ、私はこの場所に知り合いはいない。そう言ったんです」
あっ!このお茶とても美味しい。香りもいいけれど味わいがある。紅茶を飲むのは久しぶりな気がする。
まだ日本を離れて2日目だというのに。
「うまそうにお茶を飲むんだなぁ。アキレス公はいわゆる俗物だな」
男はやはり、お茶の香りに目を細めながら言う。
俗物、どういう意味だろう。こと反乱のような局面で使うなら操り人形という事なのだろうか。
けれど操り主はこの男か、さもなければ他国か?他国なら、お茶など飲んでいる暇はないはずだけど。
私が質問しようとすると男は
「質問は私の番だ。お前はこの世界の人間か?」
いきなり核心を突く質問に、思わずカップを取り落としてしまった。
つまりは、それが答えだ。
「なぜ?」
思わずつぶやいた言葉が、私の質問になった。
「この世界には、霊獣がいる。ここ1年以内に4匹の霊獣が、霊山に戻った。金色の金糸雀、銀の狐、 黒の獅子、 紺色の熊。そして霊獣が地に戻るためには、最低でも100年以上の時間がかかる。ここまでは理解したか?」
こくんと私は黙ってうなずく。
だからあの霊獣の核は、サクランボの実くらいの大きさだったんだ。
あんなにも小さな実だったから、飲み込んでしまったのだから。
「霊獣がこの地に戻るためには、女神の泉を経なければならない。それ以外に地に降りる方法がない。そして我国の神殿は、24時間常に女神の泉の波動を監視し続けてきた」
なるほど、つまりこの国は、霊獣たちが地に降り立ったのを知ったわけだ。ほんの少し前に。
しかも霊獣として育つ暇がなかったなら、その答えはひとつ。
異世界人に取り込まれたということになる。
「なぁ、どう思う?」
その質問は、私に向けられたものではなかった。
男の視線は真っすぐに扉に向けられていた。
「お見事と言っておきましょうかね」
そう言いながら、扉から入ってきてのは、レイだった。
「ナナ、お前知らない人には、ついていかない約束だろ。お仕置き決定な。」
そう言ったのはセン。
「なんで?どうして?どうやって来たの?」
呆然とする私にレイが質問した。
「ねぇ、ナナ。私の能力は何ですか?」
レイの能力は電気。もしかしたら?と思ってポケットを探ると小さな宝玉が見つかった。
「それ、追跡装置ですよ。私の次元倉庫にはそんなのがゴロゴロしているんですよ。言いませんでしたっけ」
「聞いてない。何なの?もう会えないかもって、ひとりで頑張らなきゃって、そう思ってたのは、私だけなの。ひどい!」
クスリとレイは笑うと、男の方を振り返った。
「面白いお話をしているようですが、ナナを虐めて下さったなら、お礼をしなくちゃいけませんね」
男は手招きでレイとセンをソファーに招きよせると。
「危なっかしいお嬢さんを、保護しただけですよ。うちの部下がね」
と、顎をしゃくる。
そこにはモラルさんと、もう1人の騎士の方が申し訳なさそうな顔で立っていた。
「ごめんなさい。お嬢さん。主はいたずらが好きで、しょっちゅう人にイタズラして遊んでるんですよ」
つまり、つまり、反乱なんて嘘だったんだ!
だから町の人は逃げ出さなかったんだ。
なんて大規模なドッキリを仕掛けてくれるのよ。
「みんなして、みんなして馬鹿にして!もう大っ嫌いなんだから」
あんまり悔しくて涙目になりながら叫ぶと、レイがひょいっと抱き上げて
頭をなでて言う。
「まぁ、なんだな。なんでだかお前を見ているとかまいたくなるというか、何というか。愛されてんだよ」
絶対に誤魔化されませんからね。と無視しているとゴードンさんが、3段重ねのお菓子入れを持ってきてくれた。
凄い。ケーキでしょ。タルトにマフィン、たっぷりのクリームやジャム。それにサンドイッチまで。
思わず笑顔になると、ゴードンさんに給仕してもらって食べ始める。
王様との話し合いなんて、レイがいるなら任せて大丈夫。
なんで王様だとわかるかって?
国の根幹にかかわる機密事項を、王太子レベルでおもちゃに出来るはずがない。
つまりここにいるふざけた男は王その人って訳。
以上証明おわり。それよりも食べ物よ!
私が楽しそうに食べ始めると、センも横に座って一緒に食べる。
「セン、私がんばったのよ」
そう言うと
「あぁ、ちゃんと聞いてたから知ってる」
ほぉ~、盗聴までしてましたか。
うっかり発言に気が付いたセンは、慌てて
「まぁ、なんだな。お仕置きはなしってことにしてやるからさ」
「えっ!お仕置きなし!やったぁ!約束ね」
これで安心して、おやつをに専念できる。
レイと王様は結構仲良くなったみたい。
あれですね、腹黒は腹黒同士きっと気が合うんですね。
レイたちが密談を開始すると、モラルやゴードンさんたちが、周囲の警戒にあたっているのか、部屋にはいなくなった。
なので、部屋には、霊獣をその身に飼っている3人と王様だけ。
どんだけ剛胆な王様なんだろう。
この国の名前はウィンディア王国。
そしてここは王都でウィンウッドっていうんだって。
王様の名前はアイオロスというの。
アイオロス・ウィンディア。
でも王様なんて陛下としか呼ばないだから、名前を知らなくても問題はないんだけれどもね。
ゴードンさんは、この国の守護隊の隊長さんなんですって。
モラルさんも近衛隊の隊長さん。
モラルさんと一緒にいたのが、ジルベルトさんで第一騎士団の団長さんだそうです。
この3人は、いわば王様のご学友ね。
幼い頃から一緒に育った悪友みたい。
すっごくイタズラばっかりして側近を困らせてばかりだけれども、国民を守ることを真剣に考えているみたい。
この天球は、日本でいえば戦国時代に似ている。
統治する人が決まらなくで、小さな国々が群雄割拠している。
それでね、西は女帝が統べるゴルトレス帝国、南には皇帝が統治するプレスペル皇国が、かなりの力をつけてきてるの。
そこでアイオロス王は考えた訳ですね。
東をウィンディアが統一すれば、ゴルトレス・プレスペル・ウィンディアの3つの国の力が均衡して、いい感じに競い合って発展させちゃおうという訳です。
今では、毎年のように、小競り合いが繰り返されていて、多くの民が死ぬ。それなら、戦争で沢山の人を殺してしまうけど、世界を統一すべきじゃないか?って。
確か地球でも同じことを考えた人がいたね。
あれは、残った3国のうち2国で協力して1つの国を滅ぼして、最後には天下統一するんだよね。
つまりそんな感じで、王様はレイを説得したんですよ。
国際連盟みたいに、小さな国も仲良く共存できたらいいんだけど、それってある意味絶対的な強者がいるから、なんとかなってる面があるものね。
でも国際連盟みたいに、世界の国が協議とかできるようになれたら、素敵かもしれません。
そんな理想を語り合ったレイと王様は意気投合。
レイとセンは王様直属の部下になりました。
レイやセンに命令できるのは王様だけで、自由にどこでも出入りできるし、王様にも対等に話せる権利を持ってるので、王様に忠実な人たちから、すごく嫌われている。
でも王様に忠実な人ばかりが、周りをかこんだら、王様は人形になるしかなくなる。
例えば、王様が食事の味が気に入らなかったとするでしょ。
そうすると王様に忠実な人は、その料理人を解雇するか、或いは死罪にするかもしれない。
それがわかってしまえば、王様は私心は無くすしかない。
うっかり言ったひとことで、人が責任をとって死ぬかもしれないのだから。
王様に対して不敬だと騒ぐのは、王様の為ではなくて、自分の為。
自分がいかに王の為を考えているか知って欲しいだけ。
私心を持たないで、民のために生きていくって、とっても大変そうだよね。
王様は私心も公的な心もバランス良く持っている感じがする。
そんな王様だからこそ、レイやセンの存在は許されたし、結構ガス抜きになっている。
敵役がいれば、中は結束するしね。
それで私のお役目なんだけど、カナリヤって害意に敏感な訳じゃない?
その力を使って王様の近くで、害意を持って近づく人がいたら知らせる役目なの。
それだと、常に王様の近くにいなくちゃならない訳でしょ。
侍女でいいんだけど、そうすると他の仕事をしている間、王様のそばを離れることになるので、困るのです。
私が12歳っていうことで、王様は私を自分の子どもにしちゃいました。
王様が町で遊んでいる時に作った子どもで、子どもとして扱う訳にはいかないけど、町にもおいておけないし、手元に引き取った設定。
寝室も王様と同じフロアに貰っているし、私室も王様の執務室の近く。
身分は王様付きの侍女になりました。
侍女になるにあたって、とりあえずどっかの伯爵家あたりの養女になってます。
血筋を重んじる身分社会では、王妃から生まれた子どもしか、認められない。
だから愛人には、伯爵夫人とかの称号を与えて、既婚者扱いをするのね。
そしたら生まれた子どもは、伯爵の子どもになるから。
そんな訳で、生まれを理由にして、お仕事は王様の側仕えの侍女にしたわけです。
基本いつも王様の近くで、控えているだけのお仕事です。
そして王様を騙そうとしている時には、そっとお水をだしたりして合図を送ります。
殺意がある時は、決められた紐を引けば警報が鳴って、王様はすぐに避難して、近衛騎士が来る手筈になっています。
そして困ったことに、カナリア警報は、毎日のように発令されるので、王様が私を近くにおきたがるのは、今では当然のように思われています。
なんだかすっかり取り込まれてしまったようですね。
そんな警戒はしていても、ある意味平凡な日常が、ある国の使節団が来たことによって終わりを告げました。
たぶん、きっと、カナリアの本能みたいなものが、私に教えてくれているから。
けれど、もしこの場面失敗したら、きっと取り込まれる。
そんな予感がひしひしとする。
私だけならいいけれど、レイやセンを巻き込むことになってしまうかもしれない。
銀色のきつね・黒い獅子・あの2人の能力は、たった1日みただけでもチートといえるものだった。
彼らがもしも、もしも本当に私を探すつもりがあるなら、もしそうならきっとやってくる。
私は彼らに甘えたくなかった。
彼等には自由に気ままに生きて欲しいと願ってしまった。
それでも、もしも彼らがやってきたら、きっと面倒ごとも全部ひっくるめて受け止めてしまうだろう。
だから、平凡で、ヘタレの私でも、この威圧感半端ない人物と、ちゃんと渡り合わなきゃいけない。
「お前は誰だ」
もう一度、ゆっくりと質問を繰り返す男。
「私はナナです。それ以上は言いません」
真っすぐに男の目を見てそう言い切る。
フン、つまらなそうに唸ると男は
「ゴードン、お茶を入れろ。レディと対話するならお茶が必要だからな。あと
何かケーキでも適当に持ってこい」
ゴードンは、目をむいたが何も言わずに、台所に消えていった。
このタイミングでお茶?外では反乱軍が王都を制圧しようとしているというのに?
まさか反乱がフェイクということなの?
「私からも、質問があります。アキレス公とはどのような人物なのですか?」
私の質問に、お茶をセットしようとしたゴードンは一瞬かたまっていたが、すぐにとても上品にお茶をサーブしてくれている。
「この国は初めて来たんじゃなかったのか?」
「いいえ、私はこの場所に知り合いはいない。そう言ったんです」
あっ!このお茶とても美味しい。香りもいいけれど味わいがある。紅茶を飲むのは久しぶりな気がする。
まだ日本を離れて2日目だというのに。
「うまそうにお茶を飲むんだなぁ。アキレス公はいわゆる俗物だな」
男はやはり、お茶の香りに目を細めながら言う。
俗物、どういう意味だろう。こと反乱のような局面で使うなら操り人形という事なのだろうか。
けれど操り主はこの男か、さもなければ他国か?他国なら、お茶など飲んでいる暇はないはずだけど。
私が質問しようとすると男は
「質問は私の番だ。お前はこの世界の人間か?」
いきなり核心を突く質問に、思わずカップを取り落としてしまった。
つまりは、それが答えだ。
「なぜ?」
思わずつぶやいた言葉が、私の質問になった。
「この世界には、霊獣がいる。ここ1年以内に4匹の霊獣が、霊山に戻った。金色の金糸雀、銀の狐、 黒の獅子、 紺色の熊。そして霊獣が地に戻るためには、最低でも100年以上の時間がかかる。ここまでは理解したか?」
こくんと私は黙ってうなずく。
だからあの霊獣の核は、サクランボの実くらいの大きさだったんだ。
あんなにも小さな実だったから、飲み込んでしまったのだから。
「霊獣がこの地に戻るためには、女神の泉を経なければならない。それ以外に地に降りる方法がない。そして我国の神殿は、24時間常に女神の泉の波動を監視し続けてきた」
なるほど、つまりこの国は、霊獣たちが地に降り立ったのを知ったわけだ。ほんの少し前に。
しかも霊獣として育つ暇がなかったなら、その答えはひとつ。
異世界人に取り込まれたということになる。
「なぁ、どう思う?」
その質問は、私に向けられたものではなかった。
男の視線は真っすぐに扉に向けられていた。
「お見事と言っておきましょうかね」
そう言いながら、扉から入ってきてのは、レイだった。
「ナナ、お前知らない人には、ついていかない約束だろ。お仕置き決定な。」
そう言ったのはセン。
「なんで?どうして?どうやって来たの?」
呆然とする私にレイが質問した。
「ねぇ、ナナ。私の能力は何ですか?」
レイの能力は電気。もしかしたら?と思ってポケットを探ると小さな宝玉が見つかった。
「それ、追跡装置ですよ。私の次元倉庫にはそんなのがゴロゴロしているんですよ。言いませんでしたっけ」
「聞いてない。何なの?もう会えないかもって、ひとりで頑張らなきゃって、そう思ってたのは、私だけなの。ひどい!」
クスリとレイは笑うと、男の方を振り返った。
「面白いお話をしているようですが、ナナを虐めて下さったなら、お礼をしなくちゃいけませんね」
男は手招きでレイとセンをソファーに招きよせると。
「危なっかしいお嬢さんを、保護しただけですよ。うちの部下がね」
と、顎をしゃくる。
そこにはモラルさんと、もう1人の騎士の方が申し訳なさそうな顔で立っていた。
「ごめんなさい。お嬢さん。主はいたずらが好きで、しょっちゅう人にイタズラして遊んでるんですよ」
つまり、つまり、反乱なんて嘘だったんだ!
だから町の人は逃げ出さなかったんだ。
なんて大規模なドッキリを仕掛けてくれるのよ。
「みんなして、みんなして馬鹿にして!もう大っ嫌いなんだから」
あんまり悔しくて涙目になりながら叫ぶと、レイがひょいっと抱き上げて
頭をなでて言う。
「まぁ、なんだな。なんでだかお前を見ているとかまいたくなるというか、何というか。愛されてんだよ」
絶対に誤魔化されませんからね。と無視しているとゴードンさんが、3段重ねのお菓子入れを持ってきてくれた。
凄い。ケーキでしょ。タルトにマフィン、たっぷりのクリームやジャム。それにサンドイッチまで。
思わず笑顔になると、ゴードンさんに給仕してもらって食べ始める。
王様との話し合いなんて、レイがいるなら任せて大丈夫。
なんで王様だとわかるかって?
国の根幹にかかわる機密事項を、王太子レベルでおもちゃに出来るはずがない。
つまりここにいるふざけた男は王その人って訳。
以上証明おわり。それよりも食べ物よ!
私が楽しそうに食べ始めると、センも横に座って一緒に食べる。
「セン、私がんばったのよ」
そう言うと
「あぁ、ちゃんと聞いてたから知ってる」
ほぉ~、盗聴までしてましたか。
うっかり発言に気が付いたセンは、慌てて
「まぁ、なんだな。お仕置きはなしってことにしてやるからさ」
「えっ!お仕置きなし!やったぁ!約束ね」
これで安心して、おやつをに専念できる。
レイと王様は結構仲良くなったみたい。
あれですね、腹黒は腹黒同士きっと気が合うんですね。
レイたちが密談を開始すると、モラルやゴードンさんたちが、周囲の警戒にあたっているのか、部屋にはいなくなった。
なので、部屋には、霊獣をその身に飼っている3人と王様だけ。
どんだけ剛胆な王様なんだろう。
この国の名前はウィンディア王国。
そしてここは王都でウィンウッドっていうんだって。
王様の名前はアイオロスというの。
アイオロス・ウィンディア。
でも王様なんて陛下としか呼ばないだから、名前を知らなくても問題はないんだけれどもね。
ゴードンさんは、この国の守護隊の隊長さんなんですって。
モラルさんも近衛隊の隊長さん。
モラルさんと一緒にいたのが、ジルベルトさんで第一騎士団の団長さんだそうです。
この3人は、いわば王様のご学友ね。
幼い頃から一緒に育った悪友みたい。
すっごくイタズラばっかりして側近を困らせてばかりだけれども、国民を守ることを真剣に考えているみたい。
この天球は、日本でいえば戦国時代に似ている。
統治する人が決まらなくで、小さな国々が群雄割拠している。
それでね、西は女帝が統べるゴルトレス帝国、南には皇帝が統治するプレスペル皇国が、かなりの力をつけてきてるの。
そこでアイオロス王は考えた訳ですね。
東をウィンディアが統一すれば、ゴルトレス・プレスペル・ウィンディアの3つの国の力が均衡して、いい感じに競い合って発展させちゃおうという訳です。
今では、毎年のように、小競り合いが繰り返されていて、多くの民が死ぬ。それなら、戦争で沢山の人を殺してしまうけど、世界を統一すべきじゃないか?って。
確か地球でも同じことを考えた人がいたね。
あれは、残った3国のうち2国で協力して1つの国を滅ぼして、最後には天下統一するんだよね。
つまりそんな感じで、王様はレイを説得したんですよ。
国際連盟みたいに、小さな国も仲良く共存できたらいいんだけど、それってある意味絶対的な強者がいるから、なんとかなってる面があるものね。
でも国際連盟みたいに、世界の国が協議とかできるようになれたら、素敵かもしれません。
そんな理想を語り合ったレイと王様は意気投合。
レイとセンは王様直属の部下になりました。
レイやセンに命令できるのは王様だけで、自由にどこでも出入りできるし、王様にも対等に話せる権利を持ってるので、王様に忠実な人たちから、すごく嫌われている。
でも王様に忠実な人ばかりが、周りをかこんだら、王様は人形になるしかなくなる。
例えば、王様が食事の味が気に入らなかったとするでしょ。
そうすると王様に忠実な人は、その料理人を解雇するか、或いは死罪にするかもしれない。
それがわかってしまえば、王様は私心は無くすしかない。
うっかり言ったひとことで、人が責任をとって死ぬかもしれないのだから。
王様に対して不敬だと騒ぐのは、王様の為ではなくて、自分の為。
自分がいかに王の為を考えているか知って欲しいだけ。
私心を持たないで、民のために生きていくって、とっても大変そうだよね。
王様は私心も公的な心もバランス良く持っている感じがする。
そんな王様だからこそ、レイやセンの存在は許されたし、結構ガス抜きになっている。
敵役がいれば、中は結束するしね。
それで私のお役目なんだけど、カナリヤって害意に敏感な訳じゃない?
その力を使って王様の近くで、害意を持って近づく人がいたら知らせる役目なの。
それだと、常に王様の近くにいなくちゃならない訳でしょ。
侍女でいいんだけど、そうすると他の仕事をしている間、王様のそばを離れることになるので、困るのです。
私が12歳っていうことで、王様は私を自分の子どもにしちゃいました。
王様が町で遊んでいる時に作った子どもで、子どもとして扱う訳にはいかないけど、町にもおいておけないし、手元に引き取った設定。
寝室も王様と同じフロアに貰っているし、私室も王様の執務室の近く。
身分は王様付きの侍女になりました。
侍女になるにあたって、とりあえずどっかの伯爵家あたりの養女になってます。
血筋を重んじる身分社会では、王妃から生まれた子どもしか、認められない。
だから愛人には、伯爵夫人とかの称号を与えて、既婚者扱いをするのね。
そしたら生まれた子どもは、伯爵の子どもになるから。
そんな訳で、生まれを理由にして、お仕事は王様の側仕えの侍女にしたわけです。
基本いつも王様の近くで、控えているだけのお仕事です。
そして王様を騙そうとしている時には、そっとお水をだしたりして合図を送ります。
殺意がある時は、決められた紐を引けば警報が鳴って、王様はすぐに避難して、近衛騎士が来る手筈になっています。
そして困ったことに、カナリア警報は、毎日のように発令されるので、王様が私を近くにおきたがるのは、今では当然のように思われています。
なんだかすっかり取り込まれてしまったようですね。
そんな警戒はしていても、ある意味平凡な日常が、ある国の使節団が来たことによって終わりを告げました。
11
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
霊獣と3人の異世界びと
木漏れ日
ファンタジー
異世界トリップに巻き込まれた、国家公務員のレイ・男子高校生のセン・OLのナナは、異世界で生き残るために霊獣を食べてしまいました。彼等は自分たちの存在意義を求めて異世界を生き抜きます。それがいつしか異世界を揺るがすことになるのでした。
他サイトでも公開中
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました
鈴宮ソラ
ファンタジー
オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。
レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。
十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。
「私の娘になってください。」
と。
養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。
前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる