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《裏技》マスター、サーカスに入団する

燃えてるのに燃え尽きなくて、燃えた葉っぱを飛ばしてくる木は好きですか?

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「次はここか……」

「うわ、結構デコボコしてるのね」

「うわっ!?」

「だ、大丈夫……!? レカちゃん……!?」

「大丈夫ー! ありがとニルお姉ちゃん!」

「お姉ちゃん……ンフフ……」

 今回の団員はどんなのになってるかな……?

 石とかになってたらマジで見つからないぞ……。

「取り敢えず探そう。この森林はまあまあ広いから別れたりせずに行動しよう」

「分かったわ」

「あいあいさー!」

「分かった……」

 とは言っても……ただブラブラ歩いてるだけじゃ絶対見つからないよな……。

 何か目印的なのは……あ!

「俺ちょっと上から探してくる」

「上から探すって……どうやって見つけるの?

「団員がスライムになってた時って燃えたし、多分今回のも燃えてるだろ?
だから……飛んで辺りを見渡して煙が出てる所の下に行けば良い」

「あ! そうか!」

「って訳で飛んで見てくるから少し待っててくれ」

 肘でカチッとジェットパックのレバーを下げる。

『ブォン』

「うぉっと」

 やっぱまだこのいきなりビュンって飛ぶ感覚には慣れないなぁ……。

 操作は慣れてるんだけど。

 体重をうまい具合にずらして真上に飛ぶ様にし、ちょっと体重を傾けてグルーっと回る。

「うーん……どこだぁー?」

 煙が上がってるなら結構目立つと思うんだけどなぁ……。

「あ! あった! あれだ絶対!」

 遠くの方で灰色の煙がモクモクと出てる!

 ルリカ達に教えよう!

 肘でレバーを上げて下りる。

「見つけたぞ!」

「え!? どこ!?」

西北西せいほくせいだ」

「じゃあ早速行っちゃいましょ!」

 そして俺たちは走ってその煙が出ている場所へと向かった。

「ここ……だな。100%パー

「そうね」

「炎ぉー!」

「そうだね……炎だね……」

 目の前にはゴウゴウと臙脂色の炎で燃えている木があった。

 だが、一切燃え尽きる様子はなく、むしろ葉っぱが生えてて生き生きとしている。

「あのー」

『……』

「分かってるだろ? 俺が誰で、何なのか」

『……把握している』

 木のみきの少し上らへんから声がする。

 いやどうやって喋ってんだ?

 ……いや、それを言ったらスライムもどうやって喋っているのかってなっちゃうな。

 やめとこう。うん。

「なら、リヴェットの所に行ってくれないか?」

『……我らはうぬの強さを把握している』

「まぁ、さっき別の奴と戦ったしな。彼も仲間と情報共有してるだろうし」

『だが、我らは汝以外の強さを把握しておらぬ』

「……んん?」

『そこの女子おなごと一戦交えたい』

 そう言って葉っぱがピュッと飛ばされる。

 俺は咄嗟とっさに避けたが、真後ろにいたルリカの足元に、その葉っぱがグサッと刺さる。

「……ルリカと戦いたいって事か?」

左様さよう

「え、えぇっ!? 死ぬわよ私!? 絶対死ぬわよ!?」

「大丈夫だ、なんかあったら俺が守ってやる」

うぬよ、それは不可の――』

「いや、不可能じゃない。お前が俺にどんな妨害をしようと全て裏技バグを使ってでも潜り抜けて守ってやる」

『……手出しは厳禁だ』

「え、私本当にやるの?」

「やらないと団長の元へ行ってくれなさそうだからなぁ……ルリカ、グッドラック!」

 親指をピンと上に立てる。

「んー! 仕方ないわね! 絶対守りなさいよ!」

 ルリカが剣を抜いて、燃える木の前に立つ。

 頑張れルリカ!

くぞ』

「来なさい!」

 そしてすぐに木がシュババババと燃えた葉っぱを飛ばした。

「うわぁ!?」

 恐らく【加速】と【筋力調整】をやり、なんとか避けた。

 だが、避けた先にも葉っぱが飛んでくる。

「ッ!【剣の舞】!」

 かなりな速度で木の根元まで近づいたルリカは【剣の舞】で木を高速で斬る。

『ヌゥ……』

 よし! 段々と削れてるぞ! この調子だったら……!

『フンッ!』

 木がミョォンと曲がってルリカを押し潰そうとして来た。

「はぁ!?」

 パッと横に避け、また【剣の舞】で斬る。

 いやーでもまさか木が曲がるとはな……。

 どんだけ皮の伸縮性が良いんだあの木。

『ハァッ!』

 ほぼ真横にいたルリカに葉っぱを飛ばす。

「ふっ!」

 うわ、すっげぇジャンプ力。

 俺と同じくらいありそうだなあれ。

【筋力調整】って意外と便利なのかもしれないな……。

 着地すると同時にまた【剣の舞】で斬る。

 結構斬られてるな……。

『ウ……ウーヌ……』

 あれ、なんか燃える勢いが弱くなってる気がする……。

 ……あ! やべ!

「ストーップストーップ! これ以上やったらこいつ死んじゃう!」

「え!?」

『汝よ……我はまだける……』

「何言ってる。炎の勢いが弱くなってるし、斬られたあとも中々だぞ」

「な、なんかごめんなさい……」

 ペコリとルリカが頭を下げる。

『謝罪は不要。我、団長の元に戻りけり』

 そう言って彼は臙脂スライムの時のように人の形になる。

『では、我はこれにて』

 そして彼は近くの木に飛び込んで消えた。

 何だろう……凄い既視感があるな……。

「それでイイジマ、次はどうするの?」

「次はここ……なんだが、そろそろ周りが暗くなってきたし、一旦宿に帰って明日続きをやろう」

「あっ、ほんとだ。結構暗くなって来てるわね」

「見てただけの私が言うのもなんだけど……結構……疲れた……」

「私もー!」

「じゃ、ユ国へ帰って休むぞー」

 そして俺らはテレポート裏技バグを使って帰るのだったが……。

「あっ! イイジマさんだ!」

「超巨大ロボットを倒した感想を一言!」

「賞金は一体何に使うつもりで!?」

 そうだった……忘れてた……。

 面倒臭いのでピョーンと飛んで窓から部屋に入り、浮いて寝るのだった――。
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