上 下
64 / 255
《裏技》マスター、温泉に入る

源泉付近だからってそれはないだろ!

しおりを挟む
「足元気を付けろよー」

「そんな事言われなくてもだいじょ――うわぁ!?」

「言わんこっちゃない」

 転んだルリカの手を掴んで立たせる。

「ありがとうイイジマ」

「マジで気を付けてくれよー?」

 デコボコとした地面を進み、依頼された源泉付近に行く。

「ここか」

「なんか変な臭いがするわね」

硫黄いおうの臭いだな」

 さてと、この付近に魔物が出るから討伐して欲しいって依頼だったが……。

「魔物……いなくね?」

「いないわね……」

「なんだか……拍子抜け……」

「平和がいちばぁーん!」

 一応魔王のレカが平和が一番って言うのなんか新鮮だなぁ。

 まぁ、魔王が平和主義者でも良いんだけどね。

「念の為周りを探索しておこう。いたら普通に倒す感じで」

「分かったわ」

「分かった……」

「行こー!」

 という訳で周りを探索する事になった。

 だが、ジェットパックで上空から探したりして、1時間半程経ったが何もいなかった。

「マジでいないなぁー」

「そうねー。でもだとしたら何であんなクエストがあったのかしら?」

 魔物がいなければ当然その魔物を討伐して欲しいというクエストは生まれない。

 火のないところに煙は立たぬというヤツだ。

 ただその報告を受けた時はいて、俺らが来た時にはもう移動してしまっていたのだろうか?

 一応その可能性があるんだよなぁー。

 その場合だったらクエスト破棄になる訳だが……色んな温泉入りまくれるというのが無くなってしまうのは惜しすぎる!

 こんな事言うのも何だが、モンスター出て来てくれー!

 温泉入りまくりたいんだぁー!

『ピチョ』

 ……水音?

『ピチョ』

「なあルリカ」

「何?」

「聞こえるか?」

「え? 何が?」

 あれ? やっぱ気のせいか?

「いや……私には……聞こえてる……」

 ニルが聞こえてるなら気のせいじゃないな。

『ピチョ』

「「!?」」

 近くで音がしたので即振り返る。

『ピチョ』

 振り返った先には……

『『『『『ピチョ』』』』』

 沢山の数の人の形をした水がいた。

「あれが……魔物か?」

『ピチョ』

 動いた。

 どうやら魔物で合ってるらしい。

「んで……あれなんだ?」

 あんな魔物インワドには確実にいなかった。

「取り敢えず……一体倒してみるか」

 銃を抜いてパァンと撃つ。

 放たれた弾は魔物をドンドンと貫通していったが……魔物はどうやらノーダメージのようだ。

『ピチョ』

「え!? 何であいつらやられないんだ!?」

「……! 分かった……! あいつら……源泉なんだ……! 水だから……物理攻撃が効かない……!」

「源泉から魔物出来ちゃってるの!?」

 今すぐこの源泉封鎖した方がいいと思うんだが……まぁ距離が離れたらただのお湯になるとかなんだろう。

 というかめんどくさすぎるだろこれ。

 よーするに魔法とかスキルじゃないと倒せないって事か?

 マジめんどい。

 てか俺に水を蒸発させる様な魔法とかあったっけ?


 あーそういえば【業火斬り】ってのがあったなー……まあ剣ないから使えないけど。

 というか使ったところであれ水を蒸発させられるほどの温度は出せないんだよなぁ……。

 しゃーない、ここで出すのはめんどいが裏技バグをやるとしよう。

 何の裏技かというと、単純にあっつあつの炎を出す裏技だ。

 本来は鉄を溶かしたりする時に温度上げるのめんどいからやる裏技だが、まさか戦う為に使うとはな。

「裏技をやるから少し離れてくれ」

「分かったわ!」

 三人が俺から離れる。

 さてと、これで遠慮なく裏技が出来る。

 んじゃあまず……ひざまずこう。

「「「!?」」」

 後ろからルリカ達の驚愕の視線が伝わってくる。

 そして両手をパチンと合わせ、口の元に持って来て、横にクルッと回りながらフッと息を吹く。

 そして手を前にパッと放てば、小さな激熱の炎がポワッと地面から出る。

 因みにこの炎普通に温度太陽の表面とかそんくらいある。

 なんで周りが燃えてないのかというと、物体がそこに触れないと意味がないらしい。

 ただ、一番下の方は触れても大丈夫の様だ。

 いやー、マジでこの裏技は超便利なんだよなぁ。

 インワドでは凄いお世話になった。

 さてと、ではこいつを……

「よっと」

 下からすくって指先に乗せる。

 なんかこれ魔法使いみたいな感じで良いなぁー。

 そう思いつつ指先をヒュンヒュンと左右に移動させる。

『ピチョ』

 早速一体近づいて来たので、炎で触れてみる。

『ジュワー』

 おっ、沸騰ふっとうしてる沸騰してる。

 これなら簡単に倒せそうだな。

 何十体ものお湯野郎達にその炎を触れさせ、蒸発させていった。

「ふぅー……これで終わったかな?」

 辺りを見回してももうあの水で出来た魔物は見当たらなかった。

「よし! 討伐完了だな!」

 ルリカ達の元へ戻る前に、炎を消しておく。

 やり方は単純で、この裏技を発動した人が上から押し込むだけだ。

 それだけで火は消える。

 あとまあ大量の水をかければ消えはする。

「終わったぞー」

「イイジマ……あの炎は何?」

「んーと……めちゃくちゃ熱い炎、だな」

「そんなの触ってて大丈夫だったの!?」

「下の方は熱くないんだよ」

「あっ、そうなのね」

「取り敢えず……クエストクリアだよな?」

「ええ! 温泉入りまくれるわよ!」

「よっしゃぁぁ!」

 その後、俺らはユ国へ戻り、温泉に入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この世界はバグで溢れているのでパーティに捨石にされた俺はそのバグを利用して成り上がります

かにくくり
ファンタジー
冒険者マール・デ・バーグは、同期の仲間がレベル30まで上昇する中、未だにレベルが10までしか上がっていない落ちこぼれ冒険者だった。 ある日強敵を前に仲間達に捨石にされ、モンスターに殺されかける。 その時マールは走馬灯と共に前世の記憶を思い出す。 その前世はゲーム好きの日本の高校生で、自分は当時プレイしていたバグまみれで有名なRPG、ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドの世界に転生してしまった事に気付く。 この世界では原作で発生するバグも完璧に再現されているようだ。 絶体絶命というところを女勇者ユフィーアに助けられるが、何故かそのまま勇者に惚れられてしまう。 これもバグか? どうせ自分は真っ当に経験を積んでもこれ以上レベルが上がらないバグったキャラクターだ。 仕方ないので勇者と一緒にバグ技を駆使して成り上がります。 ※作中で使用したバグ技の元ネタとか当ててみて下さい(@'-')b ※時間差で小説家になろうにも掲載しています。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

処理中です...